あと前回の勇者部活動報告聴き忘れた……。
4月になり、私達は1つ学年が上がった。
若葉とひなたは今年も同じクラスになったらしく、とても嬉しそうに話していた。
そして私も、今年も美琴と凜の2人と同じクラスだった。
そして担任も、前年と同じく山根先生となった。
「もうすぐゴールデンウィークですねぇ」
「千景は何か予定はあるのか?」
「今のところは特に無いけど。帰ったられんちゃんに聞いてみる」
放課後の帰り道。3年生だった時から変わらず、私達はだいたいいつも途中まで一緒に帰っている。
学年が違うので帰る時間が違うこともあるが、そういう日は美琴や凜と一緒に帰っている。
一緒に帰る友達ができるなんて、去年の夏までの私では考えられなかった。
れんちゃんに出会ってから、私の全てが良い方へと変わっていっているように感じる。
「それじゃあ、また明日ね」
「はい、さようなら」
「また明日な」
家の近くの分かれ道で若葉達と別れる。もう2、3分も歩けば家に着く。
れんちゃんはまだお仕事で家にいないだろうから、ご飯くらいは炊いておこう。干してある洗濯物も取り込んで畳んでおこうか。
そんな事を考えながら玄関の扉を開き、部屋にランドセルを置いてキッチンの炊飯器を確認する。
「…もう準備してある」
炊飯器は既に、夜6時に炊きあがるように予約してあった。
「じゃあ洗濯物を…あ、その前に宿題しないと」
ベランダに向かいかけた足を止めて部屋に戻り、ランドセルを開いてノートやドリルを取り出す。
自分の事もちゃんとできていなければ、他の誰かを支えるなんて言っていられない。
れんちゃんに心配をかけないよう、自分の事はちゃんとした上で、家事を手伝うのだ。
──────────
「ただいまー」
「おかえりなさい」
家に帰ると、いつものように千景が出迎えてくれる。
「すぐ晩ご飯作るからね。今日は唐揚げ作ろうか」
「うん」
リビングで荷物を置き、キッチンに向かいながらエプロンをつける途中、隣の部屋にある畳んである服を見つけた。そしてベランダを見ると、朝干して行った洗濯物はそこには無かった。
「干してた洗濯物を畳んでくれたの?」
「うん」
「そっか、ありがとね」
同じようにエプロンをつける千景の頭を撫でる。こういう瞬間に見せてくれる笑顔がまた、たまらなく可愛いのだ。
「ねぇれんちゃん」
「どうした?」
「もうすぐGWだけど」
夕食中にそう話し出す千景。GWといえばあれだろうか。
「ガンダムウイング?」
「…違うし古くない?」
「ごめん」
「じゃなくてゴールデンウィーク」
「そうだよね」
このボケは古いのだろうか。ほんの少しだけショックを受け、唐揚げを頬張る。
「ゴールデンウィークがどうしたの?」
「何か予定はある?」
「…無いな。どこか行きたい?」
「特には行きたいところは無いけど」
千景は基本的にインドアだから、連休でも用がなければわざわざ出掛けようとはしない。僕の子供の頃のようだ。
しかし、どこかに遊びに行けば普通に楽しんでいる。
「若葉達も誘って遊園地とか行く?」
「行く」
──────────
そんなわけで5月5日子供の日、僕達は遊園地へとやってきた。
「私、遊園地に来るの初めて」
「ジェットコースター乗ってみる?」
「身長制限があったはずだが」
ジェットコースターの乗り場前に来ると、身長制限の看板が立ててある。
「ぎりぎり超えてる」
「わたしもだ」
「わたしはちょっと足りないです…」
看板の前に並ぶ3人だが、ひなただけ少し身長が足りなかった。
「じゃあわたしは乗ってる若葉ちゃんとちーちゃんの写真をとります!」
そしてジェットコースターに乗り込む僕と千景、誠二さんと若葉、そして伊織さん。
理由はよくわからないが、ひなたに乗ってきてほしいと言われていた。
動き出すコースター。隣の千景を見れば、不安とわくわくが入り交じったような表情をしている。
そして頂上まで登ったコースターは、坂を下り始め一気に加速する。
「きゃああああああ!!」
「うぉわああああああ!!」
千景と若葉の叫び声が聞こえる一方で、後方から一番大きな絶叫が聞こえた。
「ぎぃゃああああああああああああああ!!!」
声の主は伊織さんであった。
「ジェットコースターはどうだった?」
「怖かったけど楽しかった!」
「ひなた、あんなに早かったが写真はとれたのか?」
「とれましたよ、ほら!」
ひなたが撮った複数枚の写真は、千景達が叫んでいる顔も良かったが、後ろの伊織さんが凄まじい顔をしていたのが印象的だった。
「伊織さん、もしかして絶叫マシンは苦手?」
「そうなんだよ。ひなたに言われて仕方なく乗ったけど」
「ひなた、なんでお父さんに乗ってって言ったの?」
一緒に乗ってというならわかるが、親だけ乗らせる理由がわからないので聞いてみる。
「お母さんにおねがいしてみてって言われました」
「え、なんで?」
「絵的に面白くなるので」
琴音さんは鬼かもしれない。確かにインパクトの強い写真にはなったが。
「次はわたしも一緒に乗りたいです!」
「じゃあメリーゴーランドはどう?」
「行きましょう!」
そしてそれぞれメリーゴーランドの馬や馬車に乗り込む3人。それを周りで見守る保護者達。
回り始めるメリーゴーランド。千景達がこちら側に回ってきた時、手を振ってくれるのがとても可愛らしく、片手を振り返しながらもう片手でスマホのカメラを構える。
「良いな…」
「そういえば蓮花、こっちに来てだいぶ経ったが、最近どうだ?」
素晴らしい光景に幸せを感じていると、楓さんがそんなことを聞いてきた。カメラは誠二さんに任せているようだ。
「最近は、そうだな…特に何事も無く平和かな」
千景と2人での平和な日常に幸せを感じる。千景もそう思ってくれていたら嬉しい。
「家での千景はどんな感じなんだ?最初のうちと比べて何か変わったりしたか?」
「家事を結構手伝ってくれてるよ。自分の事をよく話してくれるようになった。甘えん坊になってきた気もするけど」
「それだけ心を許しているということだろう」
「そうかな」
また千景達がこちらに回ってきたのでカメラを構える。手を振りながらこちらに向けてくれる笑顔が愛おしい。
出逢った頃と比べると、かなり笑顔を見せてくれることが増えたように思う。
信頼してくれているのだろうか。僕を大切に思ってくれていると、少し自惚れてもいいのだろうか。
メリーゴーランドが止まり、僕の元へと帰ってくる千景。
「どうかした?」
「なんでもないよ。次のアトラクション行こう」
「うん」
時間もアトラクションもまだまだ沢山ある。
いつものように自然と手を繋ぎ、僕達は次のアトラクションに向かった。