赤目の守護者 作:ブラブレ8巻難民
「──ぁぁあああアアアアアア!!!」
雑念を払うように叫んで、『敵』に向かって走る。
元より知っていたことだ。オレはガストレアであって、人じゃない。
それに、人でありたいとも思わない。一部を除けば、人間は嫌いだ。
しかもオレは、記憶喪失。無くしたモノが偽物と分かったところで、未練はない。
……なのにどうして、こんなに息が苦しいんだろう?
「──あ゛? なんだテメェ、その動きは」
天童式戦闘術 一の型三番
オレの突進に『敵』は怯むことなく、捻りを加えた拳で出迎えた。
こちらの手が奴に届くよりも早く、その一撃はオレの
「ゴッッハ……!? う゛ぅぅ……!」
「オイ、オレの姿でド
あぁ、そうだった。『神崎真守』は天童流の使い手。武闘家だ。肉体のスペックが同じなら、技術のある方が勝つに決まっている。
──ならば、スペックを上げるまで。
「グッ、ゥゥゥウウウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!!」
「……え、ちょっ、オイオイオイ……そんなんアリか……?」
何を驚いているのか。この身は偽物なれば。当然『真の姿』もあるだろう。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
最早、自分を偽る必要はない。この姿こそ、オレ本来の形。
毒針を持った尾、
まるで子供が考えた『戦うためだけに産まれた生物』だなと、自分でも思ってしまう。
──あぁ、そう
形象崩壊のために大量のウイルス摂取が必要とか、代償に理性が吹っ飛ぶとか……そんなのは、『人間』としての『枠』を越え過ぎないための『枷』だった。
自分を偽物だと、ガストレアだと割り切った今……そんなものは不要だ。
「──死ね」
先程同様突進し、力任せに拳を叩きつける。
『神崎真守』も先程と同様に、天童流を用いた拳で迎撃するも……今度はこちらの完勝。敵は無様に地面へめり込んだ。昆虫のような鎧兜にはヒビが入っている。
「──死ね」
無論奴がこの程度で死ぬ訳がないので、追撃にもう一発。鎧が剥がれて、血の付いた破片が飛んだ。
「ぅ、あ……」
「──死ね」
まだ生きている様子なので、もう一発。何度でも何度でも、奴が息絶えるその時まで、叩くのみ。
「
横からの衝撃でバランスを崩し、拳が外れる。
下手人は当然、
「アルデバラン……」
「
「ぁ、あぁあ……ダメ、だ……! ソイツの狙いは、キミなのに……!」
「…………」
────オレは、容赦なく、アルデバランの脳天をかち割り殺した。
「あ……ああああああああッッ!!! よくも……! よくもやりやがったなお前!!
「──ッッ」
血の唾と涙を撒き散らしながら、少年は叫んだ。
……あぁ、そうだな。オレはコイツから東京エリアでの立場を奪い、ガストレアとしての拠り所も奪った。
「それがどうした!? 裏切り者の分際で何言ってやがるッ!!」
尻尾の針で、腹を貫く。ガストレアに毒は効かないが、再生力を割かせるという意味では有効だ。
「大量虐殺の片棒担いで、何が『真の守護者』だ……! テメェの同類になるくらいなら、オレは記憶喪失のままでいい!!」
「は……? 記憶、喪失……?」
疑問に答えてやる必要はない。コイツはもう死ぬのだから。
針を刺したまま奴を持ち上げ、アルデバランの遺体に投げつける。総じて頑丈なガストレアの、最上位に君臨する個体だ。その遺体に叩きつけられた衝撃は、地面や岩石の比ではない。
そしてトドメにもう一撃、全力の拳と電撃を浴びせる。
通常の傷だけでも致命傷クラス。加えて毒を送り込み、傷口を焼いたのだ。もう再生はしないだろう。
「…………もしテメェが、アルデバランを倒すために駆けつけてくれてたなら……オレは、全部返してもよかったんだよ。バカ野郎……!」
そう吐き捨てたオレは、八つ当たりのように道中のガストレアを薙ぎ倒しつつ、帰路に就いた。
*
「──Guar……di……」
「……ぁ、る……?」
奴が立ち去って、遠くから聞こえる戦闘音もなくなった頃。
愛しい声が聞こえて、なんとか返事をする。
「
「
背中をペチペチと叩き、位置を知らせてやる。すると彼女は長い首をもたげ、こちらに顔を近付けて──オレの口に、
「──ングッ!?」
反射的に顔を背け、咳き込んだ。
「
「飲めって、何言って……!?」
──いや待て。焼けた五臓六腑に染み渡る、この感覚……
「……OK」
今度は素直に、口移しを受け入れる。……いやめちゃくちゃ恥ずかしいけど、それはともかく。死に向かっていた筈の身体が、生き返っていくのが分かる。
「……凄い」
「
意識してみれば、彼女はとっくに無傷だったことに気付く。
モノリス磁場の件と合わせて、もうヘトヘトだろうが……
そんな感情を込めた一言は、言語の壁を越えて彼女に伝わったのだろう。彼女はおちゃらけた声で、自らの力を誇ってみせた。
……だけどすぐに、その虚勢は剥がれた。
「
「……
震える彼女の頭を優しく抱きしめ、宣言する。
「
強がりではない。奴とオレの素体は同じだ。ならば、同じこともできる筈。
──そして、
「……
──あぁ。応えてみせよう。
もう、色んなものを裏切ってきた。オレを『裏切り者』と呼んだアイツは正しい。
だからこそ、もう裏切らないと決めたのだ──アルのことだけは、絶対に。
真守&アル((……ちなみにさっきのって、キスに入るのかな……?))
実はどっちもしばらく悶々としてたり。
二人共生き残ることができたなら、いつか人間に戻れるようになって、山奥とかで隠居して、罪を償いながら仲良く生きるのかもしれない。でないとあまりにも不幸過ぎる……(自分で設置した真守・偽守・アルデバランの死亡フラグ数から目を逸らしつつ)