赤目の守護者 作:ブラブレ8巻難民
早くヒロインズとのイチャコラを書きたいけれど、まだ我慢だ……!
「わかりました。やります」
電話口からは『……いいのか?』という重い声。
少年は目を閉じ、話された内容を思い出して、舌で飴玉を転がすようにじっくり吟味して──それでも答えは変わらなかった。
「ここで『やらない』なんて選択肢、無いも同然でしょう。オレがやらないと、皆死んじゃうんですよね?」
『そんなことはねぇよ。今回の作戦は、自衛隊が主な指揮を執る。あいつらは関東会戦を、『ガストレア相手の集団戦』を経験しているプロだ。しかも今回はそれに加えて、俺達民警もいる。
──だからな、真守。
「ならどうして、オレに依頼のことを話したんですか? 断らせるつもりなら、始めから知らせなければよかったじゃないですか」
電話口から、大きく長い溜め息の音が聞こえた。
『そんなことをしても、意味はねぇよ。モノリスの白化現象は、いずれ隠し切れなくなるって話だ。そうなれば芋づる式に、アルデバランのことも世間に公表されるからな』
真守は声に出さず『なるほど』と首肯した。
『真実を知ればお前は、報酬の有無に関わらず戦いに行く。俺の知る『神崎真守』は、そういう奴だ』
故に止めるなら、彼が先走る前。今このタイミングしかないのだと、蓮太郎は言う。
対する真守は──見えないと分かりつつ、申し訳なさをごまかすように苦笑い。
「……蓮太郎さん、ごめんなさい。オレを止めたかったなら、その言葉は逆効果です」
『え?』
「実はオレ、人がどんだけ死のうが知ったこっちゃないと思ってます」
『──え?』
「自衛隊も、民警も、応援します。でもそれだけです。別に助けてあげたいとか、思ってません。市民の安全を守ってやる気もありません」
『でもさっきは、お前……』
「『皆』っていうのは、学校の皆のことですよ。
今のオレにとっては『病院で目が覚めてからの一ヶ月』が記憶の全てです。そこで関わった人達が、オレの全部。他は
……薄情でしょう? 昔のオレは、違かったのかもしれませんが。今のオレはこうなんです」
『違う! お前は薄情者なんかじゃない。今も昔も、お前って奴はどうして……!』
「ありがとうございます。オレを『薄情者じゃない』と言ってくれて、オレを止めてくれて──ありがとうございます。
オレは、そんな貴方のために戦いたいって思うんです」
だから逆効果なのだ。彼の狭い世界に住んでいた青年を、彼が好きになればなるほど──彼は『神崎真守』に戻っていく。
「依頼は受けます。聖天子様にそうお伝えください」
『駄目だ! 勝ち目がねぇんだよ、お前でも……!』
「と、言いますと?」
『戦闘機が落とされてるんだ。
「なるほど……だったら尚更、オレが行かないと」
『どうしてッ』
「オレなら死にません。敵のカードを暴いて、あわよくば潰せます」
『お前は不死身じゃない、死に難いだけだ! 自分から捨て駒になってどうする!? お前はもう少し、自分を大切にしてくれ……!』
「『もう少し自分を大切に』 ね──オレの台詞だ大バカ野郎」
「えっ」
突然語気が荒くなった真守に、蓮太郎は気圧された。
「どうして自分から責任を背負い込む? 矢面に立ちたがる? アンタは、オレよりたった6年早く産まれただけの只人だろ……!」
『真守、それでも俺は──』
「右手足と左目」
『……!』
「──バラニウムだろ。いつも忌々しい気配が漂ってる」
『気付いてたんだな』
「なんで失ったのかは知らねぇけどさ……生えてこないから、そうしてるんだろ?」
『そりゃ、な……』
「五体満足ですらない癖に、でしゃばるんじゃねぇよ。全身バラニウムのサイボーグにでもなるつもりか? なぁ──どうしてそんなに、脆い身体を痛めつけようとするんですか……?」
『……すまん』
電話口から聞こえてくる少年の声は、とても震えていて。荒い口調を維持することもできなくなっていて。心の底から蓮太郎を心配しているのだと、傍目にも分かった。
「蓮太郎さんが戦うなんて、許しませんから。絶対に」
『おいおい……なんで説得する側が逆になってるんだ?』
「ていうかそもそもですよ。蓮太郎さんが戦うってことは、パートナーの延珠ちゃんも戦うってことですよね? それはいいんですか?」
『ぅぐっ』
体内浸食率的にも、全くよろしくない。
「……依頼は受けます。イイですね?」
『…………駄目だ。相手は高度に組織化されてる。軍団相手に個人の戦力がどれだけ突出していても──』
「電話を切って、今すぐ出発してもいいんですよオレは」
『待て待て待て!!! 敵の座標も分からないのにどうする気だバカ!?』
「
『戦闘機が撃墜されてんだぞ!? 頼むから待て! せめてバックアップをだなぁ!!』
「つまり依頼は受けるってことでOKなんですね?」
『あぁクソっ、OKだコンチクショウ!』
こうして蓮太郎は折れた。心の奥底で『真守なら大丈夫』という信頼があったからだろう。
──実際、彼は任務から生還する。
数百体のガストレアを薙ぎ倒し、アルデバランの脳天をかち割った上で、帰還する。
その道中での絶望を、誰にも明かすことなく──
真守くん最大の鬱フラグがアップを始めました。皆さま対ショック姿勢をお取りください。ヒロインズはメンタルケアの準備をしてください。