ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

2 / 53
1、2話目は短編部分を分割しただけです。悪しからず。


ウマ娘になりました(テンプレ)

【悲報?】ワイ氏、ウマ娘に転生する【朗報?】

 

 そんなスレが頭の中に立ちそうだった。

 

 はい、というわけでね。ウマ娘に転生しました。前世は一般男性アプリトレーナー、アニメは未視聴で完全にゲームからウマ娘に入った。

 最初は某パワ○ロのパクリゲーかな? と思って始めたが、これが中々面白く、サービス開始から一ヶ月も経つ頃にはどハマりしていた。昼は派遣社員としてあくせく働き、夜はトレーナーとして推しの育成に励む。

 そんなこんなで、他人からどう見られていたかは知らないが、自分としては割と充実した生活を送っていた。

 

 そんな日々の中、事件が起きた、というか死んだのは、とある年のゴールデンウィーク真っ只中。勤めていた先もゴールデンウィーク中は誰もいなくなるとのことで、自分も休むことに。折角だからと友人のいる北海道に遊びに行ったのが運の尽きだった。

 

 

 いやぁ、まさかハイキングに行った先の山で飢えたヒグマに遭遇するとは思わんて。

 

 

 ハイキングコースを歩いていたら、歩き慣れた友人は遥か先。それでも自分のペースで歩いていたところ、クマさんに出逢ったというわけだ。

 

 いや、俺も最初は定説通りクマの目を見て後退りしようとしたよ? でも、クマ側がガン無視で襲ってきたら流石にこっちも全力で逃げるしかないって。現実はネットの記事通りにはいかないと思い知ったよ。

 

 で、襲われて逃げているうちにハイキングコースを外れて無事遭難。どこまでも追ってくるクマ相手に必死に逃げていたけど、夜目が利く動物相手に、しかも山中という完全にアウェーな状況で夜通し逃げ回るのは流石に無茶だった。

 

 最期は呆気なく追いつかれて、後ろからの爪の一撃で首と体が泣き別れになったわ。あ、死んだなって確信したね。だって一際大きな踏み込みの音が聞こえたと思ったら、視界が急に回転して、更に首から勢いよく血を吹き出して崩れ落ちる自分の体が見えたんだぞ? そりゃ死んだことを確信するでしょ。

 

 すぐに視界がブラックアウトした。

 

 どのくらい時間が経ったかは分からないんだが、気づいたら真っ白な空間で目の前になんかめっちゃ後光が差してる女の人が立ってた。

 

「あー、今回もハズレかー。違うんよなー、もっとこう、輝くような英雄の魂を欲してるのよこっちは」

 

「あー、ここは?」

 

「そっちに質問する権利はない。ただまぁ転生の輪からこっちの都合で外したんだし、適当ではあるけどガワは作ってあげるわ」

 

 そして女性は適性はランダムでーとか、脚質もランダムでーとかブツブツ呟いたあと、こっちを指さした。

 

 

「はい、終わり。んじゃ適当に頑張ってね」「何を────」

 

「質問は受け付けないって。あ、名前はウルサメトゥスね」

 

「は?」

 

「行ってらっしゃい〜」

 

 そして俺は再び意識を失った。

 

 そして3歳くらいのときに俺は全てを思い出し、自分に生えたウマ耳ウマ尻尾、そしてテレビに映るウイニングライブを踊る女の子たちを見て、ここがウマ娘世界で自分がウマ娘に転生したことを知った。

 

 

 

 

 いやー、キツいっす。

 

 

 

 

 自我を獲得してすぐ、自分がウルサメトゥスという名前であることを確信した。それを両親に相談したところ、ウマ娘はウマソウルと呼ばれるものが宿っているらしく、それが目覚めたときに自分の名前を自覚する。

 そのため、ヒトとしての名前とは別にウマ娘としての名前を持ち、ウマソウルが覚醒した後はウマ娘としての名前を名乗るそうだ。

 

 そんなわけでその日から名前がウルサメトゥスとなった。

 あの適当な女の人が付けた名前を名乗るのは癪だったが、覚醒が他の子より早いとかなんとかで喜んでいる両親を見て、まぁいいか、という気持ちになった。

 

 今世の両親は、二人の子供からの発言としてはちょっとおかしいが、その、とてもいい人達だと思う。

 

