修羅の国日本の霊能者、ホグワーツに通う 作:アママサ二次創作
日本の魔法界やハリー・ポッターの時代背景に捏造を多く含んでいます。日本の魔法体系とイギリスのそれは別物という扱いです。また日本には昔ながらの妖や最近になって出現している怪異、悪霊などホラー系の存在が普通に出現し、それを日本の霊能師や魔法使いが祓うことで人々の生活を守っています。神様も普通にたくさんいます。
日本は南硫黄島。マホウトコロと海外の魔法界からは呼ばれる学校がそこにはある。正式名称は和国数多術修道処。『マホウ』という響きが正式名称には存在しないが、それは日本で扱われる術が魔法だけではないからだ。
陰陽道、霊道、仏法、神道、魔法、魔術、魂術、真言、精霊術。その他多くの学術的には分類されていてもそれぞれに解釈によって分類が異なってくるような術が日本には存在している。それらはもともと日本で発展してきたものであったり、あるいは外国で生まれて日本に輸入されてきた術であったり、更には日本でそれらに魔改造を加えたり新たに開発された術であったりと様々ではあるが。
この『数多なる術』という発想は、あまり海外では理解しがたい考えであるらしい。そもそも海外にも様々な術が存在していたが、それらはやがて魔法という形で統合された。言い方を変えるならば、魔法が全てを支配していった。
それに対して日本では、海外と比較しても遥かに多くの術が存在していながらそれらが統合されることはなかった。というより、その余裕が無かった、というのが正しいだろうか。
日本には海外とくらべて、遥かに人を脅かすものが多く存在していたのだから。
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「眠いなら寝てしまえ。どうせかなりの時間がかかるんだから」
まだ幼い少年の言葉に、その隣に座る少女は閉じそうになる目を必死に明けながらもふるふると首を横に振る。
2人が座っているのは飛行機のエコノミークラス。大人にとっては少々狭く感じられるだろうそれも、まだ11歳程度の子供である2人には十分に広く感じられるものだった。
「お話、聞きたい……」
ポヤポヤとした声で少女はいうが、それに少年は苦笑を返す。
「しかしなあ……わかった。機内食の時間になったら起こすよ。そのときに話してあげよう」
そう宥めると、小さくこくんと頷いて、やがて穏やかな寝息を立て始めた。
まだ短い付き合いではあったが、少女はずいぶんと少年に懐いてくれている。それはありがたいのだが、眠たい時にはしっかりと寝て欲しい。夜に絵本を読んで欲しいと駄々をこねる年齢はもう過ぎているだろうに。
「あ、もう寝ちゃいました?」
少年の隣、通路際の席に、離席していた女性が戻ってくる。
「ああ」
「あなたの話を聞きたいってもっとゴネるかと思ったんですけどね」
「まだ11歳だ。眠気には勝てないんだろう」
「貴方と違って可愛げがありますね」
「余計なお世話だ」
軽口を叩く女性に鼻を鳴らして、少年、
「あれ、それって向こうの魔法関係の書籍じゃないですか?」
「そうだ」
「もう始めるなんて勉強熱心ですね」
「あいにくしっかりとした書籍は大して残っていなくてな。せめてもの知識を詰め込んでおかないと7年ではとても足りんだろう」
「知ってますよ私。そういうのバカ真面目って言うんです」
「呪うぞ貴様」
おちゃらけて見せるまだ女性に、少年はうんざりとした様子で返す。11歳ほどの外見をした少年とまだ成人したばかりに見える女性。その付き合いは、もう5年以上になるだろうか。だからこそこんな辛辣な軽口を気軽に口に出来るのだ。
少年が本を読んでいる傍らで、早くも飛行機での時間に飽きた女性がうなだれて愚痴を言い始める。
「あー、それにしても退屈ですねえ」
「いつも言ってるだろう、書籍の1、2冊ぐらい持ち歩くかスマホにダウンロードしておけと」
