水粘少年のヒーローアカデミア   作:白黒カラス

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中学生編開始。
今回はオリキャラしか出ません。


第3話 中学デビュー?

「……困った」

 

 中学に進学してから、ひと月が経とうとしている。

 それなのに友達ができないのである。

 会話がないわけではない。朝、顔を合わせれば挨拶くらいはするし、隣の女子が教科書を見せてくれるくらいには友好的だ。

 

(それと友達は別だよなぁ……)

 

 周りの生徒たちは顔見知りらしく、グループに入るということができずにいた。

 モヤモヤした気持ちの時に訪れるのが屋上だった。

 昼休みは屋上が開放されている。事故などが起きないように高いフェンスに囲まれているが、そこから眺める景色が好きだ。

 

「景色はいいんだけどな」

 

 呟いて気分を紛らわせる。

 屋上にいる生徒は少なかった。

 わざわざ日の当たる屋上に出ようという発想がないのかもしれない。

 

「はぁ……」

 

 視界の端にため息をつく少女がいた。

 メガネを掛け、長い黒髪を後ろで結っている。よく見ると同じクラスの女の子だ。

 彼女があまりにも深刻そうだったから、心配になって声をかけていた。

 

「どうかした?」

 

「ひぇっ!?」

 

 予想以上に驚かれてしまった。

 少女はフェンスに背を預け、こちらへ振り返る。

 

「天道さんだよね」

 

「えっ、どうしてわたしの名前を知ってるんですか?」

 

 若干怯えたように見えるのは気にしない。

 

「だってクラスメイトだし」

 

 天道由貴(てんどうゆき)はまじまじと水斗の顔を眺めるとぽんと手を叩いた。

 

「あっ、前の席の水粘くんだよね」

 

 覚えてもらっていたことに安堵する。

 正体がわかったことで安堵したのか、天道の態度が軟化する。

 

「ごめんね。少し考え事をしてて」

 

「結構深刻そうだったけど」

 

 天道は薄く笑って首を振る。

 

「そうでもないよ。わたしって生きてる意味あるのかなぁとか些細な事だから」

 

(かなり深刻な悩みだった!)

 

 思わず表情がこわばる。そして、天道の顔をまじまじと見た。

 

「じょ、冗談だから!」

 

「……困っていることがあるなら相談に乗るぞ」

 

 彼女は不思議そうに首を傾げた。

 

「どうして? わたしなんかの悩みなんて関係ないでしょ?」

 

 拒絶ではなく、そこにあるのは純粋な疑問。

 

「これでもヒーロー志望だからな」

 

「ヒーロー志望、だから?」

 

「ヒーローってのは、みんなを笑顔にするのが仕事だからな。困っている人を助けるのは当然だろ?」

 

 驚いたように水斗を見ていた天道が、初めて自然な笑みを浮かべる。

 

「そっか。やっぱり、一佳ちゃんと一緒だね」

 

「一佳ちゃん?」

 

「わたしの友達。たぶん」

 

「たぶん?」

 

 友達にたぶんとかあるのだろうか。

 水斗の疑問に答えるように天道はまくし立てる。

 

「わたしが勝手に思ってるだけかもしれないし、一佳ちゃんがわたしに気を使ってるだけかもしれないから」

 

「その娘にいじめられてるとかじゃないんだよな?」

 

「そんなわけないよ! 一佳ちゃんは、わたしと一緒にいてくれるのがもったいないくらい良い娘だよ!」

 

 どうやら彼女にとって、その一佳ちゃんというのは信頼のおける人物のようだった。

 

「でも、その娘に話せない悩みなんだろ?」

 

「それは、心配かけたくないから」

 

 友達に心配させたくないから話せない悩み。

 

「だったら、俺に話してみないか?」

 

「……だけど」

 

「さっきも言ったけど、ヒーローは困っている人を放っておけないと思うんだ」

 

 それに、と水斗は笑う。

 

「解決はしなくても吐き出すことで楽になるかもしれないだろ?」

 

 天道はハッとしたように目を見開いた。

 彼女の視線は水斗と自身の手を行き来している。

 それから、少しの間をおいて、天道は語り始めた。

 

「わたしね、無個性なんだ」

 

「…………」

 

 個性飽和社会では珍しくなってきた無個性。その一人なのだと彼女は言う。

 

「それなのにね。ずっと前からヒーローに憧れてるんだ。オールマイトが笑顔で皆を助ける姿に感動したの」

 

 平和の象徴。オールマイト。

 彼に救われた人は多いだろう。勇気をもらった人もいるはずだ。

 

「わたしもこんな風になりたい。皆を笑顔にしたいってずっと思ってた」

 

 でも、彼女には――。

 

「だけど、いつまで経っても個性なんて現れなくて。お母さんもお父さんもすごい個性があるのにね」

 

 自嘲気味に口元を歪ませる天道から、目をそらしそうになる。

 

「お母さんたちは夢を諦めるには早いって言ってくれた。でも、個性がないのにヒーローなんてなれるわけないでしょ?」

 

 同意を求めるように彼女は笑った。

 

「だから、わたしって生きる意味あるのかなって思ったわけでした」

 

 無理やり明るく締めようとする天道。その手を反射的に、水斗は掴んでいた。

 

「……水粘くん?」

 

「だったら」

 

 君はヒーローになれる。なんて無責任なことは言えない。

 夢を諦めればいい。なんて背中を押すこともできない。

 

「俺が君の手を引く。意味なんてその先に見つければいい」

 

 できることなんてたかが知れてる。それでも、彼女の道標になれればと思った。

 水斗の言葉を聞いて天道は、しばらくきょとんとしていた。

 

「ふふっ、水粘くん。何だか告白されてるみたいで恥ずかしいかも」

 

「えっ!? いや、そんなつもりは!?」

 

「でも、ありがとう」

 

 慌てた水斗をおかしそうに眺め、天道はコクリと頷く。

 そこには先ほどまでの影は消えていた。

 

「そうだ」

 

 彼女は水斗の手を両手で包み込む。思わぬ行動にドキリとした。

 

「わたしと友達になってくれないかな」

 

 友達になろうと言われたことが、何だか懐かしいことのように思えて。

 

「俺で良ければ」

 

 水斗は笑みを浮かべ、その手をとった。




次話は原作キャラとの出会い。
一体、何一佳ちゃんなんだ?
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