麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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(55) 打ち上げパーティ

 

 ホテル、スタークレイドル。星の揺り籠で快適な夜を過ごす、そんな謳い文句をするだけあってこのホテルはロアナプラからもっとも高い位置に、そして安全な立地で地上から離脱、そして清らかな夜空を見上げている。

 

 ここはホテルモスクワが所有するフロント企業所有の高級リゾートホテル、その最上階と屋上は基本的にミス・バラライカの私有地で、別荘で、そしてゲストハウス。なお、最後の用途はたった一人にだけ適用される。ビジネス街にあるさびれた事務所のビルにも変わらず顔を出すが、彼が、ケイティが住む場所もなくなった今ホテルを寝床に往復するのが日課となるは当然

 帰りを待つ愛し子の為に、バラライカはただいまを言い続ける。いたって、当然の帰結だ

 

 

 

……バラライカさんおかえりなさい、ご飯できてますからお風呂入っちゃってください

 

 

 

 

……寝る前にトランプしませんか、ポーカー勉強したんですよ。なんなら賭けたっていいぐらい

 

 

 

 

……ひぐ、えっぐ……あぅ、もう許して、もう剥ぎ取る服も無いのに

 

 

 

 

 前々からケイティと夜を明かすことはあったが、それにしても関係は振り切ってしまったものだとバラライカは内心でおのが行動を呆れてしまう。

 自分自身、結局こうなることを見越してはいたが、なってしまって改めて今の環境の異常さにめまいが起こる

 

 ケイティと出会う前、こんな日々を過ごすことなど永遠にないと思っていた。

 

 母性を感じて時たまに女を楽しむ程度の火遊びが、もう戻れない関係性に至ってしまったことは、まったくもって想定外である。

 

 

 

 

 

 

……すごく、激しかったですね。こんなの、癖に

 

  

 

 

 しかるべき準備はしてことを済ます。だが、それもいつかはおざなりになって、この関係は引き時を見失う

 

 ミス・バラライカは肌を晒した。衝動的に、怒りや嫉妬、そんな感情を認めたくないと押し込めていたが、我慢を打ち砕いたのはケイティの無配慮な無防備、そして誘惑だった

 

 仕置きと称して捕食した。男でありながら、華奢で丸みを帯びていて、そして生娘のような肌の柔らかさはまさしく絶品であったのだ

 

 

 

 故に、これも致し方のないこと。全て、ケイティのせいだと

 

 

 

 

 

 

~ケイティside~

 

 

 

 三ッ星ホテル暮らし、だけど慣れてしまえば実家のような安心感も生まれてしまう。台所はすでに僕好みの領域、アイランドキッチンは便利で良い、これは本当に素晴らしい。いっそここで二郎系ラーメンだって営業できる。そうした場合碌な目に合わないことは容易に想像できるけど

 

 ここで暮らしはじめて、気づけばもう一週間。結局、僕の家であり店であるビルのダメージはひどく、また老朽化からそもそも駄目になっていることもあって、修復よりも完全に取り壊しするべきと判断が下った。今も騒々しく工事が進んでいる

 お客さんにラーメンを振る舞えない日々には物寂しさを感じてしまう。正直、ラーメン屋を始めるならどこぞの居抜き物件を借りるなり、また屋台でも引くなり手段はあった。けど、あそこは師匠の置き土産で、そして僕が初めて持った城でもある。簡単にあきらめてポイは嫌だった。

 どのみち修繕費はマニサレラカルテル全持ち、アブレーゴさんの迷惑料も併せていくらでもビルは建てられる。だから元通りに一から復元、ついでに良くできるところは良くしていく。だから、今は優雅にバカンスのひととき それで、今こうして僕は優雅なバカンスに打ち解けている。それはもう、ラグジュアリーに

 

 朝はフィットネス、昼は屋上のプールで水泳、夜はバラライカさんと優雅なディナー。外に出る用事が無い日は決まってそんな感じだ。贅沢ではあるものの、やはりこうして思い返してみると妙に生活感がある。言ってしまえば専業主婦、それもかなり贅沢なご身分の。リゾートでバカンスというにはやはりこのロアナプラでは少々難しいのだろう。うん、こんな考えをする時点で請託に麻痺している証拠だ。普通の専業主婦はキングサイズのベットで寝ないし、あと、そもそも僕は専業主婦じゃあなかった

