見える子ちゃんと幼馴染君   作:秋涼

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再開は突然2

 帰り道にちらっと眼があった霊がこちらを覗き込んでいる。

 こちらを見ているか確認したいのかこちらの前で飛び跳ねたり手を振っていたり身振り手振りをして気付いてもらいたいようだった。どうやら喋れないらしい。

 

 見た目は男性の霊でスーツを着ており、顔はまだ若さを保っている。普通の霊はただ彷徨っていて最終的には町の数か所にある、霊道や死神みたいなものに連れていかれて成仏するが、なかには死に方が悪かったり、死に際に強い恨みをもっていたりすると周囲に怨嗟を齎す存在となる。

普通の霊なら怨嗟をまき散らしていても霊を感知できない人や、もとより霊的防御が元から高い人等には大して影響がない。

 見えている人にはもちろん叫び声だけで害だし、見えてるとなれば直接害が及ぶし、仲間を増やそうと付き纏ってもくる。

 

 

 しばらく霊を睨みつけていても、逃げる気配がない

 普通の霊ならば、「何でもないです……」って怯えながら逃げるのにこの霊は体は恐怖で震えているが、なにか伝えたいことでもあるのだろうか

 

 「……見えてますよ、なにか御用で?」

 

 男性はほっとしたあと、近くにある自動販売機の下を指す。

 

 「オネガイシマス」

 

 自動販売機の下にはぼろぼろになった指輪ケースがあり、なかには綺麗な指輪が入っていた。

 

 「これは誰に届ければいい?」

 

 誰に送るかは興味はないが、指輪は彼にとって大事なものだったのだろう。

 男性は次に近くの交番を指さした。

 

 「これを交番に持っていけばいいんですね?」

 

 聞くと男性の霊はお辞儀をし、すっと溶けるように消えていく。

 届ける義理はないけど、返事してしまった手前放置するわけもいかないので交番に指輪を届けることにした。

 

 

 指輪を届け、交番を出る。

 少し前に暴走した車が歩道につっこでくる事故があり一人の若い男性が被害にあったそうだ。結婚を控えていたらしくその日ちょうどプロポーズをしに向かう途中だったらしい。遺品から指輪だけが見つからず、事故現場を探しても出てこなかったらしい。

 指輪が落ちていた自動販売機と事故現場とは角を挟んだ向こう側にあったので見つからなかったのだろう。事故の衝撃がすごいかったと聞いたので指輪ケースが吹き飛んで自動販売機の下に嵌まって忘れ去られたのだろう。

 

 彼が満足して成仏できるように祈りながら、家路を急ぐ

 今日こそみこちゃんにちゃんと挨拶せねば……

 

 

 

 家までもうすこしというところで、仕事用のスマホが鳴った。

 まだ本格的にはやっていないが、祖母や祖父の手伝いの為の連絡用のスマホである。祖母かと思って番号を見ると、珍しい人から電話がかかってきていた。

 

 「頼光くんかい?久しぶりだねぇ」

 

 「お久しぶりです。ミツエさん」

 

 「茨ちゃんに電話したんだけどね、孫が近くにいるからそっちに頼みな!って言われてしまってね」

 

 「茨……あぁ祖母ですか、普段ばばあとかばあちゃんとかしか呼ばないんで、思い出せませんでしたよ。それでどうしました?」

 

 「お客さんに完全に見えちゃってる女の子がいてね。少しでもましになるかと私の特製の数珠をあげたんだけど、すぐ壊されてしまってね。今も変なのが付いているみたいだし、少し見てもらえないかい?」

 

 「分かりました。今時完全に見えるとか珍しいですね、何歳ぐらいのお子さんですか?」

 

 「高校生くらいの子だね。」

 

 「高校生ですか、特別な修行とか数珠を買おうとしているあたり、特別な魔除けも持っていないのにしてないのによく生きてますね、なんにせよすぐに行きますが場所はお店でよろしいですか?」

 

 「前から場所は変わらんよ。頼んだよ」

 

 「はい、では後ほど」

 

 みこちゃんに挨拶しなければならないが、こちらも緊急性が高そうだ。

 家までの道筋を駆け抜け、家に帰り、竹刀袋に入っている刀を取り、道具一式が入っている鞄を背負る。金庫から帯刀許可書のファイルを忘れずに入れる。

職務質問をされた際に一度携帯を忘れていて大変なことになった。

祖母と祖父の神社の近くだったのでなぁなぁになったが、今見つかるとかなりやばい

家をでて、ミツエさんが待つお店に向かう。

 

 ミツエさんのお店は駅前にある為、家からはそこまで遠くない。

 お店の近くにいくと、ミツエさんのお店の前にホラーゲームに出てきそうなズタ袋を被った首に鎖まいて血まみれの大柄な霊が佇んでいた。

 刀を取り出してすぐ処理したいが、人が歩いている通りで抜刀するわけにもいかないので霊を蹴り飛ばしながらミツエさんのお店の裏側まで連れていく。

 人目から完全に離れたのを確認後、竹刀袋から刀を取り出し、一撃で首を飛ばす。念のため体もばらばらに切り刻む。

 霊は存在を保てなかったのが完全に消え、復活や死んだふりだったという兆候もない。

 

 「さすがだね」

 

 刀を納刀し、竹刀袋に入れていた時に後ろから声を掛けられる。

 

 「改めて、お久しぶりです。」

 

 気配は感じでいたが、後ろを振り向くとミツエさんが庭の軒先に立っていた。

 

 「歳でね。もうそこにいるのは分かるんだが、完全に見えなくなってしまったね。茨ちゃんや綱さんのようなにいかんね。」

 

 「いえ、そのための僕ですからね、大丈夫ですよ。例の子は中ですか?」

 

 「そうさね、中に入ったら私のことはゴッドマザーと呼んでおくれよ」

 

 「分かりました。ゴッドマザー、僕のことも源と呼んでくださいね」

  

 「茨ちゃんのほうの苗字名乗っているんだね」

 

 「えぇ、本名だとなにかと面倒ですからね」

 

 店先から靴を脱ぎ、途中靴をみると女性用とみられるローファーが2足玄関に置いてあるのが見えた。ミツエさんに案内されてると女性二人の話声がしたが、扉の外に人の気配を感じたのか声がしなくなり静かになった。

 

 ミツエさんに促されて扉を開けて中にはいる。

 

 「ゴットマザーから話は伺っています。はじめまして源です」

 

 声をかけながら中に入ると、すごいオーラをしてる体格がいい女の子と

 こちらを見ているみこちゃんの姿があった。

 


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