水粘少年のヒーローアカデミア   作:白黒カラス

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第7話 合格発表

 入試から1週間が経過した。

 合否は未だ届かず、水斗はリビングのソファーで天井を眺めていた。

 

(最後の巨大ロボ、倒さなきゃよかったか?)

 

 勇敢と蛮勇は違うと言われても、仕方のないことだ。

 電気の少年から浴びた個性を体内の複数ある核で増幅し放つ。

 あの場にいた中で、自分と相性の良い個性は彼しかいなかった。

 それでも、あの電撃がなくとも倒す算段はついていた。

 

(あのロボに潰された状態で、まとわりついて爆破すれば倒せなくもなかった)

 

 今の実力では賭けに近かったのも事実。しかし、潰れても死なないというのは、過去にトラックで轢かれたときに実証済みだ。

 筆記は自己採点で合格ラインを余裕で上回っている。

 

(まあ、あれだけ拳藤には世話になったし)

 

 これまで勉強を見てくれた拳藤には感謝しかない。

 自分自身。そして、彼女のためにも合格したい。

 

「水斗。雄英高校から手紙届いてるわよ」

 

 背後から叔母の水花がやってきて、封筒を手渡してきた。

 水花は少し目を伏せ、バシッと水斗の背を叩いた。

 

「大丈夫。水斗なら合格してるって」

 

 言いながら水斗を部屋に押し込んだ。

 

「どうしたのさ」

 

「なんだか緊張しちゃって。私、少し買い物に行ってくるから。落ちてたら連絡ちょうだいね」

 

 ドタバタとしながら、彼女は玄関から出ていった。

 一人になった空間で息つく。

 

「合格してたら、じゃないんだ」

 

 そんな呟きと共に水斗は苦笑する。

 

「水花さんにも心配かけたからな。……合格してるといいけど」

 

 封を切って中身を取り出すと円盤状の物体が現れた。

 

「何だ?」

 

 それは空間に何かを投映し始める。

 

『ネズミなのか犬なのか熊なのか』

 

 後ろを向いた二足歩行のなにかがいた。

 

『かくしてその正体は――校長さ!』

 

 こちらを振り向いたのは、顔に傷のある人間大のなにか。

 

「ネズミ!?」

 

『ははは。私が雄英高校の根津さ』

 

 巨大ネズミが流暢に言葉を話しているのも、校長だというのにも驚く。

 

『ネズミのような何かが現れてさぞ驚いたと思う。だけど、私の方がもっと驚いたのさ』

 

 今までの笑顔を控え、根津校長は指を立てる。

 

『まずは筆記試験。これは問題なくクリアしていたよ』

 

 それは当然と言える。拳藤に勉強を教えてもらっていたからだ。

 

『次に実技試験。これは全体でも上位となる敵ポイント60』

 

「ってことは」

 

『合格!』

 

「よしっ」

 

『と言いたいところだけど……』

 

(ここまで煽てといて不合格とかあるか?)

 

 どこぞのクイズ番組のような間を挟み、根津校長は手を叩いた。

 

『我々雄英の実技試験。見ていたのは敵ポイントだけにあらず』

 

 ババンとテロップが表示される。

 

『審査制の救助活動ポイント! 戦闘能力以外のもう一つの基礎能力さ』

 

「レスキュー、ポイント?」

 

 言葉通りに受け取れば、誰かを助けたポイントということだろう。

 意識して助けたのは数人だったため、それほどポイントは入っていないはず。

 

『いやはや、あの巨大ロボを機能停止させるとは思っていなかったのさ』

 

(敵ポイントが0だけど、あのロボが動いていたら被害が広がってた。それを止めたことが点になったってことか?)

 

『その場の受験生と協力して対応したのも加点されたよ。水粘水斗レスキューポイント60! 合計ポイント数は120。ぶっちぎりの主席合格さ』

 

 とはいえ、と根津校長は顎へと手を当てる。

 

『他の受験生と得点が違いすぎる、ということが議論になってね。本来であれば合格者36人という定員をひとつ拡大したのさ。特別枠というかたちでね』

 

「そんなことが……?」

 

 水斗に応えるかのように、根津校長は大きく頷く。

 

『可能なのさ。ここはなんでもアリの雄英高校だからね』

 

 呆れるような感心するような。感情が入り混じって水斗は頭をかきむしる。

 

『ようこそ、雄英へ。ここが君のヒーローアカデミアさ』

 

 笑みを浮かべる根津校長が、こちらに向かって手を伸ばしていた。

 しばらく放心状態で動けずに立ち尽くす。

 

「合格。俺が、雄英に?」

 

 実感の湧かないまま、拳藤に連絡を入れる。

 

「結果発表どうだった、っと」

 

 チャットアプリで送信するとすぐさま返事が返ってくる。

 

 ――無事合格。そっちは?

 

 ――合格してた。

 

 ――そっか。

 

 そのやり取りのあと、しばらく時間が空いてから。

 

 ――お互いに頑張ろうな。

 

 その短い返信に。

 拳藤の優しさが垣間見えて。

 

 ――ああ。

 

 ただそれだけを打ち返した。

 

 

 

 

 その言葉をかけるのが正しいのか。

 頑張るとは一体何だ?

 返信内容を考えながら、拳藤一佳はためらっていた。

 

「一応、気を使ってくれてるみたいだけど」

 

 俺は合格したけど、お前はどうだった?

 などと聞かれるよりはよっぽど良いのだけど。

 

 ――合格してた。

 

 その短い文面から感情を読み取れるのは、よほど相手のことを理解しているだろう。

 想像でしかないが、今の水粘は焦っているのかもしれない。

 だから、事実を共有できる人を探しているのだ。

 

 ――そっか。

 

 その後に頑張ろうと何度か打ち込んで。

 彼が今まで努力していたことを知っているから、なかなか送信できなかった。

 誰かを思いやれる優しさも。

 誰かを守れる強さも。

 あの娘を守れなかった後悔が根源にあると知っているから。

 だから、あの娘ならきっとこう言うように。

 

 ――お互いに頑張ろうな。

 

 その一文を送信していた。

 すぐさま返事が来る。

 

 ――ああ。

 

「なんだよ。ああって」

 

 心配してる自分が馬鹿みたいで一佳は悔しくなった。

 だけど、すぐにふっと息を吐く。

 

「私も頑張るからな。由貴」

 

 親友の写真に目をやりながら一佳は軽く微笑んだ。




クラスメイトたちを取りこぼさないためには、こうするしかなかったんです!
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