ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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なんかお気に入りがすごい勢いで増えてて驚愕しました。

若干怖くもある。この期待に応えられるのでしょうか…

ではどうぞ。


波乱の第三レース、開始

 あっという間に第二レースまで終わり、次は俺が出走する第三レースだ。

 

 さっきの第二レースの内容も濃かった。

 

 ジュエル家のジュエルアズライトちゃんともう一人の逃げウマ娘がレースを牽引していたが、差しにヴィオラリズムちゃん、サルサステップちゃん、リボンオペレッタちゃんと、残りの名家が集合したせいで、一人先行を選択した娘が後ろからのプレッシャーで非常にやりづらそうにしていた。

 差しの三人は名家なだけあり、技術が他のウマ娘に比べて秀でている。フェイントや駆け引き、斜行にならない程度の妨害でバチバチにやり合っていた。

 

 最後はそのやり取りでスタミナを消費したのか、差し組は思ったほど伸びなかった。

 そして後ろから全員オイシイパルフェちゃんにごぼう抜きされていったのだった。

 

 それでも序盤中盤の技術の高さに、名家ということも相まり、何人ものトレーナーが差し三人組のところに向かった。

 オイシイパルフェちゃんは見事な差し切りを見せたためか、10人くらいのトレーナーに囲まれていた。

 切れ味のいいスパートだったな、俺も追込脚質として負けてられない。

 

『第三レースに出走する生徒はゲートに集合してください』

 

 第二レースの出走ウマ娘やトレーナーが掃けると、アナウンスが俺を含む次の出走者を呼んだ。

 

 ゲートに向かうと俺が最後だったようで、先に集まった娘たちは準備運動などで時間を潰していた。

 

「遅れてごめんなさい!」

 

「いえ、まだ時間まで少しあるので大丈夫ですよ。今日は前の2レースが早く終わったのでちょっと余裕があるんです」

 

 俺が早々に謝ると、選抜レースの監督をしていた職員の方がそう言ってくれた。ありがたい。

 ブライアンの出たレースはかなりハイペースだったし、名家組のレースもかなり早かった。そういうこともあるか。

 

 周囲に集まったレース出走者と電光掲示板に映る名前を見比べ、顔と名前を一致させる。

 うん、事前に出バ表で知っていた通り、ゲーム版ウマ娘に出てくる有名な娘はいないし、この世界の名家出身の娘もいない。

 今日は第五レースまであるが、もう前の二レースで名家はかなり出たんじゃないかと思う。

 第一レースにはブライアンがいたし、それに埋もれてはいたが他にも名家の出の娘はいた。三着だったリバイバルリリックちゃんもどこかの分家だった記憶がある。

 第二レースには多くの重賞ウマ娘を輩出している名家から四人も出ていた。

 選抜レースに出るウマ娘がそんなに名家ばかりなわけでもないし、いたとしても、今回は様子見した可能性も十分ある。

 

 なんせ選抜レース自体がまだあと三回開催されるし、そもそも第一回である今回も別に今週だけじゃない。選抜レースは二週間に渡って開催されるため、同じ日程で来週にもレースはあるのだ。第一回選抜レース二週目ってな感じで。

 ただ制限として、開催される二回のうちどちらか片方にしか出られない。例外として別の距離なら出られるが、みんな自分の一番得意な距離で出るため、あまりやる娘はいない。

 

 あれ? もしかしてこの組って前の組の出涸らしになってない? 有力なウマ娘いないし。

 あ、そこのトレーナーさんたち! 帰らないでえ! 

 そっちの記者さんたちも、明らかに休憩入るみたいな感じになってる! 

 

『時間になりましたので、出走者はゲートにお入りください』

 

 時間だ。注目されてないかもしれないという懸念はあるが、始まるもんは始まるし仕方ないか。

 俺はさっさとゲートに入った。狭いゲート内が苦手だというウマ娘は結構いるが、元人間なためか、俺はそうでもない。トイレの個室とか、狭いところって落ち着かない? 俺は落ち着く派なんだが。

 

『では出走ウマ娘の紹介です。1枠1番…』

 

 紹介が始まった。野良レースしか参加したことない俺としては、この時点でもう新鮮である。野良レースは紹介とかないしね。なんならゲートが開くタイミングも若干ずれてることあるし。

 さて、入学試験以来久々のレース。ここのところ基礎トレばっかりで出られてなかったし、勝負勘は鈍ってないかな? 

 追込脚質である俺は、序盤は足を溜めて、後半で前に進出し、終盤で一気にちぎる。そういう走りを得意とする。

 ただ、俺の才能としてはパワーとスタミナに寄っていて、スピードは多分そこまで優れていないんだと思う。所詮は自己評価だけどね。どこまであってるのかは分からん。

 では追込は後半までじっと我慢しなきゃいけないのか? 

