呪霊は養分   作:スマホ割れ太郎

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1.始まり

1.

 

 俺こと神凪真(かんなぎまこと)は、人に見えないものが見える。

 

 それが人にとって良くないものだというのは見えるものになら誰にでもわかると思う。日の当たらない裏路地、人の立ち入らない廃墟、荒れた共同墓地など、なんとなくいそうな場所には大体いる。つまりは悪霊だ。

 霊といっても人型をしたものは殆どおらず、虫や動物を象ったものやそれ以前の不定形の名状しがたい姿の奴らが多い。つまりは知性を全く感じさせず人語も解さないが、人を害そうとする意思だけは感じさせる。

 

 普通の奴らには見えもせず対処もできないという、たちの悪い害悪であることには間違いないが、直接的に人を害するまで力を持った存在は稀だ。大抵は肩が重くなったり、寒気を与えたりなどしょーもない悪影響しか与えられないものがほとんど。

 昔の俺は人並みにはお人好しであり、クラスの友達や家族の知人の悪霊が関係している問題を解決していった結果、近所の霊感少年としてかなり有名になってしまっていた。

 

「なぁー、前から頼んでるけど、肝試し、神凪もついてきてくれよぉ」

「嫌だよ面倒くさい」

 

 霊感があるというのは間違いではないし日常的に駆除活動はしているが、今では公言していないにも関わらず俺には霊感少年のイメージが定着してしまっており、今のような頼み事をされることも珍しくなかった。ちゃんと断っておかないとキリが無くなる。

 

「大体俺がいかなくても問題ねーだろ。なんもでねーってば。どうせ女子にいいカッコしたいだけだろーし寧ろ邪魔じゃね?」

「いやぁ、牧野が前にガチの心霊現象に出くわしたって、神凪が頼りになるって聞いてさ。念のため保険が欲しいじゃん?神凪は彼女いるし興味ねーだろーけど、お礼もするからさぁ」

「いや俺彼女いねーから。好きな人はいるけど。つーかそんなに心配なら別の遊びにしろよな。あいつからやめとけって言われなかった?」

「まー言われたけどさぁ、ぶっちゃけ俺も心霊スポットなんて苦手だけど、白木さんこういうの好きっていうしなぁ」

 

知らんがな。いやまぁ保険として俺に頼むのは間違ってない。大抵の悪霊はぶっ殺せる自信はあるし。世に心霊スポットと認識されているところには出やすいというのはある。俺が見ていた中でも襲われかけた人間がいないわけじゃない。一応こういうときは毎回行かないように説得しているのだが、功を奏することは少なく大抵ついていっている気もする。

 

「うーん、そうだなぁ、1週間昼の購買奢ってくれたらいいよ」

「うー、ちょっとキツイけど、そのくらいならOK!日程は来週の土曜の夜だから空けといて!また連絡するわ」

「りょーかい」

 

 結局了承してしまった。面倒ではあるが仕方ない。

今の田島ってやつとは顔を合わせたら少し話す程度の仲でしかないけど、なんかあって寝覚めが悪くなるのも嫌だし、と考えるあたり今でもまだお人好しなきらいがあるな。どいつもこいつも頼ってくるわけだ。

 

 

 

 夜。悪霊と、俺の時間だ。

 昼間、肝試しに同行するのが面倒だといったが、他人を気遣うのが面倒だというだけで、悪霊を祓うのは別に苦じゃない。寧ろ俺は毎日のように奴らを狩って回っている。

 理由は俺にある能力のため。

 

 俺の体は悪霊を狩れば狩るほど少しずつ強くなる。

このことに気づいたのは数年前、まだ小学生のころだったか。今ほど積極的に悪霊狩りをしていなかったころ。普段見かける吹けば飛ぶような霊と違う、強めの霊を祓ったあと、身体に力がみなぎるような感覚があった。単純な筋力、頑丈さや視力、聴力などの五感の強化。それと俺には普通の人間が知覚していない霊力のようなものが見えており、体を巡るその力も増えるということに気づいた。

 

 それ以来暇さえあればこうして霊狩りの夜に出かけている。

雑魚でも数をこなせばそこそこ経験値は溜まるようで、身体能力だけでもゴリラをボコボコにできると思うくらいの力は付いていると思う。そこに霊力を乗せて殴れば威力は倍以上。

