ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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ポケモンやめられねぇ。

フェアリー統一という趣味パを最初に作ってしまった…
今作可愛いフェアリー多いんだもの…

それでは全く関係のない本文をどうぞ。


Nemesis

 

 

 

 ウルサメトゥスとナリタタイシンが併走練習を始めてからしばらく経ち、練習も残すところ今日で最後となった。

 午後の最初の1時間をVRウマレーターで練習した後に、外で練習するというのがこの一週間のルーティーンとなっている。今日もその例に漏れず、たった今ナリタタイシンはVRウマレーターでの練習を終えて練習場に到着したところだ。

 先に練習場へと走っていき、色々と道具の準備をしているウルサメトゥスを見て、ナリタタイシンはひっそりとため息を吐いた。

 

(この一週間、戦績が落ちてきている)

 

 月曜日、VRウマレーターの練習の後。先週と同じように模擬レースをしたときから、明らかに負けが増えていた。勝てるようになっていたはずの最初に『領域』を使われるパターンでも、負けることがある。

 ナリタタイシンとて、ここまで使われればウルサメトゥスの『領域』の発動条件に感づいている。それは、相手を動揺させること。ウルサメトゥスが心音を大きくすることで相手の動揺を誘っていることも分かっており、分かってしまえば動揺もしないですむ。流石にレース中盤のいつ使われるか分からないタイミングの崩しは対応しきれなかったが、初手から使われるパターンで負けることはもう無いと思っていた。

 

(強化しちゃったか…VRウマレーターで)

 

 ウルサメトゥスも、ナリタタイシンに心音による崩しが効かなくなったことにはナリタタイシンより早くに気づいている。ただし、気づいても更なる崩しを思いついていなかったので、試行錯誤している途中だった。

 

 そこに新たにもたらされたのが、VRウマレーターによる練習である。

 

 ナリタタイシンはその練習で、ターフの踏む場所によって入れる力を変えたり、そもそも走りやすい部分のみを踏むことで体力の消耗を抑える走法を習得していた。長い時間をかけて。

 しかし、ウルサメトゥスは踏む場所を見極めるというところのみに注目した。ナリタタイシンの走法は確かに有効だが、習得までに時間がかかってしまい、間違いなく日本ダービーには間に合わない。

 その代わりのものとして、ウルサメトゥスは芝の長さによって踏んだ時の音が大きく違うことに注目した。

 

 ナリタタイシンとウルサメトゥスが横並びになり、中森トレーナーの合図を待つ。

 

「では、よーいスタート!!」

 

 同時にスタートを切る。

 ナリタタイシンに動揺はない。ウルサメトゥスは心音による崩しを仕掛けてきたが、既に散々やられてきた戦法であり、ナリタタイシンに効果はない。両者とも綺麗なスタートを切ることができた。しかし、平穏なのはここまでだった。

 

 

 ドゴォン!!! 

 

 

「うぐぅッ!?」

 

 ナリタタイシンの真後ろで雷のような轟音が鳴る。

 ウルサメトゥスが持ち前のパワーで思い切りターフを蹴りつけたのだ。

 

 以前のウルサメトゥスにはできなかったことだ。いくらウルサメトゥスがパワーに優れても、大きな音に対して身構えたウマ娘を動揺させるほどの大きな音を、脚の力だけで出すことは不可能だったからだ。

 しかし、ウルサメトゥスはターフの状態を一瞬で看破する技術を身につけた。ターフを確認し、一番大きな音が鳴る部分を一瞬のうちに見つける。そこにピンポイントで最大のパワーを叩き込むことで可能となった『猫騙し』である。

 

 まだ完全ではないため不発することもあるし、スタミナも余分に使う。さらに、そもそも極限の集中が必要なスキルであり、今のウルサメトゥスがこれを持続できるのはたったの30mほど。ウマ娘なら2秒で駆け抜けてしまう距離だが、それでもウルサメトゥスには十分だった。

 

 元々人間よりもはるかに聴力に優れるウマ娘たちは、分かっていても真後ろで起こる轟音で動揺することを防げない。

 ナリタタイシンもその例に漏れず、あっさりと動揺することを許してしまう。

 

 本来、こんなことをしても得られる動揺は一瞬のものであり、G1に出てくるような一流のウマ娘たちならば体勢を立て直すのに0.5秒とかからない。習得しても役に立つ場面が殆どない技術だ。それを起点に『領域』を発現するウルサメトゥスを除いては。

 

 ナリタタイシンの視界が暗闇に染まる。もはやこの二週間で見慣れてしまった光景である。

 

(…くそッ、分かってても怖いもんは怖いんだよ!!)

