赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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 最近、一気に暑くなりましたね。季節の変わり目で体調を崩さないようにご注意ください。
 物語のテンション乱高下にも警戒してくれやがれヒャッハァ!(今回明るい話からの暗いテンション、しかし次回から明るい話メインです)


間話:小さくて大きな分岐点

 

 ──イルカ。

 彼らは海洋生物だが歴とした哺乳類であり、肺呼吸を行う。

 じゃあ寝る時はどうするのか、まさか寝ないのか? と疑問に思う人は珍しくないだろう。だってオレもそう思ったから。んで、調べたことがある。

 結論から言うと、イルカは脳を半分ずつ眠らせながら生活しているらしい。──()()()()()()、片目を閉じながら。

 

「入社四日目にして、早くもバディ解消を希望したくなっています……」

「ファハハ。逃がさないぜ、相棒」

 

 ()()()()()()()()、オレ達はまたも未踏査領域を走り回っています。今回はモノリスからそこまで離れてはいないものの、危険地帯であることに変わりはない。

 なのでまぁ、寝れません。徹夜です。二徹目。そしてご飯は一回エリアに戻って買ってきた夏世の分の携帯食料と水のみ。いくら『子供たち』が頑丈でも、これはキツい。

 だが半分寝れる夏世は、このくらいの無茶ならついてきてくれるらしい。

 

「……先生みたいな笑い方やめてくださいよ。似合ってませんので」

「うん、やってて自分でも思った」

 

 そう言いつつ、横目で少し様子を伺う。大丈夫だと思ってたらダメだった、なんて洒落にならないからね。

 ……大丈夫そうだ。なんでか少しニヨニヨしてる。まだまだ余裕っぽい。

 

(心配性ですね、全く。チラチラ見てるの、バレてないと思ってるんでしょうか? 後でからかってあげましょう……)

 

「しかし見つかりませんね、ガストレア」

「うん。こうなると、初日に見つけた奴を倒しちゃったのが痛いね」

「アレはステージⅡかⅢでした。生捕(いけど)りにしたとして、あのサイズじゃ持ち帰れませんでしたよ」

「やっぱステージⅠじゃなきゃダメか……」

 

 そう、記念すべき我らが初任務はガストレアの捕獲。依頼主は室戸先生。イニシエーターの体内侵食率を下げる薬──侵食浄化剤の試作品ができたので、実験体が欲しいとのこと。

 蓮太郎さんと延珠ちゃんがゾディアックを倒した影響なのか、最近エリア内に入ってくるガストレアの数は、非常に少なくなっているらしい。なので手っ取り早く、こうして未踏査領域まで足を運んだという訳だが……モノリス外ですら、想像の百倍少ない。

 

「ねぇ夏世、今凄く嫌な可能性に気付いちゃったんだけど」

「どうしたんですか?」

「この状況ってもしかしてさ、前にオレが暴れ過ぎたせいもあるんじゃ……」

「いやいや、ここから房総半島まで何kmあると思ってるんですか? アレとは無関係ですよ」

「だよねごめん、ちょっと疲れてるのかも。一旦帰って休んでいいかな?」

「逃がしませんよ、相棒」

「うぼあー」

 

 いやはや、帰るのは何時になるやら。こんなに時間かかると思ってなかったから、作り置きとかしてないんだよなぁ……室戸先生、ちゃんと食べてるかな……

 

 

 

 *

 

 

 

「ここ、病院だよね?」

 

 悪魔のバストアップが刻まれた扉の前で、思わず呟く。

 だが、場所はここで合っている筈だ。受付の人に確認も取ったから間違いない。

 

「……真守が、ここに」

 

 背負っていた鞄を一度降ろし、中身があることを確かめ、抱き締めながら深呼吸。兄の匂い。

 ……我ながら変態的な行動にドン引きだが、こうでもしないと不安で不安で仕方なくなるのだ。最近の出来事は、現実味が無さすぎて……『私に家族なんて居なかったんじゃないか』って、おかしくなるくらいの恐怖に支配されてしまう。

 

 ある日突然、知らない人が私の病室に来て『あなたの兄は死にました』と言った。面と向かって言いに来たのは、色々理由があったそうだが……一番は『最悪の事態』を避けるためだと、()()()()()()()()

 

 グークルと名乗った彼は胡散臭かったが、真守の知り合いであることと、情報通であることは確かだった。

 彼は兄の鞄を私に手渡し、いくつかの情報を与えた。その一つが、『兄の死』について。

 

『近日中に、真守くんが死んだって言いに人が来るけど、それ嘘だから安心してね。まぁショックで錯乱して暴れてもいいように対面で人を寄越すワケだから、ここらでいっちょストレス発散するのもアリだと思うけど』

 

 この時点ではグークルさんが『ただのヤバい人』という認識だった私は、ナースコールを鳴り響かせ、彼は逃げていった。

 そして後日、彼の情報が本当だったと思い知らされたすぐ後に、彼は再びやって来た。

 

『当ててやろう。キミは最初に、『兄はどこですか』と言う』

『……兄はどこですか』

 

 素直にそう聞くと、彼は『勾田大学病院の霊安室』と答えた。

 

『霊安室は基本的に、病院関係者以外立ち入れない。それに霊安室は、病院内の地図に場所が書かれてないから、普通は見つけられない。だがキミは、記録として遺体が運び込まれたことになっている神崎真守の遺族だ。そう伝えれば、霊安室まで案内して貰える』

 

 実際、こうして霊安室までは来れた。

 ……問題は、ここから。

 

『真守くんが死んだことにされてる理由は、会って直接確かめるといいさ』

 

「……酷いよ、みんな」

 

 延珠ちゃんを追放した学校の皆も、私を置いて逝ったお父さんとお母さんも、肝心なところは教えてくれないグークルさんも、何より──

 

「寂しいよ……真守……」

 

 生きてるのに連絡一つ寄越さない兄は、ほんとうにひどい。

 

「私を、独りにしないでよ……!」

 

 あぁ、解っている。この腐った世界に用意された、『生きているのに死んでいる』というナゾカケの解答なんて……一つしかない。

 

「今、私もそっちにいくから……」

 

 覚悟を決めて、私は霊安室──『()()()()()()()()室戸菫』が棲む研究室を叩いた。

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