麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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張維新エピソードの補填、次章に移る前にちょっとした幕間劇です

時系列は張の過去編のすぐ次、バラライカにまだラーメンを振るう前です。時系列が少々ややこしくなっていますが、なにとぞお付き合いください


(19) 幕間:スリーピングビューティ①

 

 

 

 少し過去にさかのぼる。時系列は、張維新がケイティと関係を築き、賠償と合わせて商談を結んで間もない頃

 

 

 

 

 ちょっとした話をしよう。それは麺処・ロアナプラ亭に置かれた二つの写真についてだ。

 

 一つは、なんでもない風景画のような写真だが、それはこの街に住む住人ならだれもが知るホテルモスクワ所有の建物の正面玄関を撮影したもの

 

 置いてある意味は客に対する警告だ。不埒な行いをするものあれば、この建物から怖いお兄さんたちがあなたを〇しに向かっちゃいますと、そんな深い意味を込めているそれは写真でありながら抽象画。意味を知る者は震えが止まらないほどに感動を覚えてしまう。

 

 と、まあ……ようはケイティの店には魔除けの写真が貼られている。そのおかげで彼の店は安心安全、皆お利口に飯を食って金を払うようになっていたはずが、最近起こった馬鹿な香港人の問題だ。

 

 当然、これにはバラライカも聞き耳を立てていた。しかし、処することもなく問題は解決。不埒者は適切な処理が為され

 

 そして、店の写真の横にもう一つの写真が貼られた。

 

 その写真はツーショット、眼鏡をかけたスーツの男とケイティが肩を組む写真、一見か弱い少女を手籠めにしているような写真にも見えなくもないそれに、ある人物は異様なフラストレーションを覚えたもちろん大尉のこと

 

 

 店主はのんきに張維新の行為に甘え、今日も気を良くして日々料理人を満喫中。そんなある日、ふと店を閉めようとしてシャッターに触れていたケイティは

 

 

 

 

 

 

……ふ~んふ~ん~~ふ~……ふぐおッ!?

 

 

 

 

 バタン、倒れる音とそしてすぐエンジンとタイヤの音が響いてあとは何もなく静寂。

 

 以上の経緯を踏まえて、彼の視点より物語は動き出す

 

 

 ケイティ、グッドラック

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 

 

 

……目が覚めたら、そこは見知らぬホテルの一室

 

 

 

「……夜景」

 

 横を見た。ロアナプラの景色を一望できるホテル、そんな場所ここではまず限られる。指折りの高級ホテルにどうして僕が、夢を見ていると思いたいけど

 

 

 

 

「……ハァイ、おはよう寝坊助さん」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 声のする方を向けばあら不思議、そこにはワインレッドのスーツが素敵にセクシーでクールで、アバンギャルドで、いや最後は余計か。古すぎる表現を無かったことにして

 

 うん、バラライカさんだ。どこからどう見ても

 

 

「……えっと」

 

 確認、質問を待ってくれている。

 

 あの事件以来事務的な連絡ばかり取る間柄、こうして顔を合わすのも久しぶりで、そしてあまりにも突飛な展開

 

 でも、不思議と僕は動じていない。だから、平然とこの質問が出来るのだろう

 

 

「拉致した要件はいったい……なにか、機嫌を損ねることをしましたでしょうか、その……でした、ごめんなさい」

 

 

 バラライカさん、と付け加えて。反応を伺えば、バラライカさんはクスリと笑って見せる。落ち着いた物腰、少し可愛らしく見えてしまう

 

 

 

「あら、さすが拉致経験があると貫禄があるわね……話が早くて助かるわ、ケイティ」

 

 

 

「……話、ですか」

 

 

 

「ええ、お話……ていっても、大体予想は出来るでしょ。あの男との件、三合会とのいきさつについて少し聞かせて欲しいの」

 

 

 バラライカさんが丁寧に申す。僕は軽く相槌を打つ返事をして、するとその浅い了承の返事がきっかけに部屋の玄関が開き

 何事かと身構えて、けどそれはすぐに理解が得られた。ホテルのボーイと思しいスタッフが入り、その運ぶカートには料理と思しいモノがちらほらと

 

「ようやく、今自分がどんな状況に置かれたか理解できたようね」

 

「ごはん、ですか?」

 

「ええ、ロシア料理はお嫌いかしら?」

 

「……」

 

 

 質問の問い、少し考える。ロシアの料理なんて名前ばかり、ウォッカを使ったカクテルを少し嗜むぐらいしか覚えがない。それに関しても飲み物で固形物ですらない

 

 断るつもりは毛頭ないが、展開に戸惑い少し判断が滞っていた。だからすぐにうなずくなり返事をすることを僕はしなかった

 

 だから、そんな逡巡のタイミングを見計らったように、僕はその匂いを

 

 

「!」

 

 

 鼻先に感じた。濃厚なスープの匂いを、トマトの酸味と甘みが漂う風味を

 

 バター、肉、野菜、寒い国の料理らしく濃厚で食べ応えのある料理が皿に並ぶ。色鮮やかで、見るだけで自然と胃が刺激される。

 

 

……ぐうぅ

 

 

「た、食べます!」

 

 

 空腹が先行して食い気味に返事、そんな自分をすぐに察して顔が熱くなる。バラライカさんに恥ずかしい姿を見せてしまった。

 

 

「……милый(可愛い)」 

 

 

 

「————ッ」

 

 

 

 いじらしく、人をからかうように楽し気に笑う。

 

 バラライカさんのいじらしい笑み、意味は分からないがその言葉は自然と理解できてしまう。

 

 

 

……なんだか、調子が狂う

 

 

 

 熱くなる、体まで熱くなって、何だか恥ずかしいとしか言いようがない。

 

 撃たれた時の恐怖、病院で顔を合わして話し合いをした時、それまでにこんなことは無かった。

 

 軍服姿に血と硝煙の匂いを纏う彼女しか知らなかった。だから、きっと僕はバラライカさんに戸惑ってしまうのだろうと推測する。

 

 

「さ、一緒に食べましょう。話し合いは、またそのあとでいいわ……サワークリームはお嫌い? ウォッカは薄めて出した方がいいようね」

 

 

「……は、はぃ」

 

 

 戸惑いを、隠し切れない。

 

 葉巻や火薬のにおいを感じさせない。漂うのは色香を含めた香水の芳香

 

 身に纏うスーツにしてもそうだ。エレガントな代物を堂々と着こなす様、そして男であるなら目を背けられない肌色の誘惑、ボタンを留められるはずなのにあえて開け放ち余裕を見せつけている。そう感じられる

 

 出で立ち、振る舞い、物腰、何をとっても過去とは類似しない。一人の、魅力ある大人の女性として対峙するバラライカさんは、現段階の僕の人生において最もの障害である。間違いない

  

 

 

 

 




今回はここまで、次回はもう少し長めに仕上げたい予定&願望


補足の解説、この幕間ではオリ主とバラライカのその後、姉御なる人で見せたあの甘々な関係、そこに転じるに至った最初のきっかけを記したモノを想定しています。

 感想・評価をたくさんいただいて感謝感激バラライカ。

 感想で言われるように、飯テロな文章とあまあまなオリ主の展開をこれからも続けていきます。ブラクラの日常系二次創作を今後もお楽しみに
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