ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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新シナリオ始まりましたね。

賛否両論ですが、私としてはあのアイドルを育てている感が楽しくて好きです。
そんなことより次のチャンミはダート中距離。
せっかく天井したリッキーは使うとして、キャラが足りない…

そんな嘆きとは全く関係の無い本編をどうぞ。


反省会と、空を飛ぶ猛禽

 

 

 

『波乱の弥生賞 魔獣の潜む中山レース場』

『リボンオペレッタ会心の走り 若葉S制す』

『ウルサメトゥス 中山レース場○』

 

 弥生賞の翌日、新聞はこんな感じのことが2面か3面に載っていた。

 流石に連続で俺のことを無視するような記事は書きづらかったのか、それともG1ではないレースで労力を割くのを避けたのか。はたまた今度こそ名家当主が全力で止めたのか。

 真相は分からないし知ったことではないが、俺の勝利を書く記事が三分の一くらいの割合で存在したのは事実だ。

 レース直後の勝者インタビューもホープフルのときと比べたら聞かれること多かったしな。ただ、皐月賞トライアルの勝者として後日インタビューって話になったとき、

 

『インタビューは月刊トゥインクルの独占取材のお話を受けておりますので、他社からはお断りします』

 

 なんてトレーナーがキッパリ断ってた。

 本来なら横暴もいいところなんだろうが、悪いことをした自覚はあったのか、取材陣も特に何を言うでもなく引き下がっていた。もしかしたら、月刊トゥインクルが裏で何かやってたのかもな。

 

 まぁ何も起こらないならそれに越したことはない。

 トーカちゃん先輩は珍しく俺より早起きしていくつも俺の記事が載ってる新聞を買ってきて褒めてくれた。もっと褒めて〜。あ、おさわりはNGです。ちょっと目が怖いよ。

 Umatterでも異常はないみたいだし、これが普通ってことでいいんかな。

 で、レースの翌日である今日は、いつも通り練習は休みで反省会なのだが。

 

「これとかいいんじゃないか?」

 

「こっちの方がよく撮れてますよ!!」

 

「なるほど、さすがルームメイトといったところか。だが、これならどうかな?」

 

「な…! こんな悩殺笑顔いつの間に?! 私にもしてくれたことないのに!」

 

 レースの反省会をすべくカフェテリアに来た俺を待っていたのは、テーブルの上に写真をいっぱいに並べたトレーナーとトーカちゃん先輩だった。トレーナーは分かるが、なんでトーカちゃん先輩がいるんだ? そんでその写真は?

 

「あの…何してるんですか?」

 

「ああ、メトゥス。昨日の写真だよ。シャドウストーカーもたくさん撮ってくれていたみたいだから、交換しようという話になってね」

 

「ウルちゃん、私が教えた笑顔なのに、なんで私じゃない娘に最初に使ったの? ちょっとお話したいなぁ」

 

 俺は反省会をしに来たんだが…そしてトーカちゃん先輩、やっぱり目が怖いよ。なんか光が無い。

 俺が呆然としていると二人はまた写真談義に戻ってしまう。というか、ターフに出ていた時間って合計10分くらいしか無いと思うんだが、どうみても写真が100枚はある。撮りすぎだろ。ちなみにウイニングライブ会場では写真撮影禁止です。それは専門の業者か、事前に許可をとったメディアだけってことになってる。

 

 とにかく、このままじゃトレーナーとトーカちゃん先輩の写真談義で日が暮れる。トレーナーが机を殴りつけてブチ切れるなんてことが無いのはいいんだが、また別の方向で暴走してないか? 周りに人はいない。そりゃそうか、こんな異質な空気の中に居たいとは思わんわな。店員さんも困ったような笑顔だし、どうやら他のお客さんは追い出しちゃったみたいだ。

 

 一旦状況をリセットするか。

 

 目の前の二人に向かって殺気を飛ばす。

 

「「………!!!」」

 

「少し、落ち着きなさい。そして写真を仕舞いなさい。私は反省会をしに来たんですし、何より他のお客さんに迷惑です」

 

「「はい」」

 

 少しは反省したか? 俺のレースの反省会だってのに、なんでレースに出ていない二人を反省させなきゃならんのだ。

 

 …別に、遠目から見たらトレーナーとトーカちゃん先輩がイチャイチャしているように見えたから思うところがあった、なんて事実は無い。

 

 無いったらない。いいね?

