花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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小学校の運動会って何したっけ…?


第13話 運動会と夏の終わり

 朝6時。起床し、隣で眠る千景の穏やかな寝顔を見てほっこりしてから顔を洗う。

 炊飯器を確認すれば、昨日の夜に予約しておいたので既に米は炊けている。

 場所取りは誠司さんがやってくれるとの事で、その分空いた時間を弁当と朝食作りに回すことができる。

 今日は、運動会である。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい、頑張ってね!」

 

 千景を見送り、僕も家を出る準備をする。弁当は既に完成している。水筒に氷とお茶を入れながら、リビングから聞こえてくる天気予報に耳を傾ける。今日は一日中快晴のようだ。

 

 スマートフォンのSDカードと三脚も持った。これでいくらでも写真と動画を撮ることができる。せっかくだから、若葉とひなたも撮りたい。

 

 そろそろ楓さん達との集合時間になることに気づき、僕は足早に小学校へ向かった。

 

 ──────────

 

「次は2年生の50m走か」

 

「若葉ちゃんとひなたが出ますね」

 

「カメラの準備だ」

 

 誠司さんが取ってくれていた場所は、そこからでも運動場がしっかりと見えるとても良い場所だった。

 僕と誠司さんと伊織さんがそれぞれ横並びに各々の三脚を立てる。

 

 少ししてから2年生が入場し、50m走が始まった。前半は男子で後半は女子である。

 

 しばらくして、ひなたの番が来た。

 

「ひなたぁぁぁ!!」

 

「!?」

 

「頑張ってー!」

 

 伊織さんが今までで一番大きな声を出して驚いてしまつた。

 まあ、おそらく数時間後の僕もこんな感じになるのだろう。

 

 そしてピストルが鳴り、ひなたを含む5人の女の子達が走り出す。

 必死に腕を振ってはいたが、結果は4着となった。ただ、とても可愛かった。

 

 そして今度は若葉の番がやってくる。

 

「若葉ぁぁぁ!!」

 

「!?」

 

「あはは…」

 

 今度は誠司さんが叫ぶ。隣で急に叫ばれるとさすがに驚く。楓さんが少し苦笑いしていた。

 おそらく誠司さんも伊織さんも僕も、似たような親バカなのだろう。

 

 若葉達が走り出す。そしてまた僕は驚いた。

 若葉は50m走で20m近く差をつけて1着となった。圧倒的である。

 

「…えげつないな、若葉」

 

「去年もあんな感じでしたね」

 

「そうだったな」

 

 去年のことを思い出す琴音さんと楓さん。去年もあんな風に圧倒的だったのか。想像に難くない。

 

 

 

 しばらくして、今度は3年生の100m走が始まった。

 そして千景の番が来る。

 

「千景ぇぇぇ!!頑張ってぇぇ!!」

 

「「!?」」

 

「何を驚いている。さっきのお前達もこんな感じだったぞ」

 

「「え」」

 

 さすがに僕の声が大きすぎたのか、声に気づいた様子の千景が少し苦笑いしていた。

 

 そしてポニーテールにした黒い髪を靡かせて走り、結果は3着であった。

 結構インドアな子だから、上出来である。後で褒めてあげたい。

 

 ──────────

 

 午前の競技が終わり、れんちゃんが迎えに来てくれるのを待つ。私はどこにレジャーシートがあるのかわからない。

 

「千景、おまたせ」

 

 迎えに来てくれたれんちゃんについて行きレジャーシートに辿り着くと、既に若葉とひなたも集まっていた。

 

「さあ千景、弁当沢山作ったから好きなだけ食べてくれ」

 

 れんちゃんが大きな弁当箱を開けると、明らかに2人分ではないような量のおにぎりとおかずが入っていた。

 

「……さすがに多い」

 

「ちょっと作りすぎちゃった」

 

「わたしもちょっと食べていいですか?」

 

「わたしも食べたい」

 

 一緒に弁当を食べてくれるというひなたと若葉。

 

「私も食べたい!」

 

 自分で自分の弁当を作っているはずの楓さんも食いついていた。

 

 まあ残れば夜にでも食べればいいと思いつつ、弁当を食べ始める。

 

「…おいしい」

 

 感想を漏らした瞬間、れんちゃんにスマホのカメラを向けられる。

 

「なんで今?」

 

「可愛い笑顔になってたから」

 

 思っていた以上に顔に出ていたらしい。

 

「うまい!」

 

「これも美味いぞ!」

 

 れんちゃんの弁当を食べた乃木母娘が目を輝かせている。それにつられて父親達も気になっているようだ。

 

「いっぱいあるからどうぞ」

 

「頂きます」

 

 そしてれんちゃんの弁当を食べた誠司さん達も笑顔になる。

 美味しい料理は自然と人を笑顔にできるのだと、改めて実感する。

 

 そうして皆で弁当を食べた結果、沢山あったれんちゃんの弁当が残ることはなかった。

 

 

 ──────────

 

「そういえば千景、100m走の時僕の声聞こえてた?」

 

 弁当を食べ終えてのんびりしている時、ふと思ったので聞いてみた。

 

 関係ないが、なぜか若葉が僕の脚の間に座っている。

 若葉が座ってきた時、誠司さんが無言でショックを受けていた。僕はそっと目を逸らした。

 

「聞こえた。さすがにはずかしかった」

 

「それはごめんよ」

 

 少し反省するのだった。

 

「そういえば、門のところでアイスを売ってましたね」

 

「食べたいです」

 

「わたしも食べたい」

 

 琴音さんの言葉にひなたと若葉が食いつく。さっき弁当を食べたところだが、デザートは別腹らしい。

 

「千景も食べる?」

 

「食べる」

 

「じゃあ皆で買いに行こうか」

 

 子供達を連れて立ち上がる。

 

「お金は後で渡しますね」

 

「うん」

 

 同じようにアイスを買う親子は多く、門の回りにはそれなりに人が集まっていた。

 

 少し列に並んでアイスを買う。

 夏の終わりのよく晴れた日に、冷たいアイスは身体によく染み渡るのだった。

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