麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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可愛い男の娘にはエッチなお姉さんにセクハラをさせよ


(47) セクハラお姉さん三銃士を連れてきたよ

 豪華絢爛、フロア一面全てを利用したスイートルーム、その寝室のキングサイズのベッドにて陰気なオーラを全開にしている小さな体が一つ

 

 

「……あぁ、どうして僕は生きているんだろう」

 

 

 家主の帰りを待つケイティ、その姿はまるでしなびたスルメや乾物のようである。といっても、そんな自己嫌悪の原因はもっぱら自業自得であった。

 

 少し時間をさかのぼる

 

 

~数分前~

 

 

 

……ここを出よう、バラライカさんに会いに行こう

 

 

 この半ば軟禁状態の中、ケイティは意を決して行動に出た。しかしそのための第一行動はあまり頭のいい方法とは呼べないものであった。

 決意をしたのはいいが、あくまで一般人である彼は映画の影響か思い切りだけでバカなことをしかけた。つまりは、誘惑でお外に出してもらう作戦である

 

「……あー、ぁ……はぁ~、うん……よっし、わたしはかわいい、わたしは誰よりもかわいい。暗示完了」

 

 ボイス調整、精神統一、ローワンの店に身を置いていた時から続けていた心を殺してビジネスに徹するためのルーティーンである

 

 心の次は装い、現在のケイティはミリタリーカーゴパンツに白の半袖服、髪も後ろにくくっているためギリギリ中性的である

 故にまずはヘアゴムを解き、くくった髪をはらりと降ろす。カーブをかけて緩くふわりと中性的な髪型から女性的な印象に変える。

 部屋にあった着替えでカーキ色のボトムズをスリムフィットなジーンズに履き替えて、シャツはへそまでまくって端を結ぶ。元の容姿と華奢な体つきが相まってそこには可愛らしいスレンダーな小柄女性の姿が鏡に見える。しなを作った態度をとってみる、我ながら完璧すぎて頭が痛い。しかし心を殺して、いざ出撃

 

 

……お店のお姉さんたち直伝、男にお願いをするときの鉄則。上目遣い、ボディッタッチ、そしてウソ泣きッ

 

 

 無駄にテンションが上がってきた。ここに至るまで中々にノリノリである

 

 

 

『コンコン』

 

 

 ノックを鳴らす。頭の中、お姉さんたちから半ば強引に身に付けさせられた誘惑四十八手の記憶が高速で巡っていく。最適な回答を導き出し、そして身構える

 

 

 

「あの、すみません……あのッ」

 

 

「……あ、ミスター・ケイティ。え? ぁ、いや……すみませんそのッ な、何用で?」

 

 

 何をお求めかと伺う遊撃隊の兵士は一瞬戸惑いを見せたのちバッと面を食らって驚愕を晒した

 

 ドア前に立つケイティ、2mある金髪の紳士に、そっと指先を伸ばした腹筋に指を這わした。

 

 

「!?」

 

 

「……はしたない、と思わないで」

 

 

 

 さりげないボディタッチ、少女の恥ずかしそうな顔と、うまく言い出せない照れた様子……ぁ、その……えっと……焦らすような恥じらいフェイスで相手はまるで自分を意識してしまっているのではと錯覚させるテクニック

 

 

『……ごめん、なさい。わたし、お外に出たい……ねえ、出して、おねがぁいッ!!』

 

 

 

 とびっきりの嘘を込めて、涙目に恥じらい顔、ケイティの男の娘マジックで名も知れぬ兵士Aはというと

 

 

 

「たまらなくクるが、がッ……やめてくれ、俺が大尉に殺されてしまうッ」

 

 

 

……バタンッ!!

