赤目の守護者 作:ブラブレ8巻難民
突撃命令を出し、目を閉じて、息を落ち着かせる。
そうすれば、この身は再び人間大に戻っていく。夜闇とモノリス粉塵、硝煙等々により、その様子を確認できる者はいないだろう。
『──〝
対話を試みたのも、オレごと撃たれそうになった娘を守ったのも、オレの我儘だ。
『……どうしてわざわざ、そんなことを?』
……アルの説得には苦労した。
まずお互い
『──〝元の姿に戻りたくはないか〟って……それは……半々、かな。ガーディみたいに切り替えができるなら、嬉しいけど』
彼女もオレと同じく、人の意識を残している。ならば当然、文明が恋しくなる時もあるだろう。
故に、取り付く島もない……ということはなかった。問題は、手段だ。
『東京エリアを、乗っ取る……?
…………別に、私は構わないわよ?
全てのガストレアは、何故か人類を優先して攻撃する。それは『子供たち』が相手でも変わらない。
アルの統率能力は、フェロモンを使った『沈静化』と『煽動』だ。そこに彼女自身の軍略とサバイバル知識が加わることで、驚異的な能力と化しているが……言ってしまえば『0か100か』な能力なので、手加減は一切できない。
──なので、そこは地道に頑張った。
『…………一体一体、直接教え込む……? 冗談でしょ? ……え、本気??』
ガストレアウイルスの制御は、既にできるようになっていた。オレと同じ素体から生まれたアイツも、考えてみれば『子供たち』だって、力のON OFFはできるのだ。オレにできない道理は無い。
──手順はこうだ。
オレは目の色を瞳だけ赤くして、ガストレアの前に立つ。そしてアルに、『沈静化』を使ってもらう。
当然それでもオレは襲われるが、それをアルが力尽くで取り押さえて、叱り付ける。
その後、別個体で行う。ガストレアには集団意識があるので、繰り返すことで意識が統一されていく。
……正直、めちゃくちゃ面倒だった。奴に軍勢を減らされたのが、逆に幸運だった。
それと、ガストレアの知能が高いことに初めて感謝した。成功したのは、彼らが『察してくれた』のが大きい。犬の躾だって、ホントはもっと丁寧にやるもんだからね。
これで、最初に集めた軍勢はイニシエーターを攻撃しなくなった。
──だから、自衛隊員は全員この手で殺した。
頭の悪い配置をしていることは、携帯を盗みにエリアへ入った時すぐに分かった。人間は、ガストレアが情報戦なんてする筈ないと思ってるから。
せっかくの手駒を失いたくなかったし、ガストレア化させたらそいつは『子供たち』にも攻撃するから、自衛隊は普通に殺した。
とても簡単だった。自衛隊の装備は必ずバラニウム製だから、磁気で逸らせばオレには当たらない。
逆に、オレは遠距離範囲攻撃ができる。鉄砲魚の因子で薙ぎ払ってもいいし、爆弾を反射してもいい。殺すだけなら、何も苦労は無かった。
そして、民警軍団の位置まで進軍するのも簡単だった。
──奴は、来なかった。
理由は分からない。オレが前線に出た時か、遅くとも自衛隊が全滅した時には、来ると読んでいたのだが。
事実として、オレは到達してしまった。
号令は発した。オレを避けながら、ガストレアの群れが雪崩れ込んでいく。
悲鳴、銃声、怒声。土煙と、血飛沫が舞う。
誰かの首が、千切れ飛ぶ。
女の子の首だ。
「────ぁ」
解っていたことだ。
命令を無視して殺す奴は必ずいる。味方からの誤射で死ぬ娘も出る。それにこちらから攻撃しなくても、攻撃されて反撃するなとは言えない。勇敢に戦う娘ほど、死にやすい。
──あぁ、人を殺してしまった。
『子供たち』を、殺してしまった。
もう、後戻りはできない。
「…………さくせん、どおりに」
甲冑を纏う。虫の羽で、空を飛ぶ。
向かうのは敵陣裏手。挟み撃ちだ。