9月上旬、正式入隊の日。
合格者達はC級隊員専用のトリガーを渡され、現在はトリオン体と呼ばれる生身とは違う体になっている。
「俺がボーダー隊員か……」
「なんでそんな凹んでいるの?」
「そりゃそうだろ」
新人達が集まる空間で凹んでいるウルフカットの少年と、隣でニコニコ笑っているポニーテールの少女。2人の温度差がひどく周りの人達は若干引いていた。
(もうやるしかないか)
無駄に考えても意味がない、そう思った風矢は俯くのをやめて前を見ると壇上には赤い服を着た正隊員達と本部の偉い人が立っていた。
「これより新人入隊式を始める」
会場のアナウンスから聞こえる声を聞いた新人C級隊員達は、急いで隊列を作り壇上にいる偉い人達の方を見る。
「待たせてすまない、ボーダー本部長の忍田だ! 君たちの入学を歓迎する」
本部長である忍田さんの声を聞いた新人隊員達。彼ら彼女達の顔がこわばり緊張している中、雫だけ笑顔で笑っていた。
(おいぃ!?)
また問題行動を起こすんじゃないのかとヒヤヒヤする風矢。だが彼の予想とは裏腹に忍田本部長の話は進んでいく。
「先程も説明があっただろうが、君たちは本日をもってC級隊員……つまりは訓練生になる」
(なるほど……)
「訓練生は防衛任務では出られないが、訓練を繰り返し正隊員になり三門市……いや、人類の未来は君たちにかかっている!」
壇上の上で淡々しつつも熱く語る忍田本部長に感化されたのか、やる気になる隊員達。
「君たちと戦える日を待っている!」
以上だと敬礼する忍田本部長に向かって敬礼を返す新人達。彼らの顔は誰も彼もやる気に満ちており、忍田本部長の演説で指揮が高まっていた。
「では、この先は嵐山隊に一任する」
忍田本部長が壇上から去り、赤色のジャージをきた男性4人が中央に立つ。
「早速だが入隊おめでとう! 俺の名前は嵐山准、今回の入隊式を任された者だ。早速で悪いが正隊員……B級隊員に上がるための説明をする」
嵐山さんの説明でB級隊員に上がる方法……大体の人は1000ポイントから始まり、そのポイントを4000まで貯めると昇格する。
(ポイント制なんだな)
自分の手の甲を見ると1000ポイントと表示されていた。周りでは誇らしげに手を挙げる人物がおり2200や1900などが書かれていた。
「ねぇねぇ、風矢! 私のポイントは3000だよ」
「おい……今は嵐山隊が説明しているから静かにしろ」
「えー」
隣で3000ポイントのやつがいる。この時点で雫との差を感じた風矢は劣等感に駆られるが、嵐山隊の説明が続いたいるので耳を傾ける。
「ポイントを貯めるには訓練をクリアしたりランク戦をすれば良い」
(なかなか理解が難しい)
「まあ、言葉で聞いても難しいと思うし訓練を体験してもらおう」
嵐山が仲間の隊員達に指示を出し、佐鳥とスナイパー志望の人達は別の会場に向かい。風矢と雫は嵐山が時枝、柿崎を連れて新人達とある場所に向かう。
「ここが訓練場所だ」
案内された場所は小さな体育館みたいな部屋が複数ある場所。その場所で嵐山が指示を出すと体育館の中に大きな目玉がある化け物が現れた。
「コイツはバムスター、テレビとかでよく見る馴染み深い奴だ。コイツは装甲は硬いが動きは遅く倒しやすい相手だ」
ネイバーが作られるところを見た新人達が驚いているが、嵐山は冷静に言葉を発した。
「これから5分測るからコイツを倒してくれ。早ければ早いほどポイントが高くもらえるぞ」
(マジか!)
