ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件 作:アザミマーン
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自分にお祝いということでコパノリッキー出るまで引きました!天井しました!
ではどうぞ。
今回の弥生賞は皐月賞への試金石だ。
俺もトレーナーもそのつもりでこれまでトレーニングしてきている。
「メトゥス、今日のレースだが…」
「使います」
「なるほど。キミがそう言うなら、僕としては異存はないよ。ただし、それなら絶対に勝つこと。そして、キミの今の実力がどの程度なのかしっかり掴んでくることが条件だ」
「ええ」
トレーナーとの事前の相談では、今日のレースでは他のウマ娘の地力を把握するために『領域』は使わないという話をしていた。
だが、先輩たちに向かって「お互い全力で頑張りましょう」なんて言っておいて俺の全力の象徴たる『領域』を使わないなんて失礼にも程があるだろう。
「たった三ヶ月弱とはいえ、クラシック級になり他のウマ娘たちもジュニア級の頃よりも強くなっているはずです。私と同様に」
「それはもちろんそうだ。そして、そのウマ娘たちが皐月賞でどのくらい走れるかを測るためにも『領域』は必須。そういうことだろう?」
そうだよ(便乗)。
そう、啖呵を切ったからじゃない。今回弥生賞に出てくるウマ娘たちの多くは皐月賞にも出てくるはずだ。だからこそ今日『領域』を使って、強くなったライバルたち相手に通用するか、皐月賞でも通用するかどうかを見たいってことだ。
そういうことにしておこう。
「『領域』の情報を隠すことばかりに気を取られていた僕とは違うな。全く、キミにはいつも驚かされてばかりだよ」
「そ、そうですか。では私はそろそろ行きます。ライバルたちの分析は任せましたよ」
なんかごめん…そこまで考えてなかったよ…
「ああ、任せてくれ。ただ、ライバルたちを見るだけじゃなく、キミの応援が一番だ。だから少し情報が抜けるかもしれないが…未熟なトレーナーですまない。そこは後で一緒に映像を見直そう」
「…そういうとこですよ」
「ん? 何か言ったかい?」
「何も言ってません!」
バーカ!! 難聴系主人公!!
『快晴の中の開催となりました今回の弥生賞。皐月賞と同条件で行われるこのレース、勝利して皐月賞の有力ウマ娘として名をあげるのは一体どのウマ娘になるのでしょうか?』
『実力の高いウマ娘たちが集うレースとなりました。重賞で勝利した経験のあるウマ娘も多いですね、レベルの高いレースが予想できます』
続々とウマ娘たちがゲートに収まっていく中、今日のレースに対する解説が行われる。解説の人の言う通り、今回の弥生賞は他の皐月賞トライアルに比べて多くの名家が集まったため、少しも気の抜けないレースになりそうだ。
『三番人気、5枠9番ウルサメトゥス。ホープフルとは違い晴天良バ場の中、実力を発揮できるか?』
『二番人気はヴィオラリズム。鋭い差し切りが魅力のウマ娘、今日もその末脚に期待です』
『そして一番人気はサルサステップ。今期のクラシック随一の技術を持つと噂される注目のウマ娘です』
『私イチオシのウマ娘でもあります。頑張って欲しいですね』
ほーん、解説の人はサルサステップちゃん推しか。
薄紅色の背中まで伸ばしたストレートロングの髪に引き締まった体。長めのウマ耳もチャームポイントだ。いいよね。
おっと、全員ゲートに入ったか。
『ウマ娘たちがゲートに収まります』
今回は最初から『領域』を使うつもりだ。
2000mという中距離としては一般的な長さのレースで、最初から『領域』を使ったときにどうなるか。
選抜レースのときは同じ距離で最初から使ったが、あの時とは戦うウマ娘たちのレベルが違う。だからこそ試す価値があるんだが。
まぁあのときは最低出力でやったんだけどね。今回は容赦なく中くらいの出力で使う予定だ。
あれ、そういえば名家のウマ娘たち相手にレースの最初から『領域』を使うのは何気に初めてか? まぁいいか。
さぁ。
イメージに没入しろ。
俺の前には何がいる?
赤い眼光、自分の倍はあるかのように見える体躯、見るものを恐怖させる鋭い爪。
ああ、今日も俺の心臓は絶好調だな。慣れることも許されないか。
今日の俺の枠順は真ん中、おそらく全員に聞こえていることだろう。
ガタ、という音が聞こえた瞬間に殺気を全開にして放つ!!