 すこし逸れてしまった。とにかく、僕は今贅沢を飲み干して溢れかえっていて、このままではぽっちゃりぶくぶくと、物理的にも精神的にもだらしない体になってしまいかねない。まあ、やせこけたことはあっても太ったことって一度もないから、心配は杞憂かもだけど。 でも、食生活が変わったせいか、僕ではないんだけど、バラライカさん方には、実は変化がある。

 一緒になってから、というかあの日の夜から、バラライカさんの体は少し丸くなったような気がするような、肌ツヤがよくて、くびれは保たれているのに、その、一部分がやけに

 

 

「……はい、こっち」

 

 

 

……ポフン、ふゆん

 

 

 

「ぁ……はふぅ」

 

 

 

 顔をうずめた場所、いつものごとく就寝前のちょっとしたスキンシップ。気のせいか、バラライカさんのお胸様が、以前よりもそう、なんというか、大きい

 

 お歳を召しているはずなのに、なぜ成長したのかはあまり考えない。太ったなんて問いかけているようなものだし、不敬はお仕置きでわからせ案件だから

 

 

「ケイティ、あなたったら本当に好きなのね……ベイビー、ミルクはまだ出ないのよ」

 

「……ここ、ここで息をするだけで、十分ですから」

 

 だから、この秘密は僕の中だけにとどめておく。柔らかくて、あたたかくて、ここでずっと息をしていたい

 

 時刻は夜の一時、お風呂も入って歯磨きもした。スキンケアも一緒にされて、こうして今はベッドの上で向き合って座って、座高や身長の差で僕の顔はちょうどよく彼女の谷間に収まってしまう。素肌の滑らかさを感じられる装い、寝巻というにはやはり扇情的なシースルーのベビードール、セクシーなランジェリーを身にまとうバラライカさんはずっといつも艶めかしい

 

 

「……もう、くすぐったいわね。ケイティ、あなたとっても助平よ。わかる?」

 

「でも、でもぉ……だって、その」

 

「言い訳はナンセンスよ。ジャパニーズさん、ちゃんと本音を言いなさい……ケイティ、ほら」

 

「……お胸、好きです」

 

「そう、甘えたいのね……素直な子」

 

 

 柔和に微笑む顔をしている。見えないけど、想像は容易い

 

 バラライカさんの谷間で息を吸う、ここでしか得られないものがあるから、僕は寝る前に堪能しないといけない。

 会えない寂しさを埋めるように、帰宅してすぐ満たすのではなくこうして夜の時間が来るまでしっかりと我慢して、最後に与えられて心地よく眠りに落ちるのだ

 

 変わらない。バラライカさんと過ごす夜は結局変わらない。

 

 あなたは僕を甘やかしたくて、僕はあなたに甘えたい。

 

 苦いのは嫌、痛いのも暗いのも嫌い、甘いがずっと欲しい。甘いだけで生きていたい

 

 

「……横になりましょうか。その方が、あなたも求めやすいでしょうに」

 

「は……はぃ」

 

 

 

 明かりが消える。一面張られた窓はカーテンで閉じられる。

 

 よく聞かせた空調、少し肌寒いぐらい利かせた冷房、ぬくぬくの毛布に包まれて、その中でさらにバラライカさんの肌が僕を包む。捕らえている、というのが正しいかもだ

 

 安らかに眠るか、少し激しい夜更かしが始まるか、二択を選ぶのはバラライカさんの気まぐれ

 

 一日は終わり、そして朝が来る。

 

 以上が、僕の日常である

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

「……打ち上げをしましょうか」

 

「?」

 

 

 唐突な提案が告げられる。今僕はバラライカさんのお腹に顔をうずめて耳掃除の真っ最中なのに。

 

 すべすべなバラライカさんの足やお腹に手を伸ばしながら、まったりと耳掻きをしてもらって夜を過ごすそんな時間、そこでなんの脈絡もなく、敏感な耳にバラライカさんの声が降ってきたのだ。唐突が過ぎる

 

 

「……ホテルモスクワで打ち上げ、どこかで飲みにでも?」

 

「それもいいわね、けど今回は大変だったから……どこかのおバカさんが、訳の分からないドーピング剤を売りさばいてしまったもの。暴徒鎮圧、結構大変よ。無能な警察には任せられないから仕方ないけど」

 

「……その節は」

 

「あら、わたしあなたのことを言ってないわ。ケイティ、どうして罪悪感があるのかしら……ねえ、聞かせてくれるか、ケイティ」

 

