ウマ娘に転生したけど影も踏めなそうな娘と同世代だった件   作:アザミマーン

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いつも応援ありがとうございます。

お気に入りが1000件の大台に乗りそうです…本当に恐縮です。

感想、評価もありがとうございます。誤字報告も助かってます。

今回少し難産でした。あとで後半はばっさりカットするかも。

それではどうぞ。

-追記
後半が気に入らなかったので三人称にして書き直しました。



専属契約締結

 

 

 

「大丈夫ですよ。おそらく、過労でしょう」

 

「ソ、ソウデスカ。ヨカッタデス」

 

「多少すり傷なんかはありましたが、そのくらいです。トレーナー業は体が資本ですからね。トレーナー資格の課程にはウマ娘に蹴られたときの受け身の取り方なんてものもありますし、大抵のトレーナーは頑丈なんです」

 

 そう言ってくれるのはトレセン学園の保健医さんの一人。

 俺が目の前でぶっ倒れた(倒した)トレーナーを保健室まで連れてきて、対応してくれたのがこの人だ。ちなみにウマ娘ではない。

 大丈夫だったか…顎に一発もらったボクサーみたいに膝から崩れ落ちたから心配したんだけど。

 あとはこの人が目が覚めてから土下座するだけだな! 

 

「この中森トレーナーも同様ですが、最近新人トレーナーたちがウマ娘を獲得するために結構残業するケースが増えてましてね。大事な業務ですが、無理はしないで欲しいものです」

 

「そうなんですか…」

 

 やばい、罪悪感が…そんな頑張ってるトレーナーに俺がした仕打ちよ()

 てかやっぱりトレーナー業は過酷なんだな。アプリ版のトレーナーを見てれば多少は分かるが。

 とにかく、今はこの中森トレーナー(?)が起きるまで待ってますか。

 もう今日は授業もないしね。第四レース以降に出るライバルたちの走りが見られないことが、残念といえば残念か。

 

 まぁ、中長距離路線の時点で最大のライバルがブライアンになることは確定してるも同然なんだけどね…

 

 

 

 

「ここは…」

 

「あ、起きましたか? はい、どうぞ」

 

 お、暇すぎて商店街で買ってきた林檎むいてたら起きた。

 ほら、美少女(気絶させた張本人)が切った林檎やぞ。食え。

 状況が掴めていないのか、中森トレーナー(仮)は上体を起こし、素直に受け取って頬張る。

 

「ここは保健室ですよ。保健医さんは今出かけてていませんが…」

 

「あれ…僕は選抜レースを見ていたはずだが…」

 

「それなんですが…本当にごめんなさい! 許してください!」

 

 初手土下座だぁ! 

 さぁ許せ! いや許してください! 

 ここでトレーナーを気絶させたなんて噂を広められたら、俺の選手生命は始まる前から終わっちまうんだよォ!! 

 危害を加える固有を自在に使えるなんてことが分かったら、最悪、退学になってしまう! 

 

 中森トレーナー(仮)は俺の全力謝罪に何故か困惑している。

 いや、キミを気絶させたの俺だからね? 

 

「と、とりあえず頭を上げてくれ。キミみたいな小さい娘を土下座させてるなんて、他の人に見られたらどうなるか…」

 

「いやでも、あなたを気絶させたのは私ですし…」

 

「…そうだ。僕は第三レースが終わった後、キミに声を掛けようとして…突然、何か恐ろしいものを見た、ような気がする」

 

 あれ、もしかして俺がやったって気づいてなかった? 

 墓穴掘った? 自白しちゃった?? 

 

 い、いやいやいや! 正直に言った方が後でバレるより結果的にダメージが少ない! 

 どうせ今後はレースで使ってくわけだし、見れば分かっちゃうことだしな!! 

