ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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いつも応援ありがとうございます。

チャンミの育成してたら書くのが遅くなってしまいました…
ですが、割といい出来のブライアンが作れました(目覚まし40個くらい吹き飛びましたが…)。

あと今回少し長くなってしまいました。分割した方がよかったかな。

それではどうぞ。

-追記

不要ステークス「芙蓉ステークス!芙蓉ステークスです!」


一戦目・芙蓉ステークス

 

 

 

 メイクデビューを無事勝利した俺だが、当然そこで終わりなわけではなく次のレースへ目標を定めなければならない。

 夏休みも終わり既に9月、早い娘はもう出ているが、俺もデビュー戦以降のレースに出る時期である。

 ちなみに、レースに出るのが早いウマ娘筆頭がブライアンである。

 あの娘メイクデビュー以降もう8月に二戦してるんだよね。

 夏は練習が忙しすぎてブライアンのレース内容まで見られていないが、二戦一勝らしい。

 

 そう、夏休みの間に俺は、それはもう練習した。

 なんせ授業がないのだ。練習し放題、中森トレーナーうきうき、俺のトレーニング量も爆増である。

 本当に、よく体を壊さなかったものだ。これが一番の転生チートかもしれん。

 何度か他のトレーナーたちが練習を偵察に来たが、中森トレーナーの指導をしていたという黒沼トレーナー以外全員ドン引きしてたぞ。

 特に中森トレーナーと同じ新人トレーナーたちは露骨にヤバい奴を見る目だったよ。

 え? 俺にも向けられてた? やかましいわ。

 

「メトゥス、キミの初レースが決まったぞ」

 

 授業が終わり、いつも通りカフェテリアでコーヒーを飲んでトレーナーを待っていると、PC片手にトレーナーがやってきた。

 そして懐から何かの紙を取り出す。

 

「9月後半の芙蓉ステークス。場所は中山、距離は2000mだ」

 

「私の得意な中距離ですね。望むところです」

 

 持ってきた紙は芙蓉ステークスへの出バ届けだった。既に俺の名前を書く欄以外は埋まっており、あとは俺がサインするだけだ。

 俺はトレーナーから紙を受け取り、ささっとサインして返した。

 コーヒーを啜って返答を待っていると、トレーナーがポカンとしている。

 

「どうかしましたか? 空気の足りない魚のようになっていますよ」

 

「ああいや…よかったのかい? 僕が勝手に決めてしまって。メイクデビュー後初めて…いわば、ここからがキミのトゥインクルシリーズの始まりだ。その大事な初戦ともとれるレースだよ?」

 

 ああ、俺が自分で決めたいとか言い出すと思ったのか? 

 まぁ確かにその気持ちもなくはないんだが…

 

「トレーナーが今の私の実力なら勝てると考えているのでしょう? それならば、その期待に応えるのが担当ウマ娘としてやるべきことです」

 

 てか芙蓉ステークス自体は俺も出ようかなと思ってたレースの一つだし、噛み合ってもいたわけだな。

 

「というか、芙蓉ステークスへの参加条件通ってたんですね」

 

「ああ、メトゥスはあんまり自分の人気ランキングとか気にしない派だったね。ほら、ファン人数1000人超えているだろう?」

 

「本当ですね。まだデビュー戦しか走ってないのに多くの人に応援されていますね…」

 

「デビュー戦に勝利できれば大抵1000人くらいは付くよ。キミは追込ウマ娘だし、容姿もいいからもっとファンが付くと思ったんだけど…そこまで伸びなかったね」

 

「ブフっ…まぁ、同期に名家がたくさんいますし、ナリタブライアンもいますからそちらに票が流れたのでしょう。私も特に印象に残る勝ち方をしている訳ではありませんしね」

 

 急に変なこと言うなや。コーヒー噴いただろ。

 気を取り直そう。

 

 この世界でレースに参加するには、規定以上の収得賞金とファン人数が必要となる。

 

 ファン人数はどうやって見ているのかというと、URAの公式サイトに好きなウマ娘に投票する場所があり、その投票数がファン人数となるのだ。

 投票できる数は、一人のウマ娘につき一回だ。投票できる最大人数もあり、ジュニア級は三人、クラシック級、シニア級は五人までとなっている。一年に三回まで投票し直すこともできる。なので減ることもある。