 俺ははっきりと自我を持つ前からあまり子供っぽくなかったようで、乳児時代に必要以上に泣かなかったり、それからも変に大人しかったりと、なんともテンプレ転生者みたいな感じの子だったらしい。

 自我を取り戻してからは異変が更に顕著になり、大人しかったはずが急によく喋って色んなことを聞き始めるわ、口調が敬語になるわ、そのくせ親に遠慮し始めるわで、自分で言うのもなんだがめちゃくちゃ気持ち悪い子供だったと思う。

 

 そんな俺に、両親は精一杯の愛情を注いでくれた。子供らしくなく新聞を読んで情報収集していても、不気味、ではなくもう新聞を読めて偉いわねと言ってくれたり、明らかに未就学児が知らないようなことを話しても、俺の子は天才だ! なんて喜んでくれたりした。

 

 俺が練習コースで走っているウマ娘の子どもを羨ましそうな目で見ていれば、口に出さずともすぐさま察して走らせてくれた。

 

 トレセン学園の制服を着たウマ娘を見て、

 

(入学金も学費も高いし無理だな)

 

 なんて思っていると、入学したいならお金の心配はしなくていい、と言ってくれた。

 

 両親は謎に行動力があり、練習コースで走った次の日には子供用のトレーニングシューズと蹄鉄を買ってくれた。トレセン学園の話になったときには、入学するとも決めていないのに専業主婦だった母がパートを始めた。

 

 俺としては、こんなに不自然な子供を育児放棄せずに育ててくれるだけで有り難いと思っていた。俺が親だったら絶対気味悪がってネグレクトしていたと思う。

 自分だったら絶対にあり得ない、そう思ったからだろうか。どうしても俺はその理由を聞きたくなってしまった。

 聞くのは怖かった。クマに襲われたとき、これ以上の恐怖はないと思ったが、また別ベクトルで同じくらい怖かった。否定されたら。本心では違うことを思っていたら。

 

 お前は不気味だ。

 怖い。

 変。

 

 そんなネガティブな言葉が出てくるんじゃないか。でも、聞かなかったら俺はこの先、一生両親を信じきれないと思った。もし否定されたら、そのときはまた考えようかなんて強がっていた。

 

「俺の子は天才だとしか思わんな!」

「あら、そんなこと考えてたの? 気味が悪いなんて、思うわけないじゃない。だって可愛い我が子よ? 愛する以外ないわ!」

 

 これが答えである。面と向かっていい笑顔で言われ、正直なところ小っ恥ずかしかった。別に前世で愛されなかったというわけじゃない。でも、こうも直接的に言われたら照れる。

 

 同時にとても暖かかった。あの光る女の人に適当に作られた体に無理やり魂だけ捩じ込まれた俺も、存在して良いんだと思った。何故か涙が止まらなかった。両親はそっと抱きしめてくれて、余計に泣き止めなくなった。

 

 ここまでされて、親孝行しないなんて男が廃るってもんじゃないか。いや、今世の性別は女だけど。前世では親孝行する前に死んでしまった。なら、その分まで今世の両親に返したい。心からそう思った。そしてまずは一歩ということで、敬語も遠慮もやめた。

 

 俺は両親の想いを聞いたその日に、トゥインクルシリーズのレースに出て賞金を稼ぐことを決めた。受けた恩をお金で返す。

 もちろん、恩返し=金ではないとは思う。浅はかな考えかもしれない。でも、一番分かりやすいだろう? 感謝の気持ちだけじゃない。明確な形として何かを返したかった。

 トレセン学園の学費とかで負担をかけることは理解していた。

 だが、オープン戦で一度でも勝てれば学費くらいにはなるし、もし重賞で勝つことができれば、学費どころかサラリーマンの生涯年収の四分の一に匹敵するほどの額を貰える(この時は税金のことは頭からすっぽ抜けていた)。地方でのデビューはこの時点でハナから考えなかった。賞金が違いすぎる。

 

 トレーニングを始めるとき、自分の出すスピードに怖くなってしまうんじゃないかと最初は二の足を踏んだ。だが、始めてしまうとそんなことはなく。不思議と走ることに恐怖は憶えなかった。ウマ娘に生まれたからなのか、本能が走りたいと叫ぶのだ。だから、自分が車の速度で走っても怖くなかったし、寧ろ快感すら覚えた。

