赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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第二十六話:激突

 

「──ぁぁあああアアアアアア!!!」

 

 雑念を払うように叫んで、『敵』に向かって走る。

 

 元より知っていたことだ。オレはガストレアであって、人じゃない。

 それに、人でありたいとも思わない。一部を除けば、人間は嫌いだ。

 しかもオレは、記憶喪失。無くしたモノが偽物と分かったところで、未練はない。

 

 ……なのにどうして、こんなに息が苦しいんだろう?

 

「──あ゛? なんだテメェ、その動きは」

 

  天童式戦闘術 一の型三番 轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)

 

 オレの突進に『敵』は怯むことなく、捻りを加えた拳で出迎えた。

 こちらの手が奴に届くよりも早く、その一撃はオレの鳩尾(みぞおち)を強打し──突進前よりも更に遠くへ吹き飛ばした。

 

「ゴッッハ……!? う゛ぅぅ……!」

「オイ、オレの姿でド素人(しろうと)みたいな戦い方すんじゃねぇよ。見苦しい」

 

 あぁ、そうだった。『神崎真守』は天童流の使い手。武闘家だ。肉体のスペックが同じなら、技術のある方が勝つに決まっている。

 

 ──ならば、スペックを上げるまで。

 

「グッ、ゥゥゥウウウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!!」

「……え、ちょっ、オイオイオイ……そんなんアリか……?」

 

 何を驚いているのか。この身は偽物なれば。当然『真の姿』もあるだろう。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 最早、自分を偽る必要はない。この姿こそ、オレ本来の形。

 毒針を持った尾、(やすり)のようにザラザラとした鱗、鋭利な爪、死角を消すように配置された八つの目。そして何より()()()()()()()()()()()()()()()()

 まるで子供が考えた『戦うためだけに産まれた生物』だなと、自分でも思ってしまう。

 

 ──あぁ、そう()()()()()()()

 形象崩壊のために大量のウイルス摂取が必要とか、代償に理性が吹っ飛ぶとか……そんなのは、『人間』としての『枠』を越え過ぎないための『枷』だった。

 自分を偽物だと、ガストレアだと割り切った今……そんなものは不要だ。

 

「──死ね」

 

 先程同様突進し、力任せに拳を叩きつける。

 『神崎真守』も先程と同様に、天童流を用いた拳で迎撃するも……今度はこちらの完勝。敵は無様に地面へめり込んだ。昆虫のような鎧兜にはヒビが入っている。

 

「──死ね」

 

 無論奴がこの程度で死ぬ訳がないので、追撃にもう一発。鎧が剥がれて、血の付いた破片が飛んだ。

 

「ぅ、あ……」

「──死ね」

 

 まだ生きている様子なので、もう一発。何度でも何度でも、奴が息絶えるその時まで、叩くのみ。

 

止めてえええええ(stoooop!!!)!!!」

 

 横からの衝撃でバランスを崩し、拳が外れる。

 下手人は当然、

 

「アルデバラン……」

逃げて、ガーディ(Run away Guardi)!!」

 

「ぁ、あぁあ……ダメ、だ……! ソイツの狙いは、キミなのに……!」

 

「…………」

 

 ────オレは、容赦なく、アルデバランの脳天をかち割り殺した。

 

「あ……ああああああああッッ!!! よくも……! よくもやりやがったなお前!! ()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

「──ッッ」

 

 血の唾と涙を撒き散らしながら、少年は叫んだ。

 ……あぁ、そうだな。オレはコイツから東京エリアでの立場を奪い、ガストレアとしての拠り所も奪った。

 

「それがどうした!? 裏切り者の分際で何言ってやがるッ!!」

 

 尻尾の針で、腹を貫く。ガストレアに毒は効かないが、再生力を割かせるという意味では有効だ。

 

「大量虐殺の片棒担いで、何が『真の守護者』だ……! テメェの同類になるくらいなら、オレは記憶喪失のままでいい!!」

「は……? 記憶、喪失……?」

 

 疑問に答えてやる必要はない。コイツはもう死ぬのだから。

 針を刺したまま奴を持ち上げ、アルデバランの遺体に投げつける。総じて頑丈なガストレアの、最上位に君臨する個体だ。その遺体に叩きつけられた衝撃は、地面や岩石の比ではない。

 

 そしてトドメにもう一撃、全力の拳と電撃を浴びせる。

 通常の傷だけでも致命傷クラス。加えて毒を送り込み、傷口を焼いたのだ。もう再生はしないだろう。

 

「…………もしテメェが、アルデバランを倒すために駆けつけてくれてたなら……オレは、全部返してもよかったんだよ。バカ野郎……!」

 

 そう吐き捨てたオレは、八つ当たりのように道中のガストレアを薙ぎ倒しつつ、帰路に就いた。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「──Guar……di……」

「……ぁ、る……?」

 

 奴が立ち去って、遠くから聞こえる戦闘音もなくなった頃。

 愛しい声が聞こえて、なんとか返事をする。

 

どこ(Where)……?」

オレは、ここだよ(I’m here)……」

 

 背中をペチペチと叩き、位置を知らせてやる。すると彼女は長い首をもたげ、こちらに顔を近付けて──オレの口に、()()()()()()()

 

「──ングッ!?」

 

 反射的に顔を背け、咳き込んだ。

 

飲んで(Drink)お願い(please)……」

「飲めって、何言って……!?」

 

 ──いや待て。焼けた五臓六腑に染み渡る、この感覚……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……OK」

 

 今度は素直に、口移しを受け入れる。……いやめちゃくちゃ恥ずかしいけど、それはともかく。死に向かっていた筈の身体が、生き返っていくのが分かる。

 

「……凄い」

うん(Yeah)私強い(I’m strong)

 

 意識してみれば、彼女はとっくに無傷だったことに気付く。

 モノリス磁場の件と合わせて、もうヘトヘトだろうが……()()()()()()()()のだから恐ろしい。

 そんな感情を込めた一言は、言語の壁を越えて彼女に伝わったのだろう。彼女はおちゃらけた声で、自らの力を誇ってみせた。

 ……だけどすぐに、その虚勢は剥がれた。

 

だけど(But)……あの子はもっと強かった(he was more stronger)

「……大丈夫(All right)

 

 震える彼女の頭を優しく抱きしめ、宣言する。

 

次は、(Next,)オレが勝つ(I will win)

 

 強がりではない。奴とオレの素体は同じだ。ならば、同じこともできる筈。

 ──そして、()()()()()()()()()()()()()だ。何せこの二ヶ月ずっとガストレアの肉を喰っているんだから。加えて、アルの力も貰ったのだ。負ける筈がない。

 

「……信じてるよ(I believe you)

 

 ──あぁ。応えてみせよう。

 もう、色んなものを裏切ってきた。オレを『裏切り者』と呼んだアイツは正しい。

 

 だからこそ、もう裏切らないと決めたのだ──アルのことだけは、絶対に。




 
真守&アル((……ちなみにさっきのって、キスに入るのかな……?))

 実はどっちもしばらく悶々としてたり。
 二人共生き残ることができたなら、いつか人間に戻れるようになって、山奥とかで隠居して、罪を償いながら仲良く生きるのかもしれない。でないとあまりにも不幸過ぎる……(自分で設置した真守・偽守・アルデバランの死亡フラグ数から目を逸らしつつ)
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