『スタートしました! っと?! ウマ娘たちが出遅れたぁ! 集中を欠いたか?!』
『何人かしっかりスタートをきれたウマ娘たちもいますね。9番ウルサメトゥス、一際綺麗なスタートダッシュです』
いい感じだ。
ちらっと見た感じ俺が一番前に出られてるかな? ここで加速するか。逃げウマ娘たちにプレッシャーをかけよう。
『9番がぐんっと加速したぞ。出遅れたウマ娘たちは必死に追いかけている!』
『逃げウマ娘たちは序盤のリードが命ですからね。ここで前に出られなければ勝ち筋はありませんよ』
来たな逃げウマ娘たち。
リバイバルリリックちゃんが俺に並んでそのまま追い抜かす。それに追従するようにもう2人俺を抜かしていった。
じゃあ俺は後ろに下がろうかな。イヤらしく内側から下がっていってやろ。わざわざ外に避ける義理はないしな。
で、ここで『領域』発動だ。
大きく足を踏み込め!
良バ場晴天、だけど視界は暗闇の中ってな。
周囲の足音のリズムが乱れる。
俺が速度を少し下げると、邪魔そうに、焦ったように俺を抜いていく。
『出遅れたウマ娘たちが遅れを取り戻すように加速していきます。それとは対照的に、先頭を走っていた9番ウルサメトゥスが後ろに下がっていきます』
『彼女は追込のウマ娘ですからね。下がったのは作戦のうちでしょう』
流石にG2に出場するウマ娘、俺の心音を聞いても動揺しなかった娘が数人いた。
ただ、大多数の周囲が焦って速度を上げる中、少数の方が平静を保っていられるか?
答えはNOだ。
その証拠に、今や全員俺の『領域』に取り込まれた!
『集団が坂を駆け上がって最初のコーナーへ向かいますが…速度が衰えませんね?』
『はい、そろそろ加速をやめて脚を少しでも溜める段階に入る頃なのですが…』
まだまだ、脚を使ってもらおうか。
目の前にいるのはアクアラグーンちゃんにオイシイパルフェちゃん。アクアラグーンちゃんは毎度ごめんね。
まぁ手を緩めることはしないけど。
そら、『領域』に加えてプレッシャーをかけて追撃だ。
『11番アクアラグーンと4番オイシイパルフェが上がっていきます』
『それに追い立てられたのか、その前を走るウマ娘、いやさらにその前を走るウマ娘たちも上がっていきますね』
とりあえずこのまま付かず離れずの距離を保っておくかな。
俺の『領域』の範囲は約15バ身、このまま加速されたら先頭付近のウマ娘たちは『領域』の範囲外になるかもな。
『先頭は2コーナーを抜け、ようやく少し速度が落ち着きましたか?』
『そうですね。逃げウマ娘たちはかなり頑張って距離を開いたのか、先行ウマ娘たちとの間にはパッと見でも5バ身差はあるように見えます』
そんなこと考えてたら逃げウマ娘たちが、『領域』の範囲内である俺から15バ身という距離を抜けたようだ。おー遠いな。頑張ったね。
でも、随分脚を使っちゃったんじゃない?
『しかし後続のウマ娘たちはその距離を良しとしないか。じわりと距離を詰めているように見えます』
『ええ、徐々にですが逃げウマ娘たちとの距離が縮まっていますよ』
まぁそんなこと許さないんだけど。
俺はピッタリとオイシイパルフェちゃんの後ろにつき、スリップストリームを受けて体力を温存している。
そしてそのオイシイパルフェちゃんは強引に速度を上げ、アクアラグーンちゃんを抜いた。
なら俺はアクアラグーンちゃんに標的を変えるだけだな。
それを繰り返していると、後ろから徐々に集団が進出し、距離が詰まっていく。
『先頭が1000mを通過して58.2秒! かなり速いペースです! 終盤のための足は残っているのでしょうか?!』
『一体何が起きているんですかね…最初の出遅れが気になっているのでしょうか?』
中間を超えたか。いい感じのハイペースでレースが進んでるな、感心。
俺は最後尾だしずっと風よけしてるんで、ハイペースとはいえ周囲ほどスタミナを使っていない。
で…逃げウマ娘さんたち、大丈夫かい?
後続がだんだん迫って来てるってことは、俺との距離が縮まるってことだ。
一度視界から外れたからって、逃げ切れると思うなよ。
どこまでだって追いかけて…最後は仕留めるのさ。
『先頭が3コーナーへとさしかかり…おっと加速し始めた! ここから勝負を決めるつもりか?!』
『流石に早すぎます、この距離のロングスパートは無茶ですよ』
『いやペースが落ちて…また上がった?! 一体どんな意図があるんでしょうか?!』
『領域』から出て、また入って。
そんなことをしてたら余計にスタミナが削れるに決まってる。
あの調子ではもうラストスパートのための脚なんて残っていても僅かだろう。
直線に入る前には集団の横に出たいが、そのためにはウマ娘たちの脚を見てタイミングを掴まなくてはならない。
残り700m弱…そろそろだな。
『領域』を切り、前に進出する。
他のウマ娘たちもプレッシャーが消えたことに気づいたのだろう、それぞれが仕掛け始める。
俺は一人余裕のあるスタミナに任せ加速していく。
アクアラグーンちゃんたち追込を抜き去り、次はサルサステップちゃんたちがいる差しのグループ。残り500m。
他の脚質に比べ余裕があるのか、ここに来てフェイントや脚技で妨害しにかかっている。特にサルサステップちゃんの脚の動きは見事で、こちらを撹乱しようとしてくる。
ただ…
(それはもう見た、散々ね!)
