麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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反撃開始的な意味でこんなタイトル

ブラックラグーンの銃使い達はみんなガンカタ習得しているかってぐらい動き回る。そこがいい


(45) トゥーハンド・リベリオン

 気絶から目覚めたレヴィ、暴走状態のロベルタを相手に果敢に挑むもその勝負は劣勢

 

 腕利きのガンマンである彼女の弾はメイド衣装に穴を開けるだけ、走りながら互いに打ち合う攻防は将棋の対局の様に、じりじりと退路を断たれていきそして銃弾から拳の距離感になれば大砲のような近接攻撃が骨身に叩きつけられた。

 

 コンテナに囲まれた立体迷路、レヴィは走り、銃を放ち、そして銃床でロベルタの頭部を殺す勢いで叩きつける。しかし沈まず、表面的には血を流し、痛々しい姿を見せていても一向に攻撃は止まらない

 

 反撃を貰い吹き飛ばされ、追撃を躱し身を隠して背後を取り、奇襲の乱れ打ち。だが死なず

 

 逃げて、追われて、食らって、逃げて、繰り返しの攻防は均衡状態ではない。確実にレヴィの命をしとめるまであと数手

 

 追いつめられている。これまで相対してきたどんな敵よりも、今確実な死を実感させる敵がそこにいる。それが、レヴィの得た答えだった

 

 

 

 

 

「……くそ、ったれ……あいつ、なんで死なねえ」

 

 

 

 

 息も絶え絶え、その表情には余裕はない。カトラスの弾倉を交換する手に焦りからか、うまくはまらずいら立っている。

 

 

 

「なんで、あたしが負けるってのかよ……くそ、ふざけんじゃねえよ。カトラス掲げれば天下無双のレヴィさまが、どうしていったいメイド様なんざに負けなきゃいけねえってんだ。くそ……笑えねえ、マジにヤバイ瀬戸際だってのかよ。あぁ、まじふざけんな、くそったれ」

 

 

 戦いで優位に立てない苛立ち、メイド相手に自分が勝てないことへの憤り

 

 しかし、レヴィのストレスはまた別の問題から生じていた。

 

 

……最後に食ったのは、船でスナック一袋、だけ

 

 

「……腹が、力が出ねぇ」

 

 

 惜しむらくは、船でガルシアに食わせようとしていたピザ。彼にピザを投げつけられ苛立ったレヴィは昼食を食べずに時間が過ぎた

 そしてロアナプラに寄港してからもろくに固形物を食っていない。日々、たばこと酒の快楽で規則的な食事を怠る不健康な生活が災いしてしまった。食事のタイミングはいくらでもあったが、レヴィは食を後回しにした。そのツケがこの現状だ。

 

 本来の予定ならケイティの店でロベルタと同様に同じ激辛つけ麺にありつけるはずであったがそれもかなわず

 

 ひどくなり響く空腹のアラート、こんなどん底の鉄火場で贅沢なこと思っている点は承知、餓えていようと引き金は引ける。いや引かなければならない。出来ないは甘ったれだと言ってのけるのが通例

 だが、それも長引けば泣き言も言わざるを得ない。現実に空腹が足枷となり標準さえブレてしまっている。餓えた体が言い分け無用の敗因となってしまっている。

 

 泣き言は、今この時だけは正当だ。文句をつける輩がいるのなら、この状況になってみろと中指を立ててやる。

 

「……食いてえ、なんでもいい。腹に貯まって、力がつくもんが」

 

 空腹の音色は欲求をそのままに自覚させる。お預けを食らった、だからこそ余計にあの味が望ましい

 

 濃い塩味、濃厚な油分、その上で奥行きのある味

 

 

「……ラーメン、食いてえなぁ」

 

 

 心の底からでた独り言、生きるか死ぬかの瀬戸際だが空腹はそれよりも優先されてしまった。

 生きることにとらわれない、それがロアナプラの殺し屋の流儀。だが、好物の一つで死んでも死にきれなく感じることも時にはある

 

 生きて、ラーメンを食らえば。その時はまた、死者の気になって無限の闘争に明け暮れてみせるというもの

 