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

~お化粧直し~

 

 

 

 

「……はぁ、僕なにやってるんだろ」

 

 

 以上、そのようなこともありケイティは自分に嫌気がさして意気消沈中であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は過ぎていく、知らぬところでタイムリミットが過ぎていく一方なのだがそれも知るすべもない。

 

 運ばれたルームサービスの食事をとり、入浴をすましてまたベッドにつく。バラライカは、帰ってこない

 

 

 

「……匂い、もう薄いや」

 

 

 ベッドから感じるあの人の匂い、香水やシャンプー、そんな色々な匂いがここには残っていた。もうすぐ日付も変わってしまう

 

 何も知らされず、ただ時間が過ぎていくのが怖い。

 

 

「絶対、何かしているよね……僕、邪魔なのかな」

 

 

 誰もいない、独りごとはつい口から出でてしまう。もしかすると外の見張りさんが聞いているかもしれない、そう思うと恥ずかしくなって顔を枕に伏せてしまう

 

 

「……ん」

 

 

 まだ、ここにはバラライカさんの匂いを感じる。金色で、さらさらのいい匂い

 

 ベッドに入るときには、その身にまとう火薬や葉巻の苦みはすっかり花の匂いで洗い流されている。残るのは、優しくて甘いバラライカさんのいい匂い

 

 きっと、僕だけが知っている、あの人の秘密

 

 

「……会いたい、説明してほしい」

 

 

 

「じゃあ会っちゃえばいいじゃん」

 

 

 

「それができればこんな悩んで……へ?」

 

 

 

 独り言、なのに僕は返事をした。そんなはずないのに

 

 

 

「え、はへ……なんで」

 

 

 

 いるはずがないのに、そこには見知った

 

 

 

 

「しー、ほらすぐに行くよ……服、そのままでいいから」

 

「それにしてもいい部屋ね、この贅沢者め」

 

 

 

 

「……アーシェ姉さん、コリンネ姉さん」

 

 

 

 

 そこには、古くから僕の面倒を甲斐甲斐しく見てくれていた二人がいた。ローワンジャックポッドピジョンズの人気キャストのコンビ、アーシェ・ウェストとコリンネ・ウェスト。あでやかなドレスをまとう二人だが、今はなんというか

 

 

……スパイ?それとも怪盗?

 

 

 エナメル質な上下黒のライダースーツ、スパイというよりは美しき女怪盗といった感じかもしれない。なんだか日本のアニメビデオで見たものとデジャブを感じる。

 二人ともスタイルがいいから、アーシェ姉さんは高身長モデル体型ですらっとしていてでも出るところは出ていて、コリンネ姉さんは反対で上も下もむっちりして肉感的、つまり何が言いたいかというとどちらも艶めかしいたりゃありゃしない

 

 

「もう、むらむらして見惚れるの後で、さあ行くよ」

 

「……え、あぁ、うん」

 

 どうにも状況が飲み込み切れない。謎とエロスで思考が混乱している僕の手を二人は引いていくのだった。

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

~ホテルモスクワ所有ホテル、から少し離れたどこか~

 

 

……出られた、本当に出られちゃった

 

 

 

 間は省略、ケイティ自身何がどうなってここまで来れたか理解に追い付けていない。

 

 突如現れたアーシェとコリンネ、夜の店の嬢である二人が何故かホテルの中とその内情を熟知しており、何故か巡回する兵士をアクションとドラッグで次々と眠らせることが出来て、もう、なんでもありでした。 

 時に床下をくぐりダクトを下って、さらにはガラス張りのビルの壁をロープ伝いでするりと降りて、まるで洋画を早送りで見ているような気持ちだった。

 

 きっと、今頃ホテルの中はパニックで、一応書置きで戻りますと書いておいたけどそれで納得はするまい。大尉に殺されると震えていた見張りの兵士さん、ごめんなさい。処罰される前には帰る、ことができるといいなぁ

 

 と、そんな感じで気づけば僕は外にいる。どこかの裏路地、街灯の下でようやく二人は走るのを止めた

 

 

「……ッ」

 

 

 久々に走る筋肉を使った気がする。疲れて膝に手をついていると、二人も熱いのか、その場でジッパーを下した。黒のエナメル布に覆われた上半身が一気に肌色に変わって、でも下着は付けていた。当然だ、残念なんて思っていない

