ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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いつも応援ありがとうございます。

久しぶりに評価欄を見たら10評価がついててめちゃくちゃびっくりしました。
いや、本当にあるんですね。都市伝説だと思ってました()

皆様の応援のおかげでモチベが保ててます。感謝しかない。

それではどうぞ。


明けまして、これからもよろしく

 

 

 

 年末年始を家族と楽しく過ごし、俺はトレセン学園に戻ってきた。

 まだ数日冬休みではあるが、今日からトレーニング再開だ。あんまり長い間体を動かしてないと鈍るしな。

 とはいえ、年末年始も別に寝過ごしていたわけではない。

 トレーナーから毎日送られてくる筋トレメニューをこなしたり、家の近くを軽く走ったりしていた。

 過剰なトレーニングにならないように報告もした。

 

「明けましておめでとうございます。トレーナー」

 

「明けましておめでとう、メトゥス。今年もよろしく」

 

「ええ、よろしくお願い致します」

 

 まだ授業がないので朝からトレーニングに充てられるが、初日からそこまで重いトレーニングをしたら俺の体を壊してしまうかもしれないとトレーナーに言われたため、今日の午前中はミーティングだ。

 いつものカフェテリアでトレーナーと待ち合わせ、新年の挨拶を済ませる。

 

「伝えていた通りだけど、今日は軽めのメニューにしよう。冬休みが終わると同時に前と同じくらいのトレーニング量ができるように調整しようか」

 

「分かりました」

 

 熱いコーヒーを啜り、返答。

 冬の朝に飲む淹れたてコーヒーは最高だぜ。

 目覚まし的な意味でも、体を温める的な意味でも。

 

「ではまず、今年からクラシック級に入った訳だけど…キミの目標を聞きたい。キミの適性は中長距離だが、マイルも走れないことはないと思う。それを踏まえて、どの路線を行きたい?」

 

 トレーナーの話を聞き、コーヒーカップから手を離し、顎に手を添えて考える。

 そうか。

 無意識にナリタブライアンと激突するんだと思っていたが、トリプルティアラを目指すなら回避できるのか。

 ちなみにブライアンは朝日杯後のインタビューで姉のビワハヤヒデ先輩と同じ路線を行くことを表明している。

 名家の同期も中長距離路線が多いのか、ホープフルでは名家に囲まれていたし、ティアラ路線ならそこの対決も回避できる? 

 

 うーん、でもアイビーステークスで負けてるから、マイルはちょっと苦手意識があるんだよね。

 それに…得意な中距離で負けっぱなしってのも、なんか気に食わないじゃん? 

 俺だって前世じゃ考えられないくらい頑張ってるし。何より、ウマ娘に生まれたからには世代最強を目指したいじゃん。

 

「クラシック三冠路線で行きます」

 

「そうか。まぁ、キミならそう言うんじゃないかと思っていたけどね。なら、それを前提としたトレーニングメニュー、ローテーションを組もう」

 

「…疑問に思わなかったのですか? 私が当初話していた方向性とはズレています」

 

 トレーナーは特に驚くこともなく俺の意思を受け入れた。

 あれ、もう少しなんか言われるかと思ったよ。

 俺はトレーナーと契約するときに、お金のために走ると明言していた。

 なのに、こんな強力なライバルが多い路線をわざわざ選んだ。負ける可能性だって低くないのに。

 

「まぁ、こう言ってしまうとあれだけど、別に勝てなくても賞金は出るからね。キミの目的とは矛盾していない」

 

そうだった。G1ともなると入着するだけで結構な賞金が入るんだった。

 

「それに、僕はキミを勝たせると決めたんだ。この前のホープフルの一件で、その思いは強くなるばかりだ。だから相手が誰であろうと、キミを勝たせて見せる」

 

 おおう…熱烈。

 

「他にも、キミはクラシック三冠路線で行くと宣言したナリタブライアンのことを意識していたじゃないか。この前も、キミは自分の『領域』がナリタブライアンに通用するかどうかだけを気にしていた」

 

 言われてみれば確かに、この前の俺はブライアンをどう捉えるかだけを考えていた。『領域』だけじゃ怪しいとか言ってたわ。

 

「確かにナリタブライアンは圧倒的な力で朝日杯を制し、今最も注目されているウマ娘だ。だが、今年の中長距離には他の名家も多い。注意すべきはナリタブライアンだけではないはずだ。そんな中キミは、ナリタブライアンが頭角を現す前から意識していただろう?」

 

 バレバレじゃん! え、俺そんなに分かりやすいか? 