 ちなみに身分証明書のコピーを送らないとサイトに登録できないため工作もほぼできない。

 

 他にも、分かりやすく鮮やかな勝ち方をすることが多い逃げ追込のウマ娘はファンが増えやすかったり、ウマ娘の中でもさらに美人な娘とかはデビュー戦に勝利する前からファンが多かったりする。

 

 もちろん本来のレースではファン人数だけでレースには出られず、収得賞金も必要なのだが…ジュニア級のみ、収得賞金は関係なしにファン人数だけでレースに出場することができる。

 

 で、ジュニア級のオープン戦における参加条件はファン人数1000人以上。先程トレーナーが言った通りであれば、メイクデビューに勝利できていれば参加条件は達成できるらしい。

 アプリ版では芙蓉ステークスに参加条件はなかったと思うが、そこは現実との違いか。

 

「ここで勝って弾みをつけると同時に、クラシック級での足切りをいち早く突破しておきたい。今回は『領域』を使ってでも勝ちにいって欲しいんだが…行けるか?」

 

「勿論です。最近は使っていませんが、その程度で衰えるような鍛錬はしていないつもりです」

 

 ジュニア級のレースで勝つことができると、クラシック級で発生する収得賞金の足切りから逃れることができる。

 具体的に言うと、ジュニア級のオープンクラス以上のレースに勝てば、クラシック級ではG2クラスまで参加権を得られるのだ。勿論抽選や収得賞金の多寡による優先はあるが。

 

 クラシック級になると収得賞金額で出られるレースが変わってきてしまう。具体的に言うと、クラシック級のオープン戦に出るには、メイクデビューもしくは未勝利戦を勝ち上がった一勝クラス、その次のプレオープンクラスのレースを勝たないと出ることができない。

 これでも前世の競馬よりはマシだが…

 

 馬もだが、ウマ娘だって毎週レースに出るなんていう強行軍は体を壊すのを早めてしまう。ウマ娘の脚は消耗品だなんてのはよく聞く話だし、実際練習で頑丈なウマ娘でもレースでは怪我をしてしまった、なんてことも少なくない。

 だが、クラシック級のG1を含む重賞は、少なくともオープンクラスで入着しないと出場すらできない。なので、クラシック級で一勝クラスから始めるとなるとレーススケジュールが過密になりやすい。

 G1のトライアルレースまで見るなら、かなりの頻度でレースに出なければならない可能性もある。そんな強行軍では当然、故障する可能性も上がる。

 

 しかし、オープンクラスであるこの芙蓉ステークスに勝てば、俺は次のレースに皐月賞のトライアルを選ぶことすら可能となる。間が空きすぎるので流石に他のレースにも出ると思うけどね。

 ジュニア級唯一の中距離G1であるホープフルステークスにも出たい。賞金高いし。

 

「よし、それじゃトレーニングに行こう。芙蓉ステークスで勝つためにもね」

 

「はい。ですが、先にその紙を提出してからのほうがいいと思いますよ。確かメイクデビュー後の一戦目のみ、出バ届けを一緒に出しに行かないといけないはずですよね? トレーニング後だと忘れそうですし」

 

「あ、そうだね」

 

 忘れる、主に俺がな。

 

 

 

 

 時は流れ9月も後半。

 俺は芙蓉ステークスにやってきて、現在パドックで顔見せしているが…流石にオープンクラスになって無名の娘ばかりとはいられないわな。

 名家の娘たちが出ている。

 リボン家のリボンオペレッタちゃんに、リズム家の分家出身のリバイバルリリックちゃん。そして俺は初めてみるがアクア家のアクアラグーンちゃんか。

 

 パドックを出て控室に戻ると、トレーナーがスポーツドリンクを渡してきたのでそれを受け取って一口飲む。

 

「リボンオペレッタとリバイバルリリックはキミと同日に選抜戦に出ていたが、知っているか?」

 

「ええ。ナリタブライアンさん相手に逃げで勝負したリバイバルリリックさんに、デビュー前から走りの技術が高かった差しのリボンオペレッタさんですよね。当然覚えています」

 

「もう一人、アクア家からアクアラグーンも出ている。あの娘はキミが出た次の週の選抜に出ていて…脚質は追込だ」

 

 ほう、俺と同じか。

 

「では私はアクアラグーンさんの後ろにつく形ですかね?」

 

