ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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いつも応援ありがとうございます。

中距離チャンミのいいところは、推しの子の適性が中距離で相性がいいウマ娘が多いから適正Sを作りやすいこと。
悪いところはクリオグリ。

今回長いです。おかげで一回で終わらせようと思ってたカフェ回を2回に分けることになってしまいました…予定通りにいかないことばかりですね。

ではどうぞ。


コーヒーとご相談

 

 

 

 タイシン先輩との併走が始まってから初めての休日。

 普段の休日はレース動画を見たりイメトレしたりで殆ど部屋から出ない俺だが、今日は予定があるため珍しく朝から外に出ていた。

 そう、俺の後ろに憑いているという存在について、マンハッタンカフェに相談しにいくのである。

 なお、トーカちゃん先輩にお出かけに誘われたのだが、泣く泣くお断りした。こっちの都合でマンハッタンカフェを振り回すわけにもいかないしね。残念そうな顔をするトーカちゃん先輩…うう、ごめんね。

 

(ここか。そういや美浦寮は来るの初めてだな)

 

 マンハッタンカフェの部屋で話をすることになっているため、美浦寮まで来たが…うん。見た目は栗東とそんなに変わらんな。そらそうか。

 ちなみにトーカちゃん先輩にはマンハッタンカフェの部屋に行くとは言っていない。理由? なんとなく嫌な予感がしただけだ。

 

 玄関にある管理人室でマンハッタンカフェに連絡を入れると、すぐに返事があり、管理人さんに案内されるがまま部屋へ。自分が所属していない寮には基本的には入れないのだが、こうして寮内のウマ娘の許可があった場合は、管理人さんに部屋まで付き添われることを条件に入ることができる。生徒間の不要な衝突を避けるためらしい。

 なお、生徒会の役員等一部のウマ娘は許可無しで入ることができる。まぁ俺は生徒会とか興味ないし入ることもないだろうから、関係ない話だな。

 部屋の前のインターホンを押す。

 

『はい』

 

「あ、ウルサメトゥスです。本日はお招き頂きありがとうございます」

 

『今開けますね』

 

 扉の中から控えめな足音がして、直後扉が開く。

 扉の隙間から顔を覗かせたのは、漆黒の長髪に黄金色の瞳、マンハッタンカフェだ。

 俺と管理人さんの姿を確認し、大きく扉が開かれる。

 

「ようこそ…こちらこそ、よろしくお願いします」

 

「では私は管理人室に戻りますね」

 

「あ、ありがとうございました」

 

 管理人さんが踵を返す。簡単にお礼だけ言い、改めてマンハッタンカフェの姿を見た。

 うーん…やっぱり前世で育成してたときよりも小さいよな? 俺とそんなに変わらない、もしかしたら俺より小さいかも? それはないか。まぁ学年も俺と同じって言ってたし、これから本格化して身長も大きくなるんだろうか。

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、なんでもないです。それより、本当にお部屋を借りてもよかったんですか? こちらはある程度機密性があるならどこでもよかったのですが」

 

 場所を指定したのはマンハッタンカフェの方だ。『領域』に大きく関わる話だし、俺としては誰にも聞かれないであろう寮の部屋は都合がいいのだが。あ、ルームメイトがいるか? 

 

「ルームメイトの方は?」

 

「ああ…実は先日、怪我で引退されまして…そのまま、学園を去ってしまわれたのです。なので今は、私が一人で使っています。それも含めて私の部屋の指定、そして…この時間に来ていただきました」

 

「ああ、それは何というか…」

 

 怪我、か。俺が今まで怪我とかしたことないからちょっと遠くの出来事だったが、そういうこともやっぱりあるんだよな…

 

 俺を部屋まで案内しながらマンハッタンカフェが少し表情を歪ませて場所と時間を指定した事情を話す。

 

「…私の知り合いに、私が言うのもなんですが少々変わった方がいまして。普段はご自分の趣味? に没頭しているのですが…神出鬼没な方なので、迂闊に外で話すと出会ってしまう危険性があるのです。その方は、趣味? を行っている間はその専用の部屋に詰めています。それで、昨日から徹夜で今日の午後までじっけ…趣味に没頭すると先日言っていました。なので今日の午前中、私の部屋を指定させて貰いました」

 

「? それを聞くとその方と私をどうしても会わせたくないように聞こえますね」

 

 なんでそんな工作を…。というか、そこまでして会わせたくないなんて一体? いや、一人だけ思い当たるな…カフェが刺々しい態度で当たる相手。

 