スタミナを削って疲れさせ、技が若干雑になっていたというのもある。
しかし、こちとらこの上位互換みたいな脚技にずっと苦戦させられて来たんだ。
たとえサルサステップちゃんが万全の状態でも、トーカちゃん先輩には及ばなかっただろう。
隙を捉え、強く脚を踏み込んで横に出た。
ちょうどコーナーが終わり残り310m!
『さぁウマ娘たちが最終直線に躍り出たぞ! 序盤のハイペースを乗り越え、勝利を掴むのは誰だ!』
追い抜いたウマ娘たちも後ろからスパートをかけて来ているのが足音で分かる。
差しグループとは1バ身も離れていないだろう。
先行集団に追いつく。
前を走る逃げウマ娘たちは2バ身半先。スタミナを削り切ったと思っていたが、まだ全然粘ってくる。流石に根性があるな!
残り200m。ウマ娘にとっては僅かな距離だ、追いつけるか?
いや、十分だ! 追いつく!!
(伊達に毎日ぶっ倒れるまでトレーニングしてないんだよ!!)
坂道に入る。キツい? 逆だ、これはチャンス。
前の速度が落ちるんだ、ここで一気にブチ抜け!
『最後の坂を駆け上がる! 逃げウマ娘たちが必死に粘るがこれはどうだ! 差し追い集団が差し切るか?! じわじわ迫り残り50! 並んだ! 抜くか?! 抜いた! 今9番が先頭でゴール!!!』
『大接戦を制したのは9番ウルサメトゥス! タイムは2:01.0! 昨年のホープフル優勝ウマ娘が、またしても中山を制したあああ!!!!』
『二着はクビ差でサルサステップ。三着、四着五着は現在写真判定中です』
観客席に手を振りながら軽く息を整える。
うーん、もう少し早く仕掛けても良かったかもな、まだスタミナに余裕があるわ。
あ、両親見つけた。今回は最前列じゃなかったのね。
トレーナーもいるわ。だからなんで隣同士なんだよ。
よく見たらその後ろにトーカちゃん先輩もいる! 見に来てくれたのか!
自分も大阪杯が近いってのに、ありがたいことだ。
後ろから足音、これは…サルサステップちゃんかな。
「おめでとう、ウルサメトゥスさん。敵ながらいい走りだったと思う」
「サルサステップ先輩、ありがとうございます。そちらも、ナイスファイトでした」
合ってた。まぁ最後ずっと斜め後ろに付かれてたからね。
サルサステップちゃんは大きく息を吐き出して呼吸を整えた。
「最後、先輩が後ろにずっと付いてきてるの分かりましたよ。結構プレッシャーでした」
「悔しいけど私の負けね。最後もうひと伸びできれば勝てたんだろうけど、そう上手くはいかないか。久しぶりの重賞で緊張したのかな…いや、これは言い訳ね」
ちょっと歓声で最後のほうが聞こえなかった。カクテルパーティー効果仕事しろ。
「はい、過程はどうあれ私の勝ちです。…宣言通りに、なっちゃいましたね?」
サルサステップちゃんに近寄り囁く。
歓声で会話が聞こえづらかったから配慮したつもりだったんだが、仰け反らせてしまった。やべ、驚かせちゃったかな。
「先輩? 大丈夫ですか? 顔が赤いですが…ああいや、レースが終わったばかりでしたね」
「え、ええ。大丈夫よ、そう、私は大丈夫。じゃあ、私は先に行くね。次は勝つから!」
「あ、はい。望むところです!」
サルサステップちゃんはそう言ってこちらに手を振ると、そそくさと控え室に戻っていってしまった。なんか急に会話を切り上げられたな…嫌われちゃったかな。
まぁ俺も戻るか、ウイニングライブもあるし。
寮に帰ったら笑顔のトーカちゃん先輩にめっちゃ詰め寄られた。
いや、誤解だって!
サルサステップちゃんとは何もないから!!!
チャンミは先行ガチャに負けて3位でした。
まぁでもやりたいことはできたのでいいかなって感じでした。
新シナリオ楽しみですね。