12月31日。今日は大晦日である。
そんな日に、私はれんちゃんから貰ったエプロンを着けて1人キッチンに立ち、クッキーの生地を形作っていた。
「むむ…」
できるだけ綺麗な円形を目指す。
初めて1人で料理をするということで、簡単なクッキーを作り、れんちゃんに食べてもらおうと思ったのだ。
食べてもらうのだから、見た目も綺麗なほうがいい。
クッキーを作るのは大して難しいことはなく、バターや卵、砂糖、薄力粉などを混ぜた後、形を作って焼くだけである。
一通り形ができたら、オーブンの鉄板にオーブンシートを敷き、生地を並べていく。そして15分ほど焼く。
「できた?」
「うん、多分大丈夫」
後は焼きあがるのを待つだけである。
焼きあがったクッキーを皿に乗せ、リビングのテーブルに運ぶ。
「どうぞ」
「ありがとう」
れんちゃんがクッキーに手を伸ばし、口に入れて咀嚼する。
「……どう?」
緊張しながら、クッキーを飲み込んだれんちゃんの言葉を待つ。
「…うん、美味しい!」
「本当に?」
「本当だよ」
「よかった…」
私の作ったクッキーを食べたれんちゃんの笑顔に安堵する。
「一緒に食べよう」
「うん」
れんちゃんの隣に座り、私もクッキーを口に入れる。その味はちゃんと美味しくできていた。
今後も時々何か作ろう。少しずつ難しい料理に挑戦して、いつかれんちゃんの夕食を作ってあげよう。
仕事で疲れて帰ってくるれんちゃんの代わりに、私が2人の夕食を作れるようになりたい。それを今後の目標とするのだった。
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翌日、元旦。
「あけましておめでとう、千景」
「あ、あけましておめでとう」
新年の挨拶をしてから顔を洗いに洗面所へ向かう千景。その間に僕は朝食を運ぶ。
そして朝食を終え、僕はポチ袋を用意する。
「はい、お年玉」
「…ありがとう、れんちゃん。初めてお年玉もらった」
お年玉を受け取って笑顔になる千景。毎日あげたいくらいである。
「それじゃあ今から初詣に行こうか」
「うん。前に買った着物を着るの?」
「ああ、着付け手伝ってあげる」
事前に用意しておいた晴れ着を出し、千景が着替え始める。
着替え終えた千景を見て、僕は無言で悶絶しながらカメラを連写するのだった。
「やっぱり正月の神社は人が多いな」
神社に着くと、道に沿うように並ぶ屋台と大勢の参拝客でとても賑わっていた。
一度はぐれると見つけるのが大変そうである。しかし僕達は家からずっと手を繋いでいるので、はぐれる心配は無い。
「後で屋台回ろうか。何食べたい?」
「ベビーカステラとかクレープとか」
「よし、全部食べよう」
参拝の列は長蛇だが、2人で話していればあっという間に順番は来る。
賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼をする。
「れんちゃんは何をおねがいしたの?」
「千景の健康と幸せだよ。千景は何をお願いしたの?」
「……ないしょ」
「内緒かぁ」
気にはなるが、言いたくないなら無理には聞かないでおこう。
屋台を回り、千景の食べたがったものを片っ端から買っていく。
「おいひい」
ハムスターのようにほっぺを膨らませてクレープを頬張る千景は、この世のものとは思えない可愛さをしていた。当然写真は撮った。帰ったら現像して額に入れてリビングに飾ろう。
「あ!ちーちゃんとれんちゃん!」
「ん?」
声のした方へ振り返ると、晴れ着を着た若葉とひなたが駆け寄ってきていた。
「草履で走ると危ないよっと」
「わっ、ありがとうございます」
話している間に転びかけたひなたを受け止める。
「「あけましておめでとうございます!」」
「今年も千景共々よろしくね」
「はい!」
「こちらこそ」
2人の後ろから歩いてくる乃木家と上里家の皆。珍しくおばあちゃんも一緒である。
それにしても、やはり2人とも着物がとても似合う。
「千景、2人と並んで。写真撮ろう」
「うん」
3人並んだところを写真に収める。これも帰ったら現像しよう。
「もう参拝は済んだのか?」
「ああ、したよ。それから千景と屋台を回ってる」
楓さんに手に提げた袋を見せる。中には屋台で買った色々な食べ物が入っている。千景と食べ歩いているので、少しずつ減っていっているが。
「わたしもクレープ食べたいです!」
「先にお参りしてからな」
伊織さんがひなたの頭を撫で、手を引いて参拝の列に並びに行く。
「じゃあ私達も参拝してきますね」
「行ってらっしゃい」
琴音さんと乃木家の皆も参拝の列に並びに行くのを見送り、千景に向き直る。
「皆のお参りが終わるまで待つ?」
「うん」
そして待っている間、また屋台を回るのだった。
寒空の下、握る千景の手は温かく、寒さなんて感じなかった。
誠司さん
北海道のお土産の白い恋人は食べたが、白いブラックサンダーもあったことは知らない。