赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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第三十一話(B)

 

 突撃命令を出し、目を閉じて、息を落ち着かせる。

 そうすれば、この身は再び人間大に戻っていく。夜闇とモノリス粉塵、硝煙等々により、その様子を確認できる者はいないだろう。

 

 

『──〝子供たち(チルドレン)〟には手を出すな……? 本気で言ってるの?』

 

 

 対話を試みたのも、オレごと撃たれそうになった娘を守ったのも、オレの我儘だ。

 

『……どうしてわざわざ、そんなことを?』

 

 ……アルの説得には苦労した。

 まずお互い第二言語(英語)だけだと限界があったから、内地からスマホを盗んで翻訳アプリを介して話すことにした。

 

『──〝元の姿に戻りたくはないか〟って……それは……半々、かな。ガーディみたいに切り替えができるなら、嬉しいけど』

 

 彼女もオレと同じく、人の意識を残している。ならば当然、文明が恋しくなる時もあるだろう。

 故に、取り付く島もない……ということはなかった。問題は、手段だ。

 

『東京エリアを、乗っ取る……?

 …………別に、私は構わないわよ? ()()。でも、軍全体にどう命令する気? 流石にそこまで細かい指示はできないわよ?』

 

 全てのガストレアは、何故か人類を優先して攻撃する。それは『子供たち』が相手でも変わらない。

 アルの統率能力は、フェロモンを使った『沈静化』と『煽動』だ。そこに彼女自身の軍略とサバイバル知識が加わることで、驚異的な能力と化しているが……言ってしまえば『0か100か』な能力なので、手加減は一切できない。

 

 ──なので、そこは地道に頑張った。

 

『…………一体一体、直接教え込む……? 冗談でしょ? ……え、本気??』

 

 ガストレアウイルスの制御は、既にできるようになっていた。オレと同じ素体から生まれたアイツも、考えてみれば『子供たち』だって、力のON OFFはできるのだ。オレにできない道理は無い。

 

 ──手順はこうだ。

 オレは目の色を瞳だけ赤くして、ガストレアの前に立つ。そしてアルに、『沈静化』を使ってもらう。

 当然それでもオレは襲われるが、それをアルが力尽くで取り押さえて、叱り付ける。

 その後、別個体で行う。ガストレアには集団意識があるので、繰り返すことで意識が統一されていく。

 

 ……正直、めちゃくちゃ面倒だった。奴に軍勢を減らされたのが、逆に幸運だった。

 それと、ガストレアの知能が高いことに初めて感謝した。成功したのは、彼らが『察してくれた』のが大きい。犬の躾だって、ホントはもっと丁寧にやるもんだからね。

 

 これで、最初に集めた軍勢はイニシエーターを攻撃しなくなった。

 

 

 ──だから、自衛隊員は全員この手で殺した。

 

 

 頭の悪い配置をしていることは、携帯を盗みにエリアへ入った時すぐに分かった。人間は、ガストレアが情報戦なんてする筈ないと思ってるから。

 せっかくの手駒を失いたくなかったし、ガストレア化させたらそいつは『子供たち』にも攻撃するから、自衛隊は普通に殺した。

 とても簡単だった。自衛隊の装備は必ずバラニウム製だから、磁気で逸らせばオレには当たらない。

 逆に、オレは遠距離範囲攻撃ができる。鉄砲魚の因子で薙ぎ払ってもいいし、爆弾を反射してもいい。殺すだけなら、何も苦労は無かった。

 

 そして、民警軍団の位置まで進軍するのも簡単だった。

 

 ──奴は、来なかった。

 

 理由は分からない。オレが前線に出た時か、遅くとも自衛隊が全滅した時には、来ると読んでいたのだが。

 

 事実として、オレは到達してしまった。

 

 号令は発した。オレを避けながら、ガストレアの群れが雪崩れ込んでいく。

 

 悲鳴、銃声、怒声。土煙と、血飛沫が舞う。

 

 誰かの首が、千切れ飛ぶ。

 

 

 女の子の首だ。

 

 

「────ぁ」

 

 

 解っていたことだ。

 

 命令を無視して殺す奴は必ずいる。味方からの誤射で死ぬ娘も出る。それにこちらから攻撃しなくても、攻撃されて反撃するなとは言えない。勇敢に戦う娘ほど、死にやすい。

 

 

 ──あぁ、人を殺してしまった。

 

 

 『子供たち』を、殺してしまった。

 

 

 もう、後戻りはできない。

 

 

「…………さくせん、どおりに」

 

 

 甲冑を纏う。虫の羽で、空を飛ぶ。

 

 向かうのは敵陣裏手。挟み撃ちだ。

 

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