花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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怒涛の連日更新。


第40話 変化する日常

「まず、勇者と巫女達の情報を絶対にネットやメディアに公開するな」

 

 ひれ伏す神官達に、僕の一つ目の頼みを告げる。

 

「し、しかし、勇者様の情報を公開することは、民衆の希望に繋がります」

 

「知ったことか。そんなものより子供達のプライバシーのほうが大事だ」

 

「失礼しました!!」

 

「もしも情報が漏れたら、大社を潰した後にその情報を見た人間を片っ端から消していく」

 

 額を床に擦り付ける男はそのままに、次の頼みを告げる。

 

「それから、千人程度が住める集合住宅のようなものを建設してもらいたい。できるだけ早く」

 

「……一応、理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「四国外の生き残りを避難させる為だ。諏訪とかな」

 

「その事まで……!!まだ発表していないのに」

 

「しかし、諏訪に千人も生き残っているのでしょうか……」

 

 規模に対して疑問を持つ神官が1人。他の神官もそれに同調する。

 

「北海道と沖縄にも同じように生き残っている人達がいる」

 

「なんと……!!そんなことが……!!」

 

「それでも余れば、避難所で生活している小さな子供や老人がいる家族に、格安で住まわせるなりすればいい」

 

「承知致しました」

 

「それから──」

 

 その後もいくつかの頼み事を伝え、その全てを了承してもらった。

 

 

 

 

 

 

「あ、帰ってきた。おかえり」

 

「ただいま。久美子も戻ってきているね」

 

「さっき終わった」

 

 話を終え、皆のいる部屋に戻ってくると、既に用事を終えた久美子も戻ってきていた。

 

「杏達はこの後どうするの?」

 

「とりあえず家に帰ります。丸亀城で生活し始めるのは1週間後だから、その時にまた来ます」

 

「そっか。またね」

 

 勇者達は1週間後に丸亀城での生活が始まることになっている。

 巫女のひなたはひと足先に、2日後から大社の寮で暮らすらしい。

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

 来た時と同じ車に乗り込み運ばれ、僕達は帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 翌日の夜。ひなたは明日から大社での生活になるため、多くはないが荷物を纏めていた。

 しっかりした子ではあるが、多少の不安は顔に出ている。

 その隣で、なぜか久美子も荷物を纏めている。

 

「どうしたの久美子さん?」

 

「私も明日から大社で生活するから、荷物を纏めているんだ」

 

「え、そうなの?」

 

「言っていなかったか。ここから大社まで毎日通勤するのは遠いから、私も職員の寮に入ることにした。大体の神官はそうしているらしい」

 

 初耳である。しかし、確かにここから大社までは距離があるので、納得ではある。

 

「少し心強いですね」

 

「少しか」

 

 知らない環境で知っている人がいるというのは、誰しも少し安心するものだ。

 

 

「ひなた、寂しくなったらいつでも電話してね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「私は?」

 

「久美子は寂しくなったりするの?構わないけど」

 

 久美子にそんな感情があるのだろうか。

 

「ひなたがいなくなるのは寂しいけれど、久美子さんがいなくなるのは落ち着くわね」

 

「そうだね」

 

「お前ら……」

 

 

 千景の言葉に茉莉が共感し、さすがの久美子も気落ちしている。

 

「2人とも、久美子さんが嫌いなのか?」

 

「冗談よ」

 

「お前ら、なぜ私には遠慮のない冗談を吐くんだ」

 

「遠慮、必要?」

 

「いらないと思うよ」

 

 ……これは仲が良いと見ていいのだろうか。

 このやり取りを見ている友奈やひなたが微笑んでいるので、そう思って大丈夫なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、遂に千景達が丸亀城で暮らし始める日となった。

 

 家の前に来た迎えの車に荷物を乗せて乗り込み、皆で丸亀城へ移動する。

 入り口の前には、既に球子と杏が立っていた。

 

「お、来た来た」

 

「こんにちはぁー!」

 

「ああ、これからよろしくな」

 

 

 神官の案内に着いていくと、寮らしき建物、その前に立つひなたを見つけた。

 

「え、ひなた!?」

 

「なんでここに!?」

 