 まあ使い道はこうして霊を狩る以外ないんだが。こんな特殊能力をもっててスポーツで無双しても虚しいだけだし、部活はとある文化部にしか入っていない。単純な力で解決できることなんて今の世の中そんなに多くないんだよな。水の上走れる?ふーんだからなにって感じ。

 まあ害虫駆除しながら体も鍛えられて一石二鳥って感覚だ。

 

 

 市街地外れの県道沿いの崖。俺がよく愛用している狩りスポットだ。

 昔はよく飛び降り自殺が横行していたらしい。その影響もあって周辺には厳重な柵や自殺を思いとどまらせるポスターや標語などが貼ってある。警察も定期的に巡回しており、その甲斐もあって自殺者は激減しているらしい。

 だが今は減っているとはいえ、人生に絶望した人間たちの終着点。相当負の念が溜まりやすいらしく、定期的に悪霊がスポーンするため獲物に事欠かない。俺の用事があるのはこの崖下。

 

 柵をジャンプで飛び越えて一息で下まで降りる。大体20m以上、ビル6~7階くらいの高さだろうか。普通は飛び降りたら足ぐちゃぐちゃはもちろん全身を強く打った(隠語)、即死の状態になる。

 昔は不可能な芸当だったが今の俺の能力では難なく可能。

 全身を霊力で強化して着地の衝撃を全身で殺す。

 衝撃。足の先から頭のてっぺんまで吹き抜ける力があるが、強化された肉体を崩すことはない。

 

 「でもやっぱまだ結構来るな。下手な体勢とったら比喩じゃなく骨が折れるぞ」

 

 で俺の目的は、いたな。

 いつもの如く、その辺の木っ端よりは存在感のあるブヨブヨしたそいつ。人面が体のいたるところについているのは自殺者の面を表しているのだろうか?人面のついたぶよぶよイモムシが木の根っこのように枝分かれしており手足も根毛のように無数に生えている。

 全長5mくらいはあるだろうか、普通にデカくてキモい。コレ野放しにしてたらどうなるんだろうな。確かめるすべはないが、自殺者の半分くらいコイツの同類に殺られたやつじゃないだろうか。

 感じる存在感からして、俺の敵じゃないけど。

 

 普段どおり殴って終わらせてもいいが、最近編み出した技を使おうか。

 大量の霊力を右手に圧縮、刃状にして薄く研ぎ上げる。この霊力というやつが曲者で、使用者の思念に反応するらしく結構集中力を要する。身体強化もできるんだから、大量に量を押し込んでやればこんなふうに物理的な武器として使えるだろうと思って練習していたが、結構斬れそうだ。

 

 こちらに脅威を感じ取ったらしい悪霊が、分岐した部分を触手のように飛ばしてくるが、鈍い。

 紙一重で躱して、交差する間に右手の剣撃を叩き込む。

 

 「うん、よく斬れるな」

 

 かまぼこ切ってるような感覚で斬れる。触手を存分に切り刻みつつ、一息に接敵して全身膾切りにしてやる。

 結局抵抗する間もなく消滅させてしまった。練習にすらならなかったな。

 経験値としてもそこまで美味しくはない。前来たときよりも明らかに弱くなってるし、そろそろここに溜まる負の念も枯渇してきたか。

 

 「もっと手応えのある奴相手じゃないと燃費の確認ができん」

 

 これならそこらのコンクリートの方が硬かった。

 といっても守備範囲の悪霊は狩り尽くしてきた感があるし、そろそろ部活に戻ろうか。

 

 

 

 

 翌日。

 俺は手芸部という部活に所属している。まあ早い話小物作りだ。

 だが俺みたいな人間が出入りしている部活だし、普通の部活じゃないし普通のものづくりじゃない。

 それは正真正銘呪いの籠もった呪具だ。

 

 「うーっす。久しぶりです」

 「真!あんた部活どんだけサボったと思ってんの?」

 「たった2週間ですよね?それに前もって言ってましたよね」

 「知らん!埋め合わせとしてノルマ100枚」

 

 この手芸部は通称呪術部ともいう。霊験あらたかな御札や置物、お守りなんかに学びながらを歴史を学びながら小物を制作する、という体のマジモンの呪具製作所だ。ちなみに呪具を作るだけじゃなくて霊関係のお悩み相談もやっている。許可をとって校舎の一室を借りているがほぼ私物化されている。色々ゆるゆるの田舎の学校だからできることだな。

