花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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ようやく勇者史外典を読んで心が疲れました。


第25話 不思議な縁

 年が明け、1月3日の朝。

 

「準備できた?そろそろ出るよ」

 

「ええ、大丈夫」

 

 れんちゃんに返事をしながら、着替え等荷物を詰めたリュックを背負う。

 これから私達はいつもの如く、長期休みの旅行をする。

 向かう先は大阪、奈良、京都である。それぞれで1泊する予定なので、3泊4日の旅行になる。

 キャリーケースを引っ張るれんちゃんに続いて玄関を出る。

 冬空の下、初めての都会に期待を膨らませながら、私達は駅へと歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、都会!」

 

「皆休みだから人多いね」

 

 大阪の街に出ると、沢山の人で溢れかえっていた。北海道の時よりも多いだろう。

 

「多分奈良と京都もこんな感じなんだろうね。はぐれないように手を繋いでおこう」

 

「うん。…あ、グ○コの看板!」

 

「お、本当だ!僕も初めて本物を見たよ」

 

 道頓堀のグ○コの看板は、強く存在感を放っていた。

 

 

 その後もたくさん歩き、様々な店や観光地を回った。

 特に私は、日本橋周辺の雰囲気がとても楽しかった。サブカルチャーの聖地と言われるだけのことはある。

 掘り出し物のゲーム等もあり、いくつか買って帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「…くしゅんっ」

 

「やっぱり寒いね。コンビニで温かい飲み物でも買おうか。ついでにおやつも」

 

「そうね」

 

 繋いでいた手を一旦放し、れんちゃんがスマホで近くのコンビニを調べ始める。

 

「凄いな都会。周りにいっぱいコンビニあるよ」

 

 便利ではあるが、そんなにあっても使うのだろうか。

 再び手を繋ぎ、一番近いコンビニへ向かう。

 少し放しただけで冷たくなったお互いの手を、再び温めようと少し強く握った。

 

 

 

 

 

 コンビニにたどり着き、出てきた女性とすれ違いながら中に入ると、目の前の床にハンカチが落ちていた。

 

「これ、さっきすれ違った人かな」

 

「そうかもしれないね」

 

 ハンカチを拾い、おそらく持ち主であろう女性を追ってコンビニを出る。

 幸い、女性は徒歩で来ていたようで、すぐに後ろ姿を見つけることができた。

 一瞬、少しれんちゃんの足が止まった気がしたが、すぐにまた歩き出し女性を追う。

 

「…あのー、ハンカチを落としてませんか?」

 

 れんちゃんが声をかけると、すぐに気づき女性が振り返る。

 振り返った女性はとても綺麗な人で、白衣を着ている事と黒髪に入った赤いインナーカラーが特徴的だった。

 

「ん?…ああ、本当だ。ありがとうございます」

 

「いえ」

 

 クールな雰囲気の女性は、礼を言うと振り返りまた歩き出した。

 

「……」

 

「どうかした?あの人が綺麗だから見とれているの?」

 

「…いや、なんでもない。知り合いに似てるなって思っただけだ」

 

「どんな知り合いよ」

 

 白衣を着ていて髪にインナーカラーを入れている人なんて、そうそう見かけないが。

 

 今度こそ私達はコンビニに入り、買い物を済ませるのだった。

 

 ──────────

 

「大阪はどうだった?」

 

 その日の夜、旅館にて、昼間にコンビニで買ったおやつを食べながら、千景に1日目の感想を尋ねる。

 

「楽しかった。メイド喫茶とか初めて見たわ」

 

「そうだね。客引きが凄かった」

 

 1本の道に左右交互、ジグザグに客引きの人が立っていて、多くの人が躱せずに捕まっていた。僕は千景を連れていたことで話しかけられなかった。

 

 さっき風呂を上がったところなので、まだ千景はホカホカしている。

 

「今アイス食べたら美味しいだろうね」

 

「でも冷えるんじゃない?」

 

「そうだね、やめておこう」

 

 おやつを食べきり、少しずつ寝る準備に入っていく。

 

「明日もたくさん歩くだろうから、早めに寝ようか」

 

「うん」

 

 布団に入りながら、少し今日のことを振り返る。

 