 

 怖くはないが、そもそも勝てるのか、そんな才能あるのかとは勿論思った。周囲に仲のいいウマ娘なんてものはおらず、比較することもできない。

 ただ、ネットや図書館でトレーニング方法を調べ、体を壊さないように鍛えていくうちに、自分について幾つかのことが分かってきた。

 

 

 まず、この体はとても頑丈であること。

 

 あの光る女の人は適当に作ったと言ったが、明らかに調べたことより多くの負荷をかけてもこの体は余裕だった。当然限界値はあるが、それは考えていたより、調べたより遥かに上だった。

 

 

 次に、走ってるうちに自分の適性が頭に浮かんできたこと。

 

 これは多分あの女の人の仕込みなのではないかと思うが、トレーニングしていると、あるときから自分はこのくらいの距離が得意なのではないか、この脚質が適正なのではないかというのが頭に浮かんできたのだ。調べたが、そんなことはどこにも載っていなかったので、俺個人の特異な体験だと思う。

 

 何となくだが、中〜長距離が得意なのだと思う。その辺で行われている子供限定レースに出たときも、短い距離よりも長い距離で走ったほうが走りやすく感じた。

 今はトゥインクルシリーズで言う短距離〜マイルのレースにしか出たことはないが、これからスタミナが付くと多分もっと長い距離のほうが得意になる、ような気がする。

 

 脚質は追込だった。というか、それ以外走れない。クマに襲われた経験がトラウマになっているのか、自分の後ろから長時間追われるということが苦手になっていた。他の脚質も出来なくはないが、確実に集中力が持たないだろう。

 

 また、トレーニングしていると、スピードよりスタミナ、そしてスタミナよりパワーがどんどん上がっていくのが分かった。

 これが分かった瞬間、俺はスピードを重点的に鍛えることにした。所詮はアプリゲームの知識だが、如何にパワーがあってスタミナが高かろうが、最高速度が遅ければ何の意味もない。そう考え、速度を伸ばすことを意識したトレーニングを行っていた。

 

 

 最後に、この世界には、アプリゲームだった頃と同様、ウマ娘ごとに固有能力があること。

 

 気づいたのは偶然だった。

 ある日、トレーニング器具のある公園で練習していたところ、暴走した犬がこちらに向かってきたのだ。

 中型犬だったが、大きさに関わらず制御されていない犬は凶暴である。ただ、前世でヒグマに襲われて死んだ身からすれば、小さな自分より更に体高の低い生き物が向かってきたところで何も思わなかった。

 ましてや、今世はウマ娘。本格化していない小学生の俺でも既に成人男性に匹敵する、もしくは超えるほどのパワーがある。いざとなれば鎮圧する自信があった。

 

 だからか、思考には余裕があった。

 

 そんな俺が犬に襲われつつ考えていたのは、前世の最期、クマに襲われた時のこと。

 あのときのクマがどのように俺を襲ってきたかは、今でも明確に、鮮烈に記憶に残っている。

 まぁ死んだ時の記憶だからね。しかも殺されてるからね。当然といえば当然かもしれない。

 そして記憶に想いを馳せていると、自分でも何故かは分からないが、無意識のうちにクマの動きを真似ていた。

 

(あのときは、そうだな。クマが俺と同じ動物だとは思えない、ドスンドスンって物凄く重苦しい足音を立てながら迫ってきて)

 

 ドスン!!! 

 

「ワゥッ?!」

 

(距離はまだある筈なのに、心臓を握り潰されるんじゃないかと思うほどのプレッシャーは届いてて)

 

「キューン…」

 

(実際自分の心臓が異常にバクバク鳴って)

 

 ドクンッ! ドクンッ! 

 

「キャィ…」

 

(クマが気配を一旦消して俺の真後ろに立った後、急に殺気を全開にして俺の動きを止めて…)

 

「ヒィン」

 

(そんで最後に、俺の指より長い爪で俺の首を…)

 

「刈り取った」

 

 シャッ! 