「それはですね…タキオンさん、あぁ、その方はアグネスタキオンさんというのですが…タキオンさんが貴女に興味を持っていまして。私の判断で申し訳ありませんが、それが少し危ないと思ったので、こうしてできる限り遭遇させないようにしたのです」

 

 やっぱりアグネスタキオンか…

 

「それは…ありがとうございます、でいいんですかね?」

 

「はい。…私と貴女が一緒にいる所をタキオンさんに見られたら、研究と称して何をされるか分かりませんので…。そして、タキオンさんはどこからか情報を得るのが非常に速くて…研究に没頭している間じゃなければ、きっと見つかってしまいます」

 

「そ、そうですか」

 

 マンハッタンカフェは大きな溜息をついた。ああ、タキオンってこの世界でもやっぱりそんな感じなのね。ご苦労様です。

 

 部屋に着くと、俺の部屋と同じように二つのベッドがあり、概ね真ん中で空間が仕切られている。ただ、荷物が置いてあるのは片方だけであり、先程カフェが言っていたことは真実であると分かる。

 

「マンハッタンカフェさんが使っているのは左でいいんですよね?」

 

「はい…まぁ、分かりますよね」

 

「そうですね」

 

 落ち着いた雰囲気で、謎のオブジェが棚に置かれ、外国語で書かれたコーヒー豆のラベルが壁に貼られている。部屋の半分を使う人はもう誰もいないというのに、カフェが使っているのはきっちり左半分だけだ。性格が出ている。

 

「ウルサメトゥスさん…私のことは、カフェでいいですよ」

 

「そうですか? ではカフェさんも、私のことは適当に呼んでください」

 

「それでは…ウルさんと。少し待っていて下さい…今、コーヒーを淹れます…コーヒーでいいですか?」

 

「はい、コーヒー好きです。あ、何も入れなくていいですよ」

 

「そうですか…ウルさんとは、話が合いそうです。…あ、そちらの椅子に座って下さい」

 

「淹れるところを見学してもいいですか? 私も最近凝っていまして。あの喫茶店で頂いたコーヒーはとても美味しかったです。それほどの腕前を持つカフェさんの技術をちょっと見てみたくてですね」

 

「そこまで評価して貰えて嬉しいです。…どうぞ、ゆっくり見ていって下さい」

 

 カフェはそう言って台所へ向かう。黒い尻尾や耳が揺れている、どうやら機嫌がいいようだ。

 いやーカフェがコーヒーを淹れるところを現実で見られるとは…おっと、せっかくのチャンスなんだ。俺のコーヒーの腕前を上げるためにも、しっかり目に焼き付けておこう。

 

 

 

 カフェの淹れてくれたコーヒーを貰い、今日の本題に移る。

 

「それで、相談ですが…今も、いますか?」

 

「はい。心なしか、先日見たときよりも姿がはっきりしてきている気がします」

 

 カフェが俺の後ろに視線を向けた。分かってはいたけど、離れてるわけないよなぁ…

 俺は後ろを振り返ったが、やはり何も見えず。

 

「カフェさんにはどう見えていますか?」

 

「そうですね…黒い大きな靄のように見えています。この前はそれ以外何も分からなかったのですが、今日は…大きな爪と牙、そして四足歩行の獣のように見えます」

 

 そっか…(諦観)

 もう間違いないわな。ヤツだ。何でかは分からんが、俺が死んだ後も付け狙うのか…。てか、本当に何でいるんだよ。俺が死んだ後にお前も死んだの? いや、そりゃ人殺しのクマなんて行政からしてもほっとくわけにはいかないんだろうが、死んだからって俺のとこに来るんじゃないよ。

 

「見え方が変化したということは、あの後に何かありましたか?」

 

「…そうですね、何もなかったと思いますが。強いて言えば、何かがいる、と認識したことくらいですかね」

 

「多分、それでしょう。…『彼ら』は、認識されることで影響力を増すことがあるので…」

 

 え、そんなことでパワーアップすんの? やめてくれよ…

 もしかして高出力の『領域』が安定しないのってコイツが強くなったせい? 

