お好み焼き〈かげうら〉でお好み焼きを存分に食べた5人は、食休みとしてバニラアイスを食べながら駄弁っていた。
「そういやー、雫と風矢はどこで出会ったんだ?」
「あ、それ! ゾエさんも気になる」
「それはー、えへへ」
「ちょ! よだれを垂らすな!?」
「なんか、2人を見ると兄妹みたいだよなー」
ニヤニヤしている仁礼の発言を聞いた雫は、さっきとは同じく幸せそうな顔をしていた。
「風矢と兄妹かー、それもいいかもしれないわ」
「あー、そういうパターンね」
「微笑ましいね」
「まあ、後輩の面倒を見るのは先輩の役目だしな」
「お、カゲもついに先輩の貫禄が出てきたね」
先輩の貫禄と耳にした影浦はまたキレそうになるが、風矢と雫の反応を見て言葉を詰まらせる。
(この人たちは暖かいな)
影浦隊の3人を見ながら風矢はそんな事を思う。
「さてと、改めて聞くけど風矢と雫の関係は?」
「互いに愛を確かめ合った存在よ!」
「……狂犬女と苦労人男」
「なんか2人のテンションが違いすぎないか?」
「月白は振り回されそうな性格してるなー」
「ゾエさんから見てもそう見えるんですね」
キラキラと目を輝かせている雫と目が死んでいる風矢。2人の関係性をこれ以上聞くのはヤボだと思った影浦隊の3人は話を変える。
「しかしまあ、今日は楽しかったぜ」
「へ?」
「お前との斬り合いだ」
(話を逸らしてくれて良かった)
このままトリップしそうな雫が現実に引き戻され、彼女は真顔になりながら影浦に言葉を返す。
「あー、あの時は無意識に攻撃してましたね」
「そうなんだ……」
「ゾエさん、びっくり」
流石にマスタークラス相手では分が悪い雫だったが、彼女のポテンシャルは影浦に負けてないみたいだ。その事で雑談しながら夜が深まっていく。
ーー
11月の上旬。10月終わりの中間テストの結果、風矢はいつも通り平均点あたりを彷徨い雫は全教科赤点をとった。そのため、雫と赤点を取った生徒は補習が確定になり、他の生徒達は1週間後に控える校外学習の話をしていた。
「では、2人から6人班を作ってください」
6限目の授業で校外学習の班決めを行い、風矢は雫と組む事になった。理由は互いに目のたんこぶで特に雫が暴走すれば周りに被害が出るので、スケープゴート兼止める役で風矢が選ばれた。
(こうなるのはわかっていたけどな)
校外学習先は千葉県のネズミーランドで、校外学習というよりも遊びの側面が強い。
「班が決まったので後は適当に時間を潰してください」
後少しで6限目が終了するので担任教師の女性は、面倒そうに生徒達に指示を出す。そしてチャイムが鳴り、帰りのホームルームも手早く終わった。
「風矢いくわよ!」
「お前、補習だろ!」
「あ、そうだった……。
補習の事を忘れていたのか雫は勢いよく立ち上がり、風矢の発言で机に沈んだ。
「うう、早く行きたいよー」
「なら補習を頑張るんだな」
「あー、待ってよー!」
ふゔやさーん、と泣きついてくる雫の頭を撫でながらため息を吐く風矢。2人の関係はかなり深く結びついているようだ。
「アイツら、またおんなじ事をしているよ」
「やーねぇー、空気を読めないのかしら?」
「毎回毎回鬱陶しい」
(マズイ!)