「ふふっ、驚きましたか?実は、勇者達の生活をサポートし、神託があった際には直接伝えるという名目で、私も今日からここで一緒に生活することになりました!!」

 

「ほんとに!?やったぁ!!」

 

 ひなたのサプライズに驚き、とても嬉しそうにする面々。丸亀城ならいつでも会いに来れるため、僕も嬉しい。

 

「よかった、これからもひなたと一緒にいられるんだな」

 

「はい、若葉ちゃんのお世話は変わらず私がします!」

 

 安堵する若葉の手を、ひなたが両手で包み込む。

 その様子を見て、友奈と千景は顔を見合わせて微笑んだ。

 

 

 

 

 部屋の割り当てや設備の説明が終わり、それぞれの部屋で荷解きをする。

 全ての部屋にテレビやエアコン、冷蔵庫や洗濯機などの一般的な家電は既に設置されていた。

 

 そして僕は今、千景の部屋で荷解きを手伝っている。

 

「千景、家のテレビゲームも持ってくるか?ここなら皆で遊べるし、家に置いていても茉莉はやらないし」

 

「そうね、持ってこようかしら」

 

 タンスや勉強机も設置されており、生活に必要なものは大体揃っている感じだ。

 

「必要な家具等があれば言ってくれたら用意するって言っていたけど、充分よね」

 

「確かに」

 

 

 荷解きを終え部屋中を見回していると、ノックと共に扉が開かれた。入ってきたのは若葉達だ。続いて球子達もやってきて、全員が千景の部屋に集まった。

 

「……どうして私の部屋に集まるの?」

 

「皆の共通の知人だからじゃないか?」

 

 

 

 

 

 その後、コンビニで菓子やジュースを買い込み、ついでにゲームを取りに家に寄ってから丸亀城に戻り、千景の部屋で談笑が始まった。親睦会のようなものだ。

 

「明後日から学校が始まるって聞いたけど、それまで何してたらいいんだ?」

 

「普通にのんびり過ごしてたらいいと思うよ。丸亀城の敷地内を探検してみたら?」

 

「それいいな!タマは初めて丸亀城に来たんだ、後で色々見てくる!」

 

 

「食事は食堂に行くんでしたっけ」

 

「そうね。キッチンはあるから、食材があれば部屋でも料理できるけど」

 

「千景さん、料理できるんですか!?」

 

「ちーちゃんは凄く料理上手だよ!」

 

「そうなんですよ。家事万能です」

 

 

 皆、これから始まる新生活に心を躍らせているようだ。親元から離れて生活することに不安は感じているかもしれないが、これなら大丈夫だろう。

 琴音さんも、楽しそうにしているひなたを見て安心していた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、僕らはそろそろ家に帰るね」

 

「もう帰るの?」

 

「うん。家には茉莉がいるし、晩ご飯作らないと」

 

 夕方になり、帰り支度をする。千景達は目に見えて気を落すが、しょうがない。

 

「またちょくちょく会いに来るよ。寂しくなったらいつでも電話してね。毎晩でもいいよ」

 

「わかった。毎晩電話するわ」

 

 皆の頭を撫でて立ち上がる。

 

「じゃあ、またね」

 

 皆に見送られ、僕達は丸亀城を出た。

 

 

 

 

 夜。夕食と風呂を終え、リビングでのんびりと過ごす。

 

「……なんか、一気に静かになっちゃったね」

 

「……そうだね」

 

 8人で過ごしていたこの家も、今は僕と茉莉と琴音さんしかいない。

 千景がここにいないのは、去年の修学旅行以来か。

 

 そんなことを考えていると、唐突にスマホが鳴り始めた。

 

「もしもし」

 

『もしもし。れんちゃん、今何してる?』

 

 電話の主は千景。早速かけてきたらしい。

 大社で説明を受けた際、勇者達は専用のスマホを支給された。

 

「今は茉莉と絵しりとりしてるよ」

 

『……なにそれ、見たい。ビデオ通話にするね』

 

「了解」

 

 こちらのスマホもビデオ通話に切り替える。そして画面に写る千景の部屋には、また皆が集まっていた。

 

「まだ皆いるの?」

 

『それぞれの部屋でお風呂に入ってから、なぜかまた私の部屋に集まったの』

 

「そうなんだ」

 

 既に皆とても仲良しである。

 