 

「…それ、私のせいです。実は、私にはちょっと不思議な能力がありまして…」

 

 かくかくしかじか。

 他人に改めて話すとやっぱ俺の固有ヤベーな。

 全力ぶっぱしたら人を気絶させるレベルとか。

 

「…なるほど。そういえば、先輩から少しだけ存在を聞いたことがある。それに至ったウマ娘は、レース中、突然説明できない加速をしたり、息を入れてもいないのにスタミナを回復することがあると」

 

「あ、多分それです」

 

「それは、『領域』と言うらしい。でも、キミのようなデビュー前のウマ娘が使えるだなんて、有り得るのか? いや、有り得るのか。なんせ、キミという実例がいるんだからな」

 

 中森トレーナー(仮)は手を顎に添えて少し考えた後、俺を見て頷く。

 へー、『領域』って言うのか。

 かっこいい言い方だな! 今度からそっちの呼び方を採用しよう。

 

 しかし、やっぱデビュー前から使えるのはいないんかな。

 シンボリルドルフ会長とかマルゼンスキー先輩とかならデビュー前から使ってたとしても驚かんがな。

 って、今はそんなことより許してもらうのが先決だ。

 中森トレーナー(仮)も怒ってるのか、黙り込んじゃったし。

 

「その、私もヒト相手には使わないって決めてたんですけど、驚いた拍子に使っちゃって…わざとじゃないんです! 許せないのは当然だと思いますが、何卒、ご容赦いただけませんか?!」

 

「ああ、怒ってるわけじゃないよ。というか、そんな難しい言葉よく知ってるね。いや、そんなことはどうだっていいんだ」

 

 重要じゃない、と中森トレーナー(仮)は首を振る。

 そして、体だけ起こした状態からベッドの縁に座る体勢になり、俺に手のひらを差し出す。

 何この手。お金? カツアゲなの? 

 それは勘弁してくれないかな…

 

「改めまして、僕は中森と言う。キミは、ウルサメトゥスだったよね?」

 

「は、はい」

 

「単刀直入に言う。僕と専属契約を結んでくれないか?」

 

「お金は勘弁して…え?」

 

 え? 

 俺と? 

 専属契約?? 

 

「専属契約って、あの、私をあなたのパートナーウマ娘として、トゥインクルシリーズを一緒に走りたいってことですか?」

 

「そうだ」

 

 まぁぁぁぁじでぇぇぇ??!! 

 

 やった! やった!! 

 大逆転勝利じゃね?! 

 何? 一体何が中森トレーナーを駆り立てたの?? 

 

 俺に本気の『領域』をぶつけられてキュンってきちゃったの?! 

 

 それ吊橋効果ってやつだと思うよ! 大丈夫?! 

 でも言わんでおこ。

 勘違いしてくれてるかもしれんしね? 

 

「あのレースには初めから何かを感じていたけど…多分、それはキミが違和感を感じさせていたからなのだろう。はっきり言って、キミの走りに惚れたんだ。どうか僕と一緒にトゥインクルシリーズをかけ抜けてほしい」

 

「はわわわ…」

 

 ヤベぇ、両親のときもそうだったけど、やっぱはっきり言われると照れるね。

 いや元男だから惚れないが??? 

 今も女の子のほうが好きだが? 

 

 でも、契約の話は素直に嬉しい。

 あんなに注目の集まらないレースで、それでも俺をきちんと見てくれたってことだろ? 

 こんなの、契約するしかないでしょ! 

 

「わ、私でよければ、よろしくお願い致します…!!」

 

「よろしくお願いします。この手を取ってくれて、本当嬉しいよ」

 

 え、こんなに簡単にトレーナーゲットしていいの? 

 トレセン学園で専属契約できるなんて一部のエリートだけだと思ってたよ。

 よっしゃーこれでまず第一関門クリアだ! 

 待っててねお父さんお母さん! ウルは立派にお金を稼いでみせます! 

 いや、もう一回確認しとこう。

 

「本当にいいんですか? 私は、領域だけで他人を気絶させる危険人物ですよ?」

 

「キミはそれを分かっていながら、それでも理性で抑えつけられるのだろう? そうでなければ、レース出走者を全員病院送りにしてでも勝ちを狙っていたはずだ。それをしない時点でキミは十分優しい、スポーツマンシップにあふれたいい娘だよ」

 

 はわわわ…

 

 ────────────

 

 

 中森が目を覚ますと、そこは見慣れた自室の天井とは明らかに違う場所だった。

 

(ここは…保健室か?)