「持ってますよ! でも読んだら眠くなるんですもん!」
「そのまま永遠に眠ってしまえ」
本から顔を開けない柩に女性は頬をふくらませる。
「そもそもですね、私があなたの部下を志望したのはあなたのところならたくさん実践出来ると思ったからなんですよ? なのになんでわざわざ引きこもりの片田舎まで赴かなきゃいけないんですか!」
「そんなことは上に言えよ」
「言えると思います?」
「俺は怖くて無理だね」
「ほらあ!」
いつもの調子の崩れない部下に、柩は思わず笑いをもらす。こんな調子だが、いざ妖や怪異、怨霊を相手にすればきっちりと仕事はするのだ。
「せっかく情報の入ってこないところから声がかかったんだ。
「うちの魔法使いは知的好奇心とか探究心が凄いですもんねえ」
女性のその言葉を皮切りに、2人は思い出す。
人が生きるには少しばかり厳しい環境である祖国を。そして更にはそんな祖国に住まい、厳しい世界に向かい合う術師達を。
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始まりは半月ほど前にさかのぼる。その日依頼を受けて簡単な悪霊とか怪異とかを『滅っ!』した柩は、呼び出しを受けて懐かしの母校、『和国数多術修道処』を訪問していた。
その出自上年齢に対して遥かに幼い見た目をしているので門のところで職員に止められてしまったが、身分証を提示することですぐに通過することができた。こんななりでもある意味有名人なのである。
そうして向かう先は校長室。かつてここに在籍していたときにはついぞ訪れる機会の無かった部屋である。というか殆どの生徒が訪れたことがないだろう。なにせここの校長、フットワークが異常に軽い。古い城と現代建築が融合したような構造をした学園の上層階にある校長室に生徒を呼び出すぐらいなら、自分の足で生徒のところへ赴いてしまうのだ。そういうところが親しみやすい校長として慕われているのであるが。
そうして校長室の扉を叩いた柩に対する校長、安倍成忠の言葉がこれである。
「おう小鳥遊、お前来月からイギリスに出張な」
「…………は?」
唐突過ぎて間の抜けた声しか出なかったのも仕方ないことだろう。そもそも柩の所属は特事省霊能丁であり、いくら日本に存在する多くの術師が一度は踏み込むこの和国数多術修道処の校長とは言え指示を出せるものではないはずなのだ。
「校長先生。いつも言っていますが言葉足らずですよ」
「いやー、良い間抜け面が見れたってもんだ」
そう言ってニヤリと笑った校長は柩の方へとクリアファイルににまとめられた資料を放ってくる。魔法で制御されたであろうそれは、明らかに形状と見合っていない軌道を描いて柩の手元へとやってきた。
読めと。そう言われていると察した柩はファイルから書類を取り出して目を通し始める。
「イギリスの魔法学校からうちの生徒に入学許可証が届いた。入学許可証という名の招集状だがな」
書類の内容は柩に与えられた仕事の内容であり、今校長が話しているのは『なぜ』そんなことになったかだ。その2つの情報を柩は同時に処理していく。
「で、うち、というか日本としては外国の魔法学校からの招集に応じて大事な子供をそう簡単に送り出すわけにはいかない。あそこはあまりにも閉鎖されてるから情報がぜんぜん無いしな」
「ならなんで俺を送る話になってるんです?」
「『そう簡単に送り出すわけにはいかない。我々には子供の安全を守る義務がある。安心の出来る護衛の1人でもいれば良いのだが』。ということでお前の建前上の立場はその子の護衛だ」
「なるほど」
ようやく話が見えてきた。つまりイギリスの魔法学校に日本の子供が通うことになったので、その護衛として柩を任命し、あわよくば情報の少ないイギリスの魔法界に関する情報を収集してこい、と。そういうことだろう。日本の魔法使いには研究馬鹿も多く、これまで明らかになっていない魔法の理論があるなら喜んで取り入れ研究をするだろうし、政治的な面でも情報が全く無いという状態は避けたいのだ。
