麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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ギリギリを攻めていくスタイル。甘いデザートをご賞味あれ


(26) 幕間:キスと綿棒とバイノーラル

 

 曰く、大事な会合や取引等の場所でニンニクの匂いを嗅いだ。塩分と油分の過剰摂取で病院送りになるものが増えた。そして、二郎を愛するあまり町人同士でいざこざが起こっていた、とのことだ 

 

 店の休業自体は僕の腰痛からではあるが、いずれにせよお偉い様の意見でストップがかかるのは目に見えていたとのこと

 皆が美味しそうに食べる光景は嬉しくあったけど、でも結果的に見ればこれで良かったのだ。だから二郎は封印

 

 

 

……てめえ口が臭えんだよッ

 

 

 

 通り道、ふとした喧嘩で死人が出ることもなくなる。僕の作ったラーメンを好んでくれるのは嬉しいけど、いささか愛が強すぎるのだ

 

 

 

……こいつ、二郎をバカにしやがったぞ! 異端者狩りだ!!

 

 

……お、おい、何だお前らいきなりぞろぞろと、関係ないだろうが!

 

 

……ダンダン、ズダンダン、ズダダダダダダダ!!!

 

 

……ぎゃ、ギャァアアアアアッ!!!??

 

 

 

 そんなワンシーンを、道端で見かけることも珍しくない

 

 ドンパチが増えたおかげで銃器に弾の売れ行きが良くなったとか、そんな嬉しくもない報告をエダさんから聞くこともあったり。とにかく、僕はいささかやりすぎてしまったということだ

 

 二郎系ラーメン、魔性の魅力をもつかのラーメンはかくして封印されるに至った

 

 そして、そんなラーメンを世に出した僕に下された罰は

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 二人だけの寝室、逃げ場のない部屋、そこで行われた刑罰。

 

 

 

 

……ぬちゅ…………くちゅッ

 

 

 

 

「はぁ、もう……勘弁して、んむぐッ」

 

 

 

 

 身動きもできず、ただ与えられる刺激的が過ぎる感覚で脳が沸騰していく

 

 

 

 

……くちゅ、はっぷ、じゅる……ちゅぅぅ

 

 

 

 

「んんンッつ!?」

 

 

 

 

……ヂュゥゥッ……ポンッ!!……ぬちゅ、ぬるく、ぐちゅる

 

 

 

 

「ひぅ、ん……ばららいか、しゃん……だ、めぇ」

 

 

 

 

 下された罰、愛情ある行為ともいえるがだとしても凄まじすぎる。もとより、こういう経験は女性に囲まれる人生を送っていたこともあってないわけではない

 

 だけど、その行為をバラライカさんという人物から受けるとなれば話は別。甘く、苛烈で、逃げ場なく襲うその行為、背徳感やらいろいろと心をかき乱して正常ではいられない

 気が狂いそうだ。天国も突き進めば地獄となるのだと気づかされた。あぁ、恥ずかしい。とても恥ずかしい。

 

 喘いで、泣いて、けど気持ち良くて幸せで、満たされてしまっている自分自身が情けない。見ないで欲しいと、懸命に涙と喘ぎで訴えるが、それでもバラライカさんは行為を止めない

 

 時計の長針がようやく半周を迎えても、まだ行為は

 

 

 

「……き、キスは……もう、やぁ……ぁ、んッ」

 

「駄目よ。まだ30分しかたってないじゃない……さ、舌を出しなさいケイティ。仕置きはまだまだ続くぞ」

 

「…………うぅ」

 

 

 

 泣いても叫んでも、バラライカさんのキスは止まらない。もう何度やられたことか、けど何度であろうとこの感覚に慣れはしないのだ。バラライカさんのキスは少し甘くてビター、熟成された葡萄酒の様に高貴で大人の色気がたっぷり詰まった味なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間後、下着を変えないといけなくなった僕は着替えもシャワーも済まして部屋に、おそるおそる慎重に戸を開けて

 

 

 

「おかえりなさい、ケイティ」

 

「…………」

 

 

 