 

 まぁ基本はそうなんだけど。別に何かしちゃいけないってわけでもない。

 前半から前にいるウマ娘たちをバテさせてもいいわけだ。できるならの話だが。

 

 

 さて、俺と同じレースに出ることになってしまった不幸な諸君。

 申し訳ないけど一着は貰っていくよ。

 是非俺の世界の一端を楽しんでいってほしい。

 何、本気で使う訳じゃないから許してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 あ、凄いイキリ転生者っぽい。

 

 

 ───────────────────

 

 選抜レース一週目、中距離の部。

 

 その第三レースが始まろうとしているが、先ほどまでトレーナーや取材に来た記者で一杯だったはずの場所は閑散としていた。

 

 理由としてはいくつかある。

 

 まず、第一レースと第二レースに名家のウマ娘が集中したこと。ベテラントレーナーはそれらのレースに出たウマ娘のスカウトに向かってしまった。

 名家でも凡走したなら話は別だが、今回のレースに出走したウマ娘たちはナリタブライアンを除いたとしても好走しており、十分にスカウトの価値があった。

 

 次に、今回のレースに出走するウマ娘の中に注目株がいないこと。名家でなくとも、地方から中央にスカウトされて来たようなウマ娘がいれば、十分レースを見る価値はある。また、入学試験の模擬レースで派手な結果を出せば注目も集まる。しかし今回の出走ウマ娘には、せいぜい後続と一馬身差で一着だったウマ娘がいるくらいで、その娘も別段タイムが秀でているわけではなかった。

 

 他にもお昼時が近かったとか、近場で行われる重賞レースの時間が近づいていてそちらに向かったなど色々理由はあるが、大きなものに関してはそのくらいである。

 

 今この場で残っている者など、名家のスカウトに行っても断られてしまうような新人トレーナーや、毎年選抜レースは全部見て記事にします! と言い張っている物好きな記者くらいな者だった。

 

 メモを片手にレースを観戦している中森トレーナーもそのうちの一人だった。中森は昨年トレセン学園に来たばかりの新人トレーナーである。

 昨年はベテランのチームにサブトレーナーとして所属しウマ娘への指導やトレーナー業務を手伝いながら学ぶ立場だったが、今年はそれを卒業し、一端のトレーナーになるためウマ娘をスカウトしに来たのだ。

 

 ただ、中森はまだ新人で実績も信用もないため、今日までのスカウトは全て断られていた。有力なウマ娘ばかりに声をかけていたこともあり、そのようなウマ娘たちは先輩たちに取られてしまうと先ほどようやく気づいたのだった。

 

 そこで、先輩トレーナーたちが見向きしないような寒門のウマ娘を見てみようと思い、ここに残った。周囲には彼と同じ考えの新人トレーナーが複数いた。

 しかし、中森も含め、あまり真剣に見ていなかった。寒門ということは、これまでのレースで見たような競い合いは見られない。そう考えているのだ。

 実際、寒門と名門では、トレセン学園に来る前から教えられる知識や鍛え方、学ぶ技術に大きな差が出る。それを考えれば当たり前の反応だった。

 

 中森もあまり期待していなかった。電光掲示板に並ぶのは見たことのない名前ばかりだし、レース慣れしていないのか、ゲートに入ったウマ娘たちの表情は硬いものばかりである。

 

(…ん? なんだこの違和感。確かに表情は硬い。でも、ただレース慣れしてないから硬いというわけでもないような。うまく表現できないけど、なんか、ピリピリしてるというか。危険を感じる? みたいな…)

 

 中森はこの光景に違和感を感じていた。周囲を見渡すが、つまらなそうに見ているものばかりで、中森のように何かを感じた、という表情をしているトレーナーはいない。…一人、異常なまでに目を輝かせている記者ならいたが。

 

(気のせいなのか? いやでも、だんだん強くなってる…か? 昔、でっかい犬に追われて命の危機を感じたときに若干似ているような、気もする)

 

 考えているうちにも、違和感は強くなる。一度そう考えてしまうと、このピリピリした空気も、ウマ娘が選抜レースに緊張しているのではなく、別の要因で緊張しているのではないかと思ってしまうほどだ。

 

 そして、緊張が最高に達した瞬間、レースが始まる。

 

 

『スタートしました…っておおっと! いきなり全員、いや八人出遅れた!? いったいどうしてしまったというのか!!』

 

 中森の感じた違和感に応えるように、スタートからほとんどのウマ娘が出遅れてしまった。逃げ先行を選択しようと思っていたウマ娘たちが焦って前に出ていく。そして、一人だけ綺麗にスタートを決めたウマ娘は、一瞬だけ逃げウマ娘たちと並ぶように加速した後、他のウマ娘の進路を塞ぐことなく速度を落とし、まるで定位置に戻るかのように自然に最後尾へと下がっていった。

 

 

 いきなりアクシデントで始まった波乱の第三レースは、まだ序盤も序盤である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────レースはゲートが開く前から始まっている、なんてね。

 

 

 




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