「でも俺監視対象ですよね。それは良いんですか?」
「お前の監視対象ってのも研究的な意味合いが強いからな。まあそれに、いざこぼれたとしても外国だしな」
「酷い話だ」
魔法界の闇を垣間見た気分の柩が思わずぼやくと、校長の秘書である女性が咳払いをする。
「校長」
「わぁってるわぁってる。一応こぼれないように封印の術式を組むらしい。その分浄化は遅くなるが、まあ今更7年なんて誤差みたいなもんだろ」
柩の事情にも対応してくれる、という言葉に、なおさら柩は首を捻る。
「ならば何故? わざわざ俺じゃなくても良いでしょう」
「別にお前じゃなくてもいいっちゃ良いんだけどな。念のためだ念のため」
「念のため?」
思わせぶりな言葉に柩が首をかしげると、校長の代わりに秘書が説明をしてくれる。
「貴方の場合は、生半可なことでは死にませんから。それこそ我が国の神々に消滅させられるか存在ごと浄化されるかぐらいはしないと。危険な目に合うとしてもそこまでのことはそうそう起きないでしょう」
「そういうことですか。それなら俺が適任ですね」
「そういうことだ」
言いながら校長は指を鳴らす。すると、直前まで柩の読んでいた書類がファイルごと黒々とした炎に包まれて燃え始めた。
「仕事の内容は書いてあった通り。こっちに戻って情報をまとめるところまでが仕事だから10年がかりの仕事になると思ってくれ。受けてくれるな」
「受けますよ。面白そうですしね」
イギリス魔法界の情勢を探るだけでなく、書物などの内容を記憶してくる必要がある。それはまさに、記憶を貯蔵できる柩にしかできない仕事と言っても過言ではない。
……流石に過言ではある。その場でコピーを作れる魔法使いならそれなりに存在する。ただ諸々のことを考えると、外見上の年齢も相まって柩が一番適しているのだろう。体質上年を取りにくい柩の見た目は、30代後半のおっさんでありながらまだ10歳ほどとイギリス魔法学校の入学年齢とぴったしであった。
「ああそれと、一応こっちから餞別がいくつかある。まあそれは後で愛海から受け取ってくれ」
校長の紹介を受けて秘書の女性が穏やかに一礼をする。
「わかりました」
「以上だ。今日はわざわざ来てくれて助かったよ」
少々口調の荒い校長だが、その本質は学生に対するものと変わらない。ただ、卒業した相手は学生ではなく1人の大人として対等に扱おうとしているだけなのだ。その心遣いは、柩にも伝わってきた。
「いえ。あ、それはそうと、その入学許可証が来たという子供はどこに?」
「ああ、そろそろ来るはずだ」
校長がそう言うと同時に、校長室の扉がコンコンとノックされる。
「校長先生! 初等部の
「どうぞ。入ってきてくれ」
校長の許可を受けて扉がゆっくりと開く。その気配を感じながら、柩は強張った表情を校長へと向けていた。
「校長……? まさかとは思いますが」
「ああ、2人は互いに知らないんだったな」
柩の言葉を無視して校長は入ってきた女子生徒に話しかけた。年の頃は柩の外見年齢とほとんど一緒。日本にはいないブロンドの髪が光を浴びて美しく輝いている。
「彼女はイギリス人とのハーフでね。お母様がイギリスの魔法学校に通っていたらしくその縁で向こうの魔法学校から入学許可証が届いたという話だよ」
校長の言葉を聞いた柩は、こわばる表情を抑え込みながら少女の方を振り向く。
「はじめまして。小鳥遊柩と言います」
「は、はじめまして。大鳥優羽です。あの……?」
日本で最も神に愛された血筋と言われる大鳥家の娘が、そこにはいた。
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「でも良かったじゃないですか。物資輸送用のゲートと生活用のトランクハウスもらえたんでしょう?」