 

「ピッ?! クゥーン…」

 

 気づけば、目の前で犬が気絶していた。

 

「あれ?」

 

 思い出しているとき、俺は自分の周囲が真っ暗な空間に包まれているような錯覚を覚えていた。そしてクマが俺にやったように、犬に向かって腕を振り下ろした。そうしたら犬が倒れた。

 

「もしかして…これが『固有能力』か? 現実になってもあるのか?」

 

 半信半疑だったが、何度も繰り返すうちに、固有能力(後に知るがウマ娘の間で『領域』と呼ばれるもの)が存在することを確信した。犬や猫、鳥に対してこれを使い、動物たちがなすすべなく気絶していくのを見て、冷や汗をかいた。

 

(これ、めちゃくちゃ危険だな…もしレース中にウマ娘に対してやって、気絶でもしたら怪我どころじゃない。時速七十キロで走るウマ娘が突然気絶して受け身も取れずに倒れたら…ゾッとする)

 

 そう、あまりにも危険すぎるのだ。ゲーム版ウマ娘プリティーダービーの固有といえば、自分に対して効果のあるものが殆ど。数少ない例外としてマンハッタンカフェの固有は前方にいるウマ娘に干渉するが…その効果は微々たるものだ。俺のように思い切り他人に危害を加えるものではない。

 あ、もしかして俺が固有を使えるのは転生特典ってやつかもしれない。ウマ娘が皆、最初からこんなのを使えたらヤバいだろうしね。実際、ゲームでも固有は才能開花しない限り最初はレベル1だし。特典説は濃厚だな。

 

「でも、これは調整できなきゃ使い物にならないね」

 

 こうして俺のトレーニングメニューに、固有能力の出力調整の項目が加わったのだった。

 

 そして試行錯誤して数ヶ月……何とか出力を抑えて発動させることで、レースで使えるレベルに落としこむことができるようになったのだった。

 出力も段階分けして、何となくプレッシャーに感じるレベル、イメージが流れ込んでくるレベル、明確に首を飛ばされる錯覚を覚えるレベルとバリエーション豊富になった。

 最終手段として最大出力もあるが、これはレースで使ったら事故とかいうレベルではなくなるので封印した。

 練習台になった動物たちにはとても申し訳なく思う。君たちの犠牲は無駄にはしない(殺してはないが)。

 あ、模擬レースでは最低出力しか使ってないよ。もし怪我でもされたら後味悪いし、何よりウマ娘にレースを走りたくない、なんてトラウマを植えつけたくない。

 

 トレーニングと並行して勉強も進めた。ただ、目指すのはトレセン学園の中等部の試験であり、人生二周目としては歴史以外は余裕だった。

 歴史はウマ娘が入っていることで割と前世と異なる部分も多く、しっかりと勉強した。ただ、歴史の変化は小学校の授業を受けるうちに分かっていたことだったので、トレセン学園の試験勉強で戸惑うことはあまりなかった。

 なお、信長とヒトラーはしっかりウマ娘化していた。

 まぁ…フリー素材だからね、仕方ないね。

 

 

 

 

 

 時は流れ、俺はトレセン学園の寮にいた。試験は無事合格した。まぁ、筆記は余裕だった。前世では派遣会社に勤めていたが、大したことない学力の所とはいえ大学を出ている身だ。流石に中学入試レベルの問題で躓いたら人生二周目として話にならないだろう。

 

 実技は…どうなんだろうか。周囲にウマ娘の友人はおらず、比較対象がなかったので自分がウマ娘として速いのか遅いのか分からないのだ。

 実技は模擬レースだけではなく、身体能力を測られたり、反射神経、判断力を調べられたりした。

 一応模擬レースでは一着だったが、他の娘を観察しながらレースを進めたため、ぶっちぎって一位になったというわけでもない。多分後ろとは一バ身差も無かったと思う。

 

 寮は相部屋で、同室になったのはシャドウストーカーという娘だ。一年先輩のウマ娘で、昨年同室だったウマ娘が引退し、俺が入ってきたのだという。

 トーカちゃん先輩と呼ばせてもらうことにした。

 トーカちゃん先輩は既にデビューしており、今はクラシック級のマイルから中距離を主戦場にしているらしい。オープン戦を勝利し、桜花賞のステップレースであるチューリップ賞で三着と結果も残している凄いウマ娘だ。

 

「よろしく、トーカちゃん先輩!」

「うん、よろしくねウルちゃん。入学したばかりで大変だと思うけど、分からないことがあったら遠慮なく頼ってね」

 