 

 

「あぁもうあっつい……このスーツ蒸れ蒸れ」

 

「太り過ぎよ、まったくむちむち脂肪ばっかつけて」

 

 

「……うぅ」

 

 悩ましい姿、色々とRの横に駄目な数字が付きそうだけど、今はそれより疑問にこそ目を向けるべき

 

 いったいどうしてそんなライダースーツ着用でオーシャンズやボンド映画ばりにハリウッドなアクションができるだなんて聞いてないし思いもしなかった

 

 

「あの、説明をそろそろ……二人とも、いったい何者ですか」

 

 

 黒のライダースーツ、エナメルの表皮ので包まれた上半身、けど今は首元のジッパーをお腹まで降ろして大胆に肌を晒している。夜の街灯に照らされて熱気がむわっと火照る様子は目の毒が過ぎる。

 

「ブラ、付けるんじゃなかったねアーシェ」

 

「ニップレスの買い置きを失くしたあんたのせいでしょうに」

 

「……うぅ、もうなんなんですかぁ」

 

 恥じらいに耐え切れず後ろを向いてしまった。きっと二人は楽し気にニマニマとしているに違いない、そんなに見せつけるのがお好きか

 

 結局説明ははぐらかされている。そんな様子で今度は

 

 

……もにゅん、じとぉ

 

 

「!!」

 

「あらら、助けた恩人によくない態度……ねッ」

 

「ひゃ、あたたかぬるむわって……ちょ、アーシェ姉さんだめ、これ色々だめですって」

 

 嗅覚を刺激する、味覚的にいえば香水の匂いもあるけど今は塩味と酸味が、そう、なんというか、良くない趣味に目覚めそうな危険な香り

 

「アーシェずるい! だめだめ、蒸れ蒸れスーツフェチをケイティに仕込むのはコリンネの夢なんだからぁ!」

 

「ひゃ、なにいって……人を変態にする計画とか、そんなの駄目、って、やぁ……あ、だめって、言ってるのに……うぅ、はわわ…………ぁ、はふぅん」

 

 

 気づけば、顔全てが二人の悩ましいふくらみでサンドイッチ。結局なんなのだ、この人たちは僕にセクハラがしたいがために救出劇をしたのだろうか

 

 うん、バラライカさんの優しい匂いが、蒸れたスーツのいけない匂いで上書きされて、だめ、脳が壊れる、こわれた

 

 

 

……カンッ

 

 

 

「!」

 

「いたっ……ちょいエダ、今いいところだってのに」

 

「うっさい痴女どもが、人を待たせて何やってんだい!」

 

「……エダ、さん?」

 

 

 突然の投擲、谷間に包まれた僕はアーシェ姉さんの額に缶が命中する瞬間を見てしまった。普通に痛そう、大丈夫かな

 

 

「心配すんな、アーシェもコリンネも頑丈だよ。お前さんはいったい何を見てきたんだ」

 

「……ぁ、ん」

 

「ベトベトじゃねえか、痴女どもめ……審判の日を楽しみにしておけよ。このあばずれども」

 

「エダさん……ん、すみません」

 

 

 近づいて、おもむろに取り出したハンカチで僕の顔を拭いてくれる。首元を持って優しく、その手つきが気持ちよくて安心してしまう

 

 

「綺麗になったかい?」

 

「あ、ありがとうございます……でも、アーシェ姉にひどいですよ」

 

 後ろを見る、ちょっと痛そうに手鏡で当たった場所を見ている。たんこぶができてると愚痴っている。さては中身が入っているビール缶を投げたのだろう

 

 

「大丈夫だって言っただろうに、あいつらは夜の嬢だが腕利きなんだよ。見たろ、ホテルから脱出するまでの手腕」

 

「……全部、おっぱいと汗の匂いで上書きされました」

 

「あぁそうかい。今度あたしのでまた上書きしてやる、それよか……ほら、全員乗った」

 

