ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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ポケモン楽しい!!

内容が薄い言い訳は以上です。

ではどうぞ。


VRウマレーター

 

 

 

【悲報】俺氏、前世の死因が今世の死因にもなりそう【助けて】

 

 そんなスレが頭の中に立ちそうだったが、俺は元気です。

 

『わ、私は結構今まで『領域』を乱用してたのですが、大丈夫ですか?!』

 

『? 危害を加える気はないそうですし、大丈夫なんじゃないですか?』

 

『では、私が侵食されているとか、現時点でそういうのはありますか?!』

 

『侵食…? されていないと思いますけど』

 

 あの後カフェとそんな会話があった。

 これまでかなりの回数『領域』を使ってきて何の影響もないということは、まだ暫くはこのペースで『領域』を使っても問題ないのだろう。カフェのお墨付きももらったしな。

 それでも心配なことに変わりはないので、カフェとは定期的に会って後ろのヤバいのから影響を受けてないかを見てもらえることになった。ほんと助かります…

 また、カフェ曰く余程強い力を持った霊でない限りは何とかできるらしいので、最終手段として追い払ってもらうことになっている。カフェは今まで自分より強い霊力を持った怪異と出会ったことはないそうで、神に近しいほどの力を持っていなければ少なくとも撃退くらいはできるとのこと。頼もしい限りだ。

 てか、カフェはそんなに何度も怪異に出会っているってこと? カフェも大概人生苦労してるよな…

 

 とりあえず、カフェを信じて俺は今まで通り『領域』を使っていこうと思っている。

 命に関わりそうなほど危険になってきたら考えるが…『領域』を使った今でもブライアンに勝てていないしな。『領域』抜きで勝てるとも思えない。『領域』を使うことで起こる影響の方はカフェに何とかしてもらおう。流石にアイツも神に近しい力なんて持ってないだろうしな。

 

 今日は月曜、タイシン先輩との併走練習の後半なのだが…俺と中森トレーナーは、木原トレーナーに連れられて練習場ではない別の場所を訪れていた。

 

 VRウマレーターのある専用部屋である。

 

「ここだよ」

 

「おお…これが」

 

 木原トレーナーの示す先には、ずらりと並んだ複数の大型機械。ここだけ近未来になってしまったような光景に、俺と中森トレーナーは揃って圧倒されていた。

 

「これこそが、最新の機材が揃うこのトレセン学園でも少数しか使用を許可されていない『VRウマレーター』だ。このポッド型の機械に一人一人入り、ヘッドギアをつけて開始するのさ。もう先にタイシンには入ってもらっているよ」

 

 木原トレーナーが自慢げに言う。彼の話では、今このVRウマレーターの使用権限を持っているのは20人ほど。多くのウマ娘が通うトレセン学園でたった20人、その中に担当ウマ娘が入っているとなれば自慢もしたくなるだろう。

 

「これを、メトゥスが使ってもいいと?」

 

「ああ。理事長には僕から話を通しておいたよ。理事長だって、君達みたいな有望なコンビが使うんだったら文句なんて言わないだろうさ」

 

 全く有難い話だ。中森トレーナーも頑張って練習メニューを考えてくれているが、一人だと内容が偏ってくるかもしれないしな。こうやって他の有力なトレーナーの考えた新しい練習をやるのは、俺にも中森トレーナーにもいい刺激になりそうだ。

 

 俺たちが木原トレーナーからVRウマレーターの使用方法を説明されていると、プシューと音がして目の前のポッドの蓋が開く。

 中から出てきたのは当然タイシン先輩だ。

 

「タイシン先輩、今日もよろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく。一昨日まではアタシが一方的に教えて貰ってるばっかりになってたからさ、今日はやっとウルに返せるよ」

 

「とんでもない、私の方こそ色々と教えて貰っていたというのに…」

 

 タイシン先輩は『領域』の練習のことを言っているのだろうが、それを含めても俺の方が貰っているものが多いと思う。

 俺はこの一週間で追込として覚えておくべき仕掛けのタイミング、焦らせ方、圧のかけ方…様々な追込のコツ(・・・・・)と言えることを散々タイシン先輩から学んだ。きっとタイシン先輩がこれまでの競技生活で学んできたであろう技術をだ。

 それでいて、タイシン先輩が俺から得られたのは『領域』に対する耐性だけ。釣り合ってなくない? と思うのは俺だけではないだろう。

 

「それだけ『領域』の対策にはみんな飢えてるんだよ。ほら、あんまり長い時間使えるわけじゃないんだから、さっさと入りな」

 

 タイシン先輩が俺の背中を軽く叩いて話を切り上げた。これ以上何か言うのは無粋ってやつか。さすが、かっこいいっす。

 俺もタイシン先輩の隣のポッドに乗り、説明通りヘッドギアを着ける。これでこのスイッチを押して、スタートだ。

 

<『ゲスト』さま、没入型シミュレーショントレーニング機『VRウマレーター』へようこそ>

 

 そんな文字が視界に広がり、同時にアナウンスが流れる。

 

<アカウント名『ナリタタイシン』さまから、『レース用シミュレーターv1.21』への招待が届いています。受けますか?>

 

 事前に木原トレーナーに説明されていたが、タイシン先輩から招待が飛んできた。これに『はい』を選択、と。

 

<招待を承認しました。それでは、『レース用シミュレーターv1.21』の世界へ、いってらっしゃいませ>

 

 これソフト名が入ってるんだろうが、この名前だとかなり無機質な感じがしてちょっと嫌だな…

 そんなことを考えていると視界が暗転した。

 

 

「おー、これがVRの世界ですか…本当に近未来的というか何というか」

 

 俺が目を開けると、そこには綺麗に整備された芝のコースがあった。軽くジャンプしてみたり、芝を踏みしめてみたりするが、現実と遜色ない。違和感がないことが逆に違和感になるレベルだなこりゃ。SA◯もこんな感じだったんだろうか? 

