麺処・ロアナプラ亭~悪党達に愛されたとある料理人の生き方    作:37級建築士

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双子編のプロット練り練り、その前にそろそろこの人物について触れなければ


(91) 二人でお出かけ

 

~早朝~

 

 

 

 目が覚めたら顔に饅頭が張り付いている。大きな饅頭、とっても大きな饅頭で柔らかくて吸い付く心地で、でも表面には傷跡がある。

 

 だけど、傷の付いた果物程甘いものは無いように、傷ついた貴方の果実は魅力的で朝から理性を溶かしに来る。

 

 

「……良く、され過ぎてるッ……んぅ、ぷはッ」

 

 

 眠っているのに、どうにか頑張ってようやく逃れられる腕力の拘束から逃れて、そして新鮮な息を肺に注ぎ込む。

 

 半分ほど捲れた毛布は、バラライカさんの扇情的な姿をさらしてしまっている。眺めていたい気持ちになるけど、それは良くないと、もう夜は終わったのだと、理性を働かせてそっと毛布を被せなおす。

 

 

「……ニュース」

 

 リモコンをポチ、まだ寝ぼけている細胞を活性化させるのは朝日とコーヒー、そして早朝のニュースキャスターの声だ。

 

 アナログテレビの画面ではBBCのキャスターが世界の出来事を伝えている。懸命に語ってくれているけど、気に留めて記憶に残るのは一割ぐらい。

 あくまでも朝の気分を味わうBGM代わり、食材の高騰なんかは気になるからチェックするけど

 

 

「……ん」

 

 

 ベッドから見るテレビの視界が半分消えた。

 

 暖かくて柔らかい、柔らかくて重くて、やっぱり柔らかい。

 

 

「早起きなのね。もう少し寝ててもいいじゃない」

 

「ダメですよ。今日はお店開けるんですから」

 

 

 家ではない。ここはバラライカさん所有ホテルの最上階、ワンフロア丸々利用した豪邸の広すぎる寝室で平日の朝を迎えた。

 

「まじめね……貴方の稼ぎなら、そんな頻繁に働かなくても問題ないのよ?」

 

「まあ、それはそうですけど」

 

 値段一杯12ドル、それがたくさん捌けるのだ。確かに収益は大きい、けどその分経費だってデカい。

 

 ニュースを見て、まず思うことは食材高騰の報が無いことだ。

 

 ただでさえロアナプラという場所で店をやるのだから、舶来品ともいえるような食材ばかり使っているから暢気に帳簿は付けられない。

 

「深刻じゃないですけど、ちょっとずつ物の値段は上がってます。」

 

「ジャパンは暢気で平和な国のはずなのにね」

 

「不景気だって騒いでますよ……ま、向こうのニュースは見てないですけど。日本産の材料、ちょっと控えないとです」

 

 質の良い和の食材、調味料はただでさえ海を越えて運ばないといけないから、ちょっとの値上げが如実に影響を及ぼす。

 

「良いのよ、適正価格じゃなくても……どうして優遇を嫌うのかしらね」 

 

「……ダメですよ。ルール違反です」

 

「まじめね……こっちは不真面目なのに、いい子なのか悪い子なのか……私にはわからないわ」

 

 

……スリスリ

 

 

「ん……あの、触って確かめないで……その、良くない気分になっちゃう」

 

 

 仕事だと言ったのだ。うん、遠ざけた反動かバラライカさんの距離が近い、頻度も多い。

 

 枯れてしまう。

 

 

「……いい子ね」

 

「————ッ」

 

 力で叶わない。

 

 抱き着かれて、そのままベッドに再度引きずり込まれた。布団をかぶり、また密着具合を高めていく。

 

 ともに服なんて着ていない。

 

 よろしくない、よろしくないのに

 

 

「……いいのよ、食材価格……融通しても」

 

「ダメ……贔屓はダメ、他のお店が困ります」

 

「あら、貴方が得したって誰も文句は言わないわよ?」

 

 それはそうなんだろうけど、でも僕は他所の飲食店と競争をしたいわけじゃない。毎日の食事の場ではなく、ちょっと奮発して美味しいものを食べたい時に行く、そんな程度のお店で良いのだ。

 

「ダメです。ぼくが、納得できません……ん、大丈夫ですよ。んむ……んぅ、ぷはッ……ぁ、まだ備蓄もありますし、それに一番浪費する物は、安定して供給できていますから」

 

「……それって、なにかしら」

 

「それは……んむ、んんぅうぅぅッ」

 

 

 会話も遮る優しいクッションの暴力、朝からなんとも密着具合がすさまじい。

 

 薄々気づいてきた。あ、この人、朝の世間話がしたいわけじゃなくてただただイチャコラしたいだけなんだと

 

 愛でて可愛がって、蕩けさせたいエッチな悪魔なんだと

 

 

……まだ、昨夜の興奮が抜けきってない?

