麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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連日投降、久しぶりに書くと楽しい。


(74) 転調

  

 

 ストリップクラブらしくBPM高めなEDMが気分を高める。皆談笑して酒を飲み、隣に座る女性に手を添えて甘い言葉を交わす。ここはそういう場所だ。ローワンジャックポッドピジョンズはビッグバスト好きの為の理想郷と言ってもいい。

 

 だけど、今日は少しばかりそのムードは大人しい。それはなぜか、貸し切りだからだ。

 

 騒々しいBPMは大幅に下がってがボサノバ流れる。クラシックなバーのような雰囲気を思わせる曲調でジュークは統一されていた。

 

 シックな夜のムードを醸している。うるさすぎず、静かすぎない。

 

 女の色香と酒の味を素面で楽しめる程度に、今日は品が良いストリップクラブだ。

 

 普段はトップレスの衣装やシースルーが基本の姉さんたちも布面積を増やして現世のクラブ程度に抑えた露出の衣装で身を飾っている。まあ、それでも綺麗所ばかりでボディバランスに富んだお姉さんたちばかりだから、客の皆の視線は決まって肌色の曲線ばかり

 

 品を保ちつつも艶やかに、今宵のクラブは張維新を持て成すための作法で彩られている。

 

 食事を振る舞い酒を楽しみ、中央の舞台で魅せるショーはポールダンスだけ。SMショウはもってのほかだ。

 

 

 舞台の上ではコリンネ姉さんが豊かな肢体を振り回してダイナミックにダンスを踊っている。

 

 

 肉付きの良い、グラマラスな体ではあるが引っ込むところは引っ込んでいる。アーシェ姉さんにも劣らず、そのダンスは見るものを性別問わず誘惑する。

 蠱惑的なダンスに目を向けて、皆が視線をこちらに向けていない。

 

 今がチャンスと、僕は料理の配膳に向かう。

 

 運ぶ先は、そう、ここでの上座でふんぞり返っている伊達男様だ。

 

 

 いつかに時みたいに、僕もお姉さんたちと同じく可憐な衣装を身に着けて、デジャブを噛みしめながら配膳のお盆をもっている。

 

 接待はほどほどに、料理をしに来ただけだ。間違っても男の人を誘惑してこの後のお楽しみなんてするつもりはない。化粧中にやたらと背中を押されたけど、絶対ない。そもそも男の人を自分から誘惑したことなんて

 

 

……あったね、一度

 

 

 嫌なことを思い出したので頭をふり記憶を消去。それにしてもどこのテーブルでも黒服の紳士が品よく女性を口説かんとしている。以前は一般客もいたからどんちゃん騒ぎだったけど、マフィアの人達だけだとこうも落ち着くものかと、感心。

 

 流石と言うべきか、三合会の、それも張さんの側近以下周辺の人達だ。

 

 遊び方を心得ている人達ばかり。以前の、あのこともあってかそのあたり徹底したらしいから、間違っても変なハメ外しは起こらないだろう。

 

 

 

 

「ケイティ、料理はほどほどでいいのよ……ほら、あなたもこっちに来なさい」

 

 

「……いや、火加減が……あ、お肉追加しないと」

 

 

 ドレスを着用した上にエプロン着用して、ああ忙しい。

 

 今日はというか、今回も接待料理担当で助っ人に来ただけで、嬢として接客するつもりなんてさらさらない。というか嬢じゃないし、うん。

 

 踵を返して厨房へ、逃亡

 

 

 

 

 

 

「……逃がすなアーシェ」

 

 

 

「仰せのままに」

 

 

「あぅ……うぅぅ」

 

 

 逃げようとしたら、通せんぼする豊かな膨らみでホールドされてしまった。

 

 長身モデル体型なアーシェ姉さんだけど、決してスレンダーとは言えない。ちゃんと、ある所に膨らみはある。

 

 スパニッシュ系の黒髪美形な顔が見降ろして、なんとも楽し気だ。楽し気ついでに額に淡くキスをされてしまった。

 

 

「いろいろあったけど、張大哥はあんたにとっていい相手なんだ……ちゃんと接待しな」

 

 そして、そのままぬいぐるみよろしく抱えられて席へと運搬。あぁ、止めて欲しい。

 

 張さんが見てる。ニヤニヤと笑みを浮かべて酒が進んでらっしゃる。

 

 

「はい、ケイティはここね……張大哥、今日のケイティはいかがですか?」

 

「お前さんには青のドレスが似合う。髪を結ったのか、似合っているな」

 

「私が結いました……この子、髪長いのに遊ばないから勿体ないですよね」

 

「……あぅあぅ」

 

 

 大きなお姉さんと大きな大人の男性に挟まれて遊ばれる。

 

 隣に見目麗しい女性がいるのに、僕なんかで揶揄って遊ぶこの人は本当に、良い趣味をしている。

 

 でも、触られたりしないし、料理は美味しいって言ってくれる。

 

 嫌いになりきれない、悔しい。

 

 

 

「水炊き、約束通り作りました……いかがですか」

 

 

 

「美味いな、シンプルに美味い……しかし、この味は日本酒か発泡酒が欲しくなるな」

 

 

 

「あ、じゃあ取ってきま「アタシが行くから、あんたは大哥の膝を撫でな」……」

 

 

 

 遮られてしまった、そして二人きり。

 