 

 この人、雨池空(あまいけそら)さんは俺の一つ上の先輩で、家が神社。そして俺の同類の『見える人』だ。

俺は小学生のときから近所の霊感少年として有名だったためか、向こうは入学前から俺のことを認知していたらしく、中学入学早々にこの部活に引っ張り込まれた。

 世の中悪霊がうじゃうじゃいるわけで、彼女の家はそういう霊に対して効果のある心霊グッズ、いわゆる呪具というものを自前で制作して売っている。つまり俺はここで彼女の稼業の手伝いをしているというわけだ。

 

 この部活に入ってから、先輩には色々なことを教わっている。基本的な知識や技術について。

まず俺たちのような『見える』人間のことを呪術師というらしい。俺の両親は見えない人たちだから、先祖代々呪術師の先輩のような家が知っている常識を知らない。まあ別に本格的に業界に関わりたいわけじゃないし知らなくても不都合しないんだけど。

 

 呪術師だけが扱える霊力のようなものを呪力、呪力で構成された人に害を為す悪霊を呪霊と呼ぶ。術師の中には固有能力を持って生まれる者がいて、生得術式と呼ぶ。俺のは祓った呪霊の力を取り込んで自分自身を強化する術式、基本パッシブ発動な能力なので特に名前はつけてない。自分で使ってる感じがわからないからいまいちどういう術式なのかもわかってないのが正直なところだ。

 先輩も術式を持っていて、家系に伝わっている降霊術式というものらしいけれど、それについては追々語ろう。

 

 先輩の家は呪力を使った呪具の制作や結界、式神などの扱いに秀でた家らしく、俺も呪術に関して基礎的なことは大体この人の家で教わった。式神を使うのは未だ慣れないけど結界術はそこそこ自信がある。

 呪術界には色々普通の世界とは異なる常識や決まりがあって、先輩にはそういった事情についてもよく教えてもらった。技術的にも価値観的にも俺の先輩であり、師匠といった人だ。

 

 「いつも思うんですけど、こういうのって誰が買ってるんですか?あんな寂れた神社に何もないときにわざわざ観光に行く人いないと思うんすけど」

 

 呪力を込めて呪霊除けの御札を書きながら呟く。

 

 先輩の実家は神社。町外れの山を少し入ったところにある。学校からはかなり離れておりバス通学だ。相当年季が入っていて御神木があったりとなんだかんだ雰囲気はあるのだが、ボロいという印象が先にくる。本業が呪術関係だというのはわかるが改築くらいすればいいのにと思う。

 

 「誰んちが寂れてるって?その自慢の体力をうちの掃除に使わせてやろーか?時給300円で」

 「いやぁ雰囲気出てて風流なお家だと常々思っていたんですよね」

 「物は言いようね。まあ寂れてるのはその通りなんだけど…。この呪符に関してはその道のプロになんだかんだ需要があるのよ」

 「呪術高専とかは少なくとも欲しがらないだろうし、非術師で呪術師の真似事をしてる人らとかですかね」

 

 呪術高専は国内の呪術師の養成学校であり、術師の派遣なども担っている。危険な呪霊を相手にすることも多く学費免除はおろか高給も出るらしい。

 ちなみに俺が今作ってる呪符は4級未満の雑魚呪霊を除けられるかどうかっていう微妙な代物で、まともな呪術師が欲しがるものとは思えない。ほとんど非術師向けの魔除け商品だが需要自体はあるらしい。

 

 こんな感じで、呪具づくり作業しながらたまに世間話するのがここでの日常。部員は俺と先輩のみ。呪術師自体が希少な存在だからということもある。それ以前に入部希望者自体いないけど。

 黙々と作業する先輩の顔をこっそり眺めるのが俺の趣味だ。

 

 「この半月なにしてたの?」

 「例のごとく経験値稼ぎ」

 「やっぱり。呪術師なら強くなって損はないけど、一体どこを目指してるんだか」

 「もはや半ば趣味化してるんで」

 

 コレは半分マジな話。修行で培った技術を実戦で試すのは実際楽しい。スポーツみたいなもんだな。

 最近は歯ごたえがなくなってきたから微妙だけど。

 

