月白隊VS江橋隊の対決から約1週間後。
「なんかおかしい気がする」
「何か?」
「あ、風矢。ポン酢をとっていただけるかしら?」
「うん……って、そうじゃない!?」
12月中旬も終わりが差し掛かり終業式間近の日曜日。いきなり泊まりで出かけた家族に疑問符を浮かべながらも自宅で惰眠を貪っていた風矢。だがその睡眠も長くは続かず、鍋パーティセットを持った雫達に家凸されて今の状況が成り立っていた。
「では、そのカニ貰いますわ!」
「あぁ!? そのカニは自分が取ろうとしていたのに!」
「ならこっちはいただくわね」
「ちょ!? 自分のカニがー」
「……カニはまだまだあるぞ」
(なんで俺が鍋奉行をしているんだ?)
せっかくの休みの日に鍋奉行をする風矢。しかも目の前には城山が持ってきた1杯1万円を超えるカニが調理されてテーブルに置かれている。
「おお! 流石は風矢さんです!」
「風矢ー、こっちにもカニをお願い!」
「ちょ!? そのカニはワタクシが狙ってましたのよ!」
「お前ら喧嘩するな」
ドタバタとうるさい雫と城山を他所に風矢はため息を吐きながら自分もカニを食べる。
(……美味しいな)
数ヶ月前は雫しか友人と呼べる存在はいなかったが、ボーダーに入り城山や餅坂。他にも香取隊や影浦隊のメンツなど人が集まったと思う。
「ボーダーに入隊してよかったな」
「うん? 何か言った?」
「いや、なんでもない」
カニを特殊なフォークで食べながら笑い始める。
ーー
シメの雑炊を食べて満足した4人は後片付けをした後、ソファーに座って気を抜く。
「しかしまぁ、俺達がチームを組むとはな」
「そうね……まあ、私は風矢さえいればどうでもいい」
「貴女はブレないですわね」
「でも雫さんらしいです」
今も風矢の膝を枕にして横になっている雫を見る城山と餅坂。彼女達は雫ののんびりした姿を見て一言。
「羨ましいですわ」
「いいなー」
「ここは私の席だから無理よ!」
「ちょ!? 俺の膝だぞ!」
「「「そんなの知らない!」
「コイツら……」
周りから見れば美少女ハーレムに見えるが実際は残念感が強い。そう思った風矢はため息を吐きながら話題を変える。
「そういえば、チームの目標はどうするんだ?」
「そんなのA級昇格に決まってますわ!」
「確かにここまできたら目指すのはいいかもしれないわね」
「A級ですか……悪くないですね!」
「なんかアッサリ決まったな」
もう少し考えてもいいのでは、と思った風矢だったが彼女達の性格を考えてアッサリの方がいいなと考える。
(まあ、仕方ないか)
言い方は悪いが、自分も含めて馬鹿の集まり。そんな奴らが考えてもロクな事にはならないのは身をもって知っている。
「それなら、A級を目指しますか」
「「「おぉ!!」」」
風矢の一言でまとまった彼女達。彼らは新しい道に向かって歩き始める。