 

 ナリタタイシンの真後ろに強烈な殺気とプレッシャーが突如発生した。

 走法を忘れるほど怯えて泣きながら逃げていた最初の頃よりは余裕があるが、それでも迫り来る影の化け物の存在を全く恐れないということはない。

 影の圧力は確実にナリタタイシンのスタミナを削っていく。

 さらに、先週にはなかった現象も起こり出す。

 

(コイツ、横に並んできやがった?!)

 

 影が生臭い息をこぼしながらナリタタイシンの真横に並ぶ。あまりにもリアルなその感覚に、ナリタタイシンは本能的にペースを上げ、距離を取らざるを得なかった。

 

(考えてたペースが乱されていく!)

 

 そうして影は弄ぶかのように位置を変えながらナリタタイシンを追い込んでいく。時に横から、後ろから、逃げ道を塞ぐように前に回り込むことすらある。

 その度にナリタタイシンは加速し、少しでも化け物から距離をとる。しかしどんなに速度を上げて距離を離しても、一度捕捉されてしまうと逃げることはできない。対抗策は無い。唯一の対抗策は、そもそも『領域』を使わせないことだ。

 

 視界から暗闇が消え、同時にプレッシャーも消える。

 後ろの気配は化け物からウマ娘のものに変わり、そのウマ娘、ウルサメトゥスが一気に追込をかけてきた。

 

「負けないっ…!」

 

「なんでスタミナが残ってるんですかタイシン先輩!!」

 

「アタシにも意地ってもんがあるんだよ!」

 

 ナリタタイシンがスタミナを抑える走法を用いても、なお削り切られてしまうほどの効力。日本ダービーを意識した2400mで、最初の頃のレースよりも距離が400m長いとはいえ、ナリタタイシンからすればインチキもいいところな『領域』だった。

 

「「うおおおおおおおおおお!!!!」」

 

 残り400m、最終直線での鍔迫り合い。

 ウルサメトゥスには十分なスタミナがある。

 ナリタタイシンにはもうあまり残されていない。

 

 しかし、最後は根性と素の身体能力が物を言う。

 

 ナリタタイシンはシニア級でも屈指のフィジカルでウルサメトゥスをジリジリと引き離していく。ウルサメトゥスも負けじと速度を上げるが、『領域』の効果が既に切れている以上、不利なのは明白だった。

 

 ウルサメトゥスはそのまま引き離され、結果として2バ身差でナリタタイシンが勝利した。

 

「負けたー!!」

 

「ゲホッゲホッ…あーしんどい!! でも勝った!」

 

「あれでも勝てませんか…」

 

「シニア級がクラシック級にそう簡単に負けるわけにはいかないでしょ」

 

「それはそうですけど…これでも結構強化されてるんですけどね」

 

 ウルサメトゥスが微妙そうな表情で言う。マンハッタンカフェとの一件以来、ウルサメトゥスは今までよりも『領域』のコントロールができるようになっていた。たとえば、今までは背後からしかかけられなかった圧力を、横から前からかけられるようになったことがそうだ。

 出力を上げずに強化することができて嬉しい反面、馴染みすぎると体が乗っ取られるかもしれない。ウルサメトゥスが微妙な顔をしているのはその懸念があるからであり、彼女はここ最近毎日マンハッタンカフェのところに寄って状態を確認して貰っていた。

 ウルサメトゥスとしてはマンハッタンカフェに負担をかけていないかが心配だったが、マンハッタンカフェも友人との会話を嬉しそうにしているのでそのうち気にしなくなっていった。

 

「でも、まだあの第二段階は攻略できてないに等しい」

 

 ナリタタイシンは思わず俯いた。

 ウルサメトゥスの『領域』の第二段階、それは首を跳ばす幻覚だ。

 併走を始めてから二週間経つが、未だに勝ちを拾えたのは両手で数えられるほどだ。

 勝った時も復帰が早くなったことによる身体能力のゴリ押しであり、『領域』の効果を受けなくなることが攻略だと考えているナリタタイシンには不満の残る結果だった。

 

「いや、『領域』が効かなくなったら困るのでやめて欲しいんですけど…それに、勝ってるならよく無いですか?」

 

「いい訳ないでしょ。今後ウルみたいに初見殺しの、相手に干渉する『領域』が出てこないとも限らない。受けなくなるに越したことはないんだから」

 

「まぁ、それは確かに」

 

 一定の納得を見せるウルサメトゥス。

 ナリタタイシンはそんな反応には目もくれず考え込んでいた。

 

 

 

 休憩の終わり際、ナリタタイシンはふと思ったことをウルサメトゥスに問う。

 

「『領域』ってさ、心象の具現だって話だけど」

 

「そうですね」

 

「ウルの心象ってヤバくない?」

 