 

 

 

 茶番はさておき、反省会である。

 トーカちゃん先輩はトレーニングのため暮林トレーナーに連れて行かれた。ドナドナが流れたような気もするが、気のせいだろう。

 トレーナーのPCでレースの映像を一通り確認し終え、ため息を吐いた。

 

「…結局、2000mではスタミナを削りきれませんでした」

 

「いや、最後の方はみんな根性でなんとか走っていたように見えたよ。少なくとも余裕は全くなかったはずだ」

 

「でも、それでナリタブライアン先輩に通じるかは分かりません」

 

 そう、昨日の弥生賞で、俺はレースの序盤から『領域』を使って相手のスタミナを削っていったわけだが…名家のウマ娘たちはみんな、最後の直線でラストスパートできる足が残っていた。

『領域』から出たり入ったりを繰り返し、一番スタミナを削っていたであろう逃げウマ娘たちですら俺が抜かせたのは残り50m地点。それまでに稼いだアドバンテージがあったにせよ、ギリギリだったことに変わりはない。

 そして、俺が戦うのはそんな名家のウマ娘たちを上回る身体能力を持つブライアンだ。身体能力ってのはパワーやスピードだけじゃない、スタミナだって同様のはずだ。実際、アプリ版でのブライアンはスタミナの成長補正が一番高かった。鵜呑みにすることはできないが、これに関しては大きく違うことはないだろう。

 

「そうだね。共同通信杯の後のインタビューでも、彼女は息一つ乱していなかった」

 

 俺の『領域』が無い状態だったとはいえ、1800m走って息が全く乱れていないなんてこと普通はあり得ない。ましてやあのレースはブライアンがレコードを出していた。つまりハイペースだったのは確実だったにも関わらず、ブライアンは大して疲労していなかったことになる。

 

「やはり、皐月賞では中盤から『領域』を使って、怯ませることが勝ち筋になりそうですね」

 

「そこで『領域』の出力を上げると言い出さないところを僕は本当に尊敬しているよ」

 

 まぁそれやったら最悪死人が出るしな…できるかいそんなこと。

 まだ俺の『領域』に十分慣れているウマ娘はいないし、出力を上げるのは最速でもシニアになってからだな。

 

「あとは…私ももう少し早く仕掛けても良かったかもしれませんね」

 

「いや、仕掛けるためには『領域』を切らないといけないんだろう? 見ていて分かるよ、フォームが少し違うしね。早く仕掛けたらその分『領域』の効果が少なくなってしまうだろうし、差しきれなかったかもしれない。だから仕掛けはあのタイミングで良かったと思うよ。それよりも、途中の妨害のために足を使っても良かったかもね」

 

「なるほど。それにしても、バレていましたか」

 

「流石にね。多分、暮林トレーナーにもバレていると思うよ」

 

「それは…どうでしょうね」

 

 まぁ隠しているつもりではなかったんだけど。気づかれるとも思ってなかったな。

 俺の『領域』は、足音が聞こえる範囲がそのまま『領域』の範囲となる。なので、俺は足音ができるだけ大きく聞こえるように少し特殊な走り方をしている。特殊とは言っても足を地面につけるときに少しだけ普段と違う足のつけ方をしているだけなんだが。トレーナーはよく気づいたな。

 

 ただ、その少しの違いでも影響が出るところがあり、それが顕著なのがスパートだ。

 スパートをかけるには普段よりもさらに走り方が前傾姿勢になる。そうなると、踏み込みに必要な力やそもそものフォームが変わり過ぎて、足音を立てる走り方と両立することができなくなってしまうのだ。なので、正確には仕掛けの際に『領域』を切るのではなく、仕掛け始めると『領域』を維持できなくなるが正しい。

 

「皐月賞で『領域』関係なく相手のスタミナをより多く削るために、追い立てる練習を多くしたほうがいいな」

 

「それと、一気に加速する練習も多くしたいです。『領域』の第二段階で相手の意識を逸らせているうちにどれだけ前に出られるかが勝負になりますから」

 

「ふむ、ではそれを考慮したメニューを組んでおくよ」

 

「お願いします」

 

 皐月賞まであと一ヶ月、どこまで仕上げられるかだな。忙しくなりそうだ。

 

 

 

 

 あれから2週間、俺たちは再び中山レース場を訪れていた。

 理由はもちろん、ブライアンのレースを見るためだ。

 スプリングS、中山・芝1800m。皐月賞トライアルの最後のレース、ブライアンがどんな走りをするのか。俺はそれに勝てる実力なのか。

 

 天候は晴れで良バ場、前日に雨が降ったとかも無く、走りやすい状態だろう。

 前半はおかしな展開もなく、むしろゆっくり目に進んでいた。

 ブライアンは前から4番目、先行ウマ娘たちを率いるような位置にいる。

 

