赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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守護者を目指した少年
第一話:小さな守護者


 

 ──今週も月曜日の朝がやってきた。

 時間は4時55分。一度も役目を果たしたことのない目覚ましの設定を切り、ベッドを出てストレッチ。

 

「よし!」

 

 運動着に着替えたら、あらかじめ荷物を纏めておいたランドセルを背負って10区の方向に向かって走る。すると8分ほどで、目的のアパートが見えてくる。

 ──あっ、ちょうど出てきたところだ。

 

「蓮太郎さん! おはようございます!」

「おうおはよう真守(まもる)……相変わらず元気だなお前は……」

「『守護者』はいつだって、誰よりも元気でないといけませんので!」

「そうか……」

「そうなのです!」

 

 そして笑顔も大事。しっかり歯を見せ、胸を張る。蓮太郎さんが近所のお爺さんみたいな顔になった。解せぬ。更には頭を撫でられた。

 

「今すぐ止めないと『里見蓮太郎はショタコンだ』と叫びながら走り回ります」

「それだけはやめてくれッ」

 

 全く……こないだは日頃のお礼にクッキーを焼いただけで何か言いたげな目で見られたし……

 

「次はありません」

「たまに、お前ら本当は俺のこと嫌いなんじゃって思うんだが……」

「『お前ら』の『ら』が誰を指すのかは知りませんが、少なくともオレは蓮太郎さんのこと好きですよ? 嫌いだったら毎週会いに来ませんって」

「……そういう好意を伝えるのに躊躇がないとこも、延珠にそっくりだ」

「オレ、延珠ちゃんに似てますか!? 嬉しいなぁ!」

「俺としては似ないで欲しいんだが……」

「なんでですか!?」

 

 文武両道、明朗快活、容姿端麗。あんな完璧超人に似ていて嬉しくないハズがないのに。

 

「いや……うん。世の中、知らない方が良いこともある」

「余計気になるんですが」

「よーし今週の朝練始めるぞー!」

「露骨に誤魔化しましたね」

「身体を動かして、忘れろ。これはその方が良い(たぐい)の話だ」

「……分かりました」

 

 第一、教えてもらう立場だ。あまり文句は言えない。

 いつも通り、今までに習った技を一つずつ披露する。

 

 天童式戦闘術──剄力(けいりょく)を用いて相手を無力化する、不殺の武術。誰かを『守る』ための力。

 拳を用いる一の型、脚を用いる二の型、どちらにも属さない三の型が存在し、加えて構えによって攻撃と防御に緩急をつけることができる。

 

 俺が使えるのは攻防一体の基本形、『百載無窮(ひゃくさいむきゅう)の構え』のみ。そして一の型の一番から八番。あと十ニ番。

 

「ラストォ! 焔火扇(ほむらかせん)!!」

 

 先週習った一の型八番を見せ、残心。蓮太郎さんの評価を待つ。

 

「……うん、体幹も柔軟もバッチリ。型の練度も、初段程度はある。精神面も、お前なら大丈夫だろ。後はこのまま鍛錬を欠かさず続けてりゃあ、十五には民警として通用すると思うぜ」

「ホントですか!? お世辞じゃなく!?」

「次からは、頑張って木更さんを引きずり出して来てやんよ」

「ぃよっっし!!」

 

 木更さんと言えば、抜刀術の方ではあるが──同じ天童流の免許皆伝を持つ、妖怪のように強い方だと言う。そんな人に見て貰えるとは……

 

「『光栄の至りです、ご指導ご鞭撻(べんたつ)のほど、よろしくお願いします』とお伝えください」

「お前、よくそんなスラスラと敬語が出るよな……本当に小学生か?」

「正真正銘小四ですよ。生徒手帳見ます?」

 

 勾田(まがた)学校は小中高一貫だからなのか、小一の時に生徒手帳を渡されるのだ。

 

「まだ児童ですけどね」

「細けえな……てかマジで見せなくていいわ。延珠の同級生なんだから分かるって」

「おっと、これは失礼しました」

「……なあ、本当に民警やんのか? お前なら、もっと他に良いとこ行けるだろ」

 

 確かに民警──『民間警備会社』の社員になりたいと言う人は少ない。

 犯罪者崩れの荒くれ者は多いし、ほぼ完全な歩合制だから、よっぽど腕が立たないと、日常生活すらままならない。殉職率もバカ高い。ついでに、仕事を奪われる形となる警察からは嫌われる。

 そして何より──嫌でも『呪われた子供たち』と肩を並べることとなる。これにより、民警は誰からも等しく嫌われる。

 

 ──でも、

 

「オレは、民警以外になる気はありません」

「どうしてそこまでこだわる? 『人を守る』ことは、民警でなくともできんだろ」

「それは──秘密です!」

「ヒーローは秘密があってこそってか?」

「その通り!」

 

 

 あぁ確かに、『人を守る』ことは、他でもできる。

 

 ──でもその『人』の中に、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 十年前、突如として生まれた寄生生物──ガストレア。『呪われた子供たち』は、奴らと同じ力と『赤い目』を持っている。

 ……ただそれだけで、同じ『人』である筈の彼女らは皆……『ガストレア』の同類として、今この瞬間も迫害され続けている。

 

 オレは、それが耐えられない。

 誰が人類の生存域を『守っている』のか、考えればすぐに分かる。人を超えた力を持つガストレアに対抗できるのは、彼女らに他ならないのに。

 

 だからオレは、民警(プロモーター)になる。唯一『呪われた子供たち』を対等の存在として認めることができる、民警になるのだ──

 

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