麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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久しぶりの投稿、深夜飯テロは楽しいぞい。


(73) 具沢山タンメン

 

 

 知らぬ間に、どうやらロアナプラで乱痴気騒ぎがあったとか

 

 

 

「うわぁ、ひどいものですね」

 

 

 

 訪れた先は三合会の事務所があった場所。今も立て直し中で、土建の作業員がせわしなく働いている中、僕は昼食の差し入れに馳せ参じた。

 

 今日は、というかここ連日僕は張さんに呼ばれ続きだ。フードトラックを借りてランチを売る。僕は車も運転できるのだ。まあ、免許はないけども

 

 

「おい、俺が先だろ!」

 

「うるせえ、手前より俺の方が働いてるだろうがッ」

 

 行列が出来ている。おかわり自由ということにしたのがまずかったかも、とにかくたくさんのいい大人がお腹を空かして麺を食らっている。ちょっと壮観で、気分はいい。

 

 

 

「……お客さん、量はありますから……いい子にしないと怖い人に食べられますよ!これ、比喩じゃないですからね!!」

 

 忠告むなしく怖いお兄さんの銃声が響く、鴨撃ちの鴨になってローストされたいならガーガー叫べ、ほら鳴いてみろ、血抜きついでにハートを射抜いてやる。

 

 張さんの時の声というか銃声でみんな大人しく列に戻った。作業着なのに皆囚人のように見えてしまった。綺麗な列だった。

 

 

 

 ま、でも列を守れないぐらいには、今日もラーメンの味は好調らしい。

 出張ロアナプラ亭、今日の味は塩ラーメンスープをベースにした具沢山のタンメンである。

 

 

 炎天下の中、働き詰める人達に提供するラーメンは食べ応え抜群で、栄養もとれて且つ消化吸収の早い麺料理がちょうどいい。

 塩スープは旨味を引き出しながらあっさりしつつも力強い味わいの、軍鶏のガラで取ったスープを使用している。

 濁らせないでじっくり出した旨味が今日のポイントだ。

 

 髄から出る脂に気を付けて、浮き出る脂も取りながらじっくり旨味を出す。

 昼間の熱いロアナプラで食べるのだから、過剰に油分と塩分のキツい物は胃が受け付けない。パイタンスープにしても美味しいけど、ランチという点を考慮してあっさりにしたわけだ。

 まあ、熱い土地関係なくそういう食事をする人もいるけど、せっかく張さんの事務所を工事するのだから良いしごとをしてもらわないとだ。作業中に頭の血管がプツンは笑えない。 

 

 

 まあ、そんなわけでスープはあっさり軍鶏のガラのみ。しかし、具となる野菜炒めは白菜ネギクウシンサイニンニクの芽キクラゲ豚肉カマボコ、たくさんどころだ。

 軍鶏の脂で炒めた具にオイスターソース紹興酒塩であっさりめに味付け。

 

 濃すぎない程度に、あくまでもラーメンの塩味を薄めない程度の味付け。

 

 そして、出来立ての具を汁ごとラーメンに乗せて、完成。

 

 スープはあっさりしているけど、軍鶏を使ったから芯の強い旨味がある。

 

 そこに野菜の甘味、肉のコク、中華風のエッセンスが加われば複雑に織り混ざり良い味に仕上がる。

 

 

 見た目は量たっぷりで体に悪そうだけど、食べれば野菜と肉も程よく取れてカロリーも少なめ、塩分も調整しているから健康的な仕上がりだ。 

 

 足りない塩分はうま味や風味で補えば物足りなさは感じさせなくて済む。

 

 

 実に健康的で、食べ答えのある逸品だ。

 

 

 

「完食、皆良い食べっぷり」

 

 

 帰ってくるどんぶりはどれも空っぽ。皆スープも飲み干している。

 

 使い捨てのどんぶりをビニール袋に詰め込む。あとで集計して売り上げを確認しないといけないからだ。そうこうしているとまたオーダーが来て、麺湯で、野菜炒め、作って出して作って出して、決まった作業といえど大変だ。中華鍋を振るうのは腰にクる。

 

 ワンオペ作業だ。車の中をああ忙しい忙しい、というか作業員以外にも客がちらほらと。

 

 ここは作業場と道路の境目にあるわけで、なんだか普通に客の導線が外に繋がっている。

 

 いいのか?一応ここマフィアの敷地なのに?

 

 

 

「張さん、いいんですか?変な人が紛れても知りませんよ」

 

「すまんがそれは出来ん相談だ」

 

 

 トラックにもたれて、しれっとラーメンを食べている気配

 

 体を乗り出して覗いてみると、伊達男さんがやけに似合った箸使いでラーメンをズルズル。

 

 

「こそこそ隠れる趣味はない」

 

「だからって」

 

「町で人気のラーメン屋を独占してる風に思われるのは面白くない。悪いが、三合会が良い顔を見せる手伝いをしてくれ」

 

「それで無償の炊き出しですか?」

 

「金は払う、お前は損しない」

 

「……なんか、回りくどい」

 

 

 言葉にはしないが、つまりはアピールをしたいのだろう。

 

 張さんはロアナプラの外でちょっとしたドンパチをしていたらしく、そのせいで事務所は吹き飛び今こうして工事の真っ最中。

 