 バスローブ姿、ベッドに坐してショットグラス片手でまどろんでいるバラライカさん。先にシャワーを浴びているから肌が少し火照っている。それでいて、どこか肌艶もピカピカしていて、うんそこは理由が明快だ。

 

 以前も、張さんの話をしたら何故か怒られて、気絶するまでキス攻撃にあった時もすごくきれいになってたことがあったから。たぶん、この人は比喩とかそう言うの抜きに本当に人の生気を吸っているのだと思う。

 キスをするたびに綺麗になるのだから、この先年が経ていけば僕の方が先に老けるかもだ

 

 

「ケイティ、ケイティ」

 

「!」

 

「つっ立っていないで、早くこっちにおいでなさい……ほら、ここ」

 

 手をポンポンと叩くのは足の上、膝枕を誘っている。子犬を呼ぶのとあまり変わらない心境なのか、黙っていると口笛でも吹いて読んできそうだ。

 

「……はい」

 

 断る理由もない。傍に座って、そしてそのまま頭を預ける。ゆっくりと、支えられながら頭を柔らかい場所においてくれた。

 

 

……落ち着く、柔らかい、気持ちいい

 

 

 あれだけお仕置きされて、それでもこうしてグルーミングされてしまえば簡単に心を許してしまう。犬であると断定されても否定しようがない

 

「ワンちゃんみたい、可愛いわ」

 

「…………」

 

 早速言われた。偶然だろうけど、うんやっぱり否定できない

 

「……甘えん坊さん、赤ちゃんだと恥ずかしいでしょうから子犬かしら、子犬がいいわね」

 

「お好きにどうぞ」

 

「あら、否定しないのね……素直な子って私好きよ」

 

「……どうも」

 

 受け流すつもりが、好きという言葉には顔色を隠せない。少し傾けて顔を見せないようにした 

 

 バラライカさんの太もも、バスローブの布地越しとはいえその柔肉に頬をうずめている。ボディソープの良い匂いを感じながら、膝枕で頭を撫でられて

 

 本当に、僕は何と良い身分だろうか

 

「……いまさら」

 

「?」

 

「今さらですけど、ぼくってすごい立場なんじゃ」

 

 頭をあげて、バラライカさんの顔を見てそう告げる。

 

 何を今さら、みたいなきょとんとした顔で見下ろしてくる。いや、この感じは理解してくれていない

 

「別に、すごい事でもないんじゃない? ケイティ、あなたってば自信過剰なのね」

 

 変なことを言う子、そんな感じであしらわれて、そしたらギロっとこっちを見返して。火傷顔の様相でいじらしく口の端を吊り上げた

 

「じゃあ、嫌なのかしら?」

 

「!」

 

「ケイティ、嫌ならいいなさい……止めてあげるわ、お望み通り」

 

「いや、違っ……そういうわけじゃなくて、その一般論の観点からでして」

 

 言いよどむ、するとバラライカさんは仰向けになった僕にこれ幸いと手を伸ばす。頬に触れて、指先が顔のパーツをなぞって、首の顎裏あたりを撫でまわしてきて

 

「素直ね、素直なのは美徳よ」

 

「……ッ」

 

「別に、なんでもいいじゃない。一般論なんていうその辺に転がる定規持ち出して、そんなものはなくていいのよ。ええ、人に言いふらしでもしないかぎり、この程度ただのじゃれ合いみたいなもの。正しい正しくないとか、まったく気にすることなんてないわ」

 

「お仕置きで、いっぱいキスされて……それでもじゃれ合いでしょうか?」

 

「だって、痛いお仕置きはできないでしょ……わたし、もうあなたに怖い人って思われたくないのよね」

 

「けど、それにしても……一時間もディープキスされるなんて、思ってなかった」

 

 思い出すだけでも恥ずかしい。口の中では今でも蠢いている感覚が残っている

 

 顔を背ける、お腹に後頭部を向ける形に、バラライカさんの手が離れるけど、また僕の頬に伸びて、髪もわしゃわしゃと撫でる

 

 

