水粘少年のヒーローアカデミア   作:白黒カラス

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週一投稿できたら良いなと思うこの頃。
皆さまの暇つぶしになれば幸いです。
よろしくお願いします。


第9話 幼馴染の成長

「大丈夫か?」

 

 思わず声をかけていた。

 

「えっ……」

 

 もじゃもじゃ頭の男子は、勢いよく顔を上げる。

 彼は明らかに戸惑っていた。

 

「俺は水粘水斗。君の名前は?」

 

「緑谷出久です」

 

 戸惑う緑谷に水斗はまくしたてる。

 

「よし、緑谷。何が心配なのかは知らないが、まずは顔を上げろ。ヒーローは不安を民衆に見せないものだ。って友達の受け売りだけどな」

 

 最近まで忘れてたけどさ、と水斗は笑う。

 緑谷の表情も若干明るくなった。

 

「おい、そこ。早く準備しろ」

 

 相澤の指示が飛んでくる。

 ここまでか、と水斗は緑谷に背を向ける。

 

「まあ、オールマイトみたいに笑えとは言わないけど、それなりに笑える結果にしようぜ」

 

 上鳴のおかげで思い出した言葉を送り、水斗は個性把握テストに挑んだ。

 とはいえ、ほとんどの競技で水斗の個性を発揮できるものはなかった。

 体が柔らかい。触れたものについた粘液を爆破できる。

 このふたつの特性を活かせたのは、上体起こしとハンドボール投げくらいだった。

 

(緑谷は個性を使わずに生活してきたんだろうか?)

 

 日常生活でも、あの力の個性は使う場面はありそうだ。

 ハンドボール投げで大記録を出したことを考えると、筋力増強系の個性か。

 記録測定のあと、爆豪が緑谷に詰め寄っているのを見た。相澤に止められていたが、何か因縁があるのだろう。

 

「んじゃ、ぱぱっと結果発表」

 

 誰が除籍になるのか。

 クラスメイトたちの空気が重くなる。

 

「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

 しかし、それは相澤の種明かしによって霧散した。

 

(あれは本気だったと思うけど)

 

 水斗の結果は八位。個人的には上々だった。

 

 

 

 

 話しかけられなかった。

 

 個性把握テストが終了した後、耳郎響香は教室の机でため息をついた。

 響香は朝の教室に入った時点で、水斗がいることに気づいていた。

 どう話しかけようか迷っていると、上鳴が陽気に声をかけてきた。

 そこまでの上鳴と水斗の会話を聞いていたから、ついそっけなく対応してしまったのだ。

 

「……何してるんだろ」

 

 同じクラスなのは素直に嬉しい。

 でも、最初になんて言葉をかけたらいいのか分からない。

 俯いていた彼女の視界に誰かのつま先が入り込む。

 

「えと、響香だよな」

 

 声に顔を上げると、成長した幼馴染の姿があった。

 あの頃と変わらない深い青色の瞳が響香を映していた。

 

「水斗」

 

 まさか向こうから話しかけてくるとは思ってなかった。

 見つめ返すが、彼は視線を逸らす。

 

「もしかして、俺だって気づいてた?」

 

「当たり前じゃん。……一応、幼馴染だし」

 

 そこから先は会話が続かず、無言になる。

 互いに忘れられていなかったことで安堵した。

 しばらく向かい合っていたが、視線があったのは最初の方だけ。

 それがなんだか悔しくて、響香は呟くように口にする。

 

「今朝は話しかけてくれなかったのに、どうして放課後?」

 

「え、いやそれは……」

 

 じっと水斗の顔を見つめて回答を待つ。

 それにしても、と響香は思う。

 見た目はあの頃の水斗を成長させた、想像通りの姿だ。

 それなのに、あの頃よりも歯切れが悪い。

 ひとつ考えられるのは、女友達がいなかった可能性。

 お互いに成長して意識してしまうものだ、と中学までの友人が言っていた。

 そんなことを考えるのは自惚れだろうか。

 

「上鳴に言われたんだ。幼馴染なんだったら、さっさと顔合わせて話してこいよって」

 

「へえ、案外いいヤツじゃん」

 

 響香はくすっと笑う。

 でも。

 

「人に言われたから話しかけてくるって、ロックじゃないね」

 

「う……ごめん」

 

 気まずそうに俯く水斗へ苦笑で返す。

 

「別に怒ってるわけじゃないから」

 

 響香は水斗から視線を外せなかった。

 久しぶりの再会で、聞きたいことはたくさんある。

 だけど、あまりグイグイいくのもどうなのかなと思って。

 

「どうした?」

 

 響香の視線に気づいた水斗は、首を傾げている。

 

「えっとさ、お互い成長したなって」

 

 もっと他に言いたいことはあった。だけど、無事に雄英高校で再会できたのは、互いにヒーローとしての資質を磨いていたということ。

 

「三年間会わなかったわけだし、身長くらいは伸びるだろ」

 

 でも、水斗はあまりピンときていなかったようだ。

 それから、彼は響香をまじまじと見つめ、ふっと口元をゆるめる。

 

「えと、なに?」

 

 じっと見つめられるから、少し照れくさくなって響香は視線をそらした。

 

「立ち止まらなくて良かったと思っただけだよ」

 

「え?」

 

 その言葉にどんな意味があるのか、響香にはわからなかった。

 それでも、彼も再会を喜んでいるのが伝わってきて嬉しくなる。

 

「そうだ。水斗は中学で女友達はいた?」

 

「……え、一応いたけど」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

 平静を装っていたが、響香の心はざわついた。

 答えるときに、一瞬だが暗い表情になったのも気になる。

 

「どうしてそんな事聞くんだ?」

 

「それは……」

 

 聞いてから理由を頭の中で巡らせる。

 

「水斗が中学の時どんな感じだったのか聞こうと思って」

 

 苦し紛れの答えだが、水斗は納得したように頷く。

 

「面白い話はないぞ」

 

 彼はスマホで何かを打ち込む。

 何をしているのか気になって待っていると、返信が来たようだった。

 

「明日ならいいってさ」

 

「え、もしかして、同じ中学の人も雄英にいるの?」

 

「うん」

 

「女子?」

 

「うん」

 

「へ、へぇ」

 

 相槌を打ちながら、響香は相手について想像を膨らませていく。

 

「そうだ。その、響香さえ良ければ、連絡先交換しないか?」

 

「うん、いいよ」

 

 二つ返事だった。

 断る理由なんてないし、今まで連絡を取っていなかったから反動もあった。

 

「響香、これからよろしく」

 

 はにかみながら差し出してきた水斗の手は、思い出のものより大きくなっていた。

 

「こちらこそ」

 

 握り返すと彼と再会できた実感が湧いてくる。

 同じ目標に向かって、一緒に歩みを進められると信じているから。




やっと耳郎さんとまともに話せました。
次回は空白の時間を知る拳藤さんと耳郎さんが遭遇?
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