 まさかあの人に会うとは思わなかったけれど、そういえば大阪の大学院に通ってたって言ってたっけ。

 

 布団は2枚引いてあるが、僕の布団をめくり入ってくる千景。

 

 温かい千景を抱き締めると、強い睡魔に襲われる。

 

「おやすみ、千景」

 

「おやすみなさい」

 

 僕は行く先々で不思議な縁があるなと思いながら、睡魔に抵抗することなく身を任せた。

 

 ──────────

 

 翌日。朝食を終えて旅館を出た私達は、少し電車に乗り奈良に到着した。

 

「まずは大仏かな」

 

「そうね」

 

 奈良といえば大仏だろう、という考えが私達にはあるらしい。修学旅行でも大抵は大仏を見に来るらしいし、別に間違ってはいないだろう。

 

 東大寺の前まで来ると、周囲にはたくさんの鹿がいた。

 

「こんな普通に鹿がいるのね…」

 

「そういえば、鹿せんべい買った瞬間、突っ込んできた鹿にせんべいを全部持っていかれた同級生がいたな。あとで鹿せんべいを買ってあげようか」

 

「今の話で怖くなったわ」

 

 

 門に入り左右を見れば、金剛力士像が立っている。

 

「これでも十分大きい」

 

「でも大仏はもっと大きいよ」

 

 少し写真を撮り、また奥へと進んでいく。

 門を出ると広場だった。そして正面には大仏殿が見えた。

 

「れんちゃんは大仏を見たことあるの?」

 

「あるよ。小学校の修学旅行でここに来た」

 

 まっすぐ進み大仏殿に入ると、巨大な仏が座していた。

 

「凄い…」

 

「大仏を背景に写真撮ろうか」

 

 そう言って私にスマホのカメラを向けてくるれんちゃん。

 撮れた写真を見てみると、あまりにも背景のインパクトが強かった。

 

 

 

 東大寺を出た後、近くで鹿せんべいを購入した。

 

「これを鹿にあげるんだよ」

 

「大丈夫?襲われない?」

 

「僕がついてるから大丈夫」

 

 そう言いながら鹿にせんべいを食べさせるれんちゃん。

 周りを見てみると、私より少し年上そうな女の子が両親と一緒に鹿せんべいをあげていた。

 

「鹿せんべいって美味しいのかな。ボクも食べてみていい?」

 

「やめておきなさい、そんなに美味しくないぞ」

 

 鹿せんべいを食べようとする女の子を止めるお父さん。どうして美味しくないと知っているのだろう。

 

 私も少し勇気を出し、小柄の鹿にせんべいを差し出す。

 すると、鹿はとても美味しそうに食いついてきた。

 隣でれんちゃんが餌付けしている鹿は物凄くがっついている。

 

「…鹿せんべいって美味しいのかな」

 

「食べちゃダメだよ」

 

 

 

 

 

 

 色々お土産屋等を回って買い物をした後、今日泊まる旅館へ向かって歩き出す。ここから徒歩で向かえる距離らしい。

 

 途中、小さな神社の横を通りかかった時、神社の境内の方からボールが転がってきた。

 

「なんで神社からボール?」

 

 ボールを拾い上げて首を傾げるれんちゃん。そして神社の方を向き直ると一瞬目を見開き、ボールを落とした。

 

「すいませーん!」

 

 こちらに走ってくる赤毛の女の子。年は私と同じくらいか、少し下だろうか。

 ボールを拾い直すれんちゃん。

 

「…君のボール?」

 

「はい!拾ってくれてありがとうございます!」

 

 女の子はれんちゃんからボールを受け取ると元気良く礼を言う。礼儀正しい良い子のようだ。

 

「神社でボール遊びをしているの?」

 

「うん、わたしはよくこの神社で遊んでるの。神主さんには、さわぎ過ぎなければいいって言われてるから」

 

 どうして公園とかではなく神社なのかと疑問に思ったが、気にしないでおこう。

 

「それじゃあ、さようなら!」

 

「あ、ああ。さようなら…」

 

 神社の境内に戻っていく女の子を、れんちゃんは名残惜しそうに見つめていた。




鹿にせんべいをひったくられた同級生は実話です。
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