 

 

「ケイティ……口を開けなさい、命令よ♪」

 

 

「——ッ」

 

 

 遠ざけた反動は、まだまだ続く。

 

 

「ぎ、ぎにゃぁ……ぅぅ、えっち」

 

 

「くすす……えっちでいいのよ、ベッドの上では」

 

 

…………くちゅ♡

 

 

 

 

 

 

~昼間~

 

 

 壮絶な朝のストレッチ後、解放された僕は店へと向かう。

 

 オフショルダーのワンピースに真っ白い帽子をかぶって、何処を見てもラーメン屋とは思えない姿で街を歩く。

 

「……服、着れなくなっちゃった……はぁ」

 

 

 いざホテルを出ようとして、来た時の服に着替えようとしたらまたバラライカさんにイタズラされてしまった。経緯は省くし何をもって服が着れなくなったかは口を閉じる。とにかく服がダメになったからこの服を着用している。ハイヒール、歩きづらいはずなのに割と慣れてる僕もどうかしている。 

 

 

「さて」

 

 

 ホテルを出て、このまま真っすぐ道を行けば歓楽街のストリート、ローワンジャックポッドピジョンズのある通りまで行けるけど。実は今日は寄る場所があるのだ。

 

 バラライカさんには言ってなかったけ。言ってもいいかもだけど、あまりいい気はしないと思って口を紡いだ。

 

 でも失敗だった。用事が無いと思われてギリギリまで粘られてしまった。

 

「もたもたし過ぎた……タクシー拾わないと」

 

 約束のランチ時までもう短い。

 

 公衆電話でもないか、周りを見渡したら、急に近くで車が止まった。

 

 高級そうな外車が止まった。

 

 

……誘拐?

 

 

 軽く貞操の危機を感じたけど、どうも違った。車の運転席には見慣れた顔がいる。

 

「可愛い」

 

 

「……アブレーゴさん」

 

 

「あ、いや……服がな、良いセンスだ。よぉ、いったい何してんだ?」

 

 

 運転席から身を乗り出し、こちらを見るアブレーゴさん。相変わらず肉付きが良くなって顔色は良いけど、若干体調を心配する。車じゃなくて自転車を勧めたい。ま、言わないけど

 

「お出かけです、ランチボックスとランチョンマットを抱えて」

 

「はは、そりゃいいな……サンドイッチはハラペーニョを山盛りにしてくれ」

 

「いいですね、ライムも絞ってワカモレも付けちゃいましょ」

 

 

 サンドイッチがタコスに変わってしまった。馬鹿話であははと暢気に笑い合う。

 

 マイナス思考ばかりだった頃と比べたら元気になった今は本当に良かったと思う。まあ、その分生活習慣病が心配に……って、あれ?

 

「……お一人ですか?」

 

「あぁ、一人だ……その、この車にはあと一人までは乗るな」

 

「はぁ……なんというか、不用心ですね。良いんですか?暢気に昼間からドライブなんて?」

 

「……別に、問題なんかねえし」

 

アロハを着て、オープンカーに乗り暢気に独り。この街では別におかしい行為じゃないけど、この人はロアナプラでマニサレラカルテルを代表する顔役なのに、何故独りでいるのだろうか?部下は?護衛は?

 

 

「あはは……で、アブレーゴさん何してるんですか?」

 

「……今日は、いい天気だな」

 

 なんで急に天気の話をしたのやら。まあでもいい天気であることに変わりない。程よく熱くて程よく風も吹いている。比較的ましな陽気だ。

 

「……なあ、良い感じの服着てるけどよ、どっか予定があるのか?……今よ、偶然一席空いてるからよ、えっと……どうだい?」

 

 乗っている車はオープンカー。当然一席空いている

 

 そこに座ればまるでドライブデートをしているように見えそうだ。でも女装した男なんて乗せてアブレーゴサンに迷惑かけちゃうな。

 

 でも、今はこのヒールの負荷から逃れたい欲求があるのも確かだ。慣れているとはいえ足が痛い。

 

 誘いにのるのは、なんだかよくない危険を感じるけど、まあ大丈夫だろう。気のせいだ。用心しすぎてるだけ、第一アブレーゴサンいい人だし。それに断ったら泣きそうな顔してるし