 

「目線や耳の向きで大体分かるよ。まぁ普通はそんなところまで見ないんだろうけど、僕はキミのトレーナーだからね」

 

 ふ、ふーん。よく見てるじゃん??? 

 まぁ俺のトレーナーだし? 当然? というか?? 

 

「ナリタブライアンの強さを支えているのは、何よりもあの身体能力だ。抜け出すタイミングなんかのセンスも優れているけど、それを可能にしているのがあの圧倒的なスピード、パワーだ。キミも言ったように、今のキミでは基礎能力にまだ差がある。『領域』でも追いつけるかは微妙なところだろう」

 

「ええ。だから当面は基礎能力の向上に努める。そうですよね?」

 

「そうだ。レースも極力控えよう。まぁこれは、キミの情報を隠すという意味もあるけど。せっかく舐めてかかってくれてるんだ。利用しない手はないさ」

 

 そう言うトレーナーの表情は、笑顔だが明らかに目が笑っていない。こえーよ。

 トレーナーは簡単には怒らないんだが…そういう人ほど怒らせると怖いって言うよな。その通りだと思うわ。

 

「ではそのようにしましょう。次のレースは…弥生賞といったところでしょうか?」

 

「そうだね。皐月賞のトライアルレースで、条件も皐月賞と一緒だ。ナリタブライアンも出てくるかもしれないし、トレーニングの成果を試すには丁度いいレースだろう」

 

「全く、G2のレースを試金石にするとは…贅沢なものです」

 

 まだ入学から一年も経ってないってのにな。

 去年までは自分がG1の舞台で有力なウマ娘と争うなんて…いやちょっとは思ってたけど、夢物語だった。重賞で一回でも勝てれば、なんて思ってた。

 

「キミの実力を考えればこその判断だよ。では今後のトレーニングの予定だけど…」

 

 平然としたトレーナーの態度に、この人についていけば大丈夫だと安心させられる。ほんと、有能なトレーナーだよ。

 今年だけじゃなく、今後ともよろしくな、トレーナー。

 

 

 

 

 

 

 冬休みも終わり、トレーニングはさらに激しさを増している。

 冬休みの間にトレーナーは新たなトレーニングをいくつも仕入れてきていて、それらは俺の体をいじめるのに非常に良く役立っていた。

 トレーニング器具も一新されている。トレーナーが理事長に相談したら経費で落ちたらしい。それ、理事長のポケットマネーじゃないよね? 

 

 今も俺はクソでかタイヤを縄で括って、根性で引っ張っている。

 

「ぐ…」

 

「ラスト一本、いけるな?」

 

「も、勿論です」

 

 重…何キロあんだよこのタイヤ! 

 俺みたいな小柄で華奢な乙女に引かせるもんじゃねーぞ!! 

 

「ただ引っ張って歩くだけじゃなく、どの筋肉を鍛えてるかをしっかり意識するんだ! 体の内部に意識を向けろ!」

 

「はい!」

 

 タイヤの上に乗っているトレーナーがメガホンで俺に声掛けしてくる。

 くそぅ、高みから見下ろしやがって…

 いやタイヤの重量からすればトレーナーの体重が加わったところで大差ないんだが。

 もしかしてこのタイヤ、理事長の持ってるダート整備用ロードローラーのタイヤか? 

 

 タイヤ引きが終わり、タイヤから降りたトレーナーが俺にドリンクとタオルを手渡してくる。

 

「ありがとうございます」

 

「よし、前半はこれで終わりだ。30分休憩、その間に僕はちょっとやることがあるから待っててくれ」

 

「分かりました…?」

 

 やること? なんかあったか? 

 弥生賞の出バ届はまだだし、健康診断は再来週だ。

 俺のトレーニング関連かな。

 新しいトレーニング器具でも借りにいったか? 

 

 俺の予想は少し当たっていた。

 戻ってきたトレーナーは、隣にもう一人連れてきていた。

 

「あなたは…」

 

「お待たせ。まぁメトゥスもよく知っているだろう。今日からしばらくの間、彼女に併走を頼むことになったんだ。よろしく頼むよ、シャドウストーカー」

 

「よろしくお願いします、中森トレーナー。ウルちゃんも、よろしくね?」

 

「は、はい! よろしくお願いします!!」

 

「敬語に戻ってるよ、ウルちゃん」

 

「あ、いや、し、仕方ないでしょ? 急に来たんだから、驚いたんだよ」

 

 トレーナーが連れてきたのはトーカちゃん先輩だった。

 今年からシニア級に突入した彼女の実力は俺よりもだいぶ上で、併走相手としては申し分ない。

 でも、俺の相手してて、トーカちゃん先輩の練習になるのか? 