「呪霊狩りが趣味とか私でもドン引きなんだけど…。やっぱあんたの術式ってだいぶおかしいよ。このあたりの地域の掃除してくれてんのには感謝してるけど、あんまり強くなりすぎると本家本元から目つけられちゃうかもだから気をつけなさい。今のところ雑魚ばっか狩ってるから目立ってはないみたいだけど」

 

 本家本元とは、例の呪術総監部だったか?全国の呪術関連の問題を担ってるとかいう。高専も呪術総監部の一下部組織らしい。あんまり偉い人に目を付けられるのは本意じゃないけど、そんなに問題なんだろうか。

 

 「呪術師の取り纏めで呪術関連の法や秩序を担ってるといえば聞こえはいいけど、実際はお偉いさんたちが私物化してる組織だから、彼らが黒といえば黒だし、白と言えば白になる。旧態依然とした頑固爺たちの集まりを想像すればいいかも。まあ今は五条悟が抑えてるからバランス取れてるけど、昔は酷かったらしいよ」

 「お得意様のことそんな風に言っていいんですか?」

 「商売と個人の考えは別なのよ。あんたの術式は倒した呪霊から力を取り込むって性質上、呪霊との境界がアレってことで危険視されかねないから、なるべく存在を知られないほうがいいと思うわ」

 

 確かに実際呪霊を倒すことで呪力も増えてるわけだし、傍目には呪霊化していっているようにみえるかも。実際俺自身自分の体がどうなってるのかわかってない部分はある。たまに大物を倒したら身体によくわからん模様が浮き出ることがあるし。まあ俺的には中身がどうあれ人間の姿と機能と思考を持ってれば人間でいいと思うんだけど。なんかその部分を不安に思ったことは不思議と無い。

 

 「五条悟って最強の人ですよね確か。公式で最強の称号を持ってるって冷静に考えて意味わかんないっすね」

 「私も実物見たこと無いけどうちの親は世界に生まれたバグだって言ってた。私からしたらあんたも結構バグっぽいと思うけどね。どこの世界に素で100mを6秒で走りきれる中2がいるんだって」

 

 実はもう5秒にタイム縮んでるけど。確かに身体能力だけみたらバグってるな。

 こんな妙な力は持っているけど、俺という人間にとって絶対に必要なものというわけでもない。そもそも俺は将来呪術師になるつもりもないし。

 確かにちょっと前までは持ってる力を使うことを義務のように感じていたときもあったけど、目の前の先輩にそうではないということを教えてもらったからな。

 

 

 

 一年半前。このとき俺はまだ小学校に通っていた。

幼いときは俺も純粋に困っている人を助けたくて呪霊を祓っていたけれど、地元で有名になってくるにつれて、それを義務のように押し付けられているように感じてきており息苦しくもあった。人間というのは厚かましいもので、無償で働くことを繰り返せばそれを当たり前のことのように要求するようになるということを幼いながら実感していた。

それでも人助けを続けていたのは、持っている力に対して義務感とか責任を感じていたからだと思う。

 

 中学生になり、入学式が終わったあと、すぐに先輩が教室に訪ねてきた。それでその謎な部活に直接勧誘されたわけだが、別に断る理由もなかったから素直に入ることにした。ちなみに先輩は校内で変な部活に入ってる変わった女子として知られているらしいのでちょっと同級生に心配された。

 

 雨池先輩ははっきり言って損得について非常にシビアだ。小遣い稼ぎのために暇さえあれば呪具作りをしているし、個人的な依頼で呪霊を祓う時はきちんと対価を要求する。俺の作成した呪具に対しても一部売上を部費として徴収するし。

 それでも基本的に彼女は善人でもある。ただ昔の俺とは違い誰彼構わず人を助けない。彼女が助けたい人だけを助けて、それ以外には対価を求める。俺は以前から力には責任が伴うものと考えていたが、彼女はそれを否定した。

 

 その頃の俺は呪術絡みのお悩み解決装置のような扱いで、今より遥かに頼ってくる人間が多かった。校内の生徒や教師だけではなく、その親族、知人、近所の人までが対象だった。人の噂は自分で考えているよりも広く、早く伝播するものだ。

 どうでもいいような頼み、全く関わりのない人からの頼み、嫌いな類の人間からの頼み。呪術絡みであればなんでも解決した。それが力をもって生まれた俺の義務だと思っていた。心に引っかかるものは確かにあったが、見て見ぬふりをしていた。