 

 

「腹へった、なんでもいい……いや、なんでもは違う。あたしは、ラーメンが」

 

 

 

 

 願う思いはよりストレートに、食いたい食いたいと言葉に出してしまう。

 

 せまる人間兵器の足音が聞こえてきて、それでも思考はラーメンばかり

 

 そんな、レヴィの抱く無理難題はきっと神様イエスさまであっても首を縦には振ってくれない

 だが、もし叶える存在があるとするなら

 

 

 

 

……ゴン、カンカン

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 願いを叶える者がいるとしたら、それは全知全能の神ではない。ただの、凡庸な地上の人間

 

 それも、馬鹿みたいなお人好しで、そして世俗の常識にとらわれない、我が道を行く危険知らずなお人好しだ

 

 

 

   

 

 

~一方その頃~

 

 

 

 バカな考えと思われても、やってみるだけまずはやってみないことには始まらない

 

 そんな思いから一念発起、僕がやりだしたのはその場で即席調理、店から持ち出せたリュックの中身でちゃちゃっと作った激辛スープ

 

 ロベルタさんが食べたものと同じ、唐辛子、花山椒、血をベースにした旨味たっぷりのスープ、そして隠し味の特性スパイスミックス。ちょっとずつ持ち出していたそれらを火のように熱したエンジンの上でじっくり暖めて雑ではあるがラーメンスープに仕上げて見せた。

 

 そうして出来上がったスープ、水筒に入れてレヴィさんがいそうな方向にポイ、ちなみに投げたのはダッチさんだ

 

 

「たく、こんなことしてあいつがパワーアップってか、どこぞの配管工の親父じゃねえぞ」

 

「今は信じましょう。現に、僕の激辛料理でロベルタさんはあんなに」

 

「……なあ、ケイティさん」

 

 神妙な顔でロックはケイティに問い詰める。顎に手をやって、なにか心当たりか気付きのある様子で

 

「激辛、と言ったね……もしかして、チャルクンワンの市場の、チャイナボールとグリルチキンの間にある、香港人のおじさんの店で買ったりとか」

 

「え、あぁそうですよ。といっても、八角とかシナモンとかウイキョウ、陳皮に山椒、ちょっとしたスパイスの買い出しで…………なにか、まずかったり?」

 

 

 言葉に発しながら、ロックだけでなくダッチやベニーまでも顔色を変えて俯いたり天を仰いでジーザスと言ったり

 

 

「……あの店、漢方薬の屋台売りなんだけどさ、あそこの粉末にはドラッグが混じってるんだ。それも粗悪な合成ドラッグ、塩よりも安いヤバイ粉を混ぜて水増しで売ってるって結構有名なんだよ」

 

 

「は、初耳です」

 

「だろうね。だから、これは俺の推測の域なんだが」

 

 いいかい、つまりは、そう切り出した瞬間、合わせたタイミングで爆発と光が注意を惹く。

 

 

「!?」

 

 

 遠く、コンテナの上で何かが駆け抜けて、そして爆発、電線が断ち切れて放電が火を放ち、鉄塔は倒れクレーンも横倒しになる。

 

 明らかに、先ほどよりも激しさを増した戦闘音。耳をふさがねば鼓膜がイカれかねないそんな衝撃、見舞った体は耐え切れず尻もちを付く。いったい何かと驚く顔を横目に、ロックは興奮気味に続けて語った

 

 

 

「ケイティさん、君はきっと、奇跡的に生み出したんだろう! 粗悪なドラッグ、刺激的な料理、栄養とか、成分とか、何もかもが奇跡的に混ざり合って、結果生みだしてしまったんだ。マリオのキノコなんか目じゃない、もっとハイなブースタードラッグを、劇薬ドーピングラーメンを貴方は作り出したんだッ!!」

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 弾丸が交差する。互いに構えた二丁の拳銃、近づきながら引かずそれず肩やわき腹を射抜かれても止まりはしない。

 互いに引かないデッドレース、弾丸は急所をそれるも血まみれになる二人の体が衝突。トラック同士の衝突を思わせるような鈍い音が響いた。

 

