赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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第三話:破られた誓い

 

 薄々、察してはいた。蓮太郎さんのイニシエーター(パートナー)が、誰なのか。これは、そういうことなのだろう。

 

 だがオレにとっては『やっぱり』で済むことも、他の皆にとってはそうじゃない。

 

「──んだよコレ!? 冗談にしちゃタチが悪過ぎて面白くねぇって!!」

 

 大声で注目を集め、()()()()()()()()()黒板の字を雑に消す。

 結局のところ、皆が欲しがっているのは『話題』だ。より『面白そう』なことで目を引けば、今ならまだ笑い話にできる。たとえばそう──『誰が誰を好きなのか』

 

「なんだぁ真守ぅ? そんなに焦ってお前……藍原のこと好きなのかぁ!?」

 

 ナイスだ前田、お前ならノってくれると信じてたぜ。

 

「バッ、違ぇよ!」

「じゃあそんなに慌てなくっていいだろぉ? あんなん、誰も信じるワケねぇんだから!」

 

 前田の言葉に、皆が『そうだよねぇ』と同意する。

 ……意外に皆、冷静だ。これなら態々身体を張らなくてもよかったかもしれない。恥ずかしい。

 

「──おはようなのだ! 何やら騒がしいが、皆どうしたのだ?」

 

 そして間を置かず、延珠ちゃんが入室してきた。これで後は、延珠ちゃん本人が疑惑を否定してくれれば終了だ。

 

「いやー、いいタイミングで来たな。今ちょうどお前の話をしてたんだよ」

「ほう、妾の話か!」

「なんでか知らないけど、お前が()()()()()だって噂が立ってさ?」

「「────」」

 

 延珠ちゃんの動きがピシリと固まり、口元が少し引き攣った。オレの方も似たような状態だろう。

 

 だって──

 

「……前田。ガストレアじゃなくて、『呪われた子供』だろ?」

「細けえなぁ。()()()()()()じゃんか」

 

 ……、…………。

 

 思考が、停止している。

 理解できない。したくない。

 自然体で彼女達を『ガストレア』と同列に扱うその思考が、分からない。それを誰も咎めないクラスそのものが、キモチワルイ。

 

「……妾は、人間だ」

「知ってるよ。見りゃ分かる」

「ハハ……そうだな……」

 

 乾いた笑みで生返事をする延珠ちゃんを見て流石におかしいと思ったのか、前田も少し神妙な顔になる。

 

「……おい、藍原。お前は、()()よな?」

「何がだ……?」

「とぼけるなよ。『お前は呪われた子供なんかじゃねぇよな?』って聞いてんだ」

「……妾は人間だ」

 

 ──嘘だろ? 何故否定しないんだ。

 

「オイ、そういう思わせぶりなこと言うのやめろよ。コレは、『はい』か『いいえ』の二択。そして、ただ一言お前が『違う』と言えば済む話。それを変に引き伸ばすな。無駄に大事になる」

「…………」

 

 延珠ちゃんは(ランドセル)の肩紐を握りしめて俯き、唇を噛んだ。前田の目が鋭くなり、ワナワナと震え始めた。

 

「……おい、これ以上はシャレになんねぇぞ」

 

 延珠ちゃんは、何も言わない。教室内がざわつき始める。

 痺れを切らした前田が、最悪の行動に出る。

 

「もういい、自分で確かめる」

「おい前田、何を……?」

 

 前田は足早に席へ戻ると──()()()()()()()()()()()()()

 

「お前、それは流石に……!」

「うるせぇ! 今ここでハッキリさせねぇと、()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 ……あぁ、そうだよ前田。お前は良い奴だ。だからこそ、延珠ちゃんも嘘を吐きたくないのだろう。

 

「藍原、手ぇ出せ」

「……い、嫌だ」

「いいから手を出せって!! 指先をちょっと切るだけだから! それでお前の傷が治らなければ──」

「嫌だッ!」

「おい、藍原!!」

 

 延珠ちゃんは顔を真っ青にして、走り去った。

 

「うそ……」

「ねぇ、これってつまり……」

「マジかよ……」

 

 ……ダメだ。もう、おしまいだ。どうしようもない。

 

「……クソが」

「あぁ、本当にクソだよアイツ……! 今まで俺らのこと騙してやがった……!」

 

 違うんだ前田。クソはオレなんだよ。

 どうして、もっと上手く立ち回れなかったのか。

 

「……そんなに握ったら、手ぇ痛めるぞ。お前が俺よりショックを受けてるのは、分かるけどさ」

「……おう」

 

 なぁ、お前はどうしてそんなに優しいのに……呪われた子供たちには冷たくするんだ?

 

「たぶんしばらく、お前と舞はアレと仲が良かったから嫌がらせとかされると思うけど……大丈夫だからな。俺はずっとお前の味方で居てやる」

「……()()()()()

 

 あぁ、クソだ。吐き気がするほど性根が腐り切っている。

 呪われた子供たちを守ると誓ったくせに。いざとなったら何もしないどころか、目の前の一人を相手に啖呵を切ることすらできない臆病者。

 

 ──結局、オレの誓いはその程度だったのだ。

 

「……ちくしょう」

 

 この日の授業は、何も頭に入らなかった。

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