玄人たちが実力至上主義の教室へ   作:なっち様

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ジャンバカなおかっぱ少女

秀圀の第一印象はカワイ子ちゃんが多いなというものだった。

 校門をくぐってから自分の教室であるDクラスへと向かう途中までで、この令和の時代で?と思うようなおかっぱ頭の女子以外の顔面偏差値が平均以上だった。

 

 で、第二印象は思ったより治安悪いな、だ。

 

秀圀自身はこの学校のパンプレットはもってのほかネットでの検索など全くしていないが婆の話で授業料以外の全てが学校負担の上卒業後のサポートも手厚いという事で、志望率の高い学校という話だった。

 

 志望率が高いということはそこそこ偏差値も高くなるのが普通だが、なんだか同級生に明らかに馬鹿っぽいのが何人かいるのが気がかりだった。

 

(特に机を蹴飛ばした赤髪。自己紹介くらいでキレんなちゅうーねん)

 

「さて、ここまで説明したがなにか質問のあるものはいるか」

 

 担任となった茶柱の説明が終わった。

 話を簡単にまとめるとこうだ。

 

・この学校ではクラス替えがない。

・金銭の代わりに学校が支給する端末に送られるポイントを利用する事。

・そのポイントを今月分として10万円が支給されていること。

・学園内の敷地から出ることは出来ないが学園には娯楽施設も含めてあらゆる設備があるので心配するな

 

 今更10万なんて小銭貰ったところで何にもならないと内心呆れていた秀圀だが、どうも周りはそうではないようだ。明らかに浮足立って、そのほとんどが端末を開いていた。

 

そのほとんどに含まれない高円寺の息子が馬鹿にしたような目で見てきているのはなんなんだろうか。

名前は記憶にあるが面識はなかったはずだが。

 

(ムカつくやっちゃな)

 

「質問もないようなので今日はこれで解散とする、明日からは通常授業が始まるので教科書等を忘れないように」

 

 そういって茶柱が教室を去ると教室はにわかに騒がしくなった。

 十万円の使い方を話し合ったりしてそういう出来事をきっかけに友人が出来ていくのだろう。秀圀には興味のない事だが。

 

 (他の有象無象には手厚い新学校かもしれへんけど、やっぱ親父の言う通りワイにはここは座敷牢とさほど変わらんわい)

 

 教室を後にした。

 

「ほんまにしけてるなぁ」

 

 独りこの学園をぶらついてみたがゲームセンターはあれど雀荘もパチ屋はもちろん地下カジノなんかも無かった。

 

「ポイントの使いどころもないやんけ」

 

 しょうがなくコンビニで漫画でも買おうかと立ち寄ると何やら上級生と朝の赤髪が喧嘩をしているようだった。

 

「ま、ここは落ちこぼれのお前らに譲ってやるよ」

 

 そう捨て去って上級生たちは去っていく。

 

「クソっ!!」

 

 が、怒り冷めやらずといった様子の赤髪は勢いそのままに近くのゴミ箱を蹴り飛ばすと悪態をついて踵を返す。

 

「おい、なんだよ、おまえ」

 

 去っていこうとした赤髪が立ち止まる、赤髪の前には小柄なおかっぱ少女が両手を広げてと通せんぼするように立っていた。

 

(朝のこけし女やんけ)

 

「ゴミ、戻してけ」

 

 おかっぱ少女が指さした先には赤髪が蹴り飛ばして散乱したゴミとゴミ箱がある。

 赤髪はそれを見やって面倒そうに眉をひそめた。

 

「そんなん勝手に店員がもどしてくだろ」

 

「甘えんな、自分がやったことくらい自分で始末しろ」

 

「めんどくせぇ、いい子気取ってんじゃねぇよブス、俺は今気が立ってんだ、女だからって容赦しねぇぞ」

 

 見せつけるように拳を鳴らす赤髪、だがそれに臆することなくおかっぱ少女は口を開いた。

 

「お片付けの時間だぞ」

 

「忠告はしたぜ!!」

 

 赤髪はそのまま拳を少女の腹にぶち込んだ、顔ではなかったのは一抹の理性が働いたのかもしれない、しかし、小柄な少女と大柄な赤髪、それに男と女という力の関係もあってか少女は冗談じゃなく60cmほど浮いたあとぼとり、と倒れた。

 

「女だからって調子のんなよ」

 

 そう捨て吐いて去ろうとした赤髪の足を少女は力強くつかんだ。

 

「うぐぐ、はぁ・・・ゴミ…はぁ…片付け…ていけ」

 

「ち、何なんだよ、おまえ」

 

 面倒くさそうに足を振って腕を振り払おうとする赤髪だが少女の腕は離れない。

 

「あーもう!わーった、わかったよ!戻すっつーの」

 

 赤髪がそういうとぱっと腕が離れた、赤髪は乱暴にゴミ箱を縦に起こし、周囲に散らばったごみを大きな掌で掴み勢いよく突っ込んだ。

 

「これでいいんだろ!?俺はもう行くからな!!」

 

 そういって去っていった。

 

「あー。あんた大丈夫か?」

 

 荒い呼吸をしている少女を見捨てるのも忍びなく秀圀はおかっぱ少女を助け起こす。

 

「平気、経験的に骨は折れてない痛み、しばらくすれば治る」

 

「お、おう、でもあー言う奴には関わらん方が身のためだと思うで」

 

「駄目。あーいうのを見過ごすと配牌が悪くなる」

 

「ほーあんた麻雀すんのかい」

 

「する、おまえもするのか?」

 