 相手の首を跳ばす心象とは一体なんなのか。

 一体どんな心象を持っていたらそんな物騒な『領域』になるのか。

 ここ二週間の付き合いで、ウルサメトゥスがそんなことを思うウマ娘ではないと確信しているナリタタイシンには、不思議でたまらなかった。

 

「ま、まぁそうですね。ただ、私の場合は色々と特殊なのであんまり参考にしない方がいいかと」

 

 ウルサメトゥスは若干顔を青ざめさせながら答える。

 地雷を踏んでしまったかとナリタタイシンは思ったが、ウルサメトゥスが表情を変えたのは一瞬のことであり、すぐに続きを話し始める。

 

「『領域』は心象の具現です。私見ですが、一番強く思っていることや、印象に残っていることなんかが起点になりやすいんじゃないかと思います」

 

「ウルはどうだった?」

 

 聞いてはいけないかもと思いつつも、結局は好奇心が勝った。

 ウルサメトゥスも気にしていないようで、なんともなさそうに言う。

 

「先ほども言いましたが、私のはちょっと特殊なので参考にはならないかもしれませんが…私の場合は、最()に見えた光景、ですかね」

 

「最後に見えた光景か…」

 

 最後に見えたのが、自分の首を飛ばされる光景。

 

(分からない…)

 

 ウルサメトゥスの謎は深まるばかりだった。

 

 

 

 模擬レースを再開しても、ナリタタイシンの頭には先程のウルサメトゥスの言葉がリフレインしていた。

 

(最後に見えた光景。素直に考えるなら、心の中の邪魔なものを消していって…それで最後に残るものって意味だよね)

 

 ウルサメトゥスが本当に首を飛ばされた記憶があるなど夢にも思わないナリタタイシンは、ウルサメトゥスの話をそう捉えていた。

 

(アタシの心に、最後に残るものってなんだろう)

 

 何度目かも分からない模擬レース、そしてウルサメトゥスの『領域』の中。

 相変わらず襲いくる恐怖の中、『領域』への慣れから発生した余裕でナリタタイシンはそんなことを考えていた。

 

 模擬レースとはいえ、レース中にそんなことを考えていれば隙だらけになる。

 そのせいで第二段階を使われた今日の模擬レースの結果は散々であり、昨日よりも悪くなっていた。

 

 

 

 

 今も、隙を見せるナリタタイシンにウルサメトゥスが容赦無く『領域』の第二段階を使った。

 絶大な恐怖に、思考が吹き飛ぶ。

 

 

(天皇賞・春、大阪杯、有記念)

 

 真後ろの存在が腕を振りかぶる。

 ナリタタイシンの頭に色々なものが浮かんでは瞬時に消えていく。

 

(菊花賞、挫折、ダービー、敗北)

 

 並んだ長大な爪がきらりと光る。

 記憶はどんどん過去のものへと遡っていく。

 

(ハヤヒデ、チケット、トレーナー…皐月賞での勝利)

 

 大きな音をたてながら腕が振われる。そして冷たく鋭い爪がナリタタイシンの首に食い込み…

 

 

(そうか、アタシは)

 

 

 そして原点にたどり着く。

 ナリタタイシンが直前で体勢を深く沈め、爪の一撃をかわした。

 

 

(速く、速く、誰よりも速く走って!)

 

 

 ナリタタイシンを中心に、暗闇が一部だけ塗り替えられる。

 ナリタタイシンの周りだけが、木の生い茂る森へと変わっていた。

 

 

(アタシが本気(マジ)だってことを、アタシをバ鹿にした奴らに思い知らせてやりたかったんだ!!!)

 

 爪で対象を切り裂こうと、影が追いかけてくる。

 しかし、ナリタタイシンはチラリとだけそれを確認し、猛然と走り出した。

 

 

 後ろから迫り来る存在も、目を青く光らせ、力強く走るナリタタイシンには追いつけなかった。

 

 

「ウル、ありがとう」

 

「なっ?!」

 

『領域』から抜け出したナリタタイシンに、ウルサメトゥスは驚愕というこれ以上ない隙を晒した。

 

「おかげで、アタシも原点を思い出したよ」

 

 ナリタタイシンの速度がなんの前触れもなく不自然に上がる。

 

 それは紛れもなく。

 

「これがアタシの『領域』…Nemesisだ」

 

 ウマ娘たちが『領域』と呼ぶものだった。

 

「待って!!」

 

「待たないよ!」

 

 圧倒的な速度を得たナリタタイシンは追い縋るウルサメトゥスを軽々と置き去りにし、4バ身という圧倒的な差をつけて完勝した。

 

 こうしてナリタタイシンはウルサメトゥスとの併走練習を終えた。

『領域』への耐性と、『領域』の習得という大きな戦果を抱えて。

 

 

 




年末はやっぱり有馬でしたね。

私は今のところ推しの子とカフェを入れようと思っています。
あと誰にしようかな…
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