赤目の守護者 作:ブラブレ8巻難民
事情聴取がなかった分、聖居を出るのが少しだけ早くなっています。不良くんたちは出番カットです。
ぐらぐら、ぐらぐら、揺らめいている。
ふらふら、ふらふら、よろめいている。
太陽は爛々とその存在を主張しているにも関わらず、
この国では私達を『呪われた子供』と呼ぶらしいが、言い得て妙だと思った。人間の生態に反し、年々増していく光への忌避感は……まさに『呪い』だ。
「──ねぇ」
「うぇっ?」
外部からの干渉により、ようやく最低限の意識が回復する。
声を掛けてきたのは、若い男性。日本人としては高身長の、優しそうな雰囲気の青年だ。
「とりあえず、止まろっか」
「はい……?」
「自転車、降りれる?
……私は、何故自転車なんてものに乗っているんだ?
困惑しつつ、言われた通り車体を減速。慣性を失い不安定になるものの、青年の補助を受けつつ停止して降車する。
「さて、落ち着いて話せる状態になったところで……一つ確認。日本語は通じるって認識でいいんだよね?」
「あぁ……はい……」
「それでキミ、一人? 保護者の方は?」
「……いません」
「……それは、『今この場に』ってこと? それとも……」
「死にました」
「……そっか。お揃いだ」
青年も、随分若く見えるが。比較的平和なこの国でも、そういう不幸は転がっているらしい。
「帰る場所は、あるの?」
「…………さあ?」
両親と暮らした家には、帰れない。あのアパートは、『任務』が終われば焼き払う。マスターも、私も、沢山恨みを買っているから……帰った時、今の家が無事かも分からない。
(……服は綺麗で、体臭もない。だから生活拠点はこの近くにある筈と思ったんだけど……)
「……じゃあ、ウチに来なよ」
「あぁ……誤解させましたね。私、アパートの場所、わかります」
「……道、分かる?」
「はい」
「じゃあ、ここはどこ?」
「…………さあ?」
「ダメじゃん」
そう言って彼は苦笑いすると、しゃがんで手を差し出した。
「一緒に駅まで行こっか。あそこなら周辺の地図があるし、駅員さんに道を聞くでもいいし」
──〝他人との接触は避けろ〟
「…………」
回らない頭で少し考えたが、良い断り方は思い付かなかった。
だから私は、彼の手を取った。
──久しく忘れていた、人肌の温度。
「……名前」
「ん?」
「あなたの名前、まだ聞いてなかったので」
「あー、そういえばそうだったね」
そう言って振り返り、彼は名乗った。
「──
マモル……『safeguard』か。良い名前だ。
「キミは?」
「……ミラです。ミラ・ペイン」
「じゃあ、ペインちゃんだね」
──そうだ。私は『
「……今日は、ありがとうございました」
駅に着き、彼の手が離れたので、一礼をする。
「あっ、待って」
立ち去ろうとした私に、彼は再び手を差し出した。
「これ、オレの電話番号ね。何かあったら電話して。すぐ飛んでくから」
「…………」
パジャマの中に入っていた携帯を取り出し、番号を登録する。
……大丈夫だ。使わなければいい。
「携帯持ってたのかお前……ちょっと貸せ」
「あっ」
神崎さんと一緒に居た青年は、私から携帯を取り上げると、少し操作をした後返却した。
「コイツだって、すぐに動けない場合もあるからな。俺の電話番号も登録しておいた」
登録名は、『里見蓮太郎』
「……なんと、読むのですか?」
「サトミ、レンタロウだ」
「里見さん、ですね」
「蓮太郎でいい」
「オレも、真守でいいよ」
「……分かりました」
思わず実名で、『私もファーストネームでいいですよ』と言いそうになってしまった。
だけど、もうこの二人とは関わらない。関わってはいけない。何故なら私は、殺し屋だから。
「真守さん、蓮太郎さん──
私は、この腐った世界で出会った優しい人達を……きっと忘れない。