花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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第14話 家族の形

「二人は冬休みは何か予定あるの?」

 

 12月、冬の寒さに冷える教室で、ふとそんな事を凜ちゃんに聞かれた。

 

 秋?そんなものはあっという間に過ぎ去った。1年を四季で分けると、一つの季節がだいたい3ヶ月くらいあるはずだが、実際は9月末くらいまではまだ暑く、11月半ばくらいからはもう冬の寒さがやってくる。なので秋は1ヶ月ちょっとくらいしかない、ように感じる。

 

「わたしは今のところないかな」

 

「うちは家族で旅行に行くの」

 

「どこに行くの?」

 

「……忘れたわ」

 

 美琴ちゃんは旅行に行くらしい。私は家族で旅行をしたことは無いが、きっと楽しいのだろう。

 

「楽しんできてね、美琴ちゃん」

 

「もちろん」

 

 笑顔でサムズアップする美琴ちゃん。その笑顔はいつも自信に満ちており、周りに安心感を与えてくれる。

 

「それと千景」

 

「何?」

 

「いい加減ちゃん付けはやめて。呼び捨てでいいって最初に言ってからもう3ヶ月よ」

 

 そういえばそうだった。いきなり呼び捨てにするのも気が引けてちゃん付けから始めたが、それに慣れて忘れていた。

 

「わたしの事もね」

 

「そうね、じゃあ…美琴と凜」

 

「うむ、くるしゅうない」

 

「…フフッ」

 

 急におかしくなる美琴の口調に、私と凜が思わず笑い出す。そんな平和な学校生活を過ごしている。

 

 ──────────

 

「…なんて話をしたの」

 

「へぇー、美琴ちゃんは家族で旅行か」

 

 夕食を食べ終え、れんちゃんと一緒にゲームをしている時に、今日あった事を話す。

 

「そういえばれんちゃん」

 

「何?」

 

「初めて美琴に会った時、弥勒って苗字に反応してなかった?」

 

 参観日で初めて会って名前を聞いた時、ぼそっと呟いていたような気がする。

 

「ああ、それか。昔の知り合いに同じ苗字の人がいたんだ」

 

「でも弥勒って苗字は多くないと思うけど」

 

「だからちょっと気になったんだ」

 

 そうだったのか。確かに、珍しい苗字で知り合いがいれば、関係を疑ったりもするだろう。

 

「美琴の親とかがれんちゃんの知り合いだったり?」

 

「いや、それはないと思う。歳が合わない」

 

「ふーん」

 

 話しがらも私達のゲームを操作する手は違わない。話すくらいで気が散ってミスをするような熟練度ではない。

 

「ああ、そういえば千景」

 

「何?」

 

「冬休みに北海道に旅行しようと思うんだけど」

 

「…え?あ」

 

 唐突にそんな事を言われて驚き、操作する手がブレる。

 

「あ、ゲームオーバー」

 

 画面に表示されるGAME OVERの文字。ではなく。

 

「…北海道?」

 

「北海道」

 

 聞き間違いかと思い復唱したが、間違いではなかった。

 

「どう?」

 

「…行ってみたいとは思うけど、なんで冬に?すごく寒いのに」

 

「北海道の雪ってサラサラしてるっていうか、他の場所とは質感が違うんだ。だから雪山で遊ぼうかと思って」

 

 そういえばパウダースノーというのを聞いたことがある。

 

「行ってみない?」

 

「…行く」

 

「よし」

 

 こうして、我が家も旅行に行くことが決定したのだった。

 

 ──────────

 

「北海道!いいですね!」

 

 数日後の昼、乃木家で冬休みの話をしていた。昼に乃木家にいることについては、学期末で給食が無く、午前で授業が終わるからである。

 

「いつ行くんだ?」

 

「年末。お正月は家でゆっくりしたいし」

 

 冬休みの話となると、やはり私は旅行の話が出てくる。初めての家族旅行である。

 

「北海道と言えば、白い恋人とか白いブラックサンダーとか美味しいわね〜」

 

「そうだな。札幌ラーメンとかも良い」

 

 琴音さんと楓さんは北海道に行ったことがあるのか、思い出に耽るように話す。

 

「白い、ブラックサンダー?」

 