 

「問題ないよ。シャドウストーカーのトレーナーにも許可をとっているし、キミのトレーニングメニューはシニア級のウマ娘でも顔を顰めるくらいにはきついものだからね」

 

「トレーナー、それは笑顔で自慢することではありませんよ。トーカちゃん先輩も何か言ってやってよ」

 

「まだウルちゃんの練習風景を見てないからなんとも言えないかな」

 

 トーカちゃん先輩はにっこりと笑う。可愛いぜ。

 いやそうじゃなくてだな。実際の練習風景を見なくてもそこに置いてあるクソでかタイヤとか見れば察しは付かない? 

 それとももしかしてシニア級ともなるとこのタイヤ引きくらいの練習はやってて当然なの? 

 

「元々併走に関してはそのうちやろうと思ってたんだ。ウマ娘のトレーニングは、併走相手がいたほうが効果が高いという学説もある。ただ、同期を相手にしたらせっかく隠しているキミの情報が流出しかねない。色々考えて相手を見繕って、最終的に声をかけたのがシャドウストーカーだったという訳だ。キミと同室で、相性が良くて実力は高い。これ以上ない条件だ」

 

「トーカちゃん先輩はそれでいいの?」

 

「うん。ウルちゃんには普段からお世話になってるしね」

 

 お世話になってるのはこっちの方だと思うんですが…

 まぁ、トーカちゃん先輩が納得してるならいいのか? 

 

「それに、私からも是非お願いしたいって言ったの」

 

「トーカちゃん先輩から?」

 

「うん。ウルちゃん、『領域』を使えるでしょ?」

 

 ! なるほど、トーカちゃん先輩は見抜いてたってことか。

 トーカちゃん先輩は直接俺のレースを見にきていないはずだから、映像からだけで察したってこと? 流石ですな。

 

「私、有記念でビワハヤヒデ先輩たちと対決して…そこで初めて『領域』を知ったんだ。あのときは完全に飲み込まれて、言い訳みたいだけど自分の実力を発揮できなかった」

 

 有記念でトーカちゃん先輩が六着だったのは、適性距離が少し外れてるってだけじゃなかったってことね。

 いや待て待て、有があったのはホープフルの後。

 ということは、有で『領域』を知って、そこから俺のレースを思い出して『領域』を見抜いたってこと? 化け物かな? 

 G1三勝は伊達じゃないな本当に。

 

「私は大阪杯に出る。でも、そのときに『領域』の対策が出来てなかったら、また飲み込まれるだけだと思う。自分で『領域』が使えるようになれば一番いいとは思うけど…せめて飲み込まれないくらいにはなっておきたい」

 

「それで、私に『領域』の練習台になってほしいと」

 

「うん。『領域』が切り札で、他の人に極力見せたくないっていうのも、分かってる。だから、これはお願い。もしウルちゃんが見せたくないって言っても、併走はする。それとこれとは話が別だからね」

 

「いいよ」

 

「ウルちゃんがこの話に乗るメリットは…って、え? いいの?」

 

 即答だよ、即答。

 トーカちゃん先輩の力になれるなら、たとえ火の中水の中。あ、クマの前は勘弁してくれ。

 けど、この忌々しいクマ野郎の力が少しでもトーカちゃん先輩に恩恵を齎せるなら、是非も無い。

 協力させて貰います! 

 

「確かに、『領域』は隠すべきだし、トーカちゃん先輩とは今後レースで戦うことになるかもしれないから尚更だね。でも、それは恩人を助けない理由にはならないんだよ」

 

「ウルちゃん…」

 

「それに──」

 

「それに?」

 

「私の『領域』を、何度か見たくらいで無効化できると思わないでね?」

 

 なんだかんだ言っても、俺は『領域』を何度も使ってきているし、一度や二度、いや三度くらいまでなら効果はそこまで落ちないかなって思っている。出力も調整すればいいしな。

 まぁ、今見せてもトーカちゃん先輩とレースで戦うとしたら今年の後半も後半だろうし、そこまで間が開けば効力も戻るだろうって考えもある。

 

「トーカちゃん先輩に色々手伝ってもらうのにこっちは何も無しなんて不義理だしね」

 

「ありがとう、ウルちゃん!」

 

「むぎゅ!!」

 

「大好き!」

 

 いきなり抱きつかないでください! トーカちゃん先輩! 

 あ、何か柔らかいものが当たって…あー、いけませんお客様! あー! 

 トレーナーも見てないで助けろよ! 

 

 おい、目線をそらすな! 

 

 

 どっか行くなー!!!

 

 

 




追込キング育成難しすぎんか??
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