「そうなる。『領域』の発動タイミングはキミに任せる。僕もキミから聞いているから本当は指示したほうがいいんだろうが…こればっかりはキミの方が詳しいだろう」

 

「そうですね。伊達に小学生の頃から使っていませんよ」

 

「頼もしいな。じゃあ…行ってこい。キミなら名家だろうと勝てる。僕はそう確信しているよ」

 

 俺の背中をポン、と押してくれたトレーナーに笑顔を返す。

 なら、その期待に応えないとな。

 

 

 

 

 ゲートに入る。

 俺は今回1枠2番、内枠だ。そんで14番人気だってさ。まぁそれはいい。

 フルゲート18人で始まるこのレースでは、俺の位置から大外枠までの距離はおおよそ20m…流石に自慢の心音も届かないだろう。

 更に悪いことに、『領域』を掛けたい名家の娘はリバイバルリリックちゃんしか範囲内にいない。

 内枠も追込にとっては有利という訳でもないし。

 

 だが…今回は元々『領域』を初っ端から使うつもりじゃなかったからね、関係ない。

 

『三番人気は4番リバイバルリリック。勢いのある逃げに注目です』

 

『二番人気は16番アクアラグーン。デビュー戦でも見せた追い上げに期待が持てます』

 

『そして本命、一番人気は15番リボンオペレッタ。先日週刊トレーナーズでも紹介されていましたが、高い技術が売りのウマ娘です』

 

 勝負は中盤から、追い立てて追い立てて──────その首を貰う。

 

『スタートしました!!』

 

 バッとゲートが開く。

 スタートダッシュはいつも通り上手くいった。ちら、と横を見た感じでは露骨に出遅れた娘はいないかな。

 流石にオープンクラスに出てくるような娘は違う。

 では俺は後ろに下がらせてもらうとするかな。この位置じゃあんまり周りが把握できないしね。

 

『さあ各ウマ娘綺麗なスタートを切りました。先陣を切ったのはやはり4番リバイバルリリック。他の逃げウマ娘を牽引するようにぐんぐん前へ進んでいきます』

 

『先頭は4番、すぐ後ろに7番、10番、1バ身離れて11番、その後ろ9番、12番、3番と続きます。更に1バ身離れて1番、17番、18番、その後ろ2バ身離れて15番リボンオペレッタここにいた。そのすぐ後ろ5番、6番、14番並びかけてきた。更に2バ身離れて13番、8番、16番アクアラグーン、その後ろ最後方2番が続きます』

 

 解説どうも、先頭から俺までは現状12バ身くらいか? でも逃げ組はまだ差を開かせるだろう。

 俺はちょっと小細工かな。同じ追込である目の前のアクアラグーンちゃんに、その前の二人。

 この子達のスタミナを少しでも削っておきたい。

 まずは真後ろにピッタリと付いて…

 

「! っこの…」

 

 へへ、ごめんね。

 俺が張り付くのを嫌ったのか、アクアラグーンちゃんは前の娘を抜きにかかる。

 いいね、思ったより効果出たな。

 なら次はこの8番の娘だ。

 さて、キミは耐えられるか? 後ろから追われる恐怖に。

 

「ひっ…」

 

 お、ペースを上げたな。

 なに、ほんのちょっと殺気を出しただけだよ。あ、13番の娘も巻き添え食らってる。

 現在丁度コーナーに差し掛かるところ、ここ中山レース場なら坂だ。

 その速度で走ったらスタミナが削れちゃうんじゃないかい? 

 

 

 さぁ、次は誰かな。

 

 

 

 

『さぁ先頭は二コーナーを周りまして向こう正面、4番リバイバルリリックが依然レースを牽引しています。中団の先頭には15番リボンオペレッタ、16番アクアラグーンはその二つ後ろ…少し前に出始めているのか?』

 

『いえ、後方集団全体が早めに仕掛けてきているようです。先頭から最後方までは9バ身程度…いえ、最後方に2番がいるので12バ身程度の開きですね』

 

 擬似『領域』ってな。

 いや、少し大きめの足音とか殺気とか心音とかで前を走るウマ娘たちを揺さぶってただけなんだが。

 夏前の俺なら、こんなことして終盤に体力が残るはずもないんだが…今の俺は夏休みに鍛えに鍛えたのだ。

 たかが二ヶ月と思うなかれ、今の俺のスタミナは既にクラシック級を走るウマ娘と比べても遜色ない(中森トレーナー談)。

 

『先頭が1000mを過ぎタイムは1:00.9。中々の好ペースです』

 

『そうですね、このまま最後まで押し切れれば最終タイムにも期待できそうです』

 

 ここからだな。

 有り余るスタミナに物をいわせて、さぁ、覚悟はいいか? 