 

 見慣れてはいなかったが、見覚えはあった。

 以前サブトレーナー時代に登校中のウマ娘に撥ねられた時も、ここで目覚めた記憶がある。

 

「あ、起きましたか?」

 

 声のした方を向くと、果物ナイフで林檎をむいている小柄な青鹿毛のウマ娘と目が合った。

 

「はい、どうぞ」

 

 青鹿毛のウマ娘は、四等分に切った林檎を渡してきた。

 中森は状況が掴めなかったが、食べ物を認識すると急に腹が減ってきた。

 素直にそれを受け取って齧ると、旬が過ぎているのか少し酸っぱい。しかし逆にそれがぼんやりしていた脳を起こす手伝いをした。

 中森は寝ていたベッドから体だけ起こし、目の前のウマ娘を見据える。

 

 かなり小柄で、座っているが立ち上がっても身長は150cmもないだろう。

 青鹿毛に揉み上げだけ茶色のメッシュ。

 透き通るような碧眼。

 

(最近どこかで見たことがある…か?)

 

「ここは保健室ですよ。保健医さんは今出かけてていませんが…」

 

 中森の考えは当たっていたようだ。

 保健医は呼び出されることも多いため、そのことに疑問はない。

 ただ、目の前のウマ娘が看病じみたことをしている理由には繋がらなかった。

 

「あれ…僕は選抜レースを見ていたはずだが…」

 

 どうにも怪しい中森の記憶が正しければ、今日は中距離の選抜レースが開催されていたはずである。

 中森もトレーナーの例に漏れず、有望なウマ娘をスカウトしに選抜レースを見に来た。そこまでは覚えていた。

 それがどうして保健室にいるのか、その記憶がはっきりしなかった。

 

「それなんですが…本当にごめんなさい! 許してください!」

 

 突然、目の前のウマ娘が中森に対して土下座する。

 理由は不明だが、中森に対して若干怯えているようにも見える。

 

「と、とりあえず頭を上げてくれ。キミみたいな小さい娘を土下座させてるなんて、他の人に見られたらどうなるか…」

 

「いやでも、あなたを気絶させたのは私ですし…」

 

「…そうだ。僕は第三レースが終わった後、キミに声を掛けようとして…突然、何か恐ろしいものを見た、ような気がする」

 

 中森は思い出す。

 

 あの時。

 他のトレーナーに取られないうちにと、真っ先にかけ足…もはや全力疾走とも言うべき勢いでこのウマ娘に声を掛け…

 

 感じた殺気

 重苦しいプレッシャー

 異常な鼓動を発する心臓

 

 それらが最高潮に達し、腕が振り下ろされ…

 

 中森は思わず首に手を添えた。まだ首は繋がっている。

 

(あれが幻覚だったというのか? 真に迫り過ぎているだろう。僕は首から血を噴き出して崩れる自分の体をはっきりと認識した)

 

「…それ、私のせいです。実は、私にはちょっと不思議な能力がありまして…」

 

 青鹿毛のウマ娘…名前がウルサメトゥスだったということも中森は思い出す。

 ウルサメトゥスは椅子に座り直し、少し俯いて話し始めた。

 

「私は…以前から、恐ろしい夢を見ることがあります。それは、何か大きくて茶色の恐ろしいものに夜通し襲われ続けるというものです。そして、最期は必ず、そのモノの鋭い爪によって首を切り裂かれ…くるくると回る視界の中、大量の血を首から噴き出す自分の体を見る。そこで目が覚めます」

 

「それは、僕が見たのと同じ…」

 

「はい。そして私はいつからか、その幻覚を他の人にも鮮明に見せることができるようになってしまったのです」

 

 ウルサメトゥスはその力をレースで使えないか試行錯誤したと話す。

 

「危険だとは思いました。この力は一歩間違えば、レース中のウマ娘を…こ、殺してしまうかもしれない。でも、使わないという選択肢はなかった。私にはどうしても叶えたいことがある。そのためには、この暴れウマとも言える力を使いこなさなければ、きっと叶えられない」

 

「そこまでして、キミは何をしたいんだい?」

 

「それは…いえ、これは私の願いなので…」

 

「いや、無神経だった。出会ったばかりのウマ娘に聞くことではなかったね」

 

 中森はかぶりを振って訂正した。

 担当でもないウマ娘から無理に話を聞くなど、マナー違反どころの話ではない。

 

 ウルサメトゥスは数年の試行錯誤の後、その力を使いこなせるようになったと語る。

 中森は、おそらくその力が『領域』と呼ばれるものだと当たりをつけた。

 それに関しては、中森もサブトレーナー時代に先輩から少し聞いただけだ。

 