北添から感情受信体質のサイドエフェクトの事を聞いた風矢は、既に攻撃的になりそうな雫を教室から連れ出す。
「今日は強引だね」
「……お前、苦しくなかったのか?」
「うーん、あんなのはいつもだから慣れたわ」
(コイツ……)
顔は笑顔を浮かべているが風矢の目には無理しているように見えた。そのため風矢は雫の補習が終わるまで学校で時間潰しする事を決める。
ーー
午前0時。補習や夜ご飯などを済ませた2人はトリガーを起動。前の部隊と交代し防衛任務に着く。
「さてといくか」
「そうね!」
前の部隊と交代した2人は中央オペレーターの指示を受け、受け持つ南地区に移動した。
「よし到着した」
2人が到着した南地区は住宅街。ネイバーの影響で建物の多くが破壊されて瓦礫になっていた。
「前も見たけど荒れているわね」
「まあ、警戒区域だしそんなもんだろ」
現場に到着した風矢と雫はメイン武装を換装しネイバーの襲撃を備える。すると早速……。
『ゲート発生! 誘導誤差は0.52! ネイバー、現れます』
「「了解!」」
オペレーターの声を聞いた2人は、マップに映し出された場所に急行し敵を見る。
「おいおい、モールモットが5匹とバンダーが2匹かよ」
「面倒な相手が増えているわね」
小型で戦闘型のトリオン兵のモールモットと大型で捕獲兼砲撃型のバンダーが合計で7匹。正直B級上がりたての正隊員には厳しい数だか……。
「とりあえず私が突っ込むし援護頼むわね」
「お前な……まあ、了解」
孤月を鞘から引き抜き突っ込む雫。その後ろからP90を構え援護を始める風矢。
「さあ来なさいサソリモドキ!」
「ちょ!? 後ろに砲撃型のバンダーがいるぞ!」
「あ……」
雫がモールモットに斬りかかろうとした時、バンダーの目から薄白い光線が発射される。
「そんなの見えているわ」
雫はバンダーの砲撃に対してモールモットを盾にし始めた。
「こうすれば楽に倒せるわ」
「いや、楽ではないと思うぞ……」
サブのグラスホッパーを使い辺りを縦横無尽に飛び回っている雫をよそに、風矢はバンダーに向かってアステロイドの射撃を放つ。
「まあ、俺は俺の仕事をしますか!」
メインのアステロイドのサブのメテオラでバンダー2匹を沈めた風矢。その近くでモールモットと遊んでいる雫の2人は、互いに屋根の上に登って相手を見る。
「最初は強く感じたモールモットも今では弱く感じるわ」
「お前な、その発言でモールモットさん達が怒っているぞ」
「3匹くらい怒っても大丈夫でしょ」
カラカラと笑う雫を見て呆れる風矢は、突撃銃をモールモットに構えて引き金を引く。
「とりあえず終わらせるぞ!」
「了解したわ!」
前衛でモールモットに突っ込みブレードを掻い潜り弱点の目にスコーピオンを刺す雫。中衛で安定した射撃を繰り返し倒していく風矢。2人の連携は悪くなく既にB級下位の中では頭一つ抜けている状態になっていた。
ーー
8時間の防衛任務が終わり次の部隊と交代した2人はボーダー本部にある仮眠室で眠っていた。
「ふあぁ……」
昼過ぎ、目が覚めた風矢は仮眠室から出てボーダー本部の廊下を適当に歩いていた。
(ボーダーの廊下は迷いやすいな)
適当に歩いているとランク戦ブースに到着したので、知り合いがいないか周りを見始めた。
「誰も……」
「ちょっと、そこの目つきの死んでいる人?」
「いないなー」
「聞いているの?」
半分現実逃避している風矢の目の前に、金髪ロングヘアでいかにもお嬢様という相手が現れた。
「いい加減、無視しないでくれるかしら?」
「無視はしてないぞ」
「ならなんでアタクシの言葉を聞かなかったのよ」
「そんなの現実逃避していただけだ」
「真顔で返されると悲しいわね」
なんか心にきたのか自身の胸を押さえている金髪ロングヘアの少女。
(また面倒な奴が現れたな)
雫や香取などの問題性がある少女達を見てきた風矢の直感では、同じタイプだと感じた。
(さっさと逃げるか)
「あの、用事があるので帰りますね」
このまま巻き込まれるのは嫌だと思って風矢は、足早にランク戦ブースから離れようとしたが、金髪少女に腕を掴まれる。
「お待ちなさい! またワタクシの話は終わってないわよ」
「いや帰らせてくださいよ」
「ならアタクシにランク戦で勝つ事ね」
「……はぁ」
(コイツも人の話を聞かないタイプか)
予想が当たりため息を吐く風矢と、トリガーを換装しB級ソロ隊員の青いジャージ姿なった金髪の少女。
「さあ始めるわよ!」
彼女に促される形でランク戦を始める事になる風矢は、これから始まる面倒な事を思い浮かべる。