 

 オラァ!! 

 

「「「!!!!」」」

 

『おっと、中盤ですが先頭のペースが上がったか? それに引き摺られたのか後ろのペースも上がっている!』

 

『仕掛けどころには少し早すぎると思いますが…何かあったのでしょうか』

 

 俺が何をしたか? 

 

 まず足音を普段以上に抑え、気配を消す。

 そのままペースを上げ、最後尾に引っ付いてできるだけ前との距離を無くす。

 

 そして持ちうるパワーの全てを注ぎ込み、全力で地面を蹴る。

 同時に、鮮明な(首刈られ)イメージにより心音を超爆音に。

 最後にダメ押し、クマ仕込みのプレッシャーだ!! 

 

 動揺したろ? 

 じゃあ、俺の世界にご招待だ。

 

『さぁ予想外の展開になってきました! 先頭は三コーナーへと差し掛かり、尚もスピードを上げている!』

 

『掛かってしまっているのでしょうか。どこかで息を入れるタイミングがあればいいのですが』

 

 ぐ、でもやっぱりキツいわこれ。

 トレーナーには「雷鳴のよう」とまで評されたこの全力足音に、スタミナが余ってないとそのまま不整脈になりかねない心音爆発。プレッシャーも地味に体力が削れる。

 だが、許容範囲だ。少なくとも、前半から俺にスタミナを削られ続けた追込の娘に比べたら余裕も同然。

 

 

 俺の『領域』には効果が二つある。

 一つ目は相手を掛からせること。恐怖でレースを支配し、ペースを上げさせ、脚を残させない。

 

 そして二つ目の効果。

 前半から『領域』を使っていると疲れてしまって使えなくなるこの効果。

 

 さて、現在はレースも終盤、最終コーナーだが…この『領域』をレース後半に使う最大のメリットが、これだ。

 

『最終コーナーに入り、各ウマ娘、更に速度を上げるか? スパートの体勢に入る…』

 

 

 思う存分味わうといい。

 俺の感じた恐怖の真髄を!! 

 

 

『おおっと?! これはどうしたのか? ウマ娘たちが速度を落としてしまったぞ! ハイペースがここで響いたか!!』

 

『明らかに走りに身が入っていないように見えます。集中力を欠いてしまったのでしょうかねぇ…』

 

 最終コーナーを抜け、先頭までの距離は8バ身。

 中山の直線は短い、本来なら厳しいと言わざるを得ない場面だが…

 

『領域』の二つ目の効果。

 それは、過ぎた恐怖による萎縮だ。

 

 

 あまりにも隙だらけだぜ? お嬢さん方。

 

 

『さぁ誰が抜け出すのか? ここでアガってきたのは2番! いつの間に外に抜け出したのか? 速度の落ちたバ群を尻目に、一人外を行く!』

 

 お、俺の世界から帰ってきたか? 

 だがもう遅い。

 そこからじゃ俺の加速に付いて来れないだろうし…何より足が残ってない、だろ? 

 

『2番が今先頭に替わり、最後の坂もその勢いのまま走り抜けゴール!! 追い縋るウマ娘をものともせず、今一着でゴール板を駆け抜けました!!』

 

『順位が確定しました。一着は2番ウルサメトゥス、タイムは2:01.6。二着は2バ身差で4番リバイバルリリック。三着は3/4バ身差で15番リボンオペレッタ』

 

 俺の勝ちだ! 

 好タイム、万全の『領域』、まだ余裕のある体力。

 完勝と言って差し支えないだろう!

 

 見たかトレーナー、これが貴方の選んだウマ娘の実力だ。

 期待に応えられたかい?

 

 

 

 さぁ、ウイニングライブ行くぞー!! 

 

 

 

 

 

 

 

 一緒に踊るリボンオペレッタちゃんとリバイバルリリックちゃんから若干距離を感じるんだが…

 

 なんで? 

 

 

 




設定を練るのにも時間がかかり、かなり難産でした。
矛盾を見つけたら修正します。
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