 前世とかクマのことをぼかしつつ『領域』が安定しないことを話すと、カフェは神妙に頷いた。

 

「聞いた限りでは、ウルさんの『領域』はその子が大きく関わっているようですし、ありえない話ではないかと」

 

「そうですか…」

 

 そうですか…勘弁してほしいです…

 いやでもいなくなられたら『領域』使えなくなるのか? それならいて貰った方が…しかしクマが…でも…うーん。何で俺は前世の死因に悩まされなきゃならんのだ。思い出の中でじっとしていてくれ(切実)

 あ、『領域』と言えば。

 

「そういえば、カフェさんはどこで『領域』を知ったんですか? こう言っては何ですが…まだデビューもしていないウマ娘に教えられるようなことではないと思いますが」

 

 ちょっと気になっていた。前回カフェとあったときは後ろの子云々で半ばパニックだったので思いつきもしなかったが、そもそも俺たちの話を聞いて『領域』が話題に出たとしても、その言葉の意味を知らなければ何も思わないはずだ。

 だがカフェは『領域』という言葉を聞いて俺に話しかけた。つまり、俺たちの話を聞く以前から『領域』について知っていたということだ。なら、『領域』を教えた人がいるはずだ。

 もし、『領域』をその辺のトレーナーがカフェに教えてたんだとしたら、場合によってはそいつを理事長に突き出さなきゃならんかもしれない。なんせ『領域』は基本的には隠されていて、その域に達した、もしくは『領域』を見たウマ娘にトレーナーから伝えられるものだ。隠されている理由は、『領域』の存在を知ったウマ娘がその強さに取り憑かれ、習得しようと無理なトレーニングを繰り返してしまうかもしれないから…らしい。俺も中森トレーナーに聞いた話だ。

 ともかく、カフェはまだデビュー前で、身体的に負荷の強いトレーニングができるようなウマ娘じゃない。そんなウマ娘に『領域』を教えたトレーナーがいたとしたら…

 

 うん、一発くらいぶん殴るか、全力の『領域』をぶち当てるかするかもな。

 クズトレーナーを想像して肩を怒らせていると、カフェは少し返答に迷っていたようだが、最終的には呟くようにぽつりと話した。

 

「…それなら、私は『お友だち』…いつも一緒にいる『彼ら』の一人に教えて貰いましたから…」

 

「…なるほど」

 

 あー、うん。なるほどね??? 

 心配してた俺が馬鹿だったわ。いや本当に。

 

 そうじゃん、カフェはその線がありえるじゃん!! 完全に盲点だった…

 

『お友だち』に教えて貰ってたんなら知ってても何もおかしくない。

 むしろなんで思い付かなかったんだって話だよ。前世の記憶息してるか? そして仮に『お友だち』が教えなくてもカフェは『彼ら』が見えるんだからそこから情報がもたらされる可能性があるわけで。気づけよ俺。

 まぁ、無垢なウマ娘に色々と吹き込む悪徳トレーナーなんていなかったんだな…良かった…

 カフェの返答に納得してうんうん言っていると、今度はカフェから俺に質問が飛ぶ。

 

「あの…」

 

「うん? なんですか?」

 

「ウルさんも『彼ら』が見えているのですか?」

 

「いや、見えませんよ」

 

 見えてるならカフェに相談しにこないよ。いや、振り返ったら死因が見えるとか冗談でも勘弁してほしいから見えなくていいんだが。

 

「…それなら、私の話を聞いておかしいと思わないんですか…?」

 

「何を?」

 

「『彼ら』とか、『お友だち』とか…ウルさんは、意味を分かっていますよね?」

 

「ああ、そんなことですか」

 

 まぁ普通に考えたらおかしいんだろうが…あいにく、こちとら色々経験してる身でね。前世でカフェのことを知ってるってのもあるが、それ以上にそういう存在(・・・・・・)を信じても驚かないくらいの体験をしてるからな…。

 前世の記憶とかゲームの世界に転生とかに比べたらなぁ。幽霊くらい、まぁいてもおかしくないかって反応になるよ。

 それを曖昧に伝えると、話を聞いたカフェが目を見開いて驚き、そして花が咲いたような笑顔を見せた。

 

「っふふ、そう、ですか…」

 

 あーーー、可愛い可愛い!! はい可愛い!! ずるいですよ不意打ちは! クールでミステリアスな娘がいきなり見せる満面の笑み…良い…! そこからしか摂取できない栄養素がある、俺は詳しいんだ。

 俺がコーヒーを吹き出すのを必死で堪えていると、カフェが何事もなかったように表情を戻す。いや、ちょっとだけ口角が上がったままだな。うん、かわいい。

 

「話を戻しましょうか。ウルさんは、その子をコントロールしたいんですよね?」

 

「え、ええ。そうですね、できれば。このまま暴発されても敵いませんし」

 

 だいぶ脱線していた気がするが、今日の本題はそれだったな。正直さっきのカフェの笑顔で色々吹き飛ばされた気がするが…

 

「では、私が少しお話ししてみます」

 

「え…危険では?」

 

 それは流石にやばくないか? いやでもアプリ版のストーリーでもカフェはトレーナーが惹きつけた『彼ら』を追い払ってたし、大丈夫、か? 