「まぁ、ちょいと摘まむ程度にな」

 

「なら今度からああいうのは見過ごさない方がいい、配牌が悪くなるからな」

 

「ま、気が向いたらそうするわい」

 

 内心、ワイに麻雀を語るなんて100年早いわいと思ったがわざわざ言うほどでもないと思いなおす。麻雀ほど変なオカルトを持っている奴のおおいゲームそうないのだし。

ただそのオカルトが卓の外を出るのは珍しいが。

 

 その日は結局、コンビニで適当な飯を買って帰った。 4月5日。

 今日から通常授業が始まったが、まともに授業を受ける気がないのは秀圀だけではないようで、クラスの半分ほどが隣の席の人間と話したり端末を弄ったりしている。

 

それよりも小耳にはさんだのだがこの学校には遊戯室なるものがあるらしい。

昨日のホームルーム後に学校を探索した人間がいたようで、テーブルボードゲーム類が数多く設置されているらしい。

 

 授業が終わったら秀圀は暇つぶしにその遊戯室に行くことにした。

 

 ホームルームが終わり馬鹿でかい学校の案内図を見ながら辿り着いた遊戯室はそこそこの大きさを誇っていた。

 

「お、麻雀卓あるやん!」

 

 部屋を見渡すと全自動卓が二台置いてあるのを発見する。

 片方の卓は上級生が三麻をしているようだ。

 

「お、君新入生?」

「麻雀出来んの?」

 

 後ろ見しようと近づくと向こうから声をかけてきた。

 麻雀をする人間というのは基本的に新しい面子に飢えていて、麻雀が出来るとしれば誰でも卓に着けようとする。

 

「じゃあルールはアリアリの赤ドラがマンピンソーの5に各一枚づつ入ってて、喰い変えはなし」

 

「ん、OK」

 

 だからこうなることは必然なのだった。

 

金もかかっていないような麻雀で必死に点棒を積み重ねるのも馬鹿馬鹿しい、そう自分でも思うが思えば麻雀もクソ親父にここへの入学を決められて以来。

 

 そんな思いから東一局。西家スタートをした秀圀は思いのほか真剣に取り組んでいた。。

 

10巡目

 {三四五六七④⑤⑤⑥7899} 自摸 {8}  ドラ{⑤

 

(さて、どうしますかねー)

 

対面(親)捨て牌

 

{⑨二⑦白八③3一⑥⑧}

 

上家 捨て牌

 

{西白一①東八北四8②7}

 

下家 捨て牌

 

{北発9白⑧一東八2}

 

 どこも大人しい河をしているが巡目も中盤、どこからリーチが来てもおかしくないしダマテンもあり得る巡目だ。

 

 ドラを使いきる形なら{④⑥}と落としていき一盃口ドラドラ、{7}から入れば平和もついて7700、または{799}と落としていき{8}頭固定にし筒子を伸ばしてタンピンドラドラの7700、こちらは鳴き仕掛けも出来て3900の手にも出来る。

 

(せやけど、この巡目でターツを落として手を作るいうんは遅すぎる)

 

 秀圀 打{⑤} テンパイチャンスが一番広い待ち。

 

({7}が入ったらあんま意味ないけど{三六}待ちで立直打つか、{八}三枚切れで{九}のちっさい壁の筋やし)

 

 願掛け程度の待ちになる、実際{八}が4枚見えていたところで壁になるのは{9}だけだが、まあ同じ無筋の{四七}待ちよりはいいだろうという判断。

 

 そして次巡、秀圀あっさり{7}自摸。{三六}待ちのノベタンでリーチ。

 またまたあっさり一発自摸。立直一発自摸一盃口ドラ。裏は乗らず2,000、4000のアガリ。

 

 このアガリで流れが来たのか七対子やクイタンなどを他家に上がられたものの秀圀は危なげなく上がっていきあっさりと半荘のトップを取った。

 

「ま、こんなもんやな」

 

 にししと笑う秀圀だがそこで上級生から声がかかった。

 

「君強いなぁ」

 

「当た坊よ」

 

「それだけ強いなら、どうだい実際にポイントをかけてやってみるっているのは?」

 

「ほー、なんぼなん?ワイいまはあんま金ないで」

 

「うーんそうだなぁ、千点1000円のレートでどうかな?ちょっと高いけど入学式に10万ポイント振り込まれているんだろ?それにもし派手に負けてしまっても来月またポイントが入るんだし心配ないだろ?」

 

「なんやデカピンかい、それならええよ」

 

 デカピンぐらいで高いレートというのに少々違和感を感じたが、まあ高校生ならこんなもんかとこれから自分もこの感覚を身につけないといけないのかとずれたことを秀圀が考えていると、

 

「待て」

 

 後ろから最近聞いた声が飛んできた。

 

「そのレートならやる」

 

昨日、同じクラスの赤髪にぶん殴られていた少女が後ろに立っていた。

 

「あ、昨日のおかっぱやん」

 

「おう」

 

「なに、君たち知り合い?しょうがないな、今回は俺が抜けるよ」

 

 そう言って対面の上級生が抜けておかっぱ少女の後ろに立とうとした。

 

「はうう!!?」

 

 おかっぱ少女がその上級生の股間をビンタした。

 

「な、なにするんだ!」

 

「だって後ろに立つから」

 

 どうやらこのおかっぱは上級生グループによる通し(ローズ)を警戒していたようだ。

 

(そこまで警戒するというっちゅーことは結構な賭場慣れしとるなこの女)

 

「おい、おかっぱ女。名前を教えんか」

 

「……小島かほり」

 

 

 

 

 

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