風矢が相手する事になった金髪少女こと城山美鈴は、メイントリガーはスコーピオンを使用しているアタッカータイプみたいだ。
月白風矢、105号室、アステロイド〈突撃銃〉、4610
城山美鈴、106号室、スコーピオン、4628
風矢と城山のポイントはほぼ五分で強さ的には同じくらいと推測できる。
「やるしかないか」
106号室から10本勝負の対戦申請が送られてきたので風矢は受諾。自身の体はいつも通り戦闘フィールドに移動される。
『B級ソロランク戦、対戦フィールド市街地A』
2人が転移された場所は見慣れた市街地Aで、開始の合図と同時に動き出す。
「さっさと終わらせるわ!」
「簡単に終わらせるかよ」
スコーピオンを構えて愚直に突撃してくる城山に対し、風矢はバックステップを踏みながら突撃銃で射撃を始める。
「そんなの効かないわ!」
「!?」
《ガガガ》
城山はサブのシールドを起動して風矢の射撃を防御。素早く接近し風矢の体をスコーピオンで斬り裂く。
「ぐっ!」
『トリオン体活動限界、ベイルアウト』
最初の一本は城山が取り、彼女は2本目以降も自分が楽勝だと思っていた。
『2本目、開始!』
2本目開始の合図と同時にさっきも同じく突進を仕掛ける城山。それを見た風矢はかかった、と思いあるトリガーを発動する。
(かかったな)
「メテオラ!」
「また同じ手なの?」
1本目と同じく弾丸をシールドで防ごうとする城山だったが、風矢が使ったのは炸裂弾であるメテオラだ。このトリガーは広範囲に爆発を起こす弾トリガーで、トリオン調節で爆発の規模の調整ができる。
(このメテオラは倒すのが目的じゃないけどな)
27分割されたメテオラの煙幕で相手が見えなくなり、風矢は好機だと思いカメレオンを起動し自身の姿を透明化させる。
「どこいったのよ!」
(そんな簡単に見つかるかよ)
煙幕が晴れて周りをキョロキョロ見る城山の後に移動した風矢は、カメレオンを解くと同時にアステロイド〈突撃銃〉+サブのサイレンサーを起動。サイレンサーはトリオン体やトリガーから発せられる音をなくすトリガーで、無音状態で放たれた弾丸が城山のトリオン体に直撃する。
「ちょ!? 卑怯ですわ!」
『トリオン体活動限界、ベイルアウト』
不意打ちに反応できなかった城山は、風矢の射撃をモロにくらいベイルアウトした。
「俺の罠にかかったな」
ベイルアウトして空を飛んでいく城山を見ながら、内心で笑う風矢は次の戦いに備え始める。
ーー
月白風矢、105号室、×〇〇〇〇〇〇〇×〇
城山美鈴、106号室、〇×××××××〇×
トータル8対2で勝者、月白風矢
月白、アステロイド〈突撃銃〉、4610←4725
城山、スコーピオン、4628←4513
今回の戦いで試作トリガーであるカメレオンの強さが遺憾無く発揮され、ランク戦を見ていた隊員達は自分も使い始めたいと思い始めた。
(カメレオンか)
その中で総合ランク9位の黒髪短髪で背が低い青年は、カメレオンの有用性と相性を見て自分の部隊を作る時に使えると確信した。
ーー
試合が終わりヘナヘナ状態でブースから出てきた城山と微妙な表情を浮かべる風矢。
「あなた! 姿を消すトリガーは卑怯よ!!」
「卑怯と言われても……文句なら作った開発室に言ってくれ」
キャンキャンと吠えている城山を見て頭を抱える風矢だったが、背後から寒気を感じたので思わず振り向く。
「ふ、う、や、さ、ん、何をやっているの?」
「雫、間が怖いんだが……」
「貴方、そんな事よりもワタクシの話を聞きなさい!」
「そんな事、ですって?」
風矢の肩を軽く叩いたハイライトオフ状態の雫。彼女は風矢から今回の騒動の事と、今でもキャンキャン吠えている城山。だいぶおかしな空間になっており、雫が何か思いついたのが城山の方に近づく。
「そういえば前に貴女と戦ったわね?」
「へ?」
「私とランク戦をしてくれない? まあ、貴女には勝ち目はないけど」
「何ですって! その言葉、そっくりお返ししますわ!」
(城山って、数日前の雫暴走事件でボコボコにされたアタッカーなのでは?)
