赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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第三十一話:開戦

 

「蓮太郎……自衛隊、勝つかな」

「勝つだろうな」

 

 ──負ける道理が無い。

 敵の数は多いが、第二次関東会戦の時と違って()()()()。有限なのだ。しかも敵の総大将と大駒は、既に『彼』が掃討してある。

 ……真の英雄が誰だったのかも知らぬまま、奴らはお膳立てされた勝利を誇るだろう。滑稽で滑稽で、涙が出そうだ。

 

 戦火と轟音犇く最前線──その遥か後方にて、俺達民警軍団は待機していた。指揮系統としては自衛隊が完全な上位にいるので……俺達には、何もできない。戦闘に一切介入できず、無駄な時間を過ごしているだけ。

 ……本当に、あまりにも無駄だ。非合理的にも程がある。

 人間の集中力は、最長でも数時間しか持続しない。何もしなくたって、気力と体力は磨り減っていく。そんな状態で、もう六時間だ。アホらしい。

 そもそも民警の装備じゃ、こんな位置から救援に向かっても無駄だし、かと言って移動しなければ、地形がガストレアに有利過ぎる。頭痛が痛くなるわクソったれ。

 

 ────そして、長い長い虚無の時間が終わり……最前線から、一人の自衛官が向かってきた。周囲から、歓声が上がる。

 

「…………ぇ?」

「……そんな、バカな」

 

 ……? ティナと夏世は、何故かその自衛官を見て目を剥いているが……どうしたのだろうか?

 分からないが……最前列にいたアジュバントのイニシエーターが一人、自衛官を出迎えに走り出した。

 

「──あっ、ぁ……」

「待っ……! いえ、落ち着きなさい私。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから絶対、あり得ない……!」

 

 

「──出迎えご苦労。キミに敬意を表し、()()も礼を返すとしよう」

 

 

 遠くて何を言っているのかは聞こえないが、自衛官が足を止め、大きく息を吸い込んだのは分かった。

 

 ──そして、絶望が始まる。

 

 

「総員、開眼ッッ!!!」

 

 

 暗闇に、無数の光が灯った。

 その全てが、赤色の光だった。

 

 ──統率された、ガストレア軍の眼だった。

 

 

『GAAAAAAA!!!!』

 

「──敵襲だッ!! 総員、構えよ!!!」

 

 

 ガストレアの咆哮が響くや否や、我堂団長の号令で各々が戦闘態勢に入る。それはいい。それはいい、の、だが……。

 

 発光する目を閉じて、闇夜に隠れ、音を立てず、号令で一斉に『開眼』だと? いくらガストレアは知能が高いとは言え、統率が取れ過ぎている。

 

 それに、何より……

 

 

「────うそだ」

「テメェは、誰だ……ッ!」

 

 

 それらを指揮している、()()は何だ?

 

 たった今形象崩壊した、あの軍服を着ていた野郎は……どうして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ?

 

 ──どうして、『()()()()()()()()()()

 

「撃てッッ!!」

 

 解答を得るより先に、最前列から響く大量の炸裂音で思考が真っ白になる。

 ……銃声はすぐに止んだ。訓練通り、敵は引き付けてから撃つ。無駄弾は使っていない。だから何も問題は無い。

 死んだ筈だ。『彼』も、奴も。

 

 

「さて、静かになったところで……話をしようか」

 

 

 ────では何故、生きているんだ。

 

 

「我が名はガーディ!! ガストレア軍副将、『ガーディ』である!!! 戦う前に、対話をしようではないか!!」

 

 

 お前は、誰なんだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 ──誰だ。

 

「──惑わされるなッ! ガストレアに人の言葉は解らん!!」

「面白い冗談だッ! では貴様らが『呪われた子』と呼ぶこの娘らは、当然余すことなく基本的人権に則った健康で文化的な生活を送っているんだろうなァ!?」

 

「──何?」

 

 団長の声が、困惑に染まる。小さくなる。

 だが妾には、聞こえている。きっとティナも、夏世も、翠も、聞こえている。ガーディと名乗った『アレ』の声が、ハッキリと。

 

 そして、奴の足元──そこで元気に震えている()()()()()()()()()()が吐く息の音まで、聞こえている。

 

 

「知っているぞ、貴様らが『呪われた子供たち』をどう扱っているのか……!

 ガストレアと呼ばれて蔑まれ、虐げられ、義務教育の場から追いやられた娘を、オレは知っているぞ!! そのくせ貴様らは、この娘らにこの場で組織立って戦うよう言い聞かせているではないか!!」

 

 

 あぁ、あぁ……やめてくれ。

 どうして、そんなことを言うのだ。よりにもよって()()()()、どうして。

 

 

「どういうことだよ、なァ!? ガストレアに言葉は解らねえんだろ!? じゃあどうして、イニシエーターが此処に居る!? 彼女らが言葉の通じる存在だと知っていながら、どうして!!!」

 

 

 どうしてお主は……『死んだ我が友』のようなことを、言うのだ。彼にそっくりな、その声で。

 

 

「──黙れッ! モノリスを破壊した侵略者と話すことは何も無いッ!!」

「貴様に無くとも我々には有るッ!!」

「聞く耳持たん!!」

「いいから聞けよ禿茶瓶(ハゲチャビン)ッ!」

「──総員、戦闘準備ッ!!」

 

「…………あぁ、そう。じゃあもう、いいよ」

 

 

 ──やめてくれ。

 

 

滅びろ、ニンゲン

 

 

 これ以上、妾の友達を(はずかし)めないでくれ。

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