ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間。
今日は、守護者統括アルベドには日頃の激務を
これを機会に、アインズは以前から疑問に思っていたことをデミウルゴスと論じてみよう、などと余計なことを思い立つ。
「オレ、時々光るじゃない?」
「左様で御座いますな、アインズ様。」
「アレ……さ。」
「流石はアインズ様と、いつも感心させていただいております。」
「え?」
「……え?」
「ちょっと待ってデミウルゴス。
何だと思ってるの?」
「しばしばアインズ様が神々しくも緑色にお輝きになるあれで御座いますよね?」
「うん。」
「ペカー、で御座いますよね?」
「それ。」
「……
「え?」
「……え?」
「いや、だから何だと思ってるの?」
「ですから流石アインズ様、と。」
「え?」
「……え?」
「いや、これじゃ話進まないからさ。
デミウルゴスはアレを何だと思ってるの、とりあえずはぐらかさずに言ってみて。」
「くすぐり、御座いますよね?」
「……はぁ?」
「くすぐり。ご承知では御座いませんか?」
くすぐり:
落語などで、本題に入る前、又は、途中話がだれたときに、本題と関係の薄い
「……で、どういうこと?」
「話が進まなくなりますで御座いましょう?」
「……まぁ、大概多いよな。この世界では。
今もまさにそんな感じだけど。」
「ですから……アインズ様が早く続きが読みたい読者をお気遣いになって……」
「おーい、ちょっと待てー!」
壁ドン。
「何だ、今の?」
「……はっ?」
「今、読者と言ったか?」
「何かご不興を買うようなことを申し上げましたでしょうか?」
「それは……
「
「黙って聞け!」
「はっ!」
「……では、それは不問に付そう。
で、どういうことなんだ?」
「はい?」
「
「え?」
「……え?
一旦玉座に戻ろう。話が錯綜してきた。」
「思し召しのままに。」
仕切り直し。
「デミウルゴス。
おまえはオレが緑色に光るのをいったい何だと思っているんだ?」
「ですから、くすぐり……」
「それはわかった!
わかったが……くすぐりと緑色の光の関係が……わからん。」
「第六話後半で……」
「ん?
……まぁ、いい。続けろ。」
「第六話後半でアインズ様とアルベドの濡れ場が御座いました。」
「おーい、ちょっと待てー!」
再び壁ドン。
「なんでおまえがそんな事を知っている?」
「え?」
「え、じゃないだろう!」
「いや、アインズ様におかれてはご承知のことかと。」
「ん?」
「本編
「覗くな……。」
「……はい?」
「
「はっ!」
「仕切り直すぞ。」
二人でいそいそ玉座へ。
「百歩譲っておまえが考えていることを述べることを許す。
続けろ。」
「アルベドが恐れ多くも『ひょっとして妬いているのかしら、アインズ!』と申しました。」
「……あぁ、そうだな。」
「普通であれば、ここで緑色に光って本筋に戻るのが常道で御座いましょう?」
「ん?」
「ですから、くすぐりで御座います。」
(……わからん)
「本編全体の内容からすれば、この濡れ場はくすぐりで御座いますよね?」
「何だと!アレがないとオレは全編骨折り損のくたびれ儲けじゃないか!」
「……はい?」
「いや、すまん。今のはオレが悪い。
で、二百歩譲ってアレがくすぐりだったらどうなんだ。」
「常であればペカーで終了、で御座いますよね?」
「……そうかも知れないが、それがどういう?」
「ですから、流石は……」
「しばし『
「……はぁ。」
「で、どういうことだ?」
「ですから、常であればあそこでペカーでくすぐりから本筋へ戻りますところを、敢えてかの神々しき緑の光をお控えになり……」
「待て待て!
お控え……とは何だ?」
「え?」
「え、じゃないだろ。
お控え、だったら、まるでオレが遠慮して光らなかったみたいじゃないか。」
「え?」
「だから何でそこで、え、なんだ?」
「恐れながらお尋ね申し上げます。
であれば、何故アインズ様はあそこでお光りあそばさなかったのでしょうか?」
「知るかぁーーーー!オレが聞きたいわ!」
「え?」
「もうその、え?も禁止な。
おまえがどう思ってるのとどう違って何に驚いているのか、何を聞いても怒らんから忌憚なく述べよ!」
「……てっきりアインズ様が、その……」
「その……何だ?」
「……その……読者を
「どぉーくぅーしゃぁーだぁーとぉ?」
「お、怒らぬ、と仰せになられたではないですか!」
「……そうだったな。
許す、続きを!」
「はっ!
ですので、常であればくすぐりなど早く済ませて先を読みたい読者のために緑色の光をお放ちになって
「ペカらなかった……と言いたいのか?」
「……間違っておりましたでしょうか?
「本気で言っているのか?」
「他にも例が御座います。」
「ほぅ……」
「第五話中程にてアインズ様がご狂態をお晒しあそばす場面が御座います。」
「……おのれの
「こ、これは失礼を致しました。」
「構わん。事実だ。
それで?」
「ビールの話、要りませんでしょう?」
「ん?」
「気持ちよくないんだよー、ペカー、でも構わないのに、無駄に長く御座いましたでしょう?」
「おーい、ちょっと待てー!」
「その
「はい?」
「その場面で説明できるなら、さっきの濡れ場の話、要らなくないか?」
「……左様で御座いますでしょうか?」
「そりゃそうだろう!」
「お言葉では御座いますがアインズ様。読者の期待といたしましては……」
「またそれか!戻るぞ!」
二人でいそいそ玉座へ。
「ゴホンッ……その点についてはおまえは間違っている。」
「……はい?」
「ある意味、あの場面はおまえ自身が被害者だからな。認め難いのはわからんでもない。
……だがな。」
「はっ、何で御座いましょう?」
「あの場面が書きたいがためだけに十万余字を費やしたのだ、この作者は!」
「さぁーくぅーしゃぁーだぁーとぉ?」
「待て待て!役割が入れ替わっているぞデミウル……ぐわっ!」
突如、アインズの体がこれまでになく眩く爆発せんばかりの緑色の光を放つ!
ペカー!
ペカー!
ペカァーーーーーーーーッ!
「……デミウルゴス。」
「はっ!」
「何の話をしていた?」
「はっ?」
「オレは何の話をしていた?」
「とりたてて重要なことでは御座いませんでした。」
「……こんな短時間で忘れたことはかつてなかったように思うが。」
「愚考いたしますに、あまりにこの世界との関連が希薄なことをお考えあそばしたため、無駄な記憶領域として
「……なるほど、そういうこともあるか。要注意だな。」
「左様で御座いますな。
……アインズ様、少々離席させていただいてよろしいでしょうか?」
「お手洗い?」
「まさか。
すぐ戻りますので、失礼いたします。」
「うむ、許す。」
いそいそ、と玉座の間を出るデミウルゴス。
廊下に出るや帳面とペンを取り出し、
「忘れぬうちに書き留めねば。
『追憶のオーバーロード、余話』……と。」
本当に完