「ブラックサンダーのホワイトチョコ版が売ってるんだ」

 

「なるほど」

 

 名前をホワイトサンダーではなく白いブラックサンダーで売り出した辺りにセンスを感じる。

 

「おもしろいですね」

 

「見つけたら買ってくるね」

 

 旅行の楽しみがまた1つ増えた。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 夕方になり、れんちゃんが迎えに来てくれた。その体は外気の寒さで冷えている。

 

「おかえりなさい」

 

「温かいお茶とコーヒーどっちがいい?」

 

「じゃあコーヒーで」

 

「わかった」

 

 そう言って楓さんが台所へ消えてゆく。

 

「北海道に旅行するんですね」

 

「ああ。お土産買ってくるね」

 

 れんちゃんに寄っていくひなた、その頭を撫でるれんちゃん。れんちゃんは髪を撫でるのが上手いのか、優しく撫でて髪型を崩さない。

 

「ほら、コーヒーだ」

 

「ありがとう…」

 

 湯気が立つマグカップを持った楓が戻ってきて、れんちゃんに手渡す。

 

「そうだ、ちーちゃん、れんちゃん」

 

「「何?」」

 

「一緒にクリスマスパーティーしませんか?」

 

 そう提案するひなた。クリスマスパーティー、存在は知っているが、具体的に何をするのかはわからない。

 

「ああ、いいね。やろうか」

 

「うん」

 

 まあ楽しそうなので賛成しておこう。

 

「具体的には何するの?」

 

 今私が知りたいことをれんちゃんが聞いてくれる。れんちゃんもわからないのだろうか。

 

「ごちそうを食べて、遊んで、プレゼント交換とかも考えてます」

 

「なるほど。料理は僕も手伝うよ」

 

「ああ、頼む」

 

 特に難しいことはなく、ただ集まって騒ぐ、といった感じだろうか。

 

「では、クリスマスイブにうちに来てくれ」

 

「わかった」

 

 こうして、冬休みの楽しみがさらに1つ増えたのだった。

 

 ──────────

 

「プレゼント交換って何を用意すればいいのかな」

 

「若葉かひなたか、どっちに渡っても喜んでもらえそうな物がいいと思うよ」

 

 その日の夜、風呂でクリスマスパーティーについて話していた。

 風呂は良い。冬でも、ここでなら寒さを気にしなくて済む。

 

「あ、そうだ千景」

 

「何?」

 

 れんちゃんがふと思いついたように話し出す。

 

「クリスマスプレゼントでサンタさんにお願いしたい物はある?」

 

 私がクリスマスプレゼントに欲しい物を知りたいらしい。しかし…。

 

「わたし、サンタがいないの知ってるよ」

 

「え?あ、そうなんだ」

 

 前の家にそんなものはなかった。

 しかし、今年からはれんちゃんがプレゼントをくれるらしい。私が今一番欲しい物は…。

 

「…れんちゃんのエプロンがほしい」

 

「え?僕のエプロン?」

 

 れんちゃんがキッチンで料理をする時、いつも着けている黒いエプロン。

 

「新しいの買おうか?」

 

「ううん、れんちゃんが使ってるのがいいの」

 

 私が料理を教えてもらい始めた時、れんちゃんは私にエプロンを買ってくれた。それは勿論大事な物である。

しかし私は、いつかれんちゃんのエプロンを着けて料理をしたいと思っていた。

 

「…そうか、まああれでいいならプレゼントするよ」

 

「…ありがとう」

 

「となると、僕のエプロンを買いにいかないと」

 

「それは、わたしがプレゼントするから」

 

「え?」

 

 私がれんちゃんのエプロンを貰ってしまうと、当然れんちゃんが使うエプロンが無くなってしまう。

 だから私がれんちゃんに、クリスマスプレゼントとしてエプロンを贈りたい。

 

「じゃあ、今度選んでもらおうかな」

 

「うん!」

 

 私の考えを笑って受け入れてくれるれんちゃん。

 クリスマスにプレゼントを贈り合う親子はあまりいないと思うけれど、これも私達の関係性、家族の形だと思うのだ。




 目指す家族の形は、一方的に支えられ養われる関係ではなく、互いに支え合える対等な関係。
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