『ウマ娘がレース中に不可解な挙動をとることがある。それは、『領域』と呼ばれるものをウマ娘が使っているから、らしい』

 

 中森の指導を担当していた顔の厳つい先輩は、神妙にそう話していた。

 それをウルサメトゥスに伝えると、納得したような表情になった。

 

「でも、キミのようなデビュー前のウマ娘が使えるだなんて、有り得るのか? いや、有り得るのか。なんせ、キミという実例がいるんだからな」

 

 『領域』を使っているウマ娘など、トレーナー歴一年の中森は見たことすらない。

 それでも中森がはっきりと感じたのは、このウマ娘が相当な逸材であるということだ。

 

(聞いた限りでは『領域』は上位の、それも天才と呼ばれるような一握りのウマ娘たちが使えるらしい。それをこの娘は、ジュニア級どころかデビュー前で扱え、しかも出力すら自在だという)

 

 中森には既に分かっていた。

 自分がスカウトしようとしたこのウマ娘が天才と呼ばれる部類であり、次世代の中心になりうる逸材だということが。

 

(よしんば僕の話を受けてくれたとして、僕の手に余るんじゃないか? 他の敏腕トレーナーの方が、この娘の才能を伸ばしてあげられるのではないか?)

 

 中森が無言でそんなことを考えていると、ウルサメトゥスが必死になって訴えかけてきた。

 

「その、私も一般人相手には使わないって決めてたんですけど、驚いた拍子に使っちゃって…わざとじゃないんです! 許せないのは当然だと思いますが、何卒、ご容赦いただけませんか?!」

 

 謝らせたいわけではないと、中森は思う。

 未来あるウマ娘にそんな表情をさせてしまったことに対し、中森は罪悪感を抱いた。

 

「ああ、怒ってるわけじゃないよ。というか、そんな難しい言葉よく知ってるね。いや、そんなことはどうだっていいんだ」

 

 そんなどうでもいいことに思考を割いている場合ではなかった。

 新人とはいえ、中森もトレーナーである。

 逸材を前に挑戦もせず諦めでもしたら、なんのために中央のトレーナーになったか分からなくなってしまう。

 中森は覚悟を決めた。

 

「改めまして、僕は中森と言う。キミは、ウルサメトゥスだったよね?」

 

「は、はい」

 

「単刀直入に言う。僕と専属契約を結んでくれないか?」

 

「お金は勘弁して…え?」

 

 先輩のようにカツアゲを行いそうなほど怖い容姿に見えたのだろうかと、中森は若干心にダメージを受けた。

 

「専属契約って、あの、私をあなたのパートナーウマ娘として、トゥインクルシリーズを一緒に走りたいってことですか?」

 

「そうだ」

 

 中森は伝わっているのか懸念したが、どうやらしっかり伝わっていたらしい。

 多少の混乱は見られるが、中森はここぞとばかりに畳み掛けることにした。

 

「あのレースには初めから何かを感じていたけど…多分、それはキミが違和感を感じさせていたからなのだろう。はっきり言って、キミの走りに惚れたんだ。どうか僕と一緒にトゥインクルシリーズをかけ抜けてほしい」

 

 思いを全て吐き出すように伝える。

 口がうまくないことを自覚している中森には、これ以上の言葉が出てこない。

 中森は祈るように返事を待った。

 

「わ、私でよければ、よろしくお願い致します…!!」

 

「よろしくお願いします。この手を取ってくれて、本当嬉しいよ」

 

 中森は安堵で息を吐く。

 これまでにも何度かスカウトしては断られてきた中森だったが、ここまで緊張するスカウトは初めてだった。

 

(きっとキミなら、どんなトレーナーも選び放題のはずだ。今は僕しか気づいていないのかもしれないが、近い将来、キミの凄さに皆気づく時が来るだろう)

 

 目の前で顔色を忙しく変化させながらあたふたするウルサメトゥスを見て中森は思う。

 しかし、だからこそ目の前のウマ娘が、中森を選んでよかったと言えるよう、できることはなんでもやると誓う。

 

 

 この小さなウマ娘が作り出す、伝説の見届け人として。

 

 

 




ようやくトレーナーがついた…

あ、鬼ゴルシモードクリアしました。推しの子で。

(ブライアンではないです。いやブライアンも推しだけど)
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