『先頭を進む4番ジュエルアズライトが今半分を通過しました。レースも中盤を過ぎ、ウマ娘たちがどこで仕掛けるのかに注目です』

 

『今のところは可もなく不可もなくと言ったペースですね。まだお互い力を溜めているのでしょうか…おや?』

 

 異常が起きたのは残り800mを切った頃。

 不気味なほど沈黙していたブライアンが動き出した。

 

「ナリタブライアンが加速し始めた…? まだ半分を少し過ぎたぐらいだ、仕掛けるには早過ぎないか?」

 

「いえ…これは、もう仕掛け始めています!」

 

 俺やトレーナーが気付くのとほぼ同時、実況と解説が俄かに騒めき出す。

 

『ナリタブライアンが上がっていく! どうしたというんだ? まだ残り800mはあるぞ!』

 

『かかってしまったのでしょうか?』

 

 違う、あんな冷静な目をしているウマ娘がかかっているわけがない。

 まさか本気で、1800mのレースで800mのロングスパートを決めるつもりなのか?! 

 残り距離700mを切ったところで他のウマ娘たちが慌てて加速し始めるが、本来ならそれでも仕掛けるには早いだろう。

 そしてブライアンが先頭に立ち、残り500mの標識が見えたところで、ブライアンは体勢を低くし、さらに速度を上げ始めた。

 

『残り500m、ナリタブライアンがさらに速度を増す! 後ろのウマ娘たちも加速しているが、これは届かないか?!』

 

『コーナーを膨らむこともなくあれほどの速度を出すなんて、パワーに自信がないとやろうとも思わない所業ですね』

 

 実況の言う通り、後ろのウマ娘たちも加速しているはずなのにどんどん差が広がっていく。ストレートバレットちゃんやジュエルアズライトちゃんが必死に後を追うが、明らかに間に合っていない。

 

『さぁ最終直線に入りますが、ナリタブライアン余裕の一人旅! 他の追随を許さぬ独走です!! こんなに強いウマ娘がいて良いのか!?』

 

『まさに圧倒的…既に覆らないほどの差が開いています』

 

『ナリタブライアン、他のウマ娘を置き去りにして今ゴール!! タイムは1:48.6!! 2位に9バ身もの差をつけ、『怪物』が圧倒的な力でスプリングSを勝利しました!!!』

 

 距離の短いマイル戦で9バ身差の1位。

 前回よりさらに強くなってる、2位のストレートバレットちゃんがまるで相手になっていない。あんなのを相手取ろうとしてるのか、俺。

 

「凄まじいですね」

 

「ああ、だけどそれだけじゃない。メトゥス、気づいたか? 今のナリタブライアンの走り」

 

「なんです?」

 

「残り800mからの仕掛け、そして残り500mからのラストスパート…確かに、今回のスプリングSの条件だから異常に見える。だが、これが別のレースだったとしたらそうおかしくもない」

 

「別のレース…ですか?」

 

 別のレース…皐月賞か? いや、皐月賞でも残り800mからのスパートは早すぎる…まさか?! 

 

「気づいたかい? そう、これが日本ダービーを前提にした走りだったとしたら、条件が合うんだ。残り800mは、距離が2400mのダービーだったとしたらもう終盤だ。仕掛けのタイミングとしてそう早いものではない。さらに、残り500mのラストスパート。ダービーが行われる東京レース場は最終直線の長さが525m、ほら、ピッタリだろう?」

 

「つまり、ナリタブライアン先輩は、今回ダービーを見据えた走りをしたと。皐月賞など既に眼中にないと。そういうことですよね?」

 

「…まぁ、大袈裟に言うならば、そういうことだろうね」

 

 ほう。

 なるほど? もう皐月賞に敵はいないと。

 俺たちなんて相手にすらならないと、そう言いたいんだな? 

 

 

 舐めやがって。

 

 

「…良いでしょう。そっちが油断してくれているならば、私には好都合です。遠くのダービーばかり意識して、足元を掬われないと良いですね?」

 

「メトゥス、殺気が漏れてる。抑えなさい」

 

「ああ、これはすみませんでした」

 

「気持ちはわかるけどね。僕もキミが怒っていなかったらもっと怒っていたかもしれない」

 

 確かにブライアンは怪物の二つ名に相応しいほどの力を持っている。

 だが、それがどうした。

 そっちが怪物なら、こっちは人食い熊だ。

 

 地を這う獣でも、空高く飛ぶ猛禽を落とせるんだってこと、証明してやるよ!!! 

 

 

 




特別なライブ良かったです。
サイゲの本気を感じましたね…
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