ポイントと聞いて目を輝かせる隊員達がチラホラ。もちろん風矢の隣にいる雫も目を輝かせている。
「コイツの弱点である目を狙うと倒しやすいから、その事を頭に入れて倒してくれ」
(いきなり戦うのかよ)
順番で最初になった風矢は、トリガーの使い方を思い出しながら訓練室の中に入る。
「やるしかない!」
C級隊員のトリガーは一つしかなく、風矢が手にしているのは突撃銃型のトリガー。セットされている弾丸はアステロイドと呼ばれる通常弾で、説明によれば特殊な効果はないけど威力がやや高い弾丸。
(うわぁ、前から見ると大きいな)
訓練用に装甲が厚くされているバムスターは、3〜4メートルくらいの大きさがり威圧感もある。
『3号室、訓練始め!』
「!!」
訓練が始まったと同時にバムスターが風矢に向かって突進を仕掛ける。風矢は相手動きを見て大きくバックステップを踏む。
「なんかめっちゃ飛んでない?」
生身と違いトリオン体では身体能力も大きく向上しており、現実では飛べない高さまでジャンプした。
(よし!)
着地した風矢はバムスターに向けて銃口を向け、セットされている弾丸であるアステロイドを弱点に向けてぶっ放す。
《ギギギ》
バムスターは風矢の弾丸を受けて致命的なダメージを負うが、まだ動けるみたいで首を振る。
「悪いが終わらせる」
無駄に動くバムスターに対して風矢は的確に射撃を決め。ついにズドンと倒れてバムスターは粒子になり消えていく。
『訓練終了、タイム46秒』
平均がどれくらいかわからないが最初では悪くないはず。風矢は訓練室から出てため息を吐いていると嵐山に声をかけられる。
「君、最初で1分を切るなんてやるね」
「あ、えぇ、ありがとうございます」
嵐山の言葉に驚きながら頷く風矢をよそに、隣の2号室からとんでもない結果がでた。
『訓練終了、タイム9.5秒』
(はぁぁ!?)
9.5秒、1分でも早いと言われている記録の中でケタが違う速さ。風矢と嵐山は桁違いの速さを出した訓練室の方を見ると、ポニーテールを揺らしながら雫が出てきた。
「満点ゲット!」
(マジかよ)
雫が持っているトリガーは、孤月で接近しないと攻撃が当たらないアタッカータイプなのに9.5秒の記録が出せるのは一種の才能である。
「これはすごい記録がでたな」
嵐山が冷や汗を流し、少し離れた場所で引率している時枝や柿崎も同じ表情を浮かべている。風矢は正隊員3人の表情を見た風矢はため息を吐く。
(本当に正隊員になりそうだな)
半分どうでも良くなってきた風矢は、笑いながら離れていく。
ーー
初めての訓練が終わり、風矢の手の甲には1015ポイントと書かれていた。今回の満点は20ポイントなので悪くない成績だ。
「まあ、行きますか」
(ここだよな)
嵐山隊との訓練が終わり風矢はC級ランク戦の会場にいた。
「えっと……」
風矢はランク戦会場のブースの中に入り、中にあるタッチパネルを見る。
(部屋番号と使っているトリガー、後はポイントが書かれているのか)
タッチパネルの使い方はさっき聞いたので手頃な相手を探す。すると1538ポイントスコーピオンと書かれた相手を見つけたので対戦申請を送る。
「よし!」
相手も対戦を受諾したので風矢の体は仮想戦闘マップに飛ばされる。
『対戦エリア、市街地A』
「マジで転移した!」
仮想フィールドを見るのが初めてな風矢は周りを見たり近くを飛び回っていた。すると後ろからスコーピオンを構えた少年が現れ風矢に攻撃を仕掛けた。
「くらえ!」
「うぉ!?」
相手の攻撃をなんとか回避した風矢は自分のトリガーである突撃銃を起動。相手は隙を与えないように攻撃を仕掛けてくるが、風矢は攻撃を避けながら相手に弾丸を浴びせる。
「ちょ!?」
『トリオン供給期間破損、ベイルアウト』
距離的にはスコーピオン持ちのアタッカーの方が有利だったが、風矢の逃げの姿勢の方が勝った。
「な、なんとか勝った」
風矢もへたり込みながら転移されて元のブースに戻ってくる。
アステロイド〈突撃銃〉、1015→1060
スコーピオン、1538→1493