 いやいや、やっぱり危険だ。今のところ大人しく? しているとはいえコイツはそもそも危険物。いくら対処に慣れているかもしれないとはいえ、カフェを危険な目に合わせるのも…

 そんなことを考えていたら、いつの間にかカフェが俺の後ろに声をかけていた。

 やべ、出遅れた。

 

「…その、少しお話をしませんか…?」

 

「カフェさん、やっぱり危険なのでやめたほうが…」

 

 俺が止めようとしたその瞬間。

 

 カフェは突然意識を失い、体から力が抜ける。

 

 

「ちょぉッ?!」

 

 崩れ落ちる寸前に抱き抱えることには成功したが、これは不味いんじゃ…?! 

 

「息してない…?!」

 

 咄嗟に耳を澄ませるが、呼吸音が聞こえない。心音は聞こえるので心臓が止まったわけではないようだが…

 

「どうしよう…!」

 

 救急車? AED? いや人工呼吸か?! 

 

 

 ────────────────────

 

「ああ、そんなことですか」

 

 自身の問いに対し、ウルサメトゥスはこともなげに答える。その態度にマンハッタンカフェは目を見開いて驚愕した。

 

 

 喫茶店で見かけたウルサメトゥスについ声をかけてしまったが、マンハッタンカフェはウルサメトゥスが本当に自分を頼るとは考えていなかった。

 何せ声をかけた理由が『ウルサメトゥスの後ろに何か見える』というものだ。

 マンハッタンカフェは生まれつき霊が見えるが、他の人には見えていないことは知っているし、自分が虚空に向かって話しかけていたら他人からよく思われないことも知っている。これまでにも同じようなことはあり、その殆どの場合でマンハッタンカフェは不思議な娘、悪い時は不気味な娘と言われてきた。今回も一応声は掛けたが、自分が何かすることはないだろう。そう思っていた。

 

『マンハッタンカフェさん。先程の件ですが、最速でいつ予定が空きますか? 私は日曜なら行けます』

 

 なので、その日の夜に早速連絡が入っていた時は非常に驚いた。

 

 

 アグネスタキオンがウルサメトゥスに興味を持っていることを本人から聞き、確実に会わないように予定を組む。

 ウルサメトゥスが本当に自分の言ったことを信じたのか、それとも信じていないがとりあえず話を聞くだけ聞こうと思ったのか。それはマンハッタンカフェには分からないが、話を聞く気があるのなら、こちらから声をかけたこともあるし最低限の配慮はしておく。そう考え、アグネスタキオンを遠ざけた。

 

 そして日曜。ウルサメトゥスが部屋を訪ねてきた。

 

(本当に来た…)

 

 真っ先に反応した『お友だち』を追いかけ、玄関に向かう。インターホンが押されるまでまだ半信半疑だったが、実際に来てしまっては対応するしかない。

 

 ウルサメトゥスを部屋に招き入れ、軽く会話する。

 互いにコーヒーが好きということもあり、他人から遠ざけられる傾向にあるマンハッタンカフェとしては久しぶりに同年代と楽しい会話ができた。会話が弾み、互いを愛称で呼び合うほど仲良くなったことに、マンハッタンカフェ自身が驚いていた。

 

 そして本題であるウルサメトゥスの後ろの存在についての相談が始まる。初めて会った時からそうだったが、ウルサメトゥスはマンハッタンカフェの話をなぜか全面的に信じている様子で、後ろの存在がパワーアップしていることを伝えると非常に嫌そうな顔をしていた。

 

 難しい顔をして唸っているウルサメトゥスを見て、マンハッタンカフェは考える。

 

(もしかして、ウルさんにも『彼ら』が見えている?)

 

 もしウルサメトゥスも『彼ら』が見えているとしたら、その反応もおかしくない。相談してきたのも、見えているが彼女には対処できる力がないと考えればそこまで不自然でもない。

 しかし、ウルサメトゥスから帰ってきた答えはノー。彼女には『彼ら』は見えていなかった。

 

(それならどうして、私の言ったことを信じられるの?)

