12月の上旬。月白隊が江橋隊との対決の日。風矢達は影浦隊の3人に見送られ、目的地であるランク戦会場に到着する。
「よく来たな雑魚ども!」
「まあ、B級上がりたてのチームにアタシ達が負けるわがないわ」
「お、お手柔らかにお願いします」
「……アイツら? 弱そうね」
この間のB級ランク戦で11位に上がった江橋隊の4人は、嘲笑いながら月白隊のメンツを見ていた。
(対して変わらん雑魚だろ)
オリエンテーションの訓練で1分切りをしている月白隊の2人は、まだ入隊から3ヶ月しか経っておらず。そんな奴らに負ける道理はないと考え、江橋隊の人達は風矢達に見下した視線を送っていた。
「……では、お願いします」
「ふん!」
前と違いあまり言葉を話さない月白隊の4人を見て、イジるのは面白くないと感じた江橋達は足早に離れていく。
「見てろよ」
風矢はブースの中に入っていく江橋隊や周りにいる隊員達を見ながら、雫達に指示を出す。
「いくぞ!」
「「「了解!」」」
いつもと違い真剣モードの月白隊は駆け足で用意されたブースに入っていく。
(おやおやー、何か面白い事になってますねー)
何か面白い展開だと思った茶髪の少女は、数日前にスカウト入隊したばかりの新人。そして彼女は初めて見るチームでのランク戦である事を思いつきボーダーを大きく変えていく貢献者になる。(この時はそうなるとは思ってもいなかった)
ーー〈月白隊VS江橋隊〉
《ランク戦、フィールド市街地A》
ついに運命を分けるランク戦が始まった。
「よし! 作戦開始だ!」
『『『了解!!』』』
試合が始まったと同時に月白隊は全員バックワームを起動する。
(これでどう動くか)
風矢はトリオン体の標準装備であるレーダーの精度を上げ、江橋隊の動きを見る。
「見た感じ合流しそうだな」
赤い矢印が南側に向かっており場所的には風矢が近い。そのため、まず家の中に隠れて相手の動きを見る。
『コチラ雫! 西で美鈴と合流した!』
『了解、じゃあ動いてくれるか?』
『わかりましたわー!』
西側でバックワームを解除してレーダーに映った雫と城山。その2人に向かって赤い矢印2つが彼女達の方に向かって行った。
『風矢さん、スナイパーの位置は把握しました!』
「よし、俺も動きますか」
コチラには雫のサイドエフェクトがあり、彼女に敵意を向けると相手のいる方向がわかる。風矢はそのサイドエフェクトを利用し、敵スナイパーの江橋を見つける作戦を立てた。
〈西南側〉
住宅街な並ぶエリア、雫と城山は敵スナイパーがいる場所に向かって走る。
「このまま行くわよ!」
「わかっていますわ!」
ギャアギャアと喧嘩しながら走る雫と城山だったが、南側から弾丸が飛んできたので2人がシールドを起動する。
「2人だけ?」
「もう1人は逃げたんだと思いますよ」
「あり得るわね」
現れたのはメインで孤月を起動し、サブでハウンドのトリオンキューブ浮かせている羽山。その隣ではスコーピオンを起動し片刃のブレードを手に持つ雪川。
『作戦通り釣れましたわ』
『そうね……後はコイツらを風矢の方に行かせないだけよ』
『わかっているわよ!』
『2人とも油断しないでくださいね!』
『『了解』』
餅坂の声を聞いた雫と城山は格上相手を見ながら自身の武器を換装する。
「へぇ、アタシ達と戦う気なのね?」
「あのー、ボロ負けするのがわかっていて戦うのですか?」
「負けると分かっている戦いは例外以下はしないわ」
「ワタクシ達を馬鹿にしないでちょうだい!」
「そう? ならアタシ達の手で叩き潰してあげる」
メイン、サブ、両方でスコーピオンを起動し襲いかかってくる雪川に対し、相手をするのは城山だった。
「あなたの相手はワタクシですわ!」
「ちいぃ!」
城山は雪川の斬撃を自身が起動したスコーピオンで防き、返す刀で反撃する。
「コイツ、B級下位の動きじゃない!」
「影浦先輩に散々揉まれたからこの程度じゃ驚かないわ!」
「なっ!?」
前までB級下位レベルと思っていた相手のレベルアップに驚く雪川。その隣では弾トリガーで射程を持つ羽山を相手に雫が孤月で斬りかかっていた。
「アステロイド!」
「シールド!」
《キィキンキィンー》
若きオールラウンダーである羽山のトリオン数値は6で、彼のトリオンでは雫のシールドを割るのはかなり難しい。
(弾でシールドを広げて孤月で割るしかない!)
(相手は孤月でシールドを割りにくるわね)
互いにメインが孤月なので白兵戦になり、ポイントが高い羽山の方が有利に見える……だが実際は。
「なっ、ログと全然違う!?」
「そりゃそうよ!」
(影浦先輩とやり合ったから強くなるわよ)
前までの動きとは全く違う雫の練度に驚く羽山は、距離を取るためにバックステップを踏む。
(隊長、早く援護をください!)
羽山と雪川の2人は格下相手に大苦戦。そのためスナイパーである江橋の援護が欲しいが……。
《ドーン!》
「「へ?」」
突然、自分達の隊長がいるビルから誰かがベイルアウトする音が聞こえた。
『2人とも! 風矢さんが江橋さんを仕留めました』
『よし! 後はコイツらを蹴散らすだけね!』
『油断せずに行きますわよ!』
月白隊の2人は隊長である風矢が相手の隊長を撃破。その餅坂の言葉を聞き、彼女達の闘志が燃え上がる。
(風矢にいいところを見せるんだ!)
手ぶらでは帰れない。2人は互いに目を合わせた後、目の前にいる獲物に向かって食らいつき始めた。
ーー
時は少し戻り。レーダーに姿が映らなくなるマントであるバックワームを着た風矢は、住宅街をコソコソ移動し江橋がいるビルの一階に来ていた。
『このビルの上に江橋さんがいるんだよな』
『はい、そうです!』
『じゃあ中のマップを頼む』
オペレーターからのデータを受け取った風矢は足音を立てないように階段を登った。
(確か5階だよな)
階段に罠があるかもしれない、と風矢は警戒しながら前を進む。そして……。
(いた!)
半分開いているドアを覗き込むと江橋が膝立ちでスナイパートリガーのイーグレットを構え、雫達の方角を見ていた。
『これより攻撃に入る』
『コチラもサポートしますね!』
少しずつドアを開けた後、風矢はメインにアステロイドを起動し突撃銃を換装。サブはバックワームを起動しているが。
(行くぞ!)
バックワームを解除しサイレンサーを起動し、音を鳴らさずに射撃を始める。
「!? な、なんだ!」
《トリオン体活動限界、ベイルアウト》
(……へ?)
風矢が放った弾丸は無警戒状態の江橋のトリオン体に直撃。彼の体は弾丸の雨で破壊され光となって戦闘地域から離れていった。
『風矢さん……』
『あ、あぁ、なにこれ』
北添や犬飼などの腕利きガンナーに教えを頼み鍛えてもらった風矢だったが……今回の場合、相手が油断していたのもあってアッサリ倒してしまった。
『と、とりあえず雫達の援護に向かう!』
『わ、わかりました!』
風矢は改めてバックワームを起動し、アタッカー達が集まる西南に向かって走り出す。