 離れるわけにもいかず、僕はスカートの裾をつまんで生足を隠す。そして顔も背ける。

 

 ちょうどダンサーも交代、セクシーなお姉さんのポールダンスに目を向けて、できるだけ張さんを見ないようにしてみる。

 

 

 

「……お前も踊ればいい。チップの額は期待していいぞ」

 

 

「それで本当に踊ると思いますか?」

 

 

「思わんな、はっは」

 

 

 酒を煽る、笑いをつまみに酒が進んでいる。

 

 けど、グラスを置いて、急にトーンを変えてきた。

 

 

 

「ミス・バラライカとはどうなんだ?……あれから、何か変わったか?」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 問いかけに、帰す言葉が思いつかない。

 

 言えば、それは自分の中の寂しさを吐露するからだ。

 

 

 答えにくいのは、聞いた本人がわかっているはずだろうに

 

 

 

「……張さん」

 

 

 

「いや、お前さんが誤発注の品を無断で使ったと話を聞いた……揉めたんじゃないかとな」

 

 

 

 

「そのことですか……何も無かったです」

 

 

 

 何もない、マイナスも無ければプラスも無い。

 

 

 

「バラライカさんは、距離を置いたままです……寂しいですけど、でも仕方ないです」

 

 

 

「あぁ、彼女は今そうしないといけない考えだからな。こればかりは他人にはどうこうできん……できんが、な」

 

 

 含みのある間。

 

 グラスに残るラムを飲み干して、お代わりを注ごうとした。

 

 

「あの誤発注だが……確認したがフロント企業のホテルはロシア料理しか扱っていない。あんな注文は、お前の店でしか使わないだろう。疑問は無かったのか?」

 

 

「!」 

 

 

 注ぐが、仕損じた。落としたグラス、ラム酒が張さんのズボンを汚す。

 

 

「あ、ごめんなさい……その、えっと……ごめん、なさい」

 

 

 

 いそいで、おしぼりを押し当てて拭く。

 

 張さんは、何も言わない。伺って、見上げるもその顔はサングラスに飾られて鉄皮なままだ。

 

 

「……僕に、どうしろと」

 

 

「さあな、だが知って良い情報だ……お前さんの好きにしろ」

 

 

「…………好きに」

 

 

 張さんのお節介ともいえる報告、反芻しても頭はうまく回らない。相も変わらず堂々巡りを続ける頭はついぞ耐え切れず沸騰してしまった。バラライカさんを思うも、踏ん切りもつかなければ諦めることもできない。ため息を一つ、張さんの膝でつっぷしてしまった。

 

 

 その光景を、たまたま見てしまったコリンネ姉さんが叫んで、皆が僕と張さんを見て変な疑いをかけられたりして、今日という日も流れて終わりが来る。

 

 

 

 

 

 

 

    ×    ×    ×

 

 

 

 

 

 心配して布団を一緒にしてくれるエダさんにおやすみを言う。

 

 相変わらず過保護に僕を甘やかして、暖かくしてくれる。そんなエダさんに頼ってしまって、今日も包まれて眠りに落ちる。

 

 バラライカさんのいない寂しさを埋めながら一日を終える。エダさんには失礼だけど、それでも僕は、どうにもならない。

 

 

 会いたい。

 

 

 どうして距離を置くのか、もっとわがままを言いたい。情けなさを噛みつぶす夜ばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宴の翌日、最近は出張サービスだったり昨日のことだったりと、店の方を空けてしまった。

 

 店舗でラーメンを食べたいお客さんもいる。やっぱり店を開けないとだ。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 

 

 

 一人目の客、アジア人と思われる風体、それに

 

 

 

 

「大将、ラーメンを一つ……って、子供かいお前さんが?」

 

 

 

「子供とは失敬な、背は低いですけど店主です」

 

 

 

「っと、そりゃすまなんだ……いやぁ、しっかしラーメン屋か……話は本当だったわけだ」

 

 

 

「?」 

 

 

 

 やけに気さくな調子、一方的に驚いて、そして今は常連もかくやとばかりに新聞片手にお冷をまるで冷酒みたいに舐めている。

 

 妙に慣れている、というか落ち着いてる。

 

 

 

「ニホンジン、なんですか?」

 

 

 思い切って訪ねてみた、するとお客さんは

 

 

「ご名答だ、よくわかったじゃねえか」

 

 

「?」

 

 

 まるで繕ったかのように満点な笑みだ。気さくなおじさんだなぁと、なんだか感心する。

 

 それにしても日本人、どこかで聞いた名の気がする。

 

 

 

 

「嬢ちゃん、ラーメンだが……いったいどんな味だ?」

 

 

 

「それは、出てきてからのお楽しみです。」

 

 

 

 妙に気に刺さるところはある。

 

 しかし、お腹を空かしてくれているラーメン好きな日本人ときた。それはなんともいいことだ。同郷の人の舌をうならせられれば、これほど作りて冥利に尽きることはない。

 

 どうにも、なんだか縁を感じる。

 

 

 

「……少々お待ちを」 

 

 

 

 

 

 次回に続く

 

 

 




今回はここまで、タケナカ編というか、タケナカ絡めたオリエピ。早く双子編に行きたい。


感想・評価など貰えると幸い。モチベ上がってケイティの顔にぱふぱふが炸裂します。
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