赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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第二話:壊された日常

 

「──で、遅刻しかけたと。バカじゃないの?」

「辛辣ゥ……」

 

 ──昼休み。給食の美味しくないスープを啜りながら、双子の妹()がジト目で見てくる。

 どんだけ早く起きても、朝練してから家に帰ってシャワーで汗を流して朝食を食べるなんてことをしてたら、遅刻寸前になるのは自明の理だ。しかし……

 

「お前が汗臭いってうるさく言わなきゃ、もうちょい早く来れるんだけど?」

「朝ごはん、作って置いといてあげたの誰だと思ってるの?」

「貴女様ですごめんなさい」

「分かればよろしい」

 

 ウチは仕事の関係上、両親が家を留守にすることが多い。だから家事は、オレと妹の二人でやりくりしている部分が大きいのだ。

 

「舞ちゃんは凄いな。妾なんて、台所出禁なのに」

「え、何したんだよ藍原……?」

 

 同じ班の前田が、延珠ちゃんの発言に反応した。

 正直オレも気になる。彼女に苦手なことがあったこと自体、凄く意外なのだから。

 

「前に一度、味噌汁を作ろうとしたのだが……変にしょっぱくなってしまってな?」

「その味噌汁、出汁取った?」

「ダシ? 味噌汁はお味噌を溶けばできるのではないのか?」

「味噌だけの味噌汁は美味しくないよ……」

 

 典型的な失敗例だね。インスタントだと最初から出汁入りのものが多いから、普段料理しない人だと勘違いしてる場合がそこそこあるらしい。

 

「そうなのか。ならば次は鈴カステラではなくちゃんとダシを──」

「待って待って待って。鈴カステラ入れたの? 味噌汁に??」

「甘くすればしょっぱさがマシになるかと……」

 

 ……うん、流石にその失敗例は初めて聞いたかな。舞だけじゃなく、前田も呆れた顔をしている。

 

「……舞、真守。調理実習はお前らが頼りだ」

「流石にもうやらぬぞ!? 学校でも台所出禁は嫌なのだ!」

「ごめんね延珠ちゃん、調理実習の時は、私と真守の指示に従ってほしいな」

「ぐぬぬ……分かったのだ……」

 

 延珠ちゃんが悔しがってるのも珍しい……てか『ぐぬぬ』なんて本当に言う人初めて見たわ。

 ……とまぁ、こんな感じでわちゃわちゃしながら給食を終え、昼休みは思いっきり遊び、真面目に授業を受けて、帰宅する。なんてことない日常だけど、充実した毎日。

 世界がガストレアの脅威に包まれている以上、この平穏は続かないと分かっている。だからこそ、俺はいつ『日常』が壊れても後悔しないように、生きている。

 ……だけど。だけどさ……こんなの、あんまりじゃないか。

 

「──なぁ藍原。明日さ、前にお前が話してた『レンタロー』に会いに行ってもいいか?」

「うむ、構わないぞ! 特に予定は無いと聞いている!」

「じゃあ、お前んとこのアパート裏にある空き地に朝7時!」

「分かったのだ!」

 

 帰宅路の途中で聞いた、前田と延珠ちゃんの何気ない会話。

 祝日明けにする話のタネができたなって……そう思ったのに。

 いざ登校してみれば──

 

藍原延珠は

呪われた子供である

 

「……は?」

 

 黒板にデカデカと書かれたチョークの文字に、俺が憧れた少女の日常は壊された。

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