 語気を強めて、頭をつかむもう片方の手がちょっと痛い

 

 綿棒を持つ手が怖くなる。さっきまで安心感と心地よさを与えてくれるはずが、もう恐怖でしかない

 

 

「そ、その節はまことに……ひゃ、ごめんなさぁい」

 

 

 おびえる僕はとっても弱い。敏感になってちょっと疲れるだけですぐ涙が出る。はい、弱虫ですよ。虫程度の防御力しかない僕はあなたの手の平でコロコロされますとも

 

 

「な、なにかプランすればいいのでせうか……えっと、料理全般、満漢全席なんでもござれですから、どうか鼓膜だけは」

 

「あら、怖いこと……そんなことしないわ。でも、そうね、あなたが美味しいディナーを用意してくれるならとっても素敵ね。でも、中華はやめなさい。口に合うことは無いわ」

 

「え、でもラーメンは「あれは日本食よ、違う」……はぁ」

 

 ラーメンは日本か中国か、論議の尽きないこのテーマにロシア人が横槍を入れるケースなんてきっとレアだろう。まあ、ともかく

 

 遊撃隊の皆さんをねぎらいたい、そんな思いなら当然僕も動くというものだ。うん、提案は乗る。久しぶりに大人数へ料理をふるまいたい。

 

 

「えっと、会場は」

 

 

「この上を使えばいいわ。好きにやって頂戴」

 

 

「……なら、考えてみます」

 

 

 首を振ってうなずく。バラライカさんのお腹に顔をうずめて、すると感謝の言葉をが聞こえて、そして頭を優しくなでてくれた

 

 何を作るか、ラーメンだけに限らず思考を巡らしてみる。どうせ優雅なヒモ暮らしであるなら、しっかり考えてみんなが満足できる最高のプランニングをしなければ

 

 

「がんばり、ます……ですから、その」

 

「……何が欲しいかしら」

 

「背中、掻いてください……その、このまま膝の上で」

 

「……ほんと背中をされるのが好きなのね。いいわ、猫になりなさいケイティ」

 

 もそりもそりと、僕は女の子すわりをするバラライカさんの上でうつぶせになる。

 

 頭だけじゃなく、上体をほぼ預けて。うつぶせのまま、ゆっくりとそれを待つ

 

 

 

……くしゅ、くしし、くし、ぐっ、こし

 

 

「……ぁ、はわぅ」

 

 

 猫になる、その言葉通りに僕は従う。バラライカさんの指先で背中に刺激が、ツボを押しながら血流もめぐって、つまり、背中をかいてもらうのは気持ちがいい

 

 不潔で洗ってないから疼くのではない。綺麗に洗われて、ダニの一匹もいない清潔な服を身にまとっても、時折こうして背中が欲しくなる。疼いてしまう

 

 猫になりたい。バラライカさんが僕の背中をかいて、頭をなでて首も触ってくれて、気づけば瞼は重くなる。

 

 とろりとろけて気づけば横に、一番柔らかい場所に顔が包まれていて、とってもいい空気を吸いながら、またまどろんで甘い眠りに落ちていく

 

 これはとってもいい。中々やめられないし、バラライカさんもやめてくれない。だから、猫になるのは仕方ないことである

 

 いったい誰に向けて言い訳をしているのだろうか

 

 

 

 

「ケイティ、甘えてとろけるのは良いけど、お願いを忘れちゃ駄目よ」

 

 

 

「……ふぁ、ふあい、へにゃ」

 

 

 

「あら、もう駄目ね……ん、服は脱いでおいた方がいいわね。さ、召し上がって、おやすみなさい」

 

 

 

 毛布にくるまれる二人。今日の二択は、夜更かしであった。

 

 

 

……ギシ

 

 

 

 

次回に続く 

 

 

 

 




次回、打ち上げパーティー、飯テロ予定

前回がエッチすぎたので今回は控えました。ノンエッチ、健全です。往年のバスタードや漫画のデビルマンレディ、あとスクエアに移行したToloveるぐらい健全です。

幕間はあと二話ぐらいで終わりです。最後はちゃんとシリアスな話し合いをさせたい。次回の投稿は、月曜ぐらいになりそうかもです。気楽にお待ちを




感想、評価などいただければ幸いです。読者の皆さまの反応がロアナプラ亭の力になります。新しいアイデアも湧きます。読了、誠に感謝です


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