 

 マンハッタンカフェはこれまでの人生で、自分の特異性が信じられたことは非常に少ない。少ないというより、信じて貰えたのは家族くらいである。アグネスタキオンも信じているような発言をしているが、彼女の場合は正確には『見えている発言をするマンハッタンカフェ』に興味を抱いているだけであり、おそらく直接的に『彼ら』の存在を信じているわけではない。

 しかしウルサメトゥスは明らかにマンハッタンカフェの言っていることを真に受けており、存在する前提で話を進めている。

 今も、『領域』の存在を『お友だち』から聞いたと話しても、納得した様子を見せるだけだった。

 

「…それなら、私の話を聞いておかしいと思わないんですか…?」

 

「何を?」

 

「『彼ら』とか、『お友だち』とか…ウルさんは、意味を分かっていますよね?」

 

 つい、口から溢れてしまった。言うつもりは無かったのに。

 言ってからマンハッタンカフェは顔を顰めた。ウルサメトゥスが話を合わせているだけかもしれないと言うのに。せっかく仲良くなり始めた同年代のウマ娘だ。しかし、この一言が決定的なものとなり、もう交流することはなくなってしまうかもしれない。

 

【でも、いつかはぶつかる問題だろう?】

 

 背後から声が聞こえる。『お友だち』の声だ。

 それはそうだ。仲良くなれば、いずれこの特異性について聞かれることになるだろう。そのときに仲良くなった友人にそれを否定されて平然としていられるほど、マンハッタンカフェは精神的に大人ではない。

 ウルサメトゥスが返答しない。いや、時間を長く感じているだけだろうか。

 

 マンハッタンカフェの感覚ではようやく、ウルサメトゥスとしては即座に、口を開いた。

 

「ああ、そんなことですか」

 

 ウルサメトゥスは何でもないことを話すように答え、コーヒーを美味しそうに啜る。実際、ウルサメトゥスにとってマンハッタンカフェに霊が見えることも、霊が実在することも何でもないことだった。

 

「まぁ確かに改めて言われると多少おかしいことかな? とも思いましたが…私も大概、現実では考えられないようなことを経験しているんですよ。例えば、例えばですよ? 別の世界から転生したとか、巨大な化け物に殺されたとか、創作にあったことが現実に起きたとか。まぁ、そういったレベルの、他人に本当のことを言ったら確実に頭おかしいだろうと言われるようなことを、私は経験しているんですよ。だから他人に見えないものが見えているとか、実際にいるとか…そのぐらいなら、まぁいてもおかしくないかなってなるんです。だから、カフェさんが言ってることは全部本当のことだと思ってるし、私の後ろにはヤバい化け物が本当にいるんだろうなって思ってます」

 

 ウルサメトゥスはそう言ってまたコーヒーを啜る。

 それを聞き、自分が心配していたことが全て杞憂だったことを知り、マンハッタンカフェは思わず笑みをこぼした。

 

「っふふ、そう、ですか…」

 

「っ! 可愛すぎ…

 

 これからも仲良くしたい。マンハッタンカフェがそう思ったのは初めてのことだった。

 

(力になりたい)

 

 自分のことを完全に信じて付き合ってくれる友人の得難さは、マンハッタンカフェ自身が一番よく知っている。だからこそ、自分にしかできないことで悩んでいる眼前のウマ娘を助けてあげたいと、強く思った。

 ウルサメトゥスの後ろの存在を見る。相変わらず強力な気配を漂わせていて、恐ろしいことこの上ない。

 しかし、この不思議な友人のためならば、少しくらいは危険なことも許容できる。それに、今まで自身より強力な力を持つ存在には会ったことがない。その事実がマンハッタンカフェを勇気づけ、体を動かした。

 

「…その、少しお話をしませんか…?」

 

 真っ暗な影に声を掛ける。しかし、影は少し揺らいだだけで、マンハッタンカフェが期待するような反応は見せなかった。

 

「あの、聞こえて──────」

 

 直後。

 

 真っ暗な影から、さらに黒い空間が溢れ出す。

 

 

 

 マンハッタンカフェの視界はあっという間に覆い尽くされ、気づけば『お友だち』すらいない暗闇にひとり、ポツンと佇んでいた。

 

 

 




すずめの戸締り楽しみだなぁ(チャンミから目を逸らしつつ)

てかウマ娘アニメ3期決まりましたね。これを機にアニメちゃんと見るか…
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