……気持ちいいから、やめてって言いきれない

 

 

「拗ねても素直なのは隠しきれていない、あぁ、ほんと可愛い子……私、あなたに触っていると時間を忘れちゃうわ」

 

 

 満面の笑み、少し酔いの気が回っているからそれもあるのだろう

 

 

「……誤解されますよ、ほんといいかげんに」

 

「その心配はいらないわ。皆、理解のある部下よ」

 

「……それは、まあ確かに」

 

 理解のある部下、そういえばボリスさんは僕と目が合うとどこか暖かい目で見てくるし、今日みたいに車で拉致……送迎してくれる時も決まってボリスさんだ。

 理解がある、というよりは同情されているのだろうか

 

「影響を受けているのかしらね、皆老後はペットを飼うか相談をしていたわ」 

 

「ぼく、はたから見たらコーギーとかプードルみたいに見られているのですね」 

 

「ポメラニアンの間違いじゃないかしら? 依存度の高い、甘えん坊の子犬」

 

「……もう、お好きに」

 

「ふふ、また拗ねちゃって……ほら、頭を撫でてあげるからもう少しこっち。顔も隠さないで、私に見せなさいな」

 

「……はい」

 

  

 

 言われるまま、なされるがまま、僕はバラライカさんに見を預ける。太ももの柔らかさを感じながら、安心してされるがままに

 

 くしゅり、くしゃり、乾かした髪を優しく指の櫛で梳いてくれる。逃避を刺激されるから、マッサージみたく気持ちよさが感じてしまう

 

 声が出そうになるのをこらえるように意識を沈めて、まどろんで眠ってしまおうとする。

 

 こめかみ、耳の裏、バラライカさんの指先が気持ちいい。

 

 

「……ケイティ」

 

 

「?」

 

 

「なんでもないわ、ただ呼んでみただけよ……ケイティ、ほんといいあだ名ね」

 

 

「……最初は嫌だったんですけど、もう慣れました」

 

 

「ええ、私が慣れさせたのよね……ケイティ、ケイティ…………ケイティ、ふふ、ケイティ」

 

 

 繰り返す、静かにその色香に満ちた声で僕の名を呼ぶ。ぞぞっと、耳元でささやかれているようなもどかしさ、それが背中にまで走ってびくっと震える

 

 くすぐられているようで、照れくさい感情は僕の顔を赤く熱く染め上げる。

 

 目を閉じて、手で口元を隠すようにして、撫でられる快感に合わせて今度はささやきも添えて、されるがままの無抵抗

 

 震える感覚、すると、耳の奥にふと

 

 

 

「………………ん、んッ」

 

 

「?」

 

 

 身をよじる、痒みで体が震えた。ささやきによる表面的なものとは質が違う

 

 耳の奥、左耳と思ったけど痒いのは下側の右耳の奥

 

「……すみません、綿棒とかってありますか? 」

 

「あるけど、どうするの」

 

「ちょっと耳を……すみません、一回置きます」

 

 そう告げて、体を起こして綿棒を探さんとしたら、僕の体は起きるはずがまたも横になって

 

「へ?」

 

「大丈夫よ、綿棒ならここにあるわ」

 

「……ぁ」

 

 確かに、明かりに照らされる手元には白い綿棒がある。もう片方の手には綿棒がいっぱい入った容器、しかも日本語だから日本製だ

 

 わざわざ用意してくれていたのだろうかと、そう思えた。ベッドすぐ横の机にアメニティよろしくおいてくれていたのか

 

 けど、今それを持っているバラライカさん、何故かそれを渡そうとはしない

 

 

……というか、引き戻されたってことは

 

 

 導かれる解答。僕もこの人とそれなりの時間を過ごしてきたのだから、することは想像できてしまう

 

 

「……ケイティ」

 

 

「!」

 

 

 

 ぐるりと、僕の体が仰向けからまた変わって、今度は顔の向きがバラライカさん側になる。ベッドライトからは影になるから薄暗いけど、視界に映るのはバスローブの布地

 

 と、思っていると、そのまま視界が広がって

 

 

