花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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ここ好きされると地味に喜びます。


第4話 新しい日常

 主夫の朝は早い。

 目が覚めるとまず、隣で眠る千景の寝顔を見る。可愛い。その後顔を洗う。

 着替えて洗濯物を干し、朝食を作る。今日の朝食の主食はフレンチトーストである。千景は朝はパンでも米でもいいらしいが、一度作ったフレンチトーストが好評だったらしく、パンの頻度は少し高い。

 フレンチトーストを焼きながら、横でウインナーを焼いたりちょっとしたサラダを作ったり、おかずを用意する。千景の健やかな成長の為、栄養豊富でバランスの良い食事を作るのは欠かせない。

 

 そうこうしていると千景が起きてくる。目を擦りながらとてとて歩いてくる様子はとても愛らしい。

 

「おはよう千景、もうすぐ朝ごはんできるから顔を洗っておいで」

 

「おはよう…」

 

 千景が顔を洗っている間にリビングのテーブルに朝食を運ぶ。千景が戻ってくると、朝食を食べ始める合図である。 

 

「「いただきます」」

 

 これが蓮花のモーニングルーティーンである。

 

 ──────────

 

 えいっ!ファイヤー!アイスストーム!ダイヤキュート!ブレインダムド!ジュゲム!ばよえーん!ばよえーん!

 

「僕の勝ち」

 

「…強い」

 

 昨日届いたテレビに映し出されるぷよの連鎖。朝食後、僕と千景はぷよ的なパズルゲームで対戦していた。

 今のところの戦績は3勝1敗。さすがに千景は素人と比べるとかなり強いので負けることもある。

 

「もう一回」

 

「受けて立つ」

 

 落ちてくるぷよを積み上げながら千景に話しかける。

 

「今日の午後は転校先の小学校に挨拶に行こう」

 

「うん」

 

「教科書とかも買わないと。同じものを持ってたらいいけど」

 

「……」

 

 千景が無言になった。どうやら本気で勝ちに来ているようだ。

 そういえば、関係ないけど小学校って教科書は学校で貰えるんだっけ?

 

 えいっ!ファイヤー!アイスストーム!ダイヤキュート!

 

「…お?」

 

 えいっ!ファイヤー!アイスストーム!

 

「おお?」

 

 えいっ!ファイヤー!アイスストーム!ダイヤキュート!ブレインダムド!

 

「おおお」

 

「わたしの勝ち」

 

 負けてしまった。隣で勝利に喜ぶ千景がとても可愛いので構わないが。

 悔しがる千景も可愛いけれど笑顔の千景も可愛いな。また見たいけれど、手加減してもそんな顔してくれないんだろうな。

 そんなことを考えていると、時間はお昼時に近づいていた。楽しい時間はあっという間である。

 

「そろそろ昼ご飯の準備しようかな」

 

「続きは?」

 

「帰ってきたらしよう」

 

「わかった」

 

 物分かりが良くて助かる。

 さて、昼食はどうしようか。うどんだな。

 

 ──────────

 

 小学校の応接室。目の前には灯りを頭皮で見事に反射する教頭先生と、とてもほんわかした若い女の先生。

 教頭先生というのはどうして皆頭部が寂しいのだろう。クレーム対応とかによるストレスだろうか。

 

「こちら、9月から千景ちゃんの担任となる山根先生です」

 

「山根です。よろしくお願いします」

 

「郡です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 教頭先生に紹介された女の先生に挨拶され、こちらも挨拶を返す。若い女の先生は山根先生というらしい。大変優しそうな担任でよかった。

 

「これからよろしくね、千景ちゃん」

 

「…よろしくおねがいします」

 

 僕の手を握ったまま離さない千景がおずおずと挨拶する。

 

 その後、教科書を貰ったり体操服の購入の説明がされたりした。どうやら体操服は自分で業者に行って注文する必要があるらしい。

 

「それでは、校内を少し案内しますね」

 

「お願いします」

 

 山根先生に先導され応接室を後にする。これから3年ほどお世話になる校舎だ。ざっくりとした構造は覚えないと、授業参観などの行事の際に困る。

 

 図書室や図工室、音楽室や給食室などを順に見て回る。この学校に通っていたわけではないが、懐かしくてたまらない。小学校の給食って美味しいよね。

 

 繋いだ手の先を見れば、心なしか千景も少しわくわくしているように見える。

 相変わらず手は離さないが。

 

 当然ながら、夏休みなので生徒はおらず校内はとても静かで、僕らの声と足音が廊下によく響く。

 

「では次は教室を見て回りましょうか。まあどこも同じですけど」

 

「お願いします、授業参観の時に重要なので」

 

 音楽室や図工室などで参観があることも全くないとは言い切れないが、教室は確実に行くことになる。しっかり場所を憶えよう。

 

「この階は1年生の教室です。この館は奇数の学年の教室があるので、3年生の教室はここの二階にあります」

 

 1年生の教室の前の廊下を歩きながら説明してくれる山根先生。奇数と偶数の学年で館が分かれている、しかと憶えた。

 

「一応隣の館も見ておきましょうか、来年使いますし」

 

「そうですね」

 

 渡り廊下を通り、2、4、6年生の教室がある隣の館へ入っていく。

 

 突き当たり、曲がり角に差し掛かったところで、誰もいないはずの静かな廊下に子供の声が響いた。

 

「めずらしいですね、わかばちゃんが宿題を学校にわすれるなんて」

 

「わざわざついてきてもらってすまない…」

 

 

 

 とても懐かしい声が聞こえた。




教頭先生
 よくいるハゲ。温厚で優しいおじさん。

山根先生
 教師2年目の若い女の先生。ほんわか。
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