 

「そうですね、行きたいところがあるので……甘えていいですかね?」

 

 

 素直に頼ろう。

 

 

「……ッ\(^o^)/」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、背伸び……なあ、にしても良い服だな。似合ってるぜ、ケイティもしかして……俺のたm「バラライカさんから貸してもらいました」……そっか」

 

 

 

 なんだかぎこちない言葉遣いだ。視線もチラチラと落ち着かない様子だし、何を緊張しているみたいな。

 

「ですね、たしかに高価な服です……良かったらあげましょうか?似合う人に着せてあげてください、って僕のお古なんて誰が欲しいのやら」

 

「……ッ(・∀・)ニヤニヤ」

 

「って、これバラライカさんからのプレゼントですからね。手放したくても手放せません……綺麗に洗って返さなきゃ」

 

「(´・ω・`)…………うん」

 

 

 表情がころころ変わる。最近のアブレーゴサンがよくわからない、人と会話しているのに変な反応ばかり、ちょっと心配になる。動悸に息切れを起こす時もあるし、また何か持病でもこじらせたのだろうか、精神的な病は大変だ。

 

 

「……あの、ありがとうございますね。その、アッシーみたいなことして貰って。ちょっと申し訳ないです」

 

 

「い、いい……いいって、ことよ」

 

 

「そうですか。じゃ、遠慮なく甘えちゃいますね……イタリアンレストランまでお願いします」

 

 

「……」

 

 

 しばし、沈黙。けどすぐに

 

 

「はぁああああああああああああッ!!?!?」

 

 

「ん……声大きいですよ。どうしたんですか?」

 

 つんざくアブレーゴさんの大声にこっちまでびっくりしてしまった。

 

「お、おま……わかってんのか?……れ、レストラン……イタリアのレストランなんて、この街じゃ一軒だけだぞッ」

 

「知ってますよ、そこに行くつもりですから……はじめから」

 

 

 今日の予定、それは黄金夜会の一柱。イタリアマフィア、コーサノストラのロアナプラ支部を務めるヴェロッキオさんとの会食だ。

 

 ノストラの事務所はイタリアンレストランの上にある。その店は構成員達しか基本的には利用できない食堂で在り、でもたまに僕のような取引相手に食事を振舞うこともある。

 

 席は多い。事前に連絡しておけば、あと一人分なら問題ないはずだ。この前もたまたま一緒にいたレヴィさんやロックさん、それにエダさんも誘ってオッケー貰ったし

 

 アブレーゴさんも、まあ大丈夫だろう。なんせ、一人でドライブするぐらいだから、オフなのだ。

 

「……ご飯はみんなで食べるのが良いですからね。でも、アブレーゴさん運転するからワイン飲んじゃダメですよ。」

 

「あ、当たり前だろッ……の、飲むわけねえッ」

 

「そうですか、じゃあ、ワインは飲まないみたいですっと……伝えておきます~」

 

「……へ?」

 

「あ、返信速い。」

 

「ん?……ちょい待て、ケイティお前さん何を」

 

「え?……メールですけど」

 

 

 お酒は飲まない。会食の準備をしているだろうから連絡は早めにしておかないとだ。フランス料理に負けず、イタリアでもワインとのペアリングは食事において大事な要素だ。だから、先に言っておかないと

 

 

From:ヴェロッキオ

 

 

……仕方ねえ

 

 

「うん……オッケーですって、アブレーゴさんの席も用意してくれたみたいです」

 

 

「( ゚Д゚)……は?」

 

 

「また顔が変に……も~大丈夫ですって、あくまでも会食。美味しいイタリア料理を食べるだけです。」

 

 

「いやいやいや、俺は行くなんて言ってねえだろッ!!」

 

 

「え、でもワインは飲まないって」

 

 

「ちが、そんな些細なことじゃなくてよ、そもそも俺はマニサレラ陣営のマフィアだぞ!てか、顔役!!……そんな俺が、コーサノストラの本部にわざわざ飯食いにってか?……おい、おいおい!なんてことになっちまったんだよぉおおおッ!!」

 

 

「……あの、元気出して……その、大丈夫ですよ。」

 

 顔色が悪い。

 

 なんというか、前のマイナスなアブレーゴさんを思い出す。

 

「大丈夫ですよ。ただ食事をするだけ、ですから……それに、ヴェロッキオさんそんな悪い人じゃないですよ。ま、よくわからない人ではありますけど」

 

 

 

 

次回に続く

 

 




今回はここまで、次回もお楽しみに。血は流れないはず


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