ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件 作:アザミマーン
いつも応援ありがとうございます。
チャンミ始まりましたね、ニシノオグリにボコボコにされてますが…
まぁ今回みたいなクリオグリの強さはいいです。限定的ですし、強さに見合った労力もありますし。
いつも777だけで強いのが問題なのです。
あ、前回は最多感想でした。ありがとうございます。返信はゆっくり待ってやってください。
ではどうぞ。
日が変わって翌日。
皐月賞が終わっても授業は平常運行だ。いつも通り午前中は勉学に励んだ後、昼食を挟んでトレーニングだ。
『今日は仕事がまだ終わらないので、後ろの子についての話は後日にしましょう。ウルサメトゥスさんのご都合に合わせますので、あとで連絡を下さい』
昨日意味深な言葉を俺たちに告げたマンハッタンカフェは、俺に連絡先をよこして業務に戻っていった。結局後ろの子とは何だったのか…と、本当に見当がつかないならまだ良かったかもしれない。
けどなぁ…アプリゲーム知識になるが、マンハッタンカフェは、いわゆる『見えるウマ娘』だ。そのマンハッタンカフェが俺の後ろを見て、なおかつ「後ろの子をコントロールする方法」だもんなぁ。大体予想は付くよねって。
そのせいなのか、昨日は非常に夢見が悪かった。なんの夢を見たかは…言う必要もないだろう。
それはさておき。
昨日、マンハッタンカフェ襲来後もトレーナーとの話し合いは続いた。
その中で俺たちは最初の併走練習の相手を決め、早速今日から一緒に走ることとなったのだ。
というか、決めてトレーナーがメールを送ってから僅か2分で返事がきた。なんでも近く行われる春の天皇賞までに『領域』の対策が欲しいらしく、出来るだけ早く併走練習をしたかったそうだ。
15分ほど前、俺が昼飯を食べ終わってから、練習相手とそのトレーナーを中森トレーナーが迎えにいった。なのでそろそろこっちに来てもおかしくないのだが…
と思ったら中森トレーナーが併走相手のウマ娘を連れて店に入ってきた。
おお、あれが…こんなに近くで見るとやっぱちょっと興奮するよね。有馬記念とか大阪杯で遠目から見たことはあったけど。
「メトゥス、お待たせ。こちらが今日からしばらくの間、一緒に併走練習をする木原トレーナーとナリタタイシンだ。お二人とも、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、中森トレーナー、ウルサメトゥス。クラシック級序盤にして早くも『領域』を使うウマ娘に、新人にして担当ウマ娘にG1を獲らせる期待の新星トレーナー。楽しみで昨日はあまり眠れなかったよ」
中森トレーナーの紹介に、即座に反応したのはナリタタイシン先輩の担当トレーナーである木原トレーナー。この道10年のベテラントレーナーで、年齢は30代前半のはずだが年齢よりも若々しい。ぶっちゃけ中森トレーナーと並んでもそんなに年齢差があるように見えないな。髪を染めてるからか?
そして、そんな中一言も言葉を発さずじっと俺の方を見ている小柄なウマ娘が、併走相手のナリタタイシン先輩だ。
アプリゲームに登場した育成可能なウマ娘であり、同世代のビワハヤヒデ先輩、ウイニングチケット先輩と並んでBNWなんて言われたりする。
この世界でも高い実力を持ち、クラシックでは皐月賞を勝利、シニアに上がっては先日の大阪杯でトーカちゃん先輩に次ぐ2着。
脚質は追込だ。現役の追込脚質の中では最強のウマ娘であり、現状俺の併走相手としては最上のウマ娘と言っても過言では無いだろう。本来なら俺の併走なんて引き受けるどころか一蹴されてもおかしくない。
そんなナリタタイシン先輩が、何も喋らずにこっちをガン見している。
眼力つよっ! 怖いんですけど?!
