花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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今回はちょっと短めです。


第18話 寒空の下の温かさ

 12月31日。今日は大晦日である。

 そんな日に、私はれんちゃんから貰ったエプロンを着けて1人キッチンに立ち、クッキーの生地を形作っていた。

 

「むむ…」

 

 できるだけ綺麗な円形を目指す。

 初めて1人で料理をするということで、簡単なクッキーを作り、れんちゃんに食べてもらおうと思ったのだ。

 食べてもらうのだから、見た目も綺麗なほうがいい。

 

 クッキーを作るのは大して難しいことはなく、バターや卵、砂糖、薄力粉などを混ぜた後、形を作って焼くだけである。

 

 一通り形ができたら、オーブンの鉄板にオーブンシートを敷き、生地を並べていく。そして15分ほど焼く。

 

「できた?」

 

「うん、多分大丈夫」

 

 後は焼きあがるのを待つだけである。

 

 

 

 

 焼きあがったクッキーを皿に乗せ、リビングのテーブルに運ぶ。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 れんちゃんがクッキーに手を伸ばし、口に入れて咀嚼する。

 

「……どう?」

 

 緊張しながら、クッキーを飲み込んだれんちゃんの言葉を待つ。

 

「…うん、美味しい!」

 

「本当に?」

 

「本当だよ」

 

「よかった…」

 

 私の作ったクッキーを食べたれんちゃんの笑顔に安堵する。

 

「一緒に食べよう」

 

「うん」

 

 れんちゃんの隣に座り、私もクッキーを口に入れる。その味はちゃんと美味しくできていた。

 

 今後も時々何か作ろう。少しずつ難しい料理に挑戦して、いつかれんちゃんの夕食を作ってあげよう。

 仕事で疲れて帰ってくるれんちゃんの代わりに、私が2人の夕食を作れるようになりたい。それを今後の目標とするのだった。

 

 ──────────

 

 翌日、元旦。

 

「あけましておめでとう、千景」

 

「あ、あけましておめでとう」

 

 新年の挨拶をしてから顔を洗いに洗面所へ向かう千景。その間に僕は朝食を運ぶ。

 

 そして朝食を終え、僕はポチ袋を用意する。

 

「はい、お年玉」

 

「…ありがとう、れんちゃん。初めてお年玉もらった」

 

 お年玉を受け取って笑顔になる千景。毎日あげたいくらいである。

 

「それじゃあ今から初詣に行こうか」

 

「うん。前に買った着物を着るの?」

 

「ああ、着付け手伝ってあげる」

 

 事前に用意しておいた晴れ着を出し、千景が着替え始める。

 着替え終えた千景を見て、僕は無言で悶絶しながらカメラを連写するのだった。

 

 

 

「やっぱり正月の神社は人が多いな」

 

 神社に着くと、道に沿うように並ぶ屋台と大勢の参拝客でとても賑わっていた。

 一度はぐれると見つけるのが大変そうである。しかし僕達は家からずっと手を繋いでいるので、はぐれる心配は無い。

 

「後で屋台回ろうか。何食べたい?」

 

「ベビーカステラとかクレープとか」

 

「よし、全部食べよう」

 

 参拝の列は長蛇だが、2人で話していればあっという間に順番は来る。

 

 賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼をする。

 

「れんちゃんは何をおねがいしたの?」

 

「千景の健康と幸せだよ。千景は何をお願いしたの?」

 

「……ないしょ」

 

「内緒かぁ」

 

 気にはなるが、言いたくないなら無理には聞かないでおこう。

 屋台を回り、千景の食べたがったものを片っ端から買っていく。

 

「おいひい」

 

 ハムスターのようにほっぺを膨らませてクレープを頬張る千景は、この世のものとは思えない可愛さをしていた。当然写真は撮った。帰ったら現像して額に入れてリビングに飾ろう。

 

「あ!ちーちゃんとれんちゃん!」

 

「ん?」

 

 声のした方へ振り返ると、晴れ着を着た若葉とひなたが駆け寄ってきていた。

 

「草履で走ると危ないよっと」

 

「わっ、ありがとうございます」

 

 話している間に転びかけたひなたを受け止める。

 

「「あけましておめでとうございます!」」

 

「今年も千景共々よろしくね」

 

「はい!」

 

「こちらこそ」

 

 2人の後ろから歩いてくる乃木家と上里家の皆。珍しくおばあちゃんも一緒である。

 

 それにしても、やはり2人とも着物がとても似合う。

 

「千景、2人と並んで。写真撮ろう」

 

「うん」

 

 3人並んだところを写真に収める。これも帰ったら現像しよう。

 

「もう参拝は済んだのか?」

 

「ああ、したよ。それから千景と屋台を回ってる」

 

 楓さんに手に提げた袋を見せる。中には屋台で買った色々な食べ物が入っている。千景と食べ歩いているので、少しずつ減っていっているが。

 

「わたしもクレープ食べたいです!」

 

「先にお参りしてからな」

 

 伊織さんがひなたの頭を撫で、手を引いて参拝の列に並びに行く。

 

「じゃあ私達も参拝してきますね」

 

「行ってらっしゃい」

 

 琴音さんと乃木家の皆も参拝の列に並びに行くのを見送り、千景に向き直る。

 

「皆のお参りが終わるまで待つ?」

 

「うん」

 

 そして待っている間、また屋台を回るのだった。

 寒空の下、握る千景の手は温かく、寒さなんて感じなかった。




誠司さん
 北海道のお土産の白い恋人は食べたが、白いブラックサンダーもあったことは知らない。
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