 うーむ、クールそうな外見からは想像できないほどいい娘だ…。俺の同室には勿体ないよ、ホント。

 

 トーカちゃん先輩は頼って良いと言ってくれたが、彼女はこれから桜花賞に向けて忙しい。俺は俺でデビューに向けて動かなければ。

 入学したばかりだが、俺の体は既に本格化の兆候が出ている。先日まで小学生だったこともあり、俺の体格は優れているとは言えない。というか小さい。145cmしかない。

 体格で有利は取れないが、本格化が始まってしまったからにはデビューするしかないのだ。まぁ、体格で勝敗が決まるなら、重賞に出てくるような強いウマ娘は長身モデル体型だけ、みたいになってしまう。

 

 そうならないのがフシギなウマソウルパワーというやつで、前世のスポーツでは大きな有利要素になっていた体格も、ウマ娘のレースではそこまで大きな要素とはなり得ない。

 

 本格化は、年齢差はあるが、どのウマ娘も春くらいに兆候が見られる。そして秋頃に完全に本格化する。何故生まれた時期が違うウマ娘の本格化する時期が決まっているのかは未だ解明されておらず、研究も進んでいないらしい。

 

 中央でデビューするには、本格化の兆候があると病院で診断書を貰い、学園に申請しなければならない。本格化すれば身体能力が大幅に向上するので、デビューを1年遅らせて本格化してからデビューするということはできない。

 本格化していないウマ娘と本格化した後のウマ娘では、大抵の場合は話にならないほどの力の差がある。それらを一緒くたにデビューさせてしまえば、本格化してないウマ娘はデビュー戦で勝てなくなってしまう。

 俺は入学初日にデビューに必要な書類を持って事務に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、やってきました選抜レース。ここ数週間でこの学園での生活にも慣れ、調子は上々。速く本番のレースに出るためにも、ここで勝ってささっとデビューしなきゃな。

 

 選抜レースはデビュー前のウマ娘が、チームやトレーナーと契約するために自分を売り込むためのレースだ。ここで良い成績を残せればトレーナーたちの目に止まり、契約できれば無事デビューというわけだ。

 選抜レースは四回ある。今回は一回目、つまりはまだ強いウマ娘が山ほど残っていて、最も勝つのが難しく、そして最もトレーナーたちの注目が集まるレース。ここで実力を示せなくてもまだあと三回あるが、回を追うごとに良いトレーナーは少なくなっていくし、出涸らしみたいな扱いを受けてしまう。

 選抜レースでなくても模擬レースなどでトレーナーの目に留まればスカウトされることもあるが、経験豊富なトレーナー達は選抜レースを重視する傾向にあるらしい。

 

 俺は周りに集まったウマ娘たちやトレーナーたちを見回す。皆ピリピリしていて、これから始まるレースに燃えている。ただ、今年デビューするウマ娘が全員集まったわけではない。

 

 その理由は単純で、選抜レースは距離によって開催される日が違うからだ。一昨日は短距離、昨日はマイル。明日はダート、そして今日は中距離のレースだ。メイクデビューに長距離がないからなのか、選抜レースにも長距離はない。

 俺が今日出るのも中距離、芝のレースだ。その第三選抜レースで距離は2000。選抜レースはメイクデビューと同じく九人で行う。

 出走表はレースに参加するウマ娘には既に公開されていて、俺は4枠8番、かなり外側だ。三レース目でそこそこ芝も荒れていると予想されるので、外枠なのはそこまで悪くない。あとは出走するウマ娘だが、少なくとも俺が知っている名前はない。

 

 俺は今回第一レースから見るために早めに来ている。出走表はそのレースに出るウマ娘と、レースを見に来ることを表明しているトレーナー達にしか公開されないため、俺は第三レース以外のレースに出るウマ娘が分からないのだ。

 早い話が敵情視察、これから選抜レースに出るのに余裕だなと思われても仕方ない行為だが、今後ライバルになるであろうウマ娘達だ。誰が手強そう、というのは知っておいて損はない。

 

 さぁ、もうすぐ第一レースが始まる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの…見間違えじゃなければ、第一レース出走者にナリタブライアンがいるんですけど…

 

 

 

 

 

 

 

 これ詰んだのでは?????

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。