「こら、タイシン。挨拶しなよ」
「…あ、ごめん。あの物騒な雰囲気の『領域』を使ってたウマ娘がどんなやつなのか気になってさ。もう紹介されたけど、アタシはナリタタイシン。少しの間だけど、今日からよろしく」
そう言ってナリタタイシン先輩はこちらに手を伸ばしてくる。え、何? カツアゲ? いや握手か、ちょっと混乱しすぎた。
「こ、こちらこそよろしくお願いします、ナリタタイシン先輩」
「あー、タイシンでいいよ。一緒に練習するんだし、後輩相手に威張り散らす趣味は無いし」
「では、タイシン先輩と」
俺は緊張でしっとりした手のままタイシン先輩の手を握り、タイシン先輩はそのことには言及せず俺の手を握り返した。
「うん、まぁ皐月が終わったばっかならこんなもんでしょ」
「……」
練習が始まり、ストレッチと準備運動を終えた俺たちは、まずお互いの実力の把握ということでとりあえず2000mで模擬レースを行った。
最初は俺が追う側、次は追われる側で一回ずつだ。
トーカちゃん先輩と練習したときも最初に競走したなーと思いつつ、あの頃よりも成長した自分がタイシン先輩という最上位の追込ウマ娘にどれだけ対抗できるか試したんだが…
無様に地に伏しております。もちろん俺が。
「タイシンはああ言ってるけど、素直に褒められない性格だから気にしなくていいよ。ウルサメトゥスはよく走れているよ、ナリタブライアン相手じゃ無かったら『領域』無しでも名家のウマ娘相手にいい勝負ができるくらいには仕上がってると思う」
「ちょっ、そんなんじゃないから!」
「そう言っていただけるとありがたいです。何分、新人トレーナーなので正しい育成ができているかも不安なんです」
「いやいや、それは流石に謙遜がすぎるって。実際にウルサメトゥスは強くなってるんだし、自信持っていいよ」
トレーナーたちがなんか言ってる。正直、息を整えるのに必死で何を言っているかまでは分からない。
「…ほら、ドリンク。まだこれからが本番なんだから、飲んで頑張りなよ」
「ありがとうございます…ツンデレ」
「なんか言った?」
「何も」
タイシン先輩がスポーツドリンク(ニンジン味)を手渡してくれたので、素直に受け取ってがぶ飲みする。内心が漏れた気もしたが、聞こえてないのでセーフ()
「メトゥス、一気に飲むとお腹を壊すし吸収も良くない。少しずつ飲みなさい」
「ああ、すみません。つい」
そんな注意を受けつつ、今の競走を振り返る。
とりあえず、言うことは一つ。
(タイシン先輩強すぎィ?!)
「?」
内心俺が恐れ慄いているのを全く分かっていないようで、タイシン先輩は首を傾げている。可愛い。
あれ、なんか前にもあった気がするな。いやそうではなく。
「昨日も話したことだが、ナリタタイシンを真っ先に併走相手に選んだのは、キミが得られるものが最も多いと思ったからだ。現シニア級最上位の実力を持つウマ娘にして、キミと同じ追込脚質。走ってみてどうだった?」
「トーカちゃん先輩と走ったときもそうでしたが…実力差というものを思い知らされますね。ここまで差があったら、併走練習なんて受けないのも当然ですね」
タイシン先輩は強い。トーカちゃん先輩も強かったが、それとはまた別ベクトルで強いのだ。トーカちゃん先輩はよくこんな相手に勝ったな。
まず、その身体能力。
スピード、パワー、スタミナ。何一つ勝てるものがない。
はっきり言ってあのブライアンですら、今の状態でタイシン先輩とレースを走ったら手も足も尻尾も出ずに負けるだろう。
年明けにトーカちゃん先輩と併走したときもここまで絶望的な差はなかったはずだ。やはりアプリに出てくるようなウマ娘は成長率が違うってことなのかな。原作ウマ娘こわ…
次に技術。
タイシン先輩自身が追込をやっていることもあるだろうが、俺のフェイントに引っかからないわ、追い立てにも冷静に対応されるわで何もさせてもらえなかった。タイシン先輩曰く、
「フェイントはもう少し真に迫るようにやんなきゃダメだよ。追い立ても、もっとギリギリまで近づいてさ、それこそ相手に自分の息がかかるくらいまで。耳元でなんか囁いてやるのもアリだよ。もちろん暴言とかは無しだけど」
とのこと。
そして追い立てられる側になって実際にやられた。最近は追われる側でも1500mくらいまでは平気になってきたはずなのに、あっさり1000mくらいで集中力が切れた。
ただ、やられたおかげかフェイントとか追い立てのコツを少し掴めたかもしれない。
とにかく相手の呼吸を意識するんだ。タイシン先輩は走り始めてから300mくらいで俺の呼吸のタイミングを掴んで、それに合わせて駆け引きをしていたように思う。
俺にはまだそこまでの技術はないが、練習すればできるようになる、かな? ダービーに間に合うかは微妙なところだが…そこはこれからのタイシン先輩との練習で頑張るってことで。
で、最後。
これは身体能力と技術の合わせ技なのかもしれないが…合計4000m走ったにしては、タイシン先輩のスタミナが残りすぎているように見える。
いくらシニア級のウマ娘とはいえ、こんなに息が全く乱れないなんてことあるかね?
俺が息を整えながら不思議そうにタイシン先輩を見ていると、視線に気づいたのかタイシン先輩がこっちを見た。
「ん、何?」
「ああいえ…4000m走ってよくそんなに余裕があるなと感心していたのです」
「あー、これ? …まぁ教えてもいいかな。いい? トレーナー」
「そうだね…とりあえず、ウルサメトゥスの『領域』を見てからにしないか? 今のところ、こっちが教えるばっかりになってるし。ちょっとそこまで秘密というか、踏み込ませるのはまだ考えたい」
なるほど、それもそうだな。
現状タイシン先輩はなんの得もしてない。俺とタイシン先輩が同じ脚質で、タイシン先輩が俺の上位互換である以上、俺から学べることは殆どないはずだ。
「そうですね。では、本番と言ってはなんですが。私の体力もそれなりに回復しましたので、今度は『領域』ありでやりましょう」
「ではそこの線に並んで。合図は僕がやろう」
やるか。
練習用コースに引かれた線に二人で並ぶ。
まずは最初から使うかな。出力は普通で。
憎きアイツのことを思い浮かべようとしたところで、マンハッタンカフェの話が頭をよぎる。
『あなたの後ろの子』
…そっかー憑いてきちゃったかー。
俺お前になんかしたか…? むしろヤられたのは俺の方なんだが。
夢にまで出てくるんじゃねーよバ鹿!