 何がどう転んだかは僕ら含め市民には知らぬところだが、結果的に三合会は敵を出し抜き意を示した。そういうことにしたいらしい。

 

 事務所が吹き飛んだことも大したことないって、懐は傷ついてないし呑気に町の住人にただ飯を食らわしているぐらいだから問題ないのだろうって、思わせたいのだ。

 

 現実、見せつけなくても別に余裕はあるのだけど、わざわざ見せつけないとイケないのはマフィア故か。

 

 余裕を見せたい。見せて当然、そういう、つまりは面子の問題なのだろう。

 

 まあ、張さんのもとの性格から、というのもありそうだけど

 

 

 ラーメンを食べてくれる、お金を払ってくれる、こっちには損はないから問題はないんだけど。

 

 

 

 特に思うところは無い。こちらとしても、料理に専念できるのはちょうどいい。

 

 最近は、プライベートで思い悩むことばかりだから、料理に専念したい。

 

 目まぐるしい忙しさがありがたい。

 

 

 

……ズルルルッ

 

 

「旨いな、いやはや絶品だ」

 

 本当に、ラーメンを食う様が絵になる人だ。

 

「うまいな、スープが実にうまい。玄妙とはこういう味を言うのだな」

 

「それはどうも」

 

 

 褒められると悪い気がしないから困る。困る、困る

 

 張さんはタンメンを完食して、今はおかわりの二杯目 

 

 

「大変なことがあったのに、呑気にたべられるものですよね」

 

「からかうなキューティ、神経の図太さでお前の上は行けんさ。ま、酷い目にあったのは確かだがな」

 

 

「張さん、お怪我はないですか?」

 

 

「一張羅に素敵なパッチワークを施しちまったよ。仕立て屋に頼まなきゃならねえ、事務所に弾代にと、金は溶けるばかりだ」

 

 

「懐は火傷まみれということですか。じゃあなんでランチ振る舞ってるんですか、って話になりますよ」

 

 

「ねぎらいは必要経費だ。というわけで、だ。替え玉をくれ」

 

 

「……了解です」

 

 

 気軽な口調で、けれどもこびりつく硝煙の匂いはまだまだ新しい。

 

 どうやらここだけではなくラグーンの事務所も吹き飛んで、本人自ら銃を取って大立ち回りをしたと言う。

 

 なのに、この人はどうも伊達が過ぎる。

 

 焼け焦げた瓦礫が散らかる中、ラーメンをすする姿は堂々としすぎだ。

 

 本当、いい男だと関心が絶えない。

 

 

「……しかし、中々うまいな。今日のラーメンは」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「美味いな、だが豚骨ではないな……これは」

 

 

「軍鶏出汁です」

  

 

「軍鶏、鳥か。そういえば昔にフクオカシティーでも旨いチキンスープを飲んだな。あれを思い出した」

 

「あぁ、水炊きですね……師匠が作ってくれました」

 

「また食いたいな、あれは旨い、実に旨い」

 

「作りましょうか、今度」

 

「……お前に頼むと古今東西なんでも飯が食えそうだ」

 

「何でもは無理ですよ、出来る範囲でなら何でも作ります、というだけです」

 

「…………至れり尽くせりだな、全くお前は」

 

「良い嫁になれる、なんて冗談で言うんでしょ」

 

「……いや、いい料理人だっていうつもりだったが」

 

「…………ッ」

 

 

 

 サングラスの奥で意地悪に笑う。

 

 

 

「自覚があるのはいいことだ、精進するといい」

 

 

 

 

 

 

 墓穴にハマった僕の頭をポンポンと叩く。優しく、丁寧な触られ方でまた悔しさが募る。

 

 何を言っても負け惜しみだから、これ以上は言わない。

 

 

 

 

「また店にも顔を出す」

 

 

 

「……待ってます」

 

 

 作り笑いでお答えした。接客業は笑顔が欠かせない。シット

 

 

 

 

 

 

 夜の営業、店に顔を出す客を裁き、夜中の閉店時間。

 

 シャッターを下ろし、四回の自室に戻ってさあ寝ようとした。

 そんな頃合い。

 

 

「おやすみなさい」

 

 

「……はぁ、はわぁ……あぁ、寝ちまおう。ほら、こっち来な」

 

 

 最近はもう毎日、この部屋で寝食を済ましているエダさん。

 肌着姿で一緒の布団で眠りに落ちる。

 

 ちょっとお酒の匂いがするエダさん。

 

 

「寂しいか?」

 

 

 聞いてきた。寝る前の、ほぐれた状態だから取り繕うこともない。

 

 素直でしかいられない。

 

 エダさんは優しく僕の後頭部を撫でてくれる。

 

 脹らみで、安心する空気を肺に入れさせて、本音を言わせてくれる。

 

 

「バラライカさんに会いたい」

 

 

「そうだね、バカに真面目なんだよ」

 

 

「……前みたいに、もっと、一緒が良い」

 

 

 日中では言えない言葉を胸に預けて、少し楽になって眠りに落ちる。

 

 バラライカさんと距離が開いた日常が今日も終わる。

 

 明日は、少しぐらい変わってくれたら、うれしい。

 

 

 




今回はここまで、次回から大きく動く予定です。タケナカに食わせるラーメンが未だに決まらないぜ。

感想、評価等頂けましたら幸い。モチベ上がって日々の健康が向上します。

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