「死ねッ!死ねえッ!!」

 

 弾かれて転ぶ二人、だが射撃態勢を先んじてとったのはロベルタ

 右手のベレッタがレヴィの足を、脇腹を肩を、そして顔面に

 

 死んだ。そう思い止まってしまった。思考の隙間を狙ったかのように

 

「!」

 

「ラァァアアアアッ!!!??!」

 

 反り返り、そのままハンドスプリングで飛び起きて、水平に跳躍 

 四足獣を思わせる俊敏な機動でロベルタの首に牙を立てた。利き手じゃない左の五指がロベルタの首に血を吹かせて食いつく。

 

 

「ガァッ……ッ…………き、ざまぁ、ァァアアアアッ!!?!?」

 

 

「……消え、ろッ」

 

 

……ジャキン

 

 

 

「!?」

 

 

 

 組み伏されるロベルタ。彼女の視界にはレヴィの右手に握るカトラスがある。とっさに掴み、銃口を反らすが、かする。

 

 ダンダンダン、放たれた弾丸は頬の皮を巻き込んでアスファルトに穴を穿つ。

 

「離れろ、女ぉッ!!」

 

「殺したあとならなぁッ!!?」

 

 三発で弾が底をつく。ならばと、銃床で頭蓋を砕く勢いで殴打、皮膚が裂け血しぶきが飛び散る。

 

 

「……離れろぉおおッ!!」

 

 

 迸る出血、揺れる脳、だがそれでも叫びは強くレヴィを気合で跳ねのける。柔術の巴投げの要領で、腕力のみで組み伏された態勢にもかかわらず遠くへ投げ飛ばして見せる。

 人体に負荷をかけることに一切ためらいなく、筋繊維が無残に引きちぎられる叫びと痛みを無視してロベルタは吠え続けた

 

 再度銃を手にまたもラン&ショット。すでに互いの体は血まみれ、銃創で開いた穴からはとめどなく血が溢れているが一切気にせず。もはや死の寸前であることが当たり前と受け入れているのか

 

 両者ともに、その肉体と思考のブレーキは壊れていた。

 

 

 

……熱い、腹の中で火が付いちまったみてえだ。あぁ、やべえ、さっきからずっとイっちまってるッ

 

 

……発散しねえと気が済まねえ。誰でもいいから殺さねえと、アタシがアタシを殺しちまうッ

 

 

 

「獣が、しぶといッ」

 

 

 銃弾、顔面寸前で首を振り交わす。三発目が足を貫くが、疾走は止まらず

 

 早業でカートリッジを交換、逃げるロベルタめがけてカトラスの火を乱れ撃つ。狂気にまみれた笑いを交えて、レヴィは死をばらまいていく。

 互いの銃弾は確実に肉体に届いているはずなのに、どうしてか死なない。死の道理が意味をなしていない。

 すべては奇跡的なブースタードラッグの効果、ロベルタもレヴィも両者脳と臓器にもらわなければ死にはしない。加えて、今の体なら多少風穴があく程度、何も問題はない。血をまき散らし、筋肉も骨も銃弾で貫かれてなお渾身の殺意を振りぬく。

 

 二人の戦いは過熱の一途をたどる。元より鉄火場に慣れた彼女たちの戦いは荒々しさを伴うもの、だが今はそこに加えてさらに輪をかけて怪物っぷりが掛け合わされているのだ。

 

 

 

……殺す、殺す、こいつだけはッ!!

 

 

 

……殺されるのは、てめえだッ!!