『絵しりとり見せて?』

 

「ああ」

 

 絵を描いている紙をカメラに写す。

 

『……茉莉さん、凄く上手ね。何を伝えたいのかちゃんとわかるわ』

 

「そうなんだよ。だから凄くスムーズに進む」

 

「皆は何してるの?」

 

 茉莉が僕の隣に来てカメラに写り、皆に話しかける。

 

『今は人生ゲームしてるよ!』

 

「それって、何年か前に買ったやつ?」

 

『そうよ。確かあの時はひなたが子沢山になってたわね』

 

『そんなこともありましたねぇ』

 

 初めて千景がひなたの家に行った時にしていた人生ゲームを、部屋に持って行っているらしい。

 確か、千景は総理大臣になったんだったか。

 

『今回も若葉はキャリアウーマンになっているわ』

 

『結婚できない』

 

「……頑張って!!」

 

 僕には励ますことしかできなかった。なんだか、将来の若葉は実際にそんな感じになっていそうだ。

 

 そのまま30分ほど話し続け、千景の部屋が解散となると共に電話も終わることとなった。

 

『じゃあ、おやすみなさい。れんちゃん、茉莉さん、琴音さん』

 

「おやすみ、千景。というか皆」

 

『『『おやすみなさーい!』』』

 

 皆はまだまだ元気いっぱいのようだ。これが若さか。

 電話を切って時計を見ると、既に寝るにはいい時間になっていた。

 

 そして寝ようと思った矢先、また電話が鳴った。今度は久美子だった。

 

「もしもし、どうしたの?寂しくなった?」

 

『違う。聞きたいことがある』

 

 その話の内容は、僕が神官達に頼んだ事の1つに関係していた。

 

 ──────────

 

 丸亀城での生活が始まってから2日が経過し、学校が始まる日となった。

 支給された制服を着て、まだ教材を貰っていないため軽い鞄を持って部屋を出る。

 寮の前では、既に若葉とひなたが待っていた。

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

「おはよう千景。友奈はまだだぞ」

 

「まだ寝ているのかしら?」

 

 ゆうちゃんの部屋の扉をノックすると、すぐにゆうちゃんの声が聞こえた。そして3分もしないうちに部屋から出てきた。

 

「ごめんね、制服を着るのに手間取っちゃった」

 

「それはしょうがないな」

 

「そうですね。若葉ちゃんも、私が部屋に行くまで手間取ってましたし」

 

「言わないでくれ」

 

 食堂に行くと、球子と杏はまだ来ていなかったが、注文を済ませて待っている間にやってきた。

 

「おはよう皆!今日から学校だ!」

 

「おはようございます」

 

 球子は朝は寝坊するタイプではなく、朝から元気なタイプらしい。

 

 朝食を終え、教室へ向かう。

 丸亀城の内装が一部改装され、私の教室として使われる。

 

 

 

 

 教室に入ると、6つの席が用意されていた。

 

「席の場所は決まっていないのか?」

 

「そうみたいね」

 

「どうします?」

 

 話し合った結果、右前が杏、前の真ん中が球子、左手前がゆうちゃん、右後ろがひなた、後ろの真ん中が若葉、左後ろが私となった。

 基本的には身長で決まった。ひなたと杏を入れ替えるべきかもしれないが、ひなたは若葉の隣を譲らなかった。

 

「そういえば、先生のことって聞いてる?」

 

「タマは知らん。ていうか先生がいるのか」

 

「一応学校なんだから、いるんじゃないかな?」

 

 話をしながら始業時間まで待っていると、廊下から足音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 そしてガラッと扉が開かれ、おそらく担任となる人物が姿を現した。

 

 

「席につけー」

 

 

「……は?」

 

 扉を開けて教室に入ってきたのは、久美子さんだった。

 

「……え?」

 

「なんで久美子さんがここに!?」

 

「久美子さん、ここは大社じゃないですよ。職場を間違えていませんか?」

 

「間違えていない。今日からここが私の職場だ」

 

「……まじなのね」

 

 久美子さんが、私達の担任となった。




今日の郡家
 皆がいなくなって寂しかったけれど、蓮花さんがボクと一緒に楽しめる事を考えてくれた。
 楽しかったし、嬉しかった。
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