また馬鹿が増えたと思った風矢は、少女2人がランク戦ブースに入っていくのを遠い目で見る。
ーー
『B級ソロランク戦、フィールド市街地A』
雫のメイントリガーは孤月、4853ポイントで暴走事件で数値が上がっている。対する城山のメイントリガーはスコーピオン、4513ポイントで風矢に負けて数値が減った。
(私の風矢にデレデレしないで!)
(この小娘なんてさっさと倒してやるわ!)
ボーダー内でトップクラスのトリオン12を持つ雫。優秀な数値であるトリオン8を持つ城山。2人は平均よりもトリオンが高いのに、なぜシューターやガンナートリガーを持たないのか……。その意味は後々判明する。
「貴女に勝ったらあの消えるガンナーを借りるわね」
「!? 風矢に何をする気なの!」
「そんなの骨の髄まで私に屈服させるためですわ」
(まあ、ボコボコにしてプライドを折るだけよ)
さっきは煮湯を飲まされた城山は風矢へのリベンジに燃えているが、雫の方は違うみたいだ。
(コイツ、風矢を屈服させると言った?)
さっきから鬱陶し感情の刺さり具合を感じてイライラしているのに、さらに煽ってきたので雫のボルテージは上がっていた。
『B級ソロランク戦、開始!』
2人はメインのブレードを起動し、互いに武器をぶつけ合った。
「この程度かしら?」
「そうだといいわね!」
「なっ!」
ブレードの鍔迫り合いは雫が使う耐久性の高い孤月が有利で、切れ味はあるが耐久性が低いスコーピオンにヒビが入る。
「ぐっ!」
(鍔迫り合いは不利ね)
鍔迫り合いが不利だと感じた城山は、左足にスコーピオンを生やして雫を蹴りつける。
「まさかこの程度?」
「へ?」
城山の足スコーピオンに対して雫は集中シールドを起動。トリオンの関係上、性能が高い雫の集中シールドは城山の足スコーピオンを問題なく防ぐ。
「またワタクシを馬鹿にして!」
「そうやってどこでもお嬢様扱いされると思っているの?」
「きいぃ! アタクシは本物のお嬢様なの!」
城山の実家は大企業を何個も運営しており、何不自由なく生活してきた彼女に向かって雫が一言。
「プライドの高いお嬢様には躾が必要ね」
この言葉の後、先程とは動きがまるで違う雫が城山をコテンパンにして地面に沈めた。
ーー
雫対城山の戦いは30本で終わりを迎えた。
「風矢ー、全部勝ったよ!」
「なんか凄いな……」
周りの隊員達は雫の容赦なさに引いており、何人かこちらをチラチラ見てブツブツ言っている。
「とりあえず他の場所に行くか?」
「そうね」
また目立った事が不快と思いながら2人はラウンジを出るために歩みを進めた瞬間、ブースの方から女性の大声が聞こえる。
「待ちなさいー!」
ドタバタとブースから走ってくる音。風矢と雫は互いに顔を見合わせてため息を吐く。
「面倒そうな奴ね」
「……お前が言うか?」
風矢のツッコミに雫は苦笑いを浮かべ、改めて2人はこのままブースから出て行こうとしたが金髪少女に捕まる。
「で? なんの様だ?」
「はぁはぁ……貴方達、ワタクシとチームを組みなさい!」
「「はぁ??」」
「何でそんな驚いでいるのかしら?」
「貴女みたいな地雷と組むわけないじゃない!」
(それをお前が言うの?)
雫の地雷発言に顔を真っ赤にする城山、ブーメランが返ってきたので回避する風矢。
「良いですか? アタクシ達がチームを組めばA級も夢ではないですわよ!」
「別に私はボーダー推薦が狙いだっただけでA級にはあまり興味がない」
「それにA級は防衛任務以外にも上から指令があるから休みが少ないらしいぞ」
「貴方達、A級よ! その意味をわかってらっしゃる!?」
「「そんな事知るか!」」
なおも勧誘を仕掛けてくる城山に対して冷たい視線をぶつける風矢と雫は、面倒だと思い適当に話を切り上げた。