 

「お、来た。どう? VRは」

 

「正直驚きですね。ここまでとは…」

 

「だよね。アタシも最初はめちゃくちゃビックリしたよ」

 

 タイシン先輩が駆け寄ってくる。凄い、足音まで再現されてるのか。これならもしかして『領域』まで再現できるのか? 

 俺が『領域』を発動しようとすると、目の前に『警告!!』という赤文字が飛び込んできた。

 

「うわっ!」

 

「何これ? ウル、アンタ何したの?」

 

「すみません、少し実験を…」

 

 警告の下には、『不明なエラーが発生しました。持続的にエラーが発生する場合はシミュレーションを終了します』と書いてある。やっぱ無理か。

 

「何やってんだか…ほら、練習するよ」

 

 タイシン先輩が空中で何か画面のようなものをいじっている。あれを見ると本当にここがシミュレーターの中なんだと実感するな。

 

「これで決定っと」

 

 タイシン先輩がそう言うと、周囲が一瞬真っ暗になり、コースが変容する。先ほどまではトレセン学園の練習用コースの上に立っていたのだが、今はどう見ても東京レース場のコースの上に立っていた。

 

「ここは…東京レース場ですね?」

 

「そう、ウルが出る次のレース、日本ダービーが行われるのはこの東京レース場。今からやる練習は、場所は正直どこでも良かったから」

 

「私としては願ってもないですが…タイシン先輩が次に出る天皇賞・春は京都レース場ですよね? 私に合わせていいんですか?」

 

「アタシはもう何回もこれを使って京都レース場で走ってるから。…それに、別にアンタのためって訳じゃない。アタシはそこまで東京レース場で走ってないから、アタシも十分練習になるし…何笑ってんの?」

 

「いえ、何も」

 

 ツンデレじゃん。

 戯言はさておき、合わせてもらえると言うのならお言葉に甘えよう。

 

「…まぁいいや。それじゃ、今日の練習について説明するけど」

 

 そう言ってタイシン先輩はターフを指さす。それに釣られて俺もターフを見るが…なんか、でこぼこしてる? 

「気づいた? これは、ターフの微妙な芝の長さの違いや地面の凹凸を大袈裟に再現させたものなんだ。ウルは普段、こういうのを意識して走ってる?」

 

「いえ、してませんね」

 

「まぁ、それが普通だからね。でも、芝の長さとかその下の地面の形は、走る時間が長くなるにつれて体力や足の負担なんかへの影響が大きくなる。だから、それらに合わせた走りができると、体力温存につながるんだ」

 

「なるほど。つまり、タイシン先輩の言っていた走法というのは」

 

「これで覚えたんだ。ターフを見て瞬時にどこにどのように足をつけるか。どのくらいの強さで踏むか。それらを地面に合わせて変えることで、極限までスタミナ消費を減らす。それがアタシの身につけた走法の正体だ」

 

 併走練習の当初、模擬レースで合計4000mも走ったのにタイシン先輩が全く疲れていなかったのもこれがあったからか。

 言うのは簡単だが、とんでもなく頭を使う走り方だ。これを駆け引きと同時にやっていると? タイシン先輩は化け物か? 

 

「アタシも最初からすぐにできるようになった訳じゃない。今は無意識でもできるけど、初めは100m、次は200m…みたいに、できる距離をだんだん伸ばしていったんだ」

 

「これを無意識下で…」

 

 一体どれほどの練習をしたのか想像もつかないな。だが、それだけの価値はある。

 

「皐月賞の最後」

 

「!」

 

「体勢を崩して勝機を失ったでしょ? あれは多分、変なところを踏んじゃったからじゃない?」

 

「…よくお分かりで」

 

「同じ経験をしたことがあるってだけ。そして、一度したミスをもう一度するわけにはいかない」

 

「その通りです」

 

 俺の事情まで知ってこの練習を提案したのか。恐ろしいなタイシン先輩、いや、これを分析したのは木原トレーナーの方か? どっちでも変わらないか。どちらにせよ、この練習が俺の益となるのは間違いない。

 今からやっても日本ダービーには間に合わないだろう。だが、次の菊花賞には? 十分時間がある。

 そして、俺の場合は少しでもこの走法ができるようになれば、更に応用が利くかもしれない。

 

 軽く足音を立てる。芝の長い部分と短い部分の両方で。

 

 モスッ ドスッ

 

 ほう、なるほどね。

 これは、100mだけでもこの走法ができるようになれば『領域』を強くすることもできるかもしれないな。

 

 大きな可能性を秘めた走法に、俺は隠しもせず口角を釣り上げた。

 

 




今後しばらくの間ポケモンに魂を引っ張られて更新に影響が出る可能性があります。ご了承ください。
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