赤目の守護者 作:ブラブレ8巻難民
閑話:You could not protect her
──あぁ、孤独だ。
人間誰しも生まれた瞬間には家族がいるもので、私の場合は両親と双子の兄が該当する。
優しい両親に、優しい兄。特別なものは何もない、ありふれているが充実した、穏やかな日々……私は、私の環境をそう捉えていた。
しかし世間一般からすると、私達の幸せは『異端』だったらしい。
両親は共に民警で、イニシエーターとの関係が良かった。そんな両親に育てられた私と兄は『呪われた子供たち』を『世界の救世主』だと思いながら育ったが──民意は、その真逆。
小学校に入る前には、そのことを教えられていたが……交友範囲が広がったことで、私と兄はそれを『実感』した。
誰もが『呪われた子供たち』はガストレアの同類であると、思い込んでいた。
私と兄は、それに同調することこそなかったが……真っ向から逆らう気も無かった。
──だから一人目を失った。大切な、親友を。
趣味が合う、明るくて優しい子だった。文武両道という言葉が似合う子だった。喋り方が特徴的な子だった。誰とでも仲良くなれる子だった。沢山の友人の中から……私を親友に選んでくれた。
──ある日突然、その子が『呪われた子供たち』だという噂が流れた。
私は……何もしなかった。結果、あの子はクラスから拒絶された。
兄はあの子を助けるために動いたのに。私が嘘でも『あの子が怪我をしているところを見たことがある』と言えば、助けられたかもしれないのに。
私は逃げた。周囲に『呪われた子供たちの味方』と認識されるのが、怖かったのだ。自己保身に走ってしまった。
あの時が、最初で最後の機会だった。次の日には、それどころではなくなった。
──両親が死んだ。
ショックを受けた私は、何も考えられなくなって部屋に閉じ籠った。
それから何度も、兄が部屋の外で私を励ますために声を掛けてくれたが……その時の私には逆効果だった。
私は一人になりたかったのだ。だから兄を拒絶した。『一人にしてよ』と叫んでしまった。
──だから、残る筈だった者まで失った。
売り言葉に買い言葉の応酬で、互いに傷付け合って。兄が家を出る音が聞こえて。その時、初めて兄が泣き叫ぶ声を聞いた。後悔して兄を呼び止めた時には、何もかも遅かった。
私も泣いて、泣いて泣いて泣き疲れて、なのに眠ることもできなくて。兄との繋がりを求めて、冷たくなったお粥を口に運んだ。孤独な私の、最後の晩餐。
独りになって最初の日。
気分は大分落ち着いていた。死んでしまった両親は帰って来ないが、兄はいつか帰って来てくれると、信じていたから。
飽きるまで天誅ガールズのゲームをやって、それでも帰って来ないことに痺れを切らして、擦れ違いになっても大丈夫なように置き手紙を残して、私も家を出た。
そして兄が行きそうな場所を探し回ったが……何処にもいなかった。手がかりが無くなると、家に帰って眠った。もう、何もしたくなかった。
2日目。
この日のことは、あまり覚えていない。起きても疲れが取れていなくて、一日中横になっていた。食事をしていないのだから、回復なんてする筈がないのに。
3日目。
インターホンの音がして、カメラのところまで這って行くと、叔父だった。私を引き取りに来たらしい。
『差別主義者の世話になる気はない』と言って、門前払いした。
そのすぐ後、私は倒れた。
4日目。
目を覚ますと、病院に居た。倒れた原因は栄養失調らしい。『そりゃそうだ』と、死んだ目で苦笑いした。誰が通報したのか分からないが、『余計なことを』としか思えなかった。
丁度起きた時、クラスメイトの一人がお見舞いに来ていたが……その子も差別主義者だと思うと全く嬉しくなかった。
だから、『
こう言われても私を友達と言うなら、それは本物の友情だと思った。だが、結果は予想通り。その子は悲鳴を上げて逃げ帰った。
バカな子だ。真守という双子の兄がいる時点で、私が『呪われた子供たち』だなんてあり得ないのに。
だが、これでいいのだ。もっと前からこうするべきだった。
そうしていれば、ただ一人の親友だけは失わずに済んだだろうに……
──そんなことを考えていたときだった。彼に出会ったのは。
『初めまして。突然押し掛けてごめんね? でも、どうしても君に伝えたい情報があるんだ』
『何? まず名乗れ……? 嫌だと言ったら?』
『ナースコールは面倒だなぁ……でも本名は言えないから通称で名乗ろう。ボクはグークル。なんでも知ってる不思議な人間さ。例えば──』