「……え、はい?」

 

 

 促されるまま、エダさんに手を引かれてすぐそばにある乗用車、その助手席へ放りこまれる。続いて、置いていかないでと慌てて二人も乗り込んできて、そしてエダさんは車を走らせる。

 

 世も更けた頃合い、公道に出てハンドルを切る。通りに並ぶ店、標識が示す数字と名前を見てすぐに気づく

 

 

「……あの、どこに行くつもりですか?」

 

 察してしまう。ホテルモスクワの本拠地から、この進む方向にあるのは

 

 

「南米人たちのコミュニティがあるバラック、それと歓楽街に賭場、そうさね、今からマニサレラカルテルの縄張りに行くんだよ」

 

「え、ちょっとまって……僕は、アブレーゴさんのことも心配だけど、今はバラライカさんに会いたくて」

 

「だからさ、その様子だと火傷顔は説明をせずって感じだね、アーシェ、コリンネ、教えてやんな」

 

「!」

 

 そう言うや、クラッチを引くようなしぐさで勝手に僕の座席のリクライニングを倒してきた。いや、エダさんじゃない、やったのは後ろの悪いお姉さんたちだ

 

「ケイティ、後ろにおいでなさいな……ほら、いい子いい子してあげるから」

 

 その対価に色々と良くないことをされるのは明白だ

  

 天井を見るように後ろを見ると、二人のスパニッシュ系黒髪美人さんが舌なめずりで僕を見下ろしている。よろしくない状況である

 

「ちょっと、シートベルトあるから動けない……あ、近いですって、コリンネ姉さん!!」

 

「まあまあ、気にしない気にしない」

 

「そうね、説明するにしてもまずはそう……」

 

「普通に、普通にお話すればいいですからッ ひゃ、アーシェ姉さんも変なところ触らないでッ」

 

 

 

 姦しい車内、呆れて悪態をつくエダさんもしれっと左手を伸ばしている。そんなよろしくないドライブは、深夜の渋滞で思いのほか長く続いてしまった。

 

 説明はちゃんとしながら、事態の重さを受け入れてするべきことはわかった。とりあえず、僕はこのままバラライカさんの元ではなく、アブレーゴさんの元へ行かねばならない。

 

 期限は明日の、日付はもう過ぎているから厳密には今日の朝10時ぐらい。それまでに僕がアブレーゴさんの元へ赴き、説得をしなければならないのである

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

……や、もうだめ、くすぐったいですって……はふ、押し付けないでぇ

 

 

 

……はぁ、こうしてケイティにセクハラ出来てほんと安心したわ。あんたが心配でアタシ昼しかセックスできなかったのよ

 

 

 

……大丈夫?コリンネのおっぱい使う?返事がないってことは同意だよね、ぎゅぅ~

 

 

 

……た、たふへて、エダひゃん

 

 

 

……アタシも心配してたんだぜ。てなわけだぁ……ちょっと失礼、天井のシミでも数えててな

 

 

 

……ち、痴女どもめぇ~~ッ

 

 

 

 精いっぱいの悪態、だがむなしく背丈とお胸の大きいお姉さんには敵うはずもない、それがロアナプラで学んだ多くある真理の一つであるから

 

 でも、心配をかけたのは本当に申し訳ないと思っている。

 

 だから、三人だけじゃない

 

 バラライカさんにも、みんなにも

 

 

 

 僕はごめんなさいを言わないといけない。だから、そのためにもまず

 

 

 

 

 

 

 

 次回に続く

 

 

 

 




以上、ケイティとその過保護お姉さんたちでした。オリキャラの出番を増やしたかったので設定を追加、行ってしまうと二人はエダの正体を知ったうえで密接なつながりです。現地協力者的な?今後も三人で登場する機会は多いかもです


次回、ケイティとアブレーゴのターンがはじまります。感想でバラライカの献上品解決方法が予測されていますが大事なのはここから、本作品らしい解決展開を目指していきます。お楽しみに


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