「必要経費だろ。特にゲートなんか無いと必要なものが取り寄せられん。他の生徒と差をつけないためにはむしろ当然の措置だ」
「トランクハウスは?」
「……仕事を頑張ると良いことがあるんだよ」
「ほらやっぱり!」
和国数多術修道処の校長が言っていた餞別というのが、このトランクハウスや物資輸送用のゲートである。トランクハウスというのは文字通りトランクケースの中に作られた家で、トランクの口と別空間をつなげることで作られた空間に存在している家に行くことが出来る。ちなみにそれなりの広さをした屋敷とその広い庭と植物園までついている豪華なものをもらうことができた。ちなみに懐郷の念を抱くと思われたのかガッツリ和風のものになっている。入り口事態はトランクである必要はないのだが、適度に人の大きさがくぐれるものとしてトランクはちょうどいい大きさだったのである。
そして物資輸送用のゲートというのはその屋敷の内一部屋に描かれている魔法陣のことだ。その魔法陣を二箇所に描いておき、上にものを載せて魔力を通すと対となる魔法陣にその上のものが転送されるというものだ。非常に便利なものなのだが、魔法陣を練り上げるのに年単位の時間がかかるためにかなりの貴重品だ。今回は厄介に任務に送り出すということで、特別に貸与されたのである。
「まあ、これで取り敢えず生活が合わないってことはなくなったな」
「あった家持ち運べますもんね。ご飯も日本から送ってもらえば良いし。良いなあー!」
「お前はすぐに日本に帰るだろ」
「そうですけど! そうじゃない!」
意味不明なことを言って騒ぐ部下を後目に、柩は再び読書に没頭する。任務が始まるまでの短い余暇を存分に楽しむために。
《登場人物》
小鳥遊柩(たかなし ひつぎ)
主人公。実年齢は30代後半だが、祖先に神木を持ちまた家庭の事情から様々な神の血統を混ぜてきたことで長命。年のとり方が常人の3分の1程度なので見た目は10代。好奇心の塊。ただし年をある程度取っているのでそれをオブラートに包むすべは身につけている。
適正的には霊能者より魔法使いだけど、小鳥遊家の役割的に霊能者をやっている。
小鳥遊家の役割は『コトリバコの浄化』。体内にコトリバコを取り込むことでその影響を体組織(血液とかなくなってもある程度大丈夫なものを取られるようにしている)抑え込み、また怪異や怨霊退治をする際にコトリバコに閉じ込められた呪を使うことで力を発散させている。結婚や子作りをしても問題ない。むしろ子を成して後を継がせコトリバコの呪が尽きるまで血統を絶やさないようにしている。コトリバコを引き継ぐためにかなりエグい儀式をしている。
安倍成忠(あべ なりただ)
陰陽師安倍の血統。見た目はおっさんだが実年齢は100歳以上。十二天将全てを呼ぶことが出来る。日本のやばいやつその1。普通の人間だが怒らせた柩なんて目じゃないほどやばい。
学生に対しては良き指導者、兄貴分、親代わりなど導く立場を取るが、一度卒業すると対等に扱おうとする。実はかなり教育熱心。ホグワーツの教育体系を聞いて顔をしかめる。
大鳥優羽(おおとり ゆう)
神に愛された血筋大鳥家の1人娘。母親がイギリスの魔法族。父親は大鳥家の三男なので扱いとしては本家ではなく傍流。ただし現代の大鳥家の中ではトップクラスに神に愛されている。それはもう、悪意を持って彼女に近づいたら彼女についている神様に『滅っ!』てされてしまうぐらいには。ぶっちゃけ護衛いらない。どちらかというと柩が神様を必死で止める方。
優羽を守護する神
正体は八咫烏。言葉を発することはできないが下手に会話できる神様よりも人間の言葉を聞き取ろうとしてくれる。おかげで柩は『滅っ!』されないですんだ。柩にはそれなりにビビられている。