 

 あるときそんな俺を見ていた先輩がキレた。

 

 「なんであんなヤツをあんたが助ける必要があるの?そんな義務ないじゃん。あんたが助けたいと思ってるならいいよ。でもあんた自身別にあいつを助けたいとか思ってないでしょ?」

 「でも俺にしかなんとかできないなら俺が頑張るしかなくないですか」

 「…あんたなんか勘違いしてるね。ただ力を持つのに義務や責任なんて発生しないのよ。人が責任持つべきなのは自分の意思と行動の結果、あと仕事だけ。仕事として対価を要求すれば関係性としては対等でしょ。あんたはあいつらの誰も対等には見てない。それは上から目線のただの傲慢だよ。聖人君子じゃあるまいし、そんな施しみたいな真似やめなさい」

 

 随分とずばずば言ってくる人だなと思った。でもその時の俺はなんとなく感じていた息苦しさや辛さなどのモヤモヤを全部綺麗に指摘されたような気がしてスッキリした気分だった。先輩のそれは確かに俺のためを思っての忠告だった。

 多分心の底では、間違っているとわかっていたけど、人に言われるまで気づかなかった。助けたいから助けるのであって、助けられるから助けなければならないのはおかしいと。だって俺はただの男子中学生であって、人より貴い人間なんかではないのだから。

 

 それからは俺も先輩に倣って基本的に本意ではないことには対価を要求するようになった。別に義務じゃないし、自分も得るものがあると思えばそれまで苦だったことも苦ではなくなった。今思えば多分それは人として当然の在り方だと思うけど、それまでの自分は呪術という力を持ったことでどこか歪んでいたんだと思う。

 呪術なんて俺自身を構成する一要素で、一つの個性に過ぎないというように考えるようになった。呪術への歪んだ拘りがなくなって、呪術師になりたいと考えることもなくなった。だから今呪霊を狩ってるのはほとんど趣味だ。俺は趣味で呪術をやっている。高専の給料は魅力的ではあるが。

 

 そういったことを俺に教えてくれた先輩には感謝しているし、呪術の師の一人として尊敬もしている。

まあ実はその一件から異性として気になりだして、今では完全に惚れてしまっているわけだが。人付き合いは苦手らしいけど、付き合うと好きになっていってしまうタイプの人だと思う。なんだかんだいつだって俺のこと考えてくれてるし、実は責任感が強くて真っ直ぐ誠実な性格だ。あと今考えるとこの部活入ったのって先輩が俺のタイプだというのが半分あるかもしれない。

 

 

 そういえば来週クラスメートに肝試しのお供をお願いされてたな。この際先輩も誘ってみようか。正直乗り気じゃなかったけど先輩がいたら少しは楽しめる。

 

 「先輩、来週土曜に肝試し行きませんか?クラスメートに誘われてるんですけど」

 「嫌、そういうイベント向いてないし」

 「……」

 

 先輩、結構引っ込み思案というか、多人数のお祭り的なのは避けるけれども。

 それに実際呪霊なんてものが見える術師としては試されるような肝も糞もないのは確かだけどさ。なんなら俺も面倒くさいから先輩を道連れにしようとしてるわけだけど。

 でもそんなにざっくりと断らなくても…。

 

 「…先輩って俺のことどう思ってます?」

 「大切な後輩と思ってるよ」

 

 その問いに対してこの答えである。

定期的に聞いてみてるけどいっつも同じこと言われるし。

それにしても先輩美人なのにあまり男っ気ないよな。クラスでちょっと浮き気味だとしても告白の一つや二つされててもおかしくないと思うけど。こっちとしては嬉しいけど。意外と結構はっきりものを言う人だから敬遠されるのかな。いや、それともいつも最速で部室に来てるから告白されるような隙がないのか?帰りは大体俺が家まで送ってるしな。

 そんなことをとりとめもなく考えてたら先輩がおもむろに口を開いた。

 

 「あー、肝試しはあれがアレだけど、今週末うち来る?お父さんもそろそろあんたの修行の成果みたいって言ってたし…」

 「行きます」

 

 気になるあの子にお呼ばれイベントの前では肝試しなんてクソ喰らえだな。

 

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