赤目の守護者   作:ブラブレ8巻難民

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第五話:『同じ』という呪い

 

「むにゃ……ふふ……れんたろー……」

「……よく寝てるな」

 

 優等生の延珠にしては珍しく、学校へ行く時間になっても目覚める気配がない。昨日……というか今日は深夜まで起きていたのだから、無理もない話だが。

 

「……俺も、今日は久しぶりにサボるか」

 

 最近は真面目に学校へ通っていたのだが、延珠が目覚めた時に俺が居ないのでは悲しいだろう。そう思い、朝食の追加メニューを作りながら延珠の起床を待っていると……

 

「──なっ、もうこんな時間か!? 何故起こしてくれなかったのだ蓮太郎! というかお主も授業はいいのか!?」

「おはよう延珠。朝メシできてるぞー」

「おぉ、今日は随分と豪勢な──って違う! 何を堂々とサボっているのだお主は!?」

「俺だけ学校に行くのも悪いと思ってな」

「……いや、妾も登校するぞ」

 

 ギョッとして、延珠の目を見る。

 ……本気だ。延珠は本当に、自分が呪われた子供であると知れたクラスに戻る気でいる。

 

「大丈夫、なのか?」

「……みんな、悪い奴ではないのだ。話せばきっと、分かり合える」

 

 俺はそれを『楽観』だと、『皆が皆、真守のようにはいかない』と、そう言って止めるべきなのだろう。

 だが、それでいいのか? この腐った世界で生き続ける限り、この問題からは逃れられない。その問題に自分から立ち向かおうとする彼女を、本当に止めるべきなのか?

 

「……あぁ、そうだな。頑張れよ、延珠」

「うむ!」

 

 結局俺は、延珠を送り出した。

 不安と心配で胸が一杯だったが、真守がいるなら最悪の事態だけは避けられるだろうと──そう思って、送り出した。

 

 その結果……

 

 

 

 *

 

 

 

「みんな、おはようなのだ!!」

『…………』

 

 昼休みの時間。『いつも』のように、4年3組の扉を開けて挨拶をする。だけどクラスの反応は、当然ながら『普段通り』とはいかない。

 地獄のような静寂と、冷たい目。解っていた拒絶であっても、やはり辛い。

 

 ──だけど大丈夫。そんな中にあっても、己の味方となってくれる者が居る。それを知っているから、耐えられる。

 

「……お前、よくここに顔を出せたな」

「皆ともう一度、友達になりたくてだな──っ」

 

 前田はズンズンとこちらに迫って来て、思いっ切り妾の頬を殴った。

 骨を折り、肉を抉るガストレアの攻撃に比べればなんてことはないが……肉体よりも、心が痛い。親指を握り込んで殴っていたから、きっと前田は今ので、指の骨が折れている。

 

「……保険室に、行った方がいい」

「余計なお世話だクソ野郎……! 今すぐ出ていけッ、真守と舞が戻ってくる前に……!」

「二人に何かあったのか!?」

「しらばっくれやがって……!」

 

 慌ててクラス内を見渡すが、確かに二人の姿がない。

 ──猛烈に、嫌な予感がする。『ここに居てはいけない』と、本能が今更ながらに警鐘を鳴らしている。

 

「アイツらの両親が……! 昨日仕事中に、()()()()()()()()()()()()ッ!!」

「……ぇ」

 

 殺された? 真守の家族が、自分と同じイニシエーターに?

 

『呪われた子供がやったんだ』

『お前達がやったんだ』

『だから、お前が殺した』

 

「ちっ、違う。妾じゃない」

 

 でも、真守はそう納得してくれるのか?

 これを機に、このクラスメイト達と同じになるのではないか?

 

『何も違わない』

『お前も、他の呪われた子供も』

『真守も舞も、俺達も』

『同じだ』

 

 ────逃げた。

 赤い目を晒すことも厭わず、全力でアパートまで逃げ帰った。

 

「うっ、クッ……! ぅああぁあ……!!」

 

 帰って、布団を被って、思いっきり泣いた。声を殺すためというよりも、何も視界に入れないために。

 

 ──でないと、何もかも壊してしまいそうだったから。

 

「──延珠、大丈夫かっ延珠!!」

「れんたろぉぉぉ」

 

 担任から連絡が行ったのだろう。蓮太郎もすぐに帰ってきた。

 抱きつくと、優しく背中をさすってくれる。

 

「どうした、何があった?」

「まもるのっ、舞ちゃんの、両親が……!」

 

 学校で聞いたことを話すと、蓮太郎も顔を歪めた。

 

「そんな……どうしてそんなことが起こるんだよ……! チクショウ……ッ!」

 

 そうして二人で泣いて、泣いて──蓮太郎はハッとした顔で、携帯を取り出した。

 

『里見くん、どうしたの? ケースの件?』

「いや、直接関係のある話じゃないんだけどよ……社長には、今回の作戦に参加してる民警の名簿が渡されてる筈だ。その中に、()()()()()()()()()()?」

『ちょっと待ってね、今確認するから──うん、()()()()わね。それが?』

「その二人の名前って、もしかして……」

 

 真守はよく、家族の話をしていた。名前も何度か聞いたことがある。特に彼と同じ『守護』の文字が含まれている、父のことは。

 

『……そうよ。知り合い?』

「……知り合いの、両親だ」

『……そう』

 

 電話を切った蓮太郎は目を閉じて、深呼吸を数回した後──ドス黒い目で妾を見て、言った。

 

「アイツの両親を殺したのは、蛭子小比奈だ」

「そうか。あやつか」

 

 ──きっと妾も、同じ目をしている。

 

「次に会うのが、たのしみだ」

 

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