いつも通り心臓が高鳴る。
もういい、この件に関してはマンハッタンカフェに相談するまで保留だ。幸い今週末に相談の予定入れられたしな。
今はこの模擬レースに集中しよう。
「よーい」
殺気を放つ!!
「スタート!」
力を貸せ、こん畜生!!
背後から恐ろしい唸り声が聞こえた気がした。
──────────────────────
「タイシン、ウルサメトゥスとの併走にOKが出たよ」
「…! そう」
「いやー良かった。僕たちだけじゃないだろうしね、同じこと考えてるの」
ナリタタイシンは木原トレーナーの言葉に内心で同意する。
世間では皐月賞をレコード勝利したナリタブライアンにばかり注目が集まっているが、あのレースを見たウマ娘たちの一部…とりわけ、最上位と言われるほどの実力を持つウマ娘たちは、ナリタブライアンよりも、二着だったウルサメトゥスを注目していた。
(ウルサメトゥス。昨年のホープフルステークスを勝利したがあまり注目を浴びなかったウマ娘。あの時は正直こっちの有馬でバタバタしててなんとも思わなかったけど…調べたら、報道規制がかかってた)
名だたる名家が出走する中、ただ一人一般家庭出身という異色のウマ娘。それがホープフルを勝利し、皐月賞でも二着というだけでかなり驚きだった。
しかし、そんな事実を霞ませるほどの話題が件のウマ娘にはあった。
(あれは『領域』だ。『領域』を受けたことのある、もしくは『領域』を持っているウマ娘ならすぐに気付いたはず。効果まではちょっとよく分からなかったけど…雰囲気からして間違いない。なんか物騒な気配はしたけど)
それは皐月賞のレース中盤のことだ。現地で見ていたナリタタイシンにはすぐさま分かった。
空気が異質になる。
言葉では言い表しづらいが、ビワハヤヒデの『領域』を二度受けているナリタタイシンはその変化に敏感だった。
後ろで見ていたトレーナーは気づいていないようだった。ナリタタイシンとてレースを支配する空気から感じ取れたのであり、『領域』の効果は分からなかった。不自然に速度が上がるような分かりやすい変化はないので、トレーナーたちが気付かなかったのも無理はない。なので、今回ウルサメトゥスに併走を頼んだトレーナーたちの多くは、レースを見ていたウマ娘から『領域』の存在を伝えられていた。
『領域』であることは間違い無いだろう。
しかし、ビワハヤヒデのものを受けた時とは違う
嫌な予感はする。それに対しての不安はあったが、それでもナリタタイシンは木原トレーナーに頼んで併走練習を依頼した。
(あのウマ娘が鍵だ。大阪杯で気になったのはただの直感だったけど)
大阪杯のとき、シャドウストーカーが手を振っていた先にいたウマ娘。
ナリタタイシンは確信した。
あのウマ娘、ウルサメトゥスこそが、シャドウストーカーの『領域』耐性というべきものを鍛えたのだと。
(春の天皇賞まで、時間は残されてない。一刻も早く、『領域』の対抗策を)
他のウマ娘たちも、気づいたならばナリタタイシンと同じことを考えるだろう。しかし幸いというのか、ウルサメトゥスはナリタタイシンと同じ追込のウマ娘である。そしてナリタタイシンはシニア級でも上位のウマ娘であり、それを交渉材料とすれば優先的に併走練習ができる可能性が高い。
ナリタタイシンはビワハヤヒデとウイニングチケットの顔を思い浮かべる。
G1という大舞台の勝ち星を一つ先行されているビワハヤヒデに、自分と同様ビワハヤヒデを追いかけ鍛えているウイニングチケットに、ナリタタイシンは再び勝ちたかった。
(アタシは、まだアイツらのライバルでいたい。アイツらと戦って勝ちたい。そのために、やれることはなんだってやってやる)
たとえそれが、後輩を踏み台にする行為であろうとも。
少し痛んだ心を無視し、ナリタタイシンは木原トレーナーのPCを見る。
そこには併走依頼を快諾する内容のメールがあった。
なんだかんだブライアンもドーベルも最推しの子も勝ててはいますが、まぁA決勝は無理ですね。
そういえばメイドインアビスのゲームクリアしました。
個人的には結構楽しめました。
世界樹で難しいゲームに慣れたからかな…