「……んッ」

 

 

「はいはい、動いちゃだめよ……手元、狂ったら危ないわ」

 

 

 顔をうずめている、バラライカさんのお腹で、今僕は呼吸をしている。視界の端、右を向いて顔を仰ごうにも豊満なふくらみで顔は拝めない。それほどまでに密着した位置

 

 息を繰り返す。ボディーソープの香りと、そして暖かい人のぬくもりの香り

 

 バラライカさんの匂いが、僕の思考を蕩かしてく

 

 

 

 

「耳かき、してあげましょうか?」

 

 

 

 

 もはや実行寸前、拒否権は無いだろうにそれでも聞いてくる。蛇足ではなく、きっと僕からの回答が聞きたいから故なのだろう

 

「……ッ」

 

 耳の痒み、そのもどかしさは依然拭えない。して欲しいかと聞かれれば、それもちろん肯定でしかない。

 

「痛く、しないでくださいね」

 

「もちろん、絶対に痛くなんてさせないから……安心して、私に甘えていなさい」  

 

「……はい」

 

 了承の意を受け取って、バラライカさんはほんの少しだけ席払いをした。意を決したような感じか、そこからすぐに指先の感触が耳のあたりに伝わってきた

 

 綿棒の先が、耳の手前に触れて軽く表面をこすりだす。馴染ませながら、丁寧にゆっくり、慎重に耳掃除は始まっていく

 

 

 

……もしかしなくても、けっこう上手

 

 

 

 ぞぞ、ずず、反響する立体的な音が響く。痛みは無く、かゆみが気持ちよさに変わって、そして不快感が消えて爽快感が生まれてくる

 

 丁寧に、決して痛くしないように、少し湿った耳の中を綿棒で丁寧に綺麗にされていくのは、うん、気持ちがいい。上手だ

 

 

「……ん、はうぅ」

 

 

 吐息が漏れる。密着したまま、バラライカさんのお腹に息を吐いてしまう

 

 

「こら、いやらしいことしちゃ……めっよ」

 

「すみま、せん……声、出ちゃう」

 

「そう、気持ちがいいってことかしら……ここ、痒いのね」

 

 耳の奥から手前まで、押し付けてこそげる取るように何度も綿棒があたる。少し強めにして欲しいと、口に言わなくても指先は自動で読み取ってくれる

 

「……いいわ、気持ちがいいのなら仕方ないわよね。ケイティ、気にせず楽にしていなさい」

 

「ふ、ふぁい……ん、ふうぅ……ぁ、はうぅ」

 

「あらあら、もう本当にくすぐったいわね……イケない子、そうよいけない子よ、ケイティ」

 

「…………」

 

 

 よくないわ、いけない子ね、そんな言葉は文字だけ。バラライカさんの優しいは依然止まらない

 

 耳かきの音色、心地よくてすっきりして、そんな雰囲気に落ち着かされると心が溶けてしまう

 

 甘やかされて、素直にされて、だらしないぐらいに自分があまあまになって、バラライカさんに依存してしまう

 

 

……良い匂い、バラライカさんの匂い

 

 

 お腹に顔をうずめて、息を繰り返して、ふとしたら眠気であくびをしていることに気づく

 

 

 今日の所は子守歌もいらない。この終わることなく奏でてくれる立体音響の安らぎの音色で、ただされるがままに

 

 

 

 どこまでも都合のいい受動態で、暖かい幸せに浸かっていくだけ。

 

 

 

 

「……ケイティ、いい子ね」

 

 

 

 

「………………うぅ」

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く

 

 




以上、デザートの幕間劇でした。お会計はあちらに、バラライカの姉御の甘々耳かきASMR(定価1000ドル)

キスのくだり、前回の幕間でやったかやってないか疑惑ありましたが、今回はその解答になります。

バラライカとケイティはまだ一線を越えてません。けど、まあそれも、いつまで、フッフッフ


感想、評価等あれば幸い。次回はまた少し間隔開けて、投稿する話はエダかそれとも本編の話か、色々と考えて決めていきたい感じです。
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