 

 

 撃ち合いの牽制、距離を詰めれば銃持つ両腕でCQC、近距離でまるで格闘技をするように銃を放つ、そんなガンカタを自然にやってのける二人の戦いは場所を変え、高さを変え、そして今はコンテナの上に登り立って、銃撃を交えた拳と蹴りの応酬、インファイトの戦いへと移行する

 

 

「……ッ、邪魔だぁああッ!!」

 

 

「死ね、クソメイドぉおおッ!!」

 

 

 打撃、銃撃、劇薬で強化された脳がリミッターを壊した。ロベルタのコンバット術にレヴィは粗雑な防御で半分以上はもらい続けるも、それでも反撃の手は止めない。それは防御というよりは最短で次の反撃を取るための構えでしかない。

 ノーガードで顔面に拳を、肋骨に蹴りを、肩や腕に銃弾を、だが、痛みは感じず反撃は即座に放たれる。

 

 銃を持つ手で、銃口を突きさすように攻撃を差し込む。メイド服の白はすでに返り血と出血で半分以下の面積だ。

 

 コンテナ上の攻防、押しているのはレヴィ。ロベルタも反撃に出んと予備の銃を取り出して額を狙う。だが、先んじてレヴィは跳躍し、そのままロベルタごとコンテナを飛んで地面へとダイブ

 落下しながらロベルタと組み合い、叩きつけるだけに飽き足らず空中でもなお銃弾をねじ込まんとする。そうなれば当然、ロベルタも抵抗

 

 銃を向ける、捌く、拳を打ち込む、防がれる。蹴りで上下が入れ替わり反撃をしのぐ、それらすべて空中での応酬

 

 早業ゆえに、戦闘の興奮故に、すべてがスロータイムで流れていく。

 

 

「しぶといッ!! はやく、くたばれぇええッ!!!」

 

「くたばるのは手前だッ イカれたメイドが、あたしの上になるんじゃねえッ!!」

 

 

 

 空中で組み合う二人、回るように落ちる彼女たち

 

 あと数メートル、だが地上にキスをするよりも先にもみ合う二人は積まれたコンテナの壁に衝突、カトラスの発砲の反動を利用してレヴィが仕掛けたのだ

 

 勢いは薄れ、そのまま回転しつつ二人は離れて不時着。アスファルトに血を刻み込み、これで終わるかに見えるが、まだ死なず。

 

 起き上がり、なおもまた格闘の殺し合い。大ぶりの拳が眼鏡を砕き、返しの拳で頬骨を貫く。

 

 

……殺す、殺すには銃が……どこに、どこにッ!!

 

 

……撃ち殺す、この女の脳みそを引きずり出してやる!心臓を引き裂いてやるッ!!

 

 

 交差する拳、その最中に見渡す視界で、両者ともに一点を見る。

 

 

「「!?」」

 

 

 きづけば、そこはいつの間にかケイティとロック達ひきいる観覧者たちの視界の先、その間に落ちている一丁の銃を見た。だが、一方で銃ともう一つ、追い求めていた最も大事な彼を、ロベルタは見てしまった

 

 

「……わか、さまッ」

 

 

 

「————————ッ!!」

 

 

 一瞬を分けたのは、その差だった。先に走り出したレヴィは、ロベルタよりも先に、ほんの数センチの結果であったが先に制したのはレヴィだった

 

 銃を構え、チャンバーに銃弾を落とす。愛銃のカトラス、一丁を右手に構えて、振り返りながらロベルタを見た。

 

 

「駄目だ、レヴィッ!!」

 

「止まって、レヴィさんッ!!」

 

「逃げて、ロベルタ!!」

 

 観客の声は悲痛に響くも、獣の耳には届かない。

 

 にやりと、冷えつく恐ろしい笑みを一つこぼして、レヴィはためらいなく引き金を引いた。

 

 撃鉄が落ちる、火薬に熱が灯る、銃口を駆け抜けて鉛の一矢が空気を焦がした。

 

 

 すべてが刹那、秒をさらに細分化した世界、沈黙を破るものがあるとするな、それもまた鉛の一矢。

 

 

 

 

 

『アスタヌヴィーチェスッ!!』

 

 

 

 

 

 降り注ぐ銃弾、暗闇を払う照明、刹那の世界を割り込み強引な幕引きを下して見せた。凍土に積もる雪よりもはるかに冷えつく静かな睨みで、火傷顔がこの場の全てを黙らしてみせたのだ。

 

 

 

 

 




以上、原作展開の山場でした。次回より独自展開、アブレーゴの最高裁判を開廷します。

投稿が滞